【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の感染対策と社会経済活動の両立を図るウィズコロナへの移行が進められ、各種政策効果もあり、景気は緩やかに持ち直しの動きが見られました。一方で原材料・エネルギー価格の高騰、ロシア・ウクライナ情勢の長期化、欧米各国の金融引き締めによる世界的な景気後退懸念、物価上昇等、景気の先行きは不透明な状況が続いております。
当社グループが属する情報サービス業界においては、引き続きデジタル技術を活用したビジネスプロセスやビジネスモデルの変革を行うDX(デジタルトランスフォーメーション)やクラウドサービスの利活用等の投資需要が依然として強く、堅調な状況が続いております。また、「標的型攻撃」に代表されるサイバー攻撃への防衛策等、情報セキュリティ対策の重要性も一層高まっております。
このような環境のもと当社グループでは、2022年4月より新たに子会社1社が加わり、2021年4月から2024年3月における中期経営計画「VISION2023」実現に向け、M&Aの推進、業務提携先との連携強化、DXビジネス推進、直ユーザ取引の拡大、得意分野の更なる強化に取り組み、企業価値の向上を目指してまいりました。特に事業構造の選択と集中により、高収益プロジェクトへのシフトについて、昨年度末より取り組みを強化してまいりました。さらに既存顧客とのパートナーシップの強化による領域の拡大及び顧客満足度の向上に努め、引き続きDX推進本部を中心とする、ローコード開発やアジャイル開発等の新デジタル分野に対応した人材育成の強化、クラウドシフトへの取り組みに注力し、開発要員の採用強化及びパートナー企業との更なる連携強化に努めてまいりました。
この結果、当連結会計年度の売上高は11,578,940千円(前年同期比20.7%増)となりました。利益面につきましては、関西事業所の移転、新たな子会社の取得による取得費用、のれん及び顧客関連資産の償却額等、経費が増額したものの、事業構造の選択と集中による高収益プロジェクトへのシフトが順調に進められた結果、営業利益は1,222,409千円(前年同期比40.2%増)、経常利益1,238,200千円(前年同期比40.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は772,096千円(前年同期比23.1%増)となりました。当連結会計年度においては、売上高・利益ともに二桁増加率を達成しております。
当社事業のサービスライン別の業績を示すと次のとおりであります。
事業のサービスライン
売上高(千円)
前年同期比(%)
システムインテグレーション・サービス
6,345,058
113.0
インフラソリューション・サービス
1,354,193
103.2
パッケージベースSI・サービス
3,879,687
145.3
合計
11,578,940
120.7
(システムインテグレーション・サービス)
金融分野については、ネットバンク向け受託開発案件が順調に推移し、またクレジットカード分野における統合案件等による売上が大幅に増加したことにより前年を上回りました。また、産業・流通分野については引き続き、エネルギー関連分野向け受託開発案件、流通分野向け基幹システム構築案件等の売上が増加、公共分野については昨年度から続いている大型プロジェクト案件及び行政機関向けシステム開発案件の受注による売上が増加したこと等により大きく伸長しております。この結果、システムインテグレーション・サービス全体の売上高は6,345,058千円(前年同期比13.0%増)となりました。
内訳を業種別に示すと、次のとおりであります。
業種別
前連結会計年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
売上高(千円)
売上高(千円)
構成比(%)
前年同期比(%)
金融
2,619,968
2,725,234
43.0
104.0
(うち銀行)
1,460,600
1,501,072
23.7
102.8
(うち保険・証券)
275,307
221,084
3.5
80.3
(うちクレジットカード)
884,059
1,003,077
15.8
113.5
産業・流通
2,154,070
2,668,145
42.1
123.9
公共
262,698
402,023
6.3
153.0
医療
576,614
549,655
8.7
95.3
計
5,613,352
6,345,058
100.0
113.0
(インフラソリューション・サービス)
当社におけるDX推進の中心であるクラウド開発案件の受注が大きく増加し、また半導体不足の影響も緩和されてきており、産業・流通向け基盤構築・導入案件の受注が増加したことにより、売上高は1,354,193千円(前年同期比3.2%増)となりました。
(パッケージベースSI・サービス)
当社におけるDX推進の中心であるクラウド分野のSalesforce関連の導入支援及びアドオン開発の全社展開における大型案件獲得、金融業向け開発案件の受注拡大等により売上が大きく伸長致しました。また、子会社インフリー社での中心ビジネスであるSAP関連の導入支援及びアドオン開発の売上も大規模プロジェクトの受注により大きく増加しております。さらに子会社テクニゲート社(旧社名:株式会社NESCO SUPER SOLUTION)が展開する会計パッケージの導入支援、保守及びアドオン開発等の売上が今年度より新たに加わった結果、パッケージベースSI・サービス全体の売上高は3,879,687千円(前年同期比45.3%増)と売上が大きく増加いたしました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、2,934,265千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は981,624千円となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益の計上額1,238,200千円、減価償却費の計上額112,146千円、のれん償却費の計上額71,814千円、仕入債務の増加額58,355千円、棚卸資産の減少額27,089千円、退職給付に係る負債の増加額13,639千円、賞与引当金及び役員賞与引当金の増加額109,195千円、その他流動負債の増加額29,194千円等の資金の増加と、売上債権の増加額141,794千円、契約負債の減少額21,729千円、受注損失引当金の減少額59,000千円、その他流動資産の増加額10,251千円、法人税等の支払額443,891千円等の資金の減少によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は644,367千円となりました。これは主に、短期貸付金の回収による増加額330,016千円の資金の増加と、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出790,825千円、有形及び無形固定資産の取得による支出149,956千円、保証金の差入による支出24,971千円等の資金の減少によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は286,553千円となりました。これは株式の発行による収入3,128千円の資金の増加と、配当金の支払額287,263千円、自己株式の取得による支出2,418千円の資金の減少によるものであります。
