【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当第1四半期連結会計期間の末日現在において判断したものです。
(1)財政状態及び経営成績の状況
当社グループは、社会が直面する様々な課題を解決するため、「人」+「サイバー・フィジカル空間」(HCPS:Human-Cyber-Physical Space)を融合する「サイバニクス(人・AIロボット・情報系の融合複合)技術」を駆使して、人とテクノロジーが共生し相互に支援し合う「テクノ・ピアサポート社会」の実現、ロボット産業・IT産業につづく新産業「サイバニクス産業」の創出による未来開拓を推進しています。
当社が目指す「テクノ・ピアサポート社会」とは、人とテクノロジーが共生し相互に支援し合うことにより、高齢になっても健康が維持・管理され、長く培ってきた能力を思う存分発揮できる社会であり、疾患・事故・加齢により身体状態が低下し、障がいを抱えたとしても、より心身の自立度を高く保ち、より自由度の高い生活を送ることのできる社会です。当社グループは、人間の機能改善・再生・拡張・支援が可能なサイバニクス技術の社会実装を事業として推進することにより、「テクノ・ピアサポート社会」の実現と「サイバニクス産業」の創出を進めています。
事業推進の状況
《医療:サイバニクス治療》
当社グループは、世界初の装着型サイボーグHAL®を利用した脳・神経・筋系の機能改善・機能再生を促進するサイバニクス治療を、グローバルな標準治療として普及させる取り組みを進めています。
(日本)
医療用HAL®「下肢タイプ」(両脚モデル)については、有効な治療法が確立されていない緩徐進行性の神経筋難病疾患に対する使用成績調査で高い有効性と安全性を示す結果が得られたことを踏まえて、医療用HAL®によるサイバニクス治療の普及に取り組んでいます。新型コロナウィルス感染症の影響により医療機関への医療用HAL®の導入が一時的に遅れましたが、感染症の収束に伴い新年度(2023年4月)に入って受注は好転しつつあります。
脊髄疾患に関して、ウィルス性のHTLV-1関連脊髄症(HAM)および遺伝性の痙性対麻痺の2疾患について、2022年10月に適応追加の承認を取得し、2023年7月に診療報酬保険適用に係る申請をおこないました。また、外傷性の脊髄疾患である脊髄損傷については、当局と承認申請方法について協議しています。
脳卒中に関しては、医療用HAL®「下肢タイプ」(単脚モデル)の医師主導治験(HIT2016試験)における臨床的な意義と主要評価項目の統計学的有意差についての当局との協議を踏まえて、最新の患者像や臨床ニーズを捉えた追加試験(治験)の実施を検討しています。
小児脳性麻痺等に伴う運動姿勢障害を呈する患児の粗大運動能力の向上を目的とする医師主導治験が、2022年1月より筑波大学附属病院を中心に現在進行中です。また、小柄な患者様向けに治験機器と同等品を医療用HAL®の小型モデルとして開発し、2023年6月に既承認の適用疾患に対する医療機器としてPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)に製造販売承認申請を提出しました。
(米国)
個人向けの医療サービス事業のプラットフォームとして、子会社のRISEヘルスケアグループ(RHG)社はカリフォルニア州南部で順次拠点を拡大するとともに、2023年2月に同州北部にも進出し、2023年6月30日現在で27拠点(買収時から11拠点増加)を展開しています。当社のHAL®による革新的な医療技術との複合サービスは現在4拠点で展開しており、2023年1月より段階的に正式サービスへの移行を開始しています。
(EMEA:欧州や中東)
主要各国でのサイバニクス治療の普及が進んでおり、昨年度のトルコでのHAL®シリーズの導入に続き、2023年5月にイタリアの医療介護サービスを専門とする大手社会協同組合Coopselios社にHAL®シリーズ25台を導入いたしました。
ドイツにおいては、公的医療保険の当局であるG-BA(ドイツ連邦共同委員会)が、脊髄損傷に対する公的医療保険適用を前提とした臨床試験の実施を決定しており、2023年6月時点においてプロトコルの準備中です。
(APAC:アジア太平洋)
2022年2月にAPACエリアの事業推進拠点として、マレーシアにCYBERDYNE MALAYSIA社を設立し、東南アジアを中心にインド・オーストラリア・台湾においてサイバニクス治療の普及を進めています。
マレーシアにおいては、政府系の従業員社会保障機構(SOCSO)との事業連携が更に強化され、SOCSOの被保険者に対してHAL®によるサイバニクス治療が普及すると共に、東南アジア最大の医療複合施設である「国立神経ロボット・サイバニクスセンター」の建設が進んでいます(2024年末頃の竣工予定)。
