【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態の状況
資産、負債及び純資産の状況
(資産)
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ1,062,473千円減少し、21,956,430千円となりました。
流動資産は、前連結会計年度末より1,652,681千円減少し、18,611,330千円となりました。これは主に、現金及び預金が838,386千円、営業出資金が746,234千円増加した一方、棚卸資産が3,613,404千円減少したことによるものであります。
固定資産は、前連結会計年度末より641,391千円増加し、3,293,484千円となりました。これは主に、ソフトウエアが92,382千円、投資その他の資産のその他が159,349千円増加したことによるものであります。また、DORIRU株式会社(2023年1月1日付でギグセールス株式会社より商号変更)の株式を追加取得し、連結の範囲に含めたことにより、関係会社株式が309,688千円減少し、のれんが575,032千円増加しております。
繰延資産は、前連結会計年度末より51,183千円減少し、51,615千円となりました。これは、株式交付費が51,183千円減少したことによるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ2,580,404千円減少し、10,640,167千円となりました。
流動負債は、前連結会計年度末より821,393千円増加し、5,962,719千円となりました。これは主に、短期借入金が484,350千円、未払金が169,249千円、未払費用が158,508千円増加したことによるものであります。
固定負債は、前連結会計年度末より3,401,798千円減少し、4,677,447千円となりました。これは主に、長期借入金が3,454,329千円減少したことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末に比べ1,517,930千円増加し、11,316,263千円となりました。これは主に、新株予約権の行使及び新株発行により資本金が59,053千円、資本剰余金が59,053千円増加したことによるものであります。また、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により、利益剰余金が1,148,213千円、DORIRU株式会社(2023年1月1日付でギグセールス株式会社より商号変更)の株式を追加取得し、連結の範囲に含めたことにより、非支配株主持分が221,811千円増加しております。
なお、自己資本比率は50.1%となっております。
② 経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症対策を行いながら経済社会活動の正常化が進み、個人消費や設備投資を中心に持ち直しの動きが見られます。また、業界横断的にデジタルトランスフォーメーション(DX)に対する機運の高まりは継続しており、成長加速ないし事業変革に向けた取り組みが各所にみられる状況であります。
こうした中、当社グループは「今の先鋭が10年後の当たり前を造る A DECADE AHEAD」をミッションに掲げ、大きく2つの事業を展開してまいりました。1つ目の事業は、不動産/金融業界からIT/ヘルスケア領域まで様々な業界のDXに向けて、機械学習等のテクノロジーを活用したモジュールをベースに、パッケージ型クラウドツールやテーラーメイド型アルゴリズムを提供する「AIクラウド&コンサルティング」事業であります。2つ目の事業は、お客様への確かな価値提供とテクノロジーの積極活用の両立を目指すアセットマネジメント、売買仲介、デベロップメント/インベストメント事業を展開する「不動産テック」事業であります。
実業(リアルビジネス)である不動産/金融/IT事業を自ら手掛け、業務上の非効率や課題に直面することで、機械学習等の高度なテクノロジーの活用の可能性を見出し、当社グループの内部オペレーションにそのテクノロジーを取り込み、競争力・効率性の改善を図っております。同時に、リアルビジネスのテック化により効果が検証された業務推進・効率化ツールは、当社自身がユーザーとして使い勝手をフィードバックすることで実務有用性を磨き込み、同業他社のお客様に提供しております。加えて、ツールのベースとなるモジュールを活かすことで、差異化されたコンサルティングを幅広い産業のお客様にご提供するビジネスモデルを構築しております。
実業(リアルビジネス)を手掛けることが、実務有用性の高いAIソリューション・クラウドツールの顧客への提供に密接かつ効果的に機能しており、この「リアルビジネスを内包したテックプロバイダー」という独自の顧客提供価値の追求が、様々な業界のDXや事業拡大に貢献しております。
当社グループが手掛けるAIクラウド&コンサルティング事業の業務環境をみれば、新型コロナウイルス感染症拡大をきっかけとする業界横断のDX気運の高まりが継続し、当社事業においても追い風となっております。不動産テック事業の業務環境をみれば、様々な種別の不動産に対する投資ニーズの高まりが引き続き見られます。一方、個人向け住宅の仲介事業につきましては、マンション価格上昇等により、首都圏の中古マンション総販売戸数が昨年と比較して下回る状況にあります。
このような業務環境下、当社グループは、不動産売買契約書の作成業務をオンラインで手掛けることが可能な「SRE 契約重説 CLOUD」等、不動産業界、金融業界に対して積極的にクラウドソリューションを提供し、その他産業に向けても自社の持つAIモジュールを活かしたDXソリューションを提供してまいりました。また、利益水準を意識した開発/販売面でのオペレーション改善や一部プロダクトの利用料引き上げ等、収益性の向上に取り組んでまいりました。さらに、中長期的な成長を見据えて、「リアルビジネスを内包した実務有用性の高いテクノロジー」による価値創出の幅を広げるため、マンション/オフィス/ショッピングセンター/ホテル/シニア関連施設など様々な暮らしの場であるリアルアセットの運用管理を通じて触れることのできるリアルビジネス領域を拡張し、その知見を活用した新しいサービス創出に取り組んでまいりました。
以上の結果、当連結会計年度の経営成績につきましては、クラウドソリューション(CS)における不動産仲介事業者の課金契約数が期初計画を上回る3,054社で着地し、アナリティクス&トランスフォーム(A&T)も顧客獲得が着実に伸長したことで、第4四半期連結会計期間の実績を基に年換算したARR(アニュアルリカーリングレベニュー)は2,845百万円と、大きくストック収入を積み上げました。加えて、アセットマネジメント&コンサルティングにおいてはSREアセットマネジメント株式会社による私募ファンドの組成完了に伴い当社保有物件の当ファンドへの売却を行うなど、スマートプロパティ事業も計画を上回る形で進捗いたしました。この結果、当連結会計年度の経営成績につきましては、売上高18,541,931千円(対前期比4,969,063千円増(36.6%増))、営業利益1,686,311千円(対前期比294,377千円増(21.1%増))、経常利益1,540,251千円(対前期比239,749千円増(18.4%増))、親会社株主に帰属する当期純利益1,148,213千円(対前期比255,806千円増(28.7%増))と増収増益となりました。