③生産、受注及び販売の状況
当社グループの事業は、システムソリューションサービス及びこれらの付随業務の単一セグメントのため、生産、受注及び販売の状況については、サービスライン別に示しております。
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績を事業のサービスライン別に示すと、次のとおりであります。
事業のサービスライン
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
システムインテグレーション・サービス
(千円)
5,146,487
112.8
インフラソリューション・サービス
(千円)
1,078,384
94.5
パッケージベースSI・サービス
(千円)
2,959,420
147.1
合計
(千円)
9,184,290
119.1
(注)1.金額は製造費用によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
当連結会計年度の受注実績を事業のサービスライン別に示すと、次のとおりであります。
事業のサービスライン
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
受注高
前年同期比(%)
受注残高
前年同期比(%)
システムインテグレーション・サービス
(千円)
6,487,946
110.6
1,377,095
112.1
インフラソリューション・サービス
(千円)
1,339,864
101.0
280,471
95.1
パッケージベースSI・サービス
(千円)
4,211,598
155.8
778,139
214.6
合計
(千円)
12,039,408
121.7
2,435,705
129.1
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績を事業のサービスライン別に示すと、次のとおりであります。
事業のサービスライン
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
システムインテグレーション・サービス
(千円)
6,345,058
113.0
インフラソリューション・サービス
(千円)
1,354,193
103.2
パッケージベースSI・サービス
(千円)
3,879,687
145.3
合計
(千円)
11,578,940
120.7
(注)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前連結会計年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
金額(千円)
割合(%)
金額(千円)
割合(%)
富士通株式会社
2,582,658
26.9
3,130,928
27.0
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態
当連結会計年度末における総資産は7,502,777千円となり、前連結会計年度末と比較して1,002,696千円の増加となりました。これは主に、現金及び預金が156,106千円増加、売掛金及び契約資産が221,365千円増加、前払費用が37,864千円増加、その他の流動資産が17,801千円増加、有形固定資産が48,494千円増加、無形固定資産におけるソフトウェア及びソフトウェア仮勘定が66,843千円、のれんが230,875千円、顧客関連資産が305,100千円増加、差入保証金が15,178千円増加、繰延税金資産が18,360千円増加した一方、システム開発の進捗により仕掛品が16,406千円減少、有価証券が100,000千円減少したことによるものであります。また、負債合計は2,637,048千円となり、前連結会計年度末と比較して503,618千円の増加となりました。これは主に、買掛金が101,453千円増加、未払金が15,442千円増加、未払費用が24,643千円増加、未払法人税等及び未払消費税等が55,129千円増加、契約負債が135,997千円増加、賞与引当金及び役員賞与引当金が109,195千円増加、退職給付に係る負債が28,836千円増加、繰延税金負債が86,637千円増加した一方、受注損失引当金が59,000千円減少したことによるものであります。
純資産合計は4,865,729千円となり、前連結会計年度末と比較して499,077千円の増加となりました。これは主に、利益剰余金が484,833千円増加、非支配株主持分が15,031千円増加したことによるものであります。
以上により、自己資本比率は64.65%となりました。
b.経営成績
(売上高、売上原価及び売上総利益)
当連結会計年度の売上高は11,578,940千円(前年比120.7%)と大きく伸長しました。主な要因としては、1点目は2022年4月より新たな子会社1社が加わったことによる売上増加であります。2点目は前年度後半から事業構造の選択と集中による高収益プロジェクトへのシフトが順調に推移したことです。このことによって全てのサービスラインが前年を超えることができました。
サービスライン別の状況は、まず当社事業の中核であるシステムインテグレーション・サービスは、ネットバンクを中心とした金融分野の売上について、大型プロジェクトの収束等により減収となりましたが、産業・流通分野においては通信業向けシステム開発案件の売上が増加、流通分野のシステム開発案件の売上が増加、エネルギー関連のシステム開発案件の増加、公共分野の新規大型案件の受注獲得による売上が増加した結果、売上高は6,345,058千円(前期比113.0%)となりました。
次に、インフラソリューション・サービスにおいては、クラウドビジネス人材の育成を中心に事業を展開しましたが、半導体不足によりプロジェクトの延伸や中断が発生し、文教分野の基盤構築案件の縮小の結果、売上高は1,354,193千円(前期比103.2%)となりました。
