【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)財政状態及び経営成績の状況
①経営成績
当第3四半期連結累計期間においても、新型コロナウィルス感染症が及ぼす影響の不確実性と不透明性はあるものの、新型コロナウィルス感染症を想定した新しい生活様式の実践の定着や、感染予防と経済活動の両立への世界的な取り組みにより、新型コロナウィルス感染症の感染拡大が当社グループの業績に与える影響は低減してきております。足元では、新型コロナウィルス感染症の再拡大が依然として懸念される中、世界的な行動制限等の緩和も進み、経済活動は正常化への動きを見せておりますが、その一方で、世界情勢の変化による急激な為替の変動や世界的な原材料価格の高騰等を受けて、景況感の悪化傾向が続いております。
このような状況のなか、リモートワークの導入拡大やデジタルトランスフォーメーション(DX)の加速などにより、社会・経済活動の変化や技術革新等のアフターコロナを見据えた取組みの重要性が引き続き増しております。また、2015年9月の国連サミットで採択された世界共通の目標であるSDGs(持続可能な開発目標)に対する取組みの推進も重要な課題として浸透してきており、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)をはじめ、具体的な取組みも拡大・増加しております。
サイバーセキュリティ市場につきましては、猛威を振るう「Emotet」や大手企業を標的とするサプライチェーン攻撃、地政学的な緊張の高まりを受けた国家によるものなど高度化・多様化したサイバー攻撃の脅威が世界的に深刻化し、また、テレワークの急速な普及を狙ったサイバー攻撃も急増していることなどから、セキュリティ対策需要は引き続き拡大傾向にあります。今後もIoTデバイスや近年、被害が増加しているOT環境を狙った攻撃、社会的・政治的な攻撃などを含め、より巧妙なサイバー攻撃が世界的に急増することが想定され、同市場は中長期的な拡大が見込まれます。実際に 2022年1月に警察庁が公表した資料によれば、2021年のサイバー犯罪の国内検挙件数は前年比23.6%増の1万2,209件(確定値)となり、はじめて1万件を超えました。このようなサイバー空間における脅威の高まりを受けて、国会に警察法改正案が提出され、2022年4月にサイバー警察局が発足し、中央省庁も連名での対策呼び掛けを行っております。また、国家安全保障戦略などの防衛3文書のうち新たな防衛力整備計画では2023年度以降の5年間でサイバー領域における能力強化にも1兆円が配分される予定です。
マーケティング市場につきましても、ビッグデータ・人工知能(AI)・IoT等の技術革新が進み、DXやメタバースによる新たな事業機会の可能性が顕在化するとともに、SDGsの具現化に向けた事業機会も顕在化しております。
このような経営環境の下で、当社グループは、顧客ニーズに沿った最適なソリューション提供による受注拡大に注力いたしました。また、収益の最大化を目指し、時代や顧客ニーズに沿うソリューションの開発・強化やアップセル・クロスセル戦略、官民の多様なパートナーや顧客獲得などに加え、重点戦略分野であるサイバーセキュリティ分野、マーケティング分野及びこれらの関連分野における最先端の情報・技術・ノウハウの獲得並びに事業パートナーとの関係強化を推進いたしました。
費用面では、先行投資として、特にセキュリティ事業において、良好な事業環境を背景に人材の前倒し確保を進めたことで採用コスト等が増加したほか、両事業において、自社プロダクトを含む新ソリューションの開発及びマーケティングにかかる戦略的な投資費用が増加いたしました。
なお、事業のスピード化・効率化、マーケティング拠点としての活用、事業間連携や人材交流の活性化よるシナジー効果の創出などを目指して2021年12月に実施したグループ拠点の移転・統合も効果が引き続き顕在化しております。また、事業の一体化、スピード化及び効率化、分析・戦略立案から実行・グロース・改善までをカバーするトータルマーケティングソリューション提供並びに自社プロダクト創出などのシナジー効果の発揮を目的として、事業子会社2社において展開するマーケティング事業を統合するため、株式会社バルクのマーケティングリサーチ事業を2022年7月1日に分割し、株式会社マーケティング・システム・サービスがこれを承継、加えて分割承継会社となる株式会社マーケティング・システム・サービスの商号を「株式会社MSS」に変更いたしました。
以上の結果、当第3四半期連結累計期間における経営成績につきましては、売上高1,630百万円(前年同四半期比28.2%増)、営業損失85百万円(前年同四半期は営業損失10百万円)、経常損失87百万円(前年同四半期は経常利益3百万円)、親会社株主に帰属する四半期純損失98百万円(前年同四半期は親会社株主に帰属する四半期純損失11百万円)となりました。
セグメント別の業績(セグメント間の内部取引消去前)は、次のとおりであります。
(セキュリティ事業)
サイバートレーニングソリューションについては、新型コロナウィルス感染拡大が続く中、テレワークの拡大等事業環境の変化も踏まえたトレーニングのリモート提供、新規プログラム開発、トレーニング施設『CYBERGYMアリーナ』の新設等を推進しております。前期は各事業パートナーと連携し、大阪、名古屋、札幌及び福岡に4つのCYBERGYMアリーナを開設いたしましたが、当期においてもCYBERGYMアリーナの新設に向けて、株式会社網屋(東京都中央区、代表取締役社長 石田晃太)との日本橋アリーナ、東洋システム開発株式会社(東京都港区、代表取締役社長 松本博之)との沖縄アリーナなど各事業パートナーとのプロジェクトや協議が進捗しております。同ソリューションを提供する事業子会社の株式会社サイバージムジャパン(以下、「サイバージムジャパン」といいます。)は、主要メディアでも紹介され業界内でのブランド構築や地位向上により、令和4年度「防衛装備品製造過程等におけるサイバーセキュリティ対策強化事業」など官公庁や大手企業を始めとする様々な新規顧客からの大型案件も増加し、併せて継続的な受注も増加しております。アジアにおいてもフィリピンでのトレーニングの提供開始など、事業化が進捗いたしました。また、2022年12月に丸紅株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長 柿木真澄)が、当社の共同事業パートナーであるCyberGym Control Ltd.(イスラエル ハデラ市、CEO Ofir Hason」)へ出資参画し、サイバージムジャパンを含む3社間でアジア諸国における重要インフラ事業者及び製造業向けOTセキュリティ分野にて協業することで合意いたしました。