当連結会計年度のセグメント別の経営成績は、次のとおりであります。
<AIクラウド&コンサルティングセグメント>
クラウドソリューション(CS:不動産価格推定エンジンなどのディープラーニング技術を核とするパッケージ化されたAIを用いたクラウドサービス)は、新型コロナウイルス感染症拡大をきっかけとする業界横断のDX気運の高まりが継続するなか、開発/販売面でのオペレーション改善や体制強化を進め、課金契約数を着実に増やすとともに、解約率も非常に低い水準を維持してまいりました。
アナリティクス&トランスフォーム(A&T:幅広い業界におけるマーケティング活動、営業活動といった顧客企業の様々な経営課題に対して、将来予測分析ツールを用いた解決策若しくはシステムの提供又は共同ビジネス開発を行うサービス)は、様々な産業知見を持つコンサルタント・データサイエンティストの参画に加えて、AIモジュールを活かして差異化されたコンサルティングを提供することで一部ロイヤルカスタマーのリピート案件獲得を拡大し、当連結会計年度において着実に事業を拡大させてまいりました。加えて、共同開発による新規クラウドソリューションの仕込みを進めました。
その結果、CS・A&Tともに顧客獲得が着実に進み、第4四半期連結会計期間ベースのARRが2,845百万円と、大きくストック収入を積み上げたことで、当連結会計年度におけるAIクラウド&コンサルティングセグメントの売上高は3,025,111千円(対前期比1,003,332千円増(49.6%増))、営業利益は1,207,771千円(対前期比333,013千円増(38.1%増))となっております。
<不動産テックセグメント>
アセットマネジメント&コンサルティングにおいては、当社テクノロジーを活用したアセットマネジメント、売買仲介ビジネス等を提供するとともに、スマートプロパティとして、IoT技術やESG対応を施したマンション/オフィス/ショッピングセンター/ホテル/シニア関連施設等の開発・投資及び投資家向けの販売を計画に沿って実施しております。また当社の完全子会社であるSREアセットマネジメント株式会社が2022年10月に営業開始、2023年3月にファンドを組成し、当社が保有する多種多様な物件をファンドへ売却いたしました。ファンド規模拡大に向けた当社物件のファンドに対する継続的な売却及び市場からの厳選取得を行うことで、棚卸資産を過剰に保有することなく収益性に優れたリカーリングフィーを積み上げる積層型ビジネスモデルの構築に注力してまいります。当社グループは、これらの不動産事業においてテクノロジーを活用したDX化を推進するとともに、その中で生まれた気づきを幅広いお客様に提供するAIソリューションに反映しております。
その結果、当連結会計年度における不動産テックセグメントの売上高は16,243,023千円(対前期比4,242,617千円増(35.4%増))、営業利益は643,642千円(対前期比71,928千円増(12.6%増))となっております。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ808,386千円増加し、3,807,535千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は4,360,461千円(前期は7,305,968千円の使用)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益1,619,095千円、棚卸資産の減少額3,613,404千円等の資金増加要因が、営業出資金の増加額746,234千円等の資金減少要因を上回ったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は427,073千円(前期は1,637,907千円の使用)となりました。これは主に、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による収入375,364千円の資金増加要因が、有形固定資産の取得による支出174,528千円、無形固定資産の取得による支出404,684千円等の資金減少要因を下回ったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は3,125,001千円(前期は9,305,829千円の獲得)となりました。これは主に、長期借入れによる収入4,747,864千円等の資金増加要因が、長期借入金の返済による支出7,605,318千円等の資金減少要因を下回ったことによるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
b.受注実績
当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
AIクラウド&コンサルティング(千円)
2,350,989
149.5
不動産テック(千円)
16,190,941
134.9
合計(千円)
18,541,931
136.6
(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前連結会計年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
金額(千円)
割合(%)
金額(千円)
割合(%)
芙蓉総合リース株式会社
1,835,470
13.5
2,377,000
12.8
日光Plus20合同会社12
1,666,000
12.3
-
-
日光Plus20合同会社10
1,620,043
11.9
-
-
赤坂インベストメント・ツー合同会社
-
-
4,716,091
25.4
エムエル・エステート株式会社
-
-
1,882,888
10.2
個人
-
-
2,204,578
11.9
3.成約した案件は守秘義務があるため個人の氏名の公表は控えさせて頂きます。
4.前連結会計年度の赤坂インベストメント・ツー合同会社、エムエル・エステート株式会社及び個人に対する販売実績はありません。
5.当連結会計年度の日光Plus20合同会社12及び日光Plus20合同会社10に対する販売実績はありません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。また、経営成績等に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社の資金需要は、継続的な事業成長実現に向けた人件費、採用費、業務委託費、広告宣伝費、AIクラウド&コンサルティング事業の開発費、及びIoTスマートホーム物件取得に係る借入金の返済や営業用不動産の取得費用となります。財政状態等を勘案しながら、自己資金、金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等による資金調達を考えております。
流動資産と流動負債のバランスを注視し、財政状態の健全性を評価しており、当連結会計年度末時点で健全な財務体制であると判断しております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたって、資産及び負債又は損益の状況に影響を与える会計上の見積りは、過去の実績等の連結財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。