【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当第3四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
なお、第1四半期連結会計期間より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しております。
詳細は、「第4 経理の状況 1 四半期連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりであります。
(1)財政状態及び経営成績の状況
当第3四半期連結累計期間(2022年1月1日~2022年9月30日)のわが国は、ウィズコロナの新たな段階への移行が進められる中、各種政策の効果もあり、景気は緩やかに持ち直し始めました。ただし、世界的な金融引締めと政情不安、世界経済の減速リスクに加え、国内物価の上昇、円安への対応、構造的な賃上げ、金融市場の変動等の影響に十分注意する必要があると懸念され、内閣府は、2022年4-6月のGDPは前期比0.9%増(年率3.5%増)となったことを発表しました。
こうした状況の中、当第3四半期連結会計期間における国内画像検査関連事業は、前四半期に続き、売上の積み上げに苦戦しました。2019年頃から売上が減少し始めたカードとビジネスフォーム、ボトル・容器市場向け印刷品質検査機の需要が大きく落ち込んでおり、売上が堅調に推移しているシールラベル市場と検版市場向けの需要増では、カバーしきれない状況が続きました。加えて、電子部品などの調達の長納期化が、印刷品質検査機の製造工程に影響し、納品時期が次期以降へずれ込む問題が発生しました。
また、昨年末の特殊印刷事業譲渡に伴う事業再編、すなわち、機械メーカーからソフトウエア開発メーカーへの移行に伴う体制変更のために、幹部メンバーの時間とコストを費やしたことも、画像検査機の営業活動に少なからず影響を及ぼしました。
しかしながら、当社画像検査事業の中核である、医薬品や食品ラベル、各種パッケージ市場での画像検査機と検版機の引き合いが続いており、グラビア・商業印刷用大判検版機として2年半の間に70台以上を販売した大ヒット製品『S-Scan LNC』、ロールラベル検査機の売れ筋製品である『S-Lab SSVシリーズ』や、分速300mの高速画像検査を実現した『S-Lab HSY』、卓上ロールラベル検査機『S-Lab Lite』など、これまでの当社の成長を支えてきたラベル・パッケージ印刷品質検査用標準機の受注が進んでいます。
研究開発部門であるVOSTEC本部では、2年間かけて開発してきた小型印刷機に組み込み可能なシングルボード型可変印字検査機が、大手ラベルプリンタメーカーに標準機として採用され、間もなくリリースされる運びとなりました。この検査機は、1枚1枚異なる可変情報を印刷するラベルプリンターに取り付けられ、印刷中に印字不良があると不良個所を表示して警告音を出すとともに、即座にプリンターを停止します。さらに、検査設定が完全に自動化されているため、印刷担当者が検査を意識せずに高品質のラベルを印字することが可能な、業界初の検査設定不要自動検査機となっています。
さらに、VOSTEC本部と検査本部が共同で開発してきたグラビアシリンダー検版機の第2世代機『GRACE-V2』の開発も終盤を迎えています。グラビア印刷(凹版印刷)では、印刷前のシリンダー版の画線部(印刷のある凹凸部)の検査(検版)をするために、印刷後の検査より10倍以上高い精度(1画素10μm以下の高精細分解能)が要求されますが、この要求を満たすことができる検査機はありませんでした。当社は電子基板検査で培った高精細検査技術を活用し業界初となる画線部の凹凸欠陥が検出できる検査手法を確立し、この技術を搭載したGRACE-V2の最終テスト調整を行っています。
また、VOSTEC本部と画像検査の新商品を企画開発する商品企画部を統合し、メーリング市場向け可変枚葉検査機の新製品『Smaco』を開発し販売開始しました。この検査機は、住所や名前、郵便番号などの個人情報を印刷したはがきや封筒など各種郵便物の印字ミスや品質不良を超高速(10枚/秒以上)で検査できる新型標準検査機です。早速大手メーリング顧客から受注済で、この新製品『Smaco』のメーリング業界への拡販により、来期の当社画像検査事業の業績回復に大きく貢献すると期待されています。
画像検査ソフトウエア開発の中核であるWillableは、主力ソフトウエアである『FlexVision』、『AsmilVision』の新機能開発と次世代画像検査ソフトウエアの『PolarVision』の開発を進めてきました。グラビア印刷市場や段ボール検査市場向け幅広印刷品の高速検査に対応できる新機能開発や、欠陥分類と不良判定用AIシステムの機能強化を行い、実績を上げています。