セキュリティ診断・調査ソリューションについては、セキュリティ対策ニーズの高まりを受け、売上・受注とも好調に推移いたしました。そのなかでも、AIを応用した『ImmuniWeb®AI Platform』の引き合いが引き続き強く、従来の脆弱性診断・ペネトレーションテスト(侵入テスト)ソリューションに加え、サイバー犯罪の急増を背景として、2021年にリリースしたダークウェブ等調査『ImmuniWeb®Discovery』の受注・引き合いも拡大しております。今後は、ImmuniWebシリーズのラインナップ増加を含め、更なる高付加価値ソリューションの拡充を図るとともに、Capture The Flag(CTF)の主催や参加などを通じて業界内での地位を高め、拡大する需要を取り込むためにホワイトハッカー人材の増強を推進いたします。
情報セキュリティ規格(プライバシーマーク、ISO27001等)のコンサルティングサービスについては、自社開発のITツール「V-Series」の活用などを通じた競合他社との差別化や協業先との連携強化により新規取得案件、更新案件ともに引き続き堅調に推移いたしました。このコンサルティングサービスによる事業基盤を各種サイバーセキュリティソリューションの展開に活用するとともに、同サービスと連携したサイバーリスクを可視化するセキュリティリスク分析サービス『V-sec』の提供や2022年4月1日の個人情報保護法の改正法施行に伴い拡大する事業機会の獲得に注力いたしました。また、当社グループ各社の保有する販売チャネル、セキュリティソリューションの相互活用を強力に推進し、相互連携による受注も拡大しております。
以上の結果、当第3四半期連結累計期間の売上高は917百万円(前年同四半期比53.5%増)となりました。
(マーケティング事業)
マーケティングリサーチ部門、セールスプロモーション・広告代理部門とも中長期的な安定収益の確保及び成長の実現を目指し、引き続き、きめ細かい対応と最適なソリューション提供を通じたターゲット顧客との強固かつ広範な関係構築を推進いたしました。また、リサーチコンサルティング(オーダーメイド型の調査企画・設計・分析・実査)による顧客のマーケティング戦略や事業戦略上の課題解決の支援に注力するとともに、顧客のプロモーション活動を総合的にバックアップするため、常に最新のトレンドやマーケットニーズを見極めながら、最新のSPツールや長期にわたる企画・制作・編集実績を活かし、顧客企業と消費者の双方のニーズを満たす効果的な広告や販促プランの提案に努めました。これらの従来からの取組みに加え、オリジナルソリューションの開発、外部企業との連携及びSDGsの具現化に向けたダイバーシティソリューション提供などを推進するとともに、需要が回復傾向にあるアフターコロナにも備えてインバウンドマーケティング・越境ECサービスなどのグローバルマーケティングの提供体制も構築しております。
受注面では、両部門において、デジタルマーケティング関連の受注が拡大し、新規顧客の開拓が順調に進捗しました。マーケティングリサーチ部門では、主要顧客を中心とした複数案件化が成果を見せ始めたことや、コロナ禍ならではの非対面リサーチが急成長してきたことで、リサーチ業務の受託が堅調に推移したほか、カスタマーエクスペリエンス(CX)の最適化に向けた各種ソリューションの提供を本格化いたしました。セールスプロモーション・広告代理部門においても、きめ細かい対応と新規提案によって、主要顧客である大手小売りチェーンや大手食品メーカーからのデジタルマーケティング関連の受注が拡大したほか、マーケティング支援ソリューションとしてのVRサイト等商品流通チャネルの構築やSDGsソリューションの開発を引き続き、推進いたしました。
以上の結果、当第3四半期連結累計期間におけるマーケティング事業の売上高は733百万円(前年同四半期比6.2%増)となりました。
②財政状態
当第3四半期連結会計期間末の総資産は、前連結会計年度末に比べて71,040千円減少し、949,438千円となりました。
流動資産は、前連結会計年度末に比べて81,493千円減少し、695,945千円となりました。これは、現金及び預金が30,695千円、受取手形、売掛金及び契約資産が49,618千円減少したことなどによります。
固定資産は、前連結会計年度末に比べて8,660千円増加し、245,535千円となりました。これは、投資有価証券が9,842千円増加したことなどによります。
流動負債は、前連結会計年度末に比べて90,312千円減少し、474,090千円となりました。これは、短期借入金が50,040千円、1年内返済予定の長期借入金が30,000千円減少したことなどによります。
固定資産は、前連結会計年度末に比べて8,660千円増加し、245,535千円となりました。これは、投資有価証券が21,301千円増加した一方で、有形固定資産が9,702千円減少したことなどによります。
純資産合計は、前連結会計年度末に比べて38,052千円増加し、402,594千円となりました。これは、資本金及び資本剰余金が新株式の発行及び新株予約権の行使により、それぞれ62,515千円増加した一方で、親会社株主に帰属する四半期純損失の計上により利益剰余金が98,635千円減少したことなどによります。
以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末の35.3%から41.6%となり、1株当たり純資産が30円34銭から32円00銭となりました。
(2)事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループの優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題に重要な変更及び新たに生じた課題はありません。
(3)研究開発活動
該当事項はありません。
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