【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況当連結会計年度(2022年1月1日〜2022年12月31日)における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の再拡大、ウクライナ情勢の悪化、原料価格の高騰、為替の急激な変動等により、引き続き先行きの不透明な状況が続いております。
当社グループは、「Every life deserves attention(すべての命に、光を)」を経営理念として掲げ、そのほとんどが希少疾患に属する遺伝子疾患に対して画期的な新薬を提供することを目標とし、研究開発を行っております。技術的基盤となるCRISPR-GNDM®プラットフォームを元に、世界初のCRISPRを用いた遺伝子制御治療を開発する会社として2016年の設立から7期目に当たる当連結累計期間にいたるまで、リーディングカンパニーとして最先端の研究をリードし続けてまいりました。この成果を結実させるべく当連結累計期間は臨床試験に向けた取り組みを継続しております
遺伝子治療において2022年は大きな潮目の変化があった年として記憶されると感じています。2010年代から大きな成果を上げてきた遺伝子治療ですが、筋ジストロフィーなどの全身性疾患へのフロントラインの拡大とサイエンティフィックな理解の深化によって、課題も明らかになってきました。2021年後半にFDAが開催したCTGTAC(Cellular, Tissue and Gene Therapies Advisory Committee)を通じて安全性に関する論点が議論され、既存のベクターシステムの信頼性は完全ではないことを業界全体で確認するにいたりました。一方で、近年開発の進んだ組織特異的なAAVベクターが実用化に向けて大きな技術革新を遂げ、利用が現実的な領域まで到達してきました。このような状況下では、既に臨床試験後期にある場合や承認直前の場合のパイプラインは既存のAAVベクターからの変更はできないため、そのまま上市を押し切ることしかできませんが、当社のようにこれから臨床に入っていこうとするグループは、現状のベクターシステムを維持するのか、新しいベクターシステムに切り替えていくのかという大きな決断を迫られることになり、当社は新しいベクターシステムへの変更を判断しました。この判断は、将来の当社のプロダクトの投与を受ける患者様のベネフィットによるもので、より少ない用量での投与、よりオフターゲット臓器への送達の低下は、安全性、薬効、製造コスト、ひいては薬価においてメリットをもたらします。ベクターシステムを含み、プロダクトの構成を一旦ロックインした場合、今後数年にわたって臨床試験を行い、その後何年もの間臨床の現場で使われることを考えれば、最善の選択をしておくことが当社の使命であると考えています。このベクターシステムの変更に伴い、開発のタイムラインは約1年後ろ倒しになりましたが、より長期にわたっての影響を考えて、当該意思決定に至りました。現在、新しいベクターシステムによる評価をマウス及びサルで行っております。MDL-101は新ベクターにおける評価結果を受けて、2023年3月においてFDAに対してPre-IND申請ファイリングを行いました。MDL-104では、マウスモデルにおいて顕著なTau抑制効果を確認できたことから、サルにおける評価を行っております。こちらも評価結果の解析を経て、その後の開発への判断を行うことになります。また、並行して臨床に進む場合の対象疾患選定についての議論を進めており、複数のタウオパチー専門家とのディスカッションを行っております。CRISPR-GNDM®の作用機序、対象となる病態のメカニズム、前臨床及び臨床における評価方法などの観点から、現状ではアルツハイマー型及び前頭側頭型認知症が適切であるとの判断を行っており、その前提にしたがって準備を開始しております。MDL-205はこれまでエーザイ社と共同研究を行っておりました。ライセンス契約に関するオプションの行使をエーザイ社が行わず、共同研究を終了することになりましたが、当社は良好な研究結果であると判断し、既にMDL-205に関する権利の再取得の意向を持っており、共同研究の成果の移転の準備を進めております。当該プログラムのターゲット、進捗状況、今後の開発計画については、当該再取得の契約が締結され次第ご報告させていただく方針です。特許面においては、当決算期内に当社とパートナーであるアステラス社との間でデュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療薬開発を目指して共同出願された「ユートロフィン遺伝子を標的とした筋ジストロフィーの治療法」が5月に日本で、10月に米国で特許発効されております。また日本では、12月に当社が東京大学からライセンスを受けている拡張PAM Cas9分子についての特許査定を受けております。当連結会計年度の経営成績等において新型コロナウイルス感染症による影響は限定的と考えております。
以上の結果、事業収益は40,500千円(前期は事業収益1,100千円)、営業損失は2,063,194千円(前期は営業損失1,239,444千円)、経常損失は1,995,790千円(前期は経常損失1,231,299千円)、親会社株主に帰属する当期純損失は2,702,709千円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失738,956千円)となりました。
なお、当社グループは、遺伝子治療薬開発事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。
