【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」といいます。)の状況の概要は次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しております。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりであります。
① 経営成績
当連結会計年度の売上高は1,729百万円(前年同期比58.2%減)、営業損失が519百万円(前年同期は3百万円の利益)、経常損失が367百万円(前年同期は34百万円の利益)、親会社株主に帰属する当期純損失は425百万円(前年同期は7百万円の利益)となりました。
② 財政状態
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末と比較して848百万円減少し、3,112百万円となりました。これは主として、現金及び預金が595百万円減少、受取手形及び売掛金が198百万円減少及び土地が153百万円減少したことによるものであります。
負債は、前連結会計年度末と比較して416百万円減少し、467百万円となりました。これは主として、短期借入金200百万円減少、流動負債のその他148百万円減少、及び支払手形及び買掛金が62百万円減少したことによるものであります。
純資産は、前連結会計年度末と比較して432百万円減少し、2,645百万円となりました。これは主として、親会社株主に帰属する当期純損失の計上により利益剰余金が472百万円減少したことによるものであります。
これらの結果、自己資本比率は、前連結会計年度末と比較して6.5ポイント増加し、83.6%となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末と比較して595百万円減少し、1,248百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローでは、545百万円の支出となりました。これは主として、棚卸資産の増加262百万円及び税金等調整前当期純損失380百万円によるものであります。
投資活動によるキャッシュ・フローでは、185百万円の収入となりました。これは主として、無形固定資産の取得による支出223百万円はあるものの、有形固定資産の売却による収入490百万円によるものであります。
財務活動によるキャッシュ・フローでは、249百万円の支出となりました。これは主として、短期借入金の純減少額200百万円によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
セグメントにつきましては、単一セグメント(画像検査関連事業)となっております。
a 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
生産高(千円)
前年同期比(%)
画像検査関連事業
1,964,048
△52.4
合計
1,964,048
△52.4
(注) 金額は、販売価格であります。
b 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
受注高(千円)
前年同期比(%)
受注残高(千円)
前年同期比(%)
画像検査関連事業
1,732,390
△55.3
480,668
7.1
合計
1,732,390
△55.3
480,668
7.1
c 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
販売高(千円)
前年同期比(%)
画像検査関連事業
1,729,098
△58.2
合計
1,729,098
△58.2
(注) 最近2連結会計年度における「主な相手先別販売実績」については、販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10以上の相手先はありませんので記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような見積り、予測を必要としております。当社グループは、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り、予測を行っております。そのため実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
また、連結財務諸表の作成のための重要な会計方針等は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりであります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、以下のとおりであります。
a 経営成績の分析
