【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)財政状態及び経営成績の状況
当第3四半期連結累計期間(2022年7月1日~2023年3月31日)における経営環境は、国内では新型コロナウイルスによる行動制限が緩和され、景気に持ち直しの動きが見られましたが、円安や資源高等に起因する原材料価格およびエネルギー価格の上昇による物価高の長期化の懸念から、引き続き先行きが不透明な状況となりました。
当社が属する情報サービス産業においては、堅調なソフトウエア投資が続いており、2023年4月3日に公表された日銀短観(3月調査)による2023年度ソフトウエア投資計画(全産業・全規模合計)は、2022年度と比較し、6.9%増と引き続き拡大傾向を示しました。
当社グループにとっても、DXの実現を加速するAI(Artificial Intelligence:人工知能)、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)、RPA(Robotic Process Automation:ソフトウエアロボットによる業務の自動化・効率化)等の進展により、ビジネス参入機会の増加と事業領域の拡大に繋がりました。
また、コロナ禍からの「サイバーセキュリティの対策強化」及び「働き方の効率化」のニーズは引き続き高まっており、これらに対して有効なソリューションを有する当社グループの追い風となりました。
このような環境の下、当社グループでは、「5つの事業戦略」を掲げ、積極的な取り組みを継続しております。
・リノベーション(既存事業の改革による事業基盤の拡大・安定化)
・イノベーション(自社商品を軸とした新しい価値創造)
・競合から協業へ(協業による事業拡大)
・開発からサービスへ(サービス視点での事業拡大)
・人材調達・人材育成(採って育てる)
また、当社は2021年8月20日に新中期経営計画及びDITグループの2030年ビジョンを発表しました。2030年ビジョンでは、「信頼され、選ばれるDITブランド」の構築に向けてDITの将来像(DIT Services:ワンランク上の価値提供、DIT Spirits:プロフェッショナル集団)を掲げると共にチャレンジ500(*)と銘打ち、下記経営目標を設定いたしました。
2030年6月期までの経営目標
オーガニックグロース
+新規事業・M&A等
売上高
300億円以上
500億円
営業利益
40億円以上
50億円
(*)チャレンジ500
2030年6月期に向け売上高500億円に挑戦!
この2030年ビジョンの実現ステップとして、2022年6月期から2024年6月期を、次の成長を可能とする会社作り、仕組作りを推進することにより事業力を蓄える「事業構造改革の推進」の期間、2025年6月期から2027年6月期までの期間を、事業スタイルを確立させ、事業全般を成長軌道に乗せる「成長軌道の実現」の期間、また、2028年6月期から2030年の期間を、全てのステークホルダーから信頼され、選ばれる「DITブランドの確立」の期間としています。
2023年6月期は、今中期経営計画の2年目にあたり、過年度から継続している「事業基盤の拡大・安定化」と「成長要素の拡大」の2軸をより強化して事業を推進してまいりました。「事業基盤の拡大・安定化」については、ビジネスソリューション事業において、需要は高かったものの不採算案件が発生したため、売上の伸びが押さえられると共に大幅な減益となりましたが、エンベデッドソリューション事業において、需要の高い市場に的確にリソースを充当した結果、売上・利益共に力強い伸びを示しました。システム販売事業については、コロナ禍の影響を脱し、復調傾向を示しました。「成長要素の拡大」については、独自技術による自社商品であるWebセキュリティソリューション「WebARGUS:ウェブアルゴス」(*1)は、商品力強化と販売強化により、順調な伸びを示しましたが、Excel業務イノベーションプラットフォーム「xoBlos:ゾブロス」(*2)については、RPA連携プラットフォームバージョンの市場投入遅れ等から案件獲得が進まず、引き続き踊り場の状況を示しました。
以上の結果、当第3四半期連結累計期間における業績は、売上高13,535,061千円(前年同四半期比13.4%増)、営業利益1,536,705千円(同4.5%減)、経常利益1,551,966千円(同4.1%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益は1,089,448千円(同3.5%減)となりました。
(*1)Webセキュリティソリューション「WebARGUS(ウェブアルゴス)」は、ウェブサイ卜等の改ざんを発生と同時に検知し、瞬時に元の正常な状態に復元できる、新しい方式のセキュリティソリューションです。改ざんの瞬間検知・瞬間復旧により、悪質な未知のサイバー攻撃の被害から企業のウェブサイト等を守ると同時に、改ざんされたサイトを通じたウイルス感染などの被害拡大を防ぎます。
(*2)Excel業務イノベーションプラットフォーム「xoBlos(ゾブロス)」は、Excelベースの非効率な業務を自動化します。これにより短期間で劇的に業務を効率化することができます。(Excel®は、米国Microsoft Corporation の米国及びその他の国における登録商標または商標です。)
セグメント別の経営成績は以下のとおりであります。
なお、以下の事業別売上高、セグメント利益(営業利益)は、セグメント間の内部取引相殺前の数値であります。
①ソフトウエア開発事業
ビジネスソリューション事業分野(業務システム開発、運用サポート)は需要が旺盛でした。
業務システム開発では公共、通信、製造、ERP関連の案件獲得が順調で、この分野での売上、利益は拡大しましたが、請負案件で不採算案件が発生したため、売上の伸びが押さえられると共に大幅な減益となりました。
当不採算案件は前年度の第4四半期に請負契約を締結した案件であり、要件確認が不十分だったため、顧客側との認識に乖離が生じ、大幅な追加改修が必要となりました。それに伴う要員の調達が難しくなったため、当社は人員と収益性の確保が困難と判断し、損失を最小限に留めるべく、顧客との協議の結果、製造工程以降について契約解約とすることを決定しました。