(流動資産)当連結会計期間末の流動資産の残高は、前連結会計年度末に比べて2,005,815千円減少し、3,061,228千円となりました。これは主に、現金及び預金が2,003,031千円減少したためであります。(固定資産)当連結会計年度末の固定資産の残高は、前連結会計年度末に比べて933,487千円減少し、68,605千円となりました。これは主に、減損損失に伴い有形固定資産が223,784千円及び無形固定資産が705,003千円減少したためであります。(流動負債) 当連結会計年度末の流動負債の残高は、前連結会計年度末に比べて38,877千円減少し、141,840千円となりました。これは主に、その他が27,496千円減少したためであります。(固定負債)当連結会計年度末の固定負債の残高は、前連結会計年度末に比べて292,446千円減少し、46,760千円となりました。これは主に、減損損失に伴う前受金の取り崩しにより長期前受金が285,559千円減少したためであります。(純資産)当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べて2,607,979千円減少し、2,941,232千円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純損失が2,702,709千円発生したためであります。
② キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて2,003,031千円減少し、当連結会計年度末には2,933,162千円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動の結果、使用した資金は1,895,773千円(前連結会計年度使用した資金は747,466千円)となりました。これは主に、減損損失996,800千円が発生した一方で、税金等調整前当期純損失2,707,031千円によるものであります。(投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動の結果、使用した資金は185,719千円(前連結会計年度獲得した資金は171,563千円)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出197,287千円によるものであります。(財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動の結果、獲得した資金は63,683千円(前連結会計年度獲得した資金は72,633千円)となりました。これは主に、新株予約権の行使による株式の発行による収入60,905千円によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績当社グループは生産を行っておりませんので、記載を省略しております。
b.受注実績当社グループの事業による共同研究は受注形態をとっておりませんので、記載を省略しております。
c.販売実績当社グループは、遺伝子治療薬開発事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。
セグメントの名称
金額(千円)
前年同期比(%)
遺伝子治療薬開発事業
40,500
3,581.8
合計
40,500
3,581.8
(注)
最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであ ります。
相手先
第6期連結会計年度(自 2021年1月1日至 2021年12月31日)
第7期連結会計年度(自 2022年1月1日至 2022年12月31日)
金額(千円)
割合(%)
金額(千円)
割合(%)
アステラス製薬株式会社
1,100
100.0
-
-
エーザイ株式会社
-
-
40,500
100.0
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社が判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要とする箇所があります。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りとは異なる場合があります。当社グループの連結財務諸表の作成における重要な会計方針及び見積りは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 及び (重要な会計上の見積り)」に記載しております。なお、新型コロナウイルス感染症の影響の仮定に関する情報は「第5 経理の状況 注記事項 (追加情報)」に記載のとおりであります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容経営成績及び財政状態の分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
③ 経営成績に重要な影響を与える要因について経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2.事業等のリスク」に記載のとおりであります。
④ 資本の財源及び資金の流動性当社グループの資金の状況につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。当社グループは、事業上必要な資金を手許資金で賄う方針でありますが、事業収益から得られる資金だけでなく、株式市場からの必要な資金の獲得や銀行からの融資、補助金等を通して、安定的に開発に必要な資金調達の多様化を図ってまいります。資金の流動性については、資産効率を考慮しながら、現金及び現金同等物において確保を図っております。資金需要としては、継続して企業価値を増加させるために、主に継続した研究開発や必要な設備投資資金となります。