当連結会計年度(第44期・2022年12月期)のわが国は、資源高の影響を受けつつも新型コロナウイルス感染症抑制と経済活動の両立が進むもとで持ち直す傾向にありました。個人消費、輸出や生産は、供給制約の影響が和らぐもとで緩やかに増加し、消費者物価は、エネルギー、食糧費、耐久財などの価格上昇により2022年12月は前年比+4.0%となったものの、緩和的な金融環境や政府の経済対策効果にも支えられ、実質GDP成長率(政府見通し)は、前年比1.7%増の見込みです。
こうした状況の中、当連結会計年度(第44期・2022年12月期)における画像検査関連事業は、第4四半期にやや持ち直したものの前年度を下回る水準で終わりました。
主軸であるラベル検査機と検版機は、2021年に医薬品市場向けの伸びが大きかったものの、2022年通年では例年の水準に戻り、前年並みの売上には届かない状況でした。ただ、医薬品市場に加え食品市場でのラベル検査機と、紙器・パッケージ市場での検版機の引き合いが強く、それらの市場向けの標準検査機の受注が増加しております。一方、2019年から売上が減少してきたカードとビジネスフォーム市場は、さらに落ち込みが大きくなりました。これは、スマートフォンのアプリによる決済などでカード需要が減少してきたことや、印刷文書からデジタル文書へのシフトによる影響と推測されます。ボトル・容器市場は、コロナ禍のもとで3年間続いた化粧品容器用検査機の需要減少に歯止めがかからず、大幅売上減となりました。これらの落ち込みは、コロナ禍の元での人々の行動変化、いわゆる「おうち需要」と呼ばれる商材へのシフトが一因と考えられます。
このような逆境において、2019年から新技術・新製品を開発し、拡販の準備を進めてきたグラビア市場並びに紙器・パッケージ市場での新規受注と売上が増加しました。さらに、商業印刷市場とメーリング市場への新規参入も成功し、これらの新市場開拓により、受注・売上の大幅な回復が期待されております。
研究開発部門であるVOSTEC本部では、小型ラベル印刷機へ取付け可能なシングルボード型可変印字検査機の開発が進展しております。印刷品質向上に寄与するだけでなく、ラベル印刷コストの削減効果も期待できる新製品です。
また、業界では唯一となる高速薄紙枚葉フィーダと集積機構を開発完了し、薄紙平版印刷検査機として市場投入を目指しております。
研究開発により生み出す新技術・新製品を拡販するために、VOSTEC本部内に商品企画部を新設しました。この新部門で、“やさしい操作・低価格・コンパクト”をコンセプトにした検査機「Smartシリーズ」を新たに企画し、開発を開始しました。このシリーズの第1段として、小型移動式枚葉シート検査機「Smaco」を市場投入済で、複数の大手メーリング顧客から受注しております。2023年には本シリーズの第2段、一体型全面シート検査機「S-Con Smart」を企画開発し、平版印刷市場に投入予定です。
VOSTEC本部における研究開発は、構想設計、試作開発、仮説検証の段階を経て、事業化、実製品開発、市場投入・拡販し、投資を回収する、という一連のプロセスを辿ります。これまで多額の投資を行ってきた新技術・新製品開発テーマの多くは仮説検証段階にありましたが、2023年には事業化・市場投入し、投資を回収するフェーズに入ります。
画像検査ソフトウエア開発の中核であるWillable株式会社は、主力ソフトウエアである『FlexVision』及び『AsmilVision』の新機能開発と、次世代高速高精度画像検査ソフトウエア『PolarVision』の開発に注力してまいりました。『PolarVision』は、CPUによる従来の処理に加え、画像処理を高速に実行する専用プロセッサーであるGPU(Graphics Processing Unit)を活用することで、FlexVisionやAsmilVisionでは実現できなかった、幅1,200㎜以上の広幅印刷物を300m/分の速度で検査することが可能となりました。この結果、グラビアや紙器・パッケージ、大判商業印刷検査市場への展開を予定しております。
また、当社グループのビジョンである「モノづくり現場の目視検査をゼロにする」ために、コロナ禍の3年間、AI(人工知能)による良・不良自動判定システムの開発に投資をしてまいりました。2022年春から本AIシステムの試験導入を始めた複数の大手印刷メーカーさまから高い評価を得たため、本AIシステムを『Sirius-AIS(シリウスアイズ)』と命名し、新製品として販売開始しました。このシステムは、他社製検査機ともつながる仕組みとなっており、当社検査機を採用されていない顧客からの引合いも期待されております。
なお、当会計事業年度に新画像処理アルゴリズムの開発を完了したグラビア印刷シリンダー版検査システムがグラビア印刷メーカーさまと大手グラビアシリンダー版製造ラインメーカーさまから高い評価を受け、今期中の市場投入に向け製品化を進めております。本検査機にもAIシステム『Sirius-AIS』を搭載し、良・不良判定の自動化を目指しております。