《介護・自立支援》
当社グループは、主に高齢者の自立度の改善や重度化防止及び加齢により身体機能が低下するフレイル予防や自立維持に向けて、歩行運動に対応した「下肢タイプ」、肘・膝・足首の関節運動に対応した「単関節タイプ」、体幹運動に対応した「腰タイプ」など様々な種類のHAL®自立支援用を展開しています。
(施設型サービスの展開)
HAL®を使用した脳・神経・筋系の機能改善を促すプログラム「Neuro HALFIT」を提供するロボケア事業は、個人向けの医療ヘルスケアサービス事業のハブ拠点として、当社グループ並びに各地域の事業パートナーとの協働により全国17箇所で展開しており、今後、更なる拠点拡大を計画しています。
(個人向け在宅サービス)
個人向けレンタルとして非接触型の在宅サービス「自宅でNeuro HALFIT」は、訪問型のサービス事業者とも連携して、自宅での機器のセットアップからプログラム実施までの対面サポートも推進しています。
≪予防・早期発見≫
心活動、脳活動、体温、SpO2、活動量など様々なヘルスケアデータを日常的に集積・解析・AI処理することで、不整脈や心房細動などのリスクを管理し、心筋梗塞や脳梗塞などを予防することを目的とした超小型バイタルセンサー「Cyvis(サイビス)」シリーズの製品化を進めています。また、「Cyvis」は、睡眠時の呼吸状態の計測というオプション機能も備えており、SAS(睡眠時無呼吸症候群)のリスクを簡便に高精度スクリーニングすることが可能となります。また、2021年8月に睡眠を見える化するヘルスケア・アプリ「熟睡アラーム」を開発・運営するC2社の連結子会社化とともに、当社グループとしてヘルスケア事業の強化を進めています。なお、Cyvisシリーズの次モデル「Cyvis-2」は2023年4月に医療機器認証の申請を行っています。
《生活・職場分野》
(介護支援用途)
2021年以降、英国ハンプシャー州で進む介護施設等での「HAL®腰タイプ介護・自立支援用」の運用をモデルケースとして、同州と協力して英国の他のエリアや欧州各国への展開を進めてまいります。
(作業支援、除菌・清掃用途)
世界最高水準のSLAM技術による高速自律走行を実現した次世代型清掃ロボット「CL02」は、エレベーター自動昇降やクラウド連携等によるビルのスマート化と管理コスト削減を実現すべく、ゼネコン等と協力してオフィスビルを中心に導入を進めています。また、モビリティ用途を拡張して、工場内での搬送ロボットとしても稼働しています。
研究・製品開発の状況
造影剤不要・非侵襲で末梢の血管や血液の高解像度3Dイメージングをリアルタイムに実現するLED光源方式(当社保有特許)の光音響イメージング装置「Acoustic X」は、次世代の医療用画像診断装置としての医療機器化を進めています。また、海外の著名な医療機関や研究施設においても、様々な適用に向けて研究が進められています。
また、当社グループは、高齢者や障がい者向けの自立支援ロボットとして、歩行機能を維持向上するための衣服型HAL、バイタル・環境情報を取得しつつ会話機能を備えてADL(日常生活動作)を維持向上するための見守り・コミュニケーションロボット、歩行困難な方のためのパーソナルモビリティロボットなどの研究開発を進めています。
なお、川崎市の殿町国際戦略拠点(キングスカイフロント)において、HAL®等のサイバニクス治療と再生医療・創薬の新たな医療技術の開発を推進するサイバニクス・メディカル・イノベーションベースA棟が竣工し、2023年1月よりパートナー企業の入居が進んでいます。
製品稼働状況について
医療用HAL®下肢タイプは、2023年6月末時点で臨床試験用も含め国内外あわせて444台(内、国内レンタル契約86台)が稼働中です。HAL®単関節タイプは、医療用の増加により、2023年6月末時点で598台が稼働中です。HAL®福祉用等の下肢タイプは、2023年6月末時点の稼働台数は351台となっています。また、HAL®腰タイプ介護・自立支援用は、2023年6月末時点で1,148台が稼働中です。HAL®腰タイプ作業支援用は、2023年6月末時点の稼働台数は407台となっています。また、清掃ロボット及び搬送ロボットは、2023年6月末時点において164台が稼働中です。
以上の結果、当第1四半期連結累計期間の経営成績は、売上収益は、米国での医療サービス売上及び欧州向けレンタル売上等が大幅に増加したため、1,045百万円(前年同期比39.1%増加)を計上し、売上総利益は566百万円(同15.4%増加)を計上しました。