最後に当社のDX推進の中心であるパッケージベースSI・サービスにおいて、当社におけるクラウドビジネスの中心であるSalesforceビジネス関連においては、昨年度からの複数事業部での展開による開発案件の受注が大きく増加しました。また子会社インフリーが展開するSAP案件について、当社の相乗効果による開発案件の受注が増加しました。これらの結果により売上高は3,879,687千円(前期比145.3%)と、大きく成長することができました。
当連結会計年度の売上原価につきましては9,073,132千円(前年比116.8%)となりました。これは不採算プロジェクトの収束対応に伴う人件費が増加、DX推進本部における将来の新デジタル分野の人材育成に伴う教育研修費及び人件費が増加いたしましたが、コロナ禍の活動自粛に伴う会議費・交際費の減少、リモートワークによる旅費交通費の減少等による経費減少、低利益率プロジェクトの構造改革に伴う事業構造の集中と選択を行った結果、原価率は78.4%(前年比2.6ポイント減)となり、当連結会計年度の売上総利益は2,505,808千円(前年比137.1%)となりました。
(販売費及び一般管理費並びに営業利益)
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は1,283,398千円(前年比134.4%)となりました。その主な要因は、企業結合により取得費用61,349千円、のれん償却額及び顧客関連資産償却額121,714千円計上したことによるものであります。
その結果、営業利益は1,222,409千円(前年比140.2%)となりました。
(営業外損益及び経常利益)
当連結会計年度の営業外収益は21,097千円(前年比193.7%)となりました。これは業務受託料8,637千円、助成金収入9,526千円、受取配当金1,886千円等によるものであります。
当連結会計年度の営業外費用は5,305千円(前期比156.2%)となりました。これは関西事業所移転に伴う固定資産除却損4,392千円、支払利息824千円によるものであります。
その結果、経常利益は1,238,200千円(前期比140.8%)となりました。
(当期純利益)
以上の結果より、親会社株主に帰属する当期純利益は772,096千円(前期比123.1%)となりました。
c.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
新型コロナウイルス感染症の感染対策と社会経済活動の両立を図るウィズコロナへの移行が進められ、各種政策効果もあり、景気に持ち直しの動きが見受けられます。しかしながら原材料・エネルギー価格の高騰、ロシア・ウクライナ情勢の長期化、欧米各国の金融引き締めによる世界的な景気後退懸念、物価上昇等、景気の先行きは不透明な状況が続くものと思われます。
情報サービス業界におきましては、先端技術の普及や業務効率化ニーズの高まり、DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展、サイバーセキュリティ対策の需要増加、クラウド化の進展、IoT(Internet of Things)、フィンテック(金融サービスのITイノベーション)、AI(人工知能)、RPA(ロボットによる業務自動化)等のITを利用した生産性向上や省人化・自動化による労働力不足への対応等、中長期的にはIT投資は引き続き拡大すると想定しております。
その一方で、当業界では業者間の受注競争の激化に加え、パートナー企業を含む開発要員獲得の面で非常に厳しい経営環境が続いており、依然として人材確保と育成が経営課題の最重要課題となっております。
このような状況の中で当社は、2021年4月から2024年3月における中期経営計画「VISION2023」実現に向け、M&Aの推進、業務提携先との連携強化、DXビジネス推進、直ユーザ取引の拡大、得意分野の更なる強化に取り組み、企業価値の向上を目指しております。2023年3月期においては、事業構造の集中と選択、Salesforceビジネス推進室を中心したパッケージ導入支援、アドオン開発の全社展開の推進に注力し、事業拡大いたしました。今後も、技術革新が急速に進む情報サービス業界において常にお客様に満足していただけるサービスを提供していくため、既存技術の強化とともにクラウドビジネスやパッケージベースSIサービスを中心とする成長力の高い事業ドメインの開拓、事業構造の集中と選択、直ユーザ取引の拡大に積極的に取り組み、長期的な成長につながるビジネス基盤の構築に引き続き注力してまいります。
また、これらの成長を実現するため、DX推進本部を中心としたローコード開発やアジャイル開発等の新デジタル技術人材の育成強化、クラウドシフトの取り組み強化等、引き続き戦略投資を進めていく方針であります。
一方、継続的に発生している不採算プロジェクトに鑑み、不採算プロジェクト発生を防ぐべく、開発プロジェクトのマネジメント意識を高めるとともに、PMO要員によるプロジェクト監視をさらに強化し、生産性の向上、経営効率化による基盤強化に向けた取り組みを一層加速し、利益率の向上を目指してまいります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況・分析・検討内容につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
資本の財源及び資金の流動性につきましては、営業活動に伴い売掛金回収までの運転資金を主たる資金の需要としておりますが、金融機関からの借入金により、必要とする十分な資金を調達しております。なお当連結会計年度においては、引き続き慎重かつ保守的な財務活動にあたる方針としたことから当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の期末残高は2,934,265千円となり、比較的厚めの資金ポジションをとっております。当連結会計年度末における資金は資産合計の39.1%を占めており、また流動比率は304.9%であることから十分な流動性を確保しております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 注記事項 重要な会計方針」に記載されているとおりであります。この財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載のとおりであります。
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