ウェブサービスの企画・開発・運営を行う株式会社ウェブインパクトは、官公庁向けシステムの販売が好調でした。Willable株式会社への画像検査ソフトウエア開発支援の一環としてAsmilVisionの高機能化・安定化を担うとともに、自社製ソフトウエアである『Web給』や『Sync』などのクラウドサービスの売上も増加しました。
当社は以前より、愛知県豊橋市との技術開発連携に多くの実績がありますが、長年に亘る国立大学法人豊橋技術科学大学への学生向け実務訓練の協力が評価され、感謝状を授与されました。また、今となっては当たり前となっているテレワークを20年以上前から実施し、子育て応援企業として認知されてきました。豊橋市から特別賞を受賞した実績もあり、テレワーク実践企業として高い評価を得ております。
2022年には、豊橋市こども未来館の「ココニコ」市電シミュレータ復旧プロジェクトにおいてソフトウエア開発を支援しました。クラウドファンディングによる資金調達により本シミュレータが実現でき、子供たちが司会を行う記念イベントで本サービスの提供を開始しております。
DXクラウドサービスを展開する株式会社UniARTSは、印刷工場現場での製品品質向上に貢献することを目的としたクラウドソフトウエア『UniARTS』を開発してきました。UniARTSは、単にクラウド上でサービスを提供するだけでなく、定期的に「品質スクラム」会議を開催し、顧客が製造する製品の品質向上と不良品流出撲滅を支援しております。当社は、Quality well being(品質で人々をしあわせに)を標榜しており、現場顧客に寄り添ったサービスの提供を続けています。
本サービスを採用した大手印刷会社さまからは、UniARTSにより「不良品の流出を止めることができ、市場クレームを未然に防げた」、「印刷品質検査機の効率的運用と労損削減ができた」、「検査機オペレータの教育指導に役立っている」といった声が寄せられており、大きな投資をして開発してきた『UniARTS』が社会貢献につながっていることを実感しております。
本サービスは、ラベル市場、紙器・パッケージ市場、グラビア市場の大手印刷工場さまでトライアルを開始しており、当社グループの業績向上に寄与できる予定です。
海外市場では、アセアン諸国市場、中国市場ともに、新型コロナウイルス感染症の影響が続き、売上低迷が長期化しています。
タイ、ベトナム市場においては、ようやく営業活動が開始できていますが、コロナ禍前の状況に戻るにはまだまだ時間を要する見込みです。
中国では、長期間続いたゼロコロナ政策による営業活動への制約が大きく、計画とおりの行動ができておりません。2022年12月に開催予定であったラベル印刷関連展示会「ラベルエキスポ上海」が再び延期となり、中国ラベル検査市場の開拓が遅れております。ただし、中国の大手化粧品容器メーカーさまから受注・納品したボトル・容器印刷品質検査機は評価され、中国国内の複数の工場に採用される見込みです。
以上のとおり、来期に向けた業績回復と、来期以降の持続的成長のための新技術・新製品の研究開発、ソフトウエア新製品開発、及び新市場開拓のために積極的に投資を続けてまいりました。その結果、2022年12月期(2022年1月~12月)の研究開発費投資額は、428百万円を計上いたしました。
本投資は、2019年から始まったカード・ボトル・ビジネスフォーム印刷検査市場の落ち込みを、グラビアや紙器・パッケージ、メーリングなどの新市場開拓と、DX・クラウドサービスやAI(人工知能)などの新技術分野開拓でカバーするための前向きな開発投資ととらえております。しかしながら、その投資総額は、2021年12月期及び2022年12月期の売上額に対して相対的に大きくなりました。この結果、当社単体では2期連続の営業赤字となったことから、固定資産について減損を実施することといたしました。
b 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは事業活動のための適切な資金確保、流動性の維持、並びに健全な財政状態を目指し、その財源として安定的な営業キャッシュ・フローの創出を最優先事項と考えており、事業活動に必要な運転資金及び設備投資資金は、主に手元のキャッシュと営業活動によるキャッシュ・フローで賄っており、運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することに努めております。
また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は1,248百万円となっております。
なお、当社グループは画像検査関連事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は記載を省略しております。