研究開発費は前年度に引き続き新製品開発、臨床研究及び受託研究事業の実施により174百万円(同15.6%増加)を計上、その他の販売費及び一般管理費は前期のM&Aによる増加により766百万円(同34.8%増加)を計上しました。
その他の収益は、為替差益や受託研究事業収入などにより67百万円(同31.8%増加)を計上した結果、営業損失は308百万円(同73.0%増加)を計上しました。
また、金融収益は投資有価証券評価益や為替差益などにより369百万円、CEJファンドに係る損益712百万円、法人所得税費用は繰延税金費用などにより482百万円等を計上した結果、親会社の所有者に帰属する四半期利益は330百万円(同36.9%増加)を計上しています。
なお、当社は独自技術をもったスタートアップ企業との業務提携や資本提携を行っており、当該非上場株式についてIFRS第9号「金融商品」に基づき公正価値を算定しています。当第1四半期連結会計期間において、公正価値を算定した結果、投資有価証券評価益1,392百万円を「金融収益」及び「CEJファンドに係る損益」として計上しました。また、当該評価に関する繰延税金費用477百万円を「法人所得税費用」として計上、CEJファンドの外部投資家持分への振替額519百万円を計上した結果、「四半期利益」に与える影響額は396百万円となります。
(2)財政状態の分析
①
資産
当第1四半期連結会計期間末における総資産は、前連結会計年度比で2,095百万円増加し、52,282百万円となりました。これは主として、その他の流動資産が48百万円減少したものの、その他の金融資産(非流動)が1,562百万円、現金及び現金同等物が284百万円増加したことによるものです。
②
負債
当第1四半期連結会計期間末における負債は、前連結会計年度末比で1,708百万円増加し、9,912百万円となりました。これは主として、営業債務及びその他の債務が60百万円減少したものの、CEJファンドにおける外部投資家持分が1,297百万円、繰延税金負債が506百万円増加したことによるものです。
③
資本
当第1四半期連結会計期間末における資本は、前連結会計年度末比で387百万円増加し、42,370百万円となりました。これは、親会社の所有者に帰属する四半期利益の計上に伴う利益剰余金の増加等によるものです。
(3)キャッシュ・フローの状況
当第1四半期連結累計期間における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ284百万円増加し8,086百万円となりました。当第1四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当第1四半期連結累計期間における営業活動によるキャッシュ・フローは、395百万円の資金流出(前年同四半期連結累計期間は67百万円の資金流出)となりました。これは主に、税引前四半期利益767百万円、減価償却費及び償却費160百万円を計上したものの、CEJファンドに係る損益712百万円、金融収益369百万円を計上したことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当第1四半期連結累計期間における投資活動によるキャッシュ・フローは、30百万円の資金流出(前年同四半期連結累計期間は194百万円の資金流入)となりました。これは主に、投資の償還による収入5,000百万円、投資有価証券の売却による収入465百万円を計上したものの、投資の取得による支出5,000百万円、投資有価証券の取得による支出450百万円、有形固定資産の取得による支出40百万円を計上したことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当第1四半期連結累計期間における財務活動によるキャッシュ・フローは、639百万円の資金流入(前年同四半期連結累計期間は649百万円の資金流入)となりました。これは主に、CEJファンドにおける外部投資家からの払込による収入680百万円を計上したことによるものです。
(4)経営方針・経営戦略等
当第1四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(5)研究開発活動
当第1四半期連結累計期間の研究開発費の総額は174百万円です。
なお、当第1四半期連結累計期間において当社の研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
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