【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当第3四半期連結会計期間の末日現在において判断したものです。
(1)財政状態及び経営成績の状況
当社グループは、社会が直面する様々な課題を解決するため、「人」+「サイバー・フィジカル空間」(HCPS:Human-Cyber-Physical Space)を融合する「サイバニクス(人・AIロボット・情報系の融合複合)技術」を駆使して、人とテクノロジーが共生し相互に支援し合う「テクノピア・サポート社会」の実現、ロボット産業・IT産業につづく新産業「サイバニクス産業」の創出による未来開拓を推進しています。
当社が目指す「テクノピア・サポート社会」とは、人とテクノロジーが共生し相互に支援し合うことにより、高齢になっても健康が維持・管理され、長く培ってきた能力を思う存分発揮できる社会であり、疾患・事故・加齢により身体状態が低下し、障がいを抱えたとしても、より心身の自立度を高く保ち、より自由度の高い生活を送ることのできる社会です。当社グループは、人間の機能改善・再生・拡張・支援が可能なサイバニクス技術の社会実装を事業として推進することにより、「テクノピア・サポート社会」の実現と「サイバニクス産業」の創出を進めています。
事業推進の状況
《医療:サイバニクス治療》
当社グループは、世界初の装着型サイボーグHAL®を利用した脳・神経・筋系の機能改善・機能再生を促進するサイバニクス治療を、グローバルな標準治療とする取り組みを進めています。
(日本)
医療用HAL®「下肢タイプ」(両脚モデル)については、緩徐進行性の神経筋難病疾患に対する使用成績調査で高い有効性と安全性を示す結果が得られたことを踏まえ、令和4年度診療報酬改定において、DPC対象病院(難病医療拠点病院等の約8割)の入院患者に対しても医療用HAL®の診療報酬の算定が認められ、さらに診療報酬点数が増点されたことを受けて、医療用HAL®の国内での普及活動を進めています。今後、この使用成績調査結果を世界各国の保険収載などの手続きにも活用することで、有効な治療法が確立されていない進行性神経筋難病疾患にとっての標準治療化と、医療用HAL®のグローバル展開を加速してまいります。
また、2022年10月27日には、すでに承認済の進行性神経筋難病(8疾患)に加えて、HTLV-1関連脊髄症(HAM)および遺伝性痙性対麻痺の適応追加が承認されました。現在、診療報酬保険適用に係る手続きの準備を進めています。
医療用HAL®「下肢タイプ」(単脚モデル)の脳卒中片麻痺患者に対する医師主導治験については、本治験の評価ポイントとして最重要とされている臨床的な意義と主要評価項目の統計学的有意差について当局と協議しています。なお、本治験の有効性と安全性の評価結果は、諸外国での脳卒中患者に対する医療保険の適用申請にも有用なデータになると考えています。
また、2022年1月より筑波大学附属病院を中心に、小児脳性麻痺等に伴う運動姿勢障害を呈する患児の粗大運動能力の向上を目的とする医師主導治験が現在進行中です。
(米国)
医療サービス子会社のRISEヘルスケアグループ(RHG)社はカリフォルニア州南部で26拠点(買収時から10拠点増加)を展開しており、今後、同州北部にも進出を予定しています。当社のHAL®による革新的な医療技術との複合サービスは現在4拠点でトライアル展開しており、2023年1月より段階的に正式サービスへの移行を開始しています。
(EMEA:欧州や中東)
昨年度に続いて主要各国でのサイバニクス治療の普及が進んでおり、今年度は新たにトルコにHAL®シリーズが導入されました。
ドイツにおいては、公的医療保険の当局であるG-BA(ドイツ連邦共同委員会)により、脊髄損傷を対象とした公的医療保険適用を前提とした臨床試験のプロトコル骨子が公表され、今後臨床試験の準備に入ります。
(APAC:アジア太平洋)
2022年2月にAPACエリアの事業推進拠点として、マレーシアにCYBERDYNE MALAYSIA社を設立し、東南アジアを中心にインド・オーストラリア・台湾においてサイバニクス治療の普及を加速し、今年度は新たにシンガポール最大の医療機関であるシンガポール総合病院にてサイバニクス治療が開始しました。
マレーシアにおいては、政府系の従業員社会保障機構(SOCSO)との事業連携が更に強化され、SOCSOの被保険者に対してHAL®によるサイバニクス治療が普及する一方で、2022年6月にSOCSOは東南アジア最大の医療複合施設である「国立神経ロボット・サイバニクスセンター」の建設を開始しました(竣工は2024年末頃の予定)。
また、医療用HAL®単関節タイプにつき、マレーシア・タイ・オーストラリアに続いて、台湾でも医療機器承認が得られました。
《介護・自立支援》