また、VOSTEC本部で開発してきた、インライン検査用カメラで撮像した任意の領域のRGB画像を、「色差(ΔE*)」や「L*a*b*値」、「CMYK」にリアルタイムに変換し、色レベルを測定(測色)する新技術開発も実用のレベルに達っしたため、FlexVision、AsmilVision、およびPolarlVisionに搭載し、近年ますます厳しくなるカラー品質要求に対応できるソフトウエアとして、多くの印刷工場現場での採用が始まっています。
ウェブシステムやクラウドサービスなどの開発・運営を行うウェブインパクトは、官公庁向けシステムが好調な上に、クラウド給与明細サービス『Web給』、クラウドカレンダー連携サービス『Sync』などプロダクト売上は順調に推移しています。また、ウェブインパクトからのWillableへの開発支援は、ソフトウエア開発のスピードを上げ、新製品開発にも大きく貢献しています。
DXクラウドサービスを展開するUniARTSは、あらゆる画像検査機メーカーの検査データを、セキュアな環境でクラウドに収集するIoT技術により、複数ユーザによるトライアルが始まっています。工場の稼働時間や稼働率、検査長、良品率・不良品率などを見える化すると共に、AIを駆使したビッグデータ分析により、不良が起こる原因をつきとめ、その結果を工場内にフィードバックするクラウドサービス『UniARTS』の機能拡張に取り組んでいます。
海外市場では、アセアン諸国市場、中国市場ともに、新型コロナ感染の影響が続き、売上低迷が長期化しています。
タイ、ベトナム市場においては、依然、新型コロナウイルス感染症による厳しい情勢が続いています。中国では、上海のロックダウンなどの影響を受け、計画通りの営業活動が進んでいません。ただし、ボトル・容器印刷品質検査機の1号機を受注し、すでに300万個以上の容器の自動検査に成功した中国の大手ボトルメーカーから2号機の受注が間近となっており、中国国内各工場への当社検査機の展開が計画されているなど、来期からの業績回復が期待できる明るい話題が増えています。
以上のとおり、来期に向けた業績回復と、来期以降の持続的成長のための新技術・新製品の研究開発及びソフトウエア投資を進めてまいりましたが、その投資額は、当第3四半期連結累計期間において363百万円を計上しました。新たな技術開発は、長期的なビジョンで、厳しい経済環境下においても不断の覚悟で継続すべきであり、株主の皆様のご期待に応える手段と判断しております。
以上の結果、当第3四半期連結累計期間の経営成績につきましては、売上高は11億90百万円(前年同期比△61.0%減少)となりました。また、利益面におきましては、営業損失は4億48百万円(前年同期は営業損失26百万円)、経常損失は3億11百万円(前年同期は経常損失12百万円)となり、親会社株主に帰属する四半期純損失は1億19百万円(前年同期は親会社株主に帰属する四半期純損失2億47百万円)となりました。
財政状態について、当第3四半期連結会計期間末における総資産は、前連結会計年度末と比較して4億86百万円減少し、34億74百万円となりました。これは主として、ソフトウエアが1億76百万円増加し、現金及び預金が4億26百万円及び受取手形及び売掛金が2億94百万円減少したことによるものであります。
負債は、前連結会計年度末と比較して3億69百万円減少し、5億14百万円となりました。これは主として支払手形及び買掛金が63百万円減少し、短期借入金が2億円減少したことによるものであります。
純資産は、前連結会計年度末と比較して1億17百万円減少し、29億59百万円となりました。これは主として、為替換算調整勘定が30百万円増加し、利益剰余金が1億66百万円減少したことによるものであります。
(2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループの優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題に重要な変更及び新たに生じた課題はありません。
(3)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(4)研究開発活動
当第3四半期連結累計期間の研究開発費の総額は1億5百万円であります。
なお、当第3四半期連結累計期間において当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。