上記に伴う契約変更から、第3四半期において売上高を3億4千万円減額、売上総利益を3億7千万円減額いたしました。なお、第4四半期は契約変更に伴う他社への引継ぎ作業等で一部影響は残るものの、来期以降への影響はないものと想定しております。
今後は品質管理部門によるレビューを強化することで品質・プロジェクト管理を徹底すると共に、プロジェクトマネジメントの強化、プロジェクトマネージャの育成、パートナ企業との関係強化などを実施し、再発防止を徹底いたします。
運用サポートでは、前年は主力顧客の事業改革の影響を一部受けましたが、今期は、既存領域への増員と業務領域の広がりに伴う増員がともに図られ、これに昨年6月末にグループ入りしたシンプリズム社の売上・利益も加わった結果、売上・利益ともに大幅に前年を上回りました。
エンベデッドソリューション事業分野(組込みシステム開発、組込みシステム検証)は、車載・半導体関連が回復し、大きく伸びると共に検証業務が従前以上に拡大し、売上・利益ともに大幅に伸ばすことができました。
組込みシステム開発では、前年度下期から回復傾向が見られた車載関連が本格的に回復し、モバイル系、家電系を含めたIoT関連も順調に伸び、売上・利益ともに前年を大幅に上回りました。
組込みシステム検証においては、車載系の検証業務が大きく伸びるとともに、5G関連(モバイル端末及び基地局)、エネルギー関連、医薬系が伸長し、売上・利益とも前年を大幅に上回りました。
自社商品事業分野は、サブスクリプションモデルのライセンス売上の積上げはあったものの、導入支援等の人的支援サービスが減少したため、売上は前年並に留まりましたが、利益率の高いライセンス売上が伸びた結果、利益は大幅に前年を上回りました。
サイバーセキュリティビジネスについては、WebARGUSがライセンス売上の積上げにより売上・利益共に堅調な伸びを示しました。また、外部サイバーセキュリティ専門会社(F-Secure社、SSH Communications Security社等)との協業を進めるなど、WebARGUSを核としたトータルセキュリティサービス(DIT Security)のラインナップ拡充に努め、拡販を進めると共に、11月15日には、情報セキュリティで最大の脅威となっているランサムウェア攻撃等から重要データを確実に保護するセキュリティ製品「WebARGUS(ウェブアルゴス) for Ransomware(ランサムウェア)」の販売を開始しました。
業務効率化ビジネスについては、既存顧客の他部署への横展開を推進しましたが、需要が見込まれるRPA連携プラットフォーム(xoBlosがRPAの運用を管理)の市場投入の遅れ等から、新規顧客獲得が進まず、売上・利益共に前期を下回りました。
コロナ禍のニューノーマルな社会に対応する電子契約のアウトソーシング型サービス「DD-CONNECT」(ディ・ディ・コネクト)は、前期に受注した案件が徐々に売上・利益に寄与し始めました。
自社商品のラインナップも徐々に増えてきており、引き続き拡販に努めてまいります。
これらの結果、ソフトウェア開発事業の売上高は13,047,716千円(前年同四半期比13.6%増)、セグメント利益(営業利益)は1,467,410千円(同5.7%減)となりました。
②システム販売事業
カシオ計算機株式会社製中小企業向け業務・経営支援システム「楽一」を主力とする販売ビジネスについては、対面販売がメインとなる商品であるため、前年まではコロナ禍による影響を受けていましたが、コロナ禍による影響が落ち着いたこと及びインボイス対応の需要増により売上高及びセグメント利益は前年より大幅に増加しました。
これらの結果、システム販売事業の売上高は517,666千円(前年同四半期比10.8%増)、セグメント利益(営業利益)は69,289千円(前年同四半期比32.3%増)となりました。
当第3四半期連結会計期間末における財政状態の分析の状況は以下のとおりであります。
①流動資産
当第3四半期連結会計期間末に、前連結会計年度末に比べ199,236千円増加し、7,116,496千円となりました。これは、主に売掛金及び契約資産が307,267千円並びに商品が37,272千円それぞれ増加し、現金及び預金が133,903千円減少したことによるものです。
②固定資産
当第3四半期連結会計期間末に、前連結会計年度末に比べ47,298千円増加し、811,372千円となりました。これは、投資その他の資産が83,325千円増加し、有形固定資産が2,835千円及び無形固定資産が33,190千円がそれぞれ減少したことによるものです。
③流動負債
当第3四半期連結会計期間末に、前連結会計年度末に比べ23,899千円減少し、1,936,511千円となりました。これは、主に買掛金が134,273千円及び賞与引当金が163,622千円それぞれ増加し、未払法人税等が80,900千円及びその他が267,470千円それぞれ減少したことによるものです。
④固定負債
当第3四半期連結会計期間末に、前連結会計年度末に比べ14,402円増加し、183,194千円となりました。これは、主に株式給付引当金が20,902千円増加し、その他が7,726千円減少したことによるものです。
⑤純資産
当第3四半期連結会計期間末に、前連結会計年度末に比べ256,031千円増加し、5,808,162千円となりました。これは、主に利益剰余金が428,922千円及び自己株式が165,200千円それぞれ増加したことによるものです。
(2)経営方針・経営戦略等
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(3)事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが対処すべき課題について重要な変更はありません。
(4)研究開発活動
当社は、ソフトウェア開発事業の一環として、新製品・新技術の研究・開発に取り組んでおります。当第3四半期連結累計期間については、10,029千円の研究開発費を計上しております。
なお、当社は研究開発費を含め、売上の1%程度を製品開発投資に振り向ける施策を継続実施しております。
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