当社グループは、主に高齢者の自立度の改善や重度化防止及び加齢により身体機能が低下するフレイル予防や自立維持に向けて、歩行運動に対応した「下肢タイプ」、肘・膝・足首の関節運動に対応した「単関節タイプ」、体幹運動に対応した「腰タイプ」など様々な種類のHAL®自立支援用を展開しています。神奈川県では、2019年の高齢者を対象としたHAL®腰タイプを活用した介護予防プログラムのパイロット研究における良好な結果を踏まえ、2020年からランダム化比較試験を進めるとともに、2022年10月から、神奈川県、神奈川県立保健福祉大学、慶應義塾大学と共同で、同プログラムを介護現場へ実装するための研究を開始しました。また長野県伊那市においても、HAL®腰タイプを活用し、高齢者等の身体機能の改善や生活意欲の向上を通じ、地域生活における健康増進および生活の質(QOL)向上を図る健康増進事業を開始するなど、自治体との協業を進めています。
(施設型サービスの展開)
HAL®を使用した脳・神経・筋系の機能改善を促すプログラム「Neuro HALFIT」を提供するロボケア事業は、 個人向けの医療ヘルスケアサービス事業のハブ拠点として、当社グループ並びに各地域の事業パートナーとの協働により全国18箇所で展開しており、今後、更なる拠点拡大を計画しています。
(個人向けサービス「自宅でNeuro HALFIT」の展開)
個人向けレンタルとして非接触型の在宅サービス「自宅でNeuro HALFIT」は、身体動作を指令する生体電位信号や姿勢情報等を可視化するHALモニターにより、装着者自身に対して視覚的なリアルタイム・フィードバックを行うとともに、サイバーダイン・クラウドでデータ連携することで、専門スタッフによる遠隔でのオンラインサポートを提供しています。また、訪問型のサービス事業者とも連携して、自宅での機器のセットアップからプログラム実施までの対面サポートも推進しています。
《予防・早期発見》
心活動、脳活動、体温、SpO2、活動量など様々なヘルスケアデータを日常的に集積・解析・AI処理することで、不整脈や心房細動などのリスクを管理し、心筋梗塞や脳梗塞などを予防することを目的とした超小型バイタルセンサー「Cyvis(サイビス)」シリーズの製品化を進めています。また、「Cyvis」は、睡眠時の呼吸状態の計測というオプション機能も備えており、SAS(睡眠時無呼吸症候群)のリスクを簡便に高精度スクリーニングすることが可能となります。また、2021年8月に睡眠を見える化するヘルスケア・アプリ「熟睡アラーム」を開発・運営するC2社の連結子会社化とともに、当社グループとしてヘルスケア事業の強化を進めています。なお、Cyvisシリーズの初モデル「Cyvis-1」は2022年4月に医療機器届出を行い、同年5月よりユーザー向けに試験提供を開始しています。
《生活・職場分野》
(介護支援用途)
2021年10月より英国ハンプシャー州の介護施設向けに「HAL®腰タイプ介護自立支援用」の出荷が開始し、今後はハンプシャー州との契約をモデルケースとして、同州と協力して英国の他のエリアや欧州各国への展開を進めてまいります。
(作業支援、除菌・清掃用途)
世界最高水準のSLAM技術による高速自律走行を実現した次世代型清掃ロボット「CL02」は、エレベーター自動昇降やクラウド連携等によるビルのスマート化と管理コスト削減を実現すべく、オフィスビルを中心に導入を進めています。
研究・製品開発の状況
造影剤不要・非侵襲で末梢の血管や血液の高解像度3Dイメージングをリアルタイムに実現するLED光源方式(当社保有特許)の光音響イメージング装置「Acoustic X」は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「医工連携イノベーション推進事業(開発・事業化事業)」で研究開発を進めつつ、次世代の医療用画像診断装置としての医療機器化を進めています。また、海外の著名な医療機関や研究施設においても、様々な適用に向けて研究が進められています。
また、当社グループは、高齢者や障がい者向けの自立支援ロボットとして、歩行機能を維持向上するための衣服型HAL、バイタル・環境情報を取得しつつ会話機能を備えてADL(日常生活動作)を維持向上するための見守り・コミュニケーションロボット、歩行困難な方のためのパーソナルモビリティロボットなどの研究開発を進めています。
なお、川崎市の殿町国際戦略拠点(キングスカイフロント)において、HAL®等のサイバニクス治療と再生医療・創薬の新たな医療技術の開発を推進するサイバニクス・メディカル・イノベーションベースA棟が竣工し、2023年1月より連携企業の入居が進行しています。
製品稼働状況について
医療用HAL®下肢タイプは、主にAPAC向けレンタルの増台により、2022年12月末時点で臨床試験用も含め国内外あわせて404台(内、国内レンタル契約82台)が稼働中です。HAL®単関節タイプは、医療用の増加により、 2022年12月末時点で557台が稼働中です。HAL®福祉用等の下肢タイプは、2022年12月末時点の稼働台数は347台となっています。また、HAL®腰タイプ介護・自立支援用は、2022年12月末時点で1,181台が稼働中です。HAL®腰タイプ作業支援用は、2022年12月末時点の稼働台数は419台となっています。また、清掃ロボット及び搬送ロボットは、2022年12月末時点において154台が稼働中です。
以上の結果、当第3四半期連結累計期間の経営成績は、売上収益は、米国での医療サービス売上及びアジア・欧州向けレンタル売上が大幅に増加したため、2,374百万円(前年同期比76.3%増加)を計上し、売上総利益は1,482百万円(同50.5%増加)を計上しました。
研究開発費は前年度に引き続き新製品開発、臨床研究及び受託研究事業の実施により494百万円(同5.5%減少)を計上、その他の販売費及び一般管理費は前期のM&Aによる増加により1,814百万円(同53.3%増加)を計上しました。
その他の収益は、受託研究事業収入などにより78百万円(同18.9%増加)を計上した結果、営業損失は749百万円(同14.2%増加)を計上しました。
また、金融収益は投資有価証券評価益や為替差益などにより694百万円、CEJファンドに係る損益199百万円、法人所得税費用は繰延税金費用などにより106百万円等を計上した結果、親会社の所有者に帰属する四半期利益は68百万円(前年同期590百万円の損失)を計上しています。
なお、当社は独自技術をもったスタートアップ企業との業務提携や資本提携を行っており、当該非上場株式についてIFRS第9号「金融商品」に基づき公正価値を算定しています。当第3四半期連結会計期間において、公正価値を算定した結果、投資有価証券評価益867百万円を「金融収益」として計上しました。また、当該評価に関する繰延税金費用151百万円を「法人所得税費用」として計上、CEJファンドの外部投資家持分への振替額127百万円を計上した結果、「四半期利益」に与える影響額は589百万円となります。
(2)財政状態の分析
①
資産
当第3四半期連結会計期間末における総資産は、前連結会計年度末比で1,700百万円増加し、51,166百万円となりました。これは主として、その他の金融資産(流動)が1,940百万円減少したものの、その他の金融資産(非流動)が3,264百万円、現金及び現金同等物が656百万円増加したことによるものです。
②
負債
当第3四半期連結会計期間末における負債は、前連結会計年度末比で1,560百万円増加し、7,576百万円となりました。これは主として、CEJファンドにおける外部投資家持分が1,330百万円、繰延税金負債が160百万円増加したことによるものです。
③
資本
当第3四半期連結会計期間末における資本は、前連結会計年度末比で140百万円増加し、43,590百万円となりました。これは、その他の資本の構成要素の減少等によるものです。
(3)キャッシュ・フローの状況
当第3四半期連結累計期間における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ656百万円増加し6,334百万円となりました。当第3四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当第3四半期連結累計期間における営業活動によるキャッシュ・フローは、122百万円の資金流入(前年同四半期連結累計期間は208百万円の資金流出)となりました。これは主に、金融収益694百万円を計上したものの、税引前四半期利益112百万円、減価償却費及び償却費431百万円を計上したことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当第3四半期連結累計期間における投資活動によるキャッシュ・フローは、800百万円の資金流出(前年同四半期連結累計期間は725百万円の資金流出)となりました。これは主に、投資の償還による収入14,500百万円、定期預金の払戻による収入4,500百万円を計上したものの、投資の取得による支出15,000百万円、投資有価証券の取得による支出3,009百万円を計上したことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当第3四半期連結累計期間における財務活動によるキャッシュ・フローは、1,265百万円の資金流入(前年同四半期連結累計期間は1,268百万円の資金流入)となりました。これは主に、CEJファンドにおける外部投資家からの払込による収入1,380百万円を計上したことによるものです。
(4)経営方針・経営戦略等
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(5)研究開発活動
当第3四半期連結累計期間の研究開発費の総額は494百万円です。
なお、当第3四半期連結累計期間において当社の研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
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