【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
当第2四半期連結累計期間における世界経済は、ウクライナ情勢等の地政学的緊張による原材料、エネルギー価格の高止まり、インフレ抑制のための各国中央銀行による利上げや中国経済回復の鈍化などが下押し要因となり、減速感が強まる状況となりました。米国経済は、これまでの大幅な金利引き上げの効果が経済全般に広がり、来年前半には景気後退に陥る可能性が強まる一方、労働需給の引き締まりからインフレも粘り強く、政策金利は年内据え置かれる見通しとなっております。中国経済については、不動産部門の調整が長期化し景気減速感が強まる一方、インフラ投資やサービス消費が景気を下支えし、景気減速は緩やかなペースで進むと見込まれています。日本経済もサービス消費やインバウンド需要の復調が続くものの海外経済の減速が外需を下押し、今年度後半は低成長となる見通しであります。
このような経済状況の中、当第2四半期連結累計期間においては、自動車生産における半導体不足の緩和が世界的に進み、受注量が回復したことで、当社グループの業績も回復基調が鮮明になりました。アジアにおいては中国市場での日系自動車会社の現地メーカーとの競争激化等の影響を受けて苦戦を強いられましたが、全体的にはエネルギー価格等の高騰影響の価格転嫁が順調に推移したことや、また円安進行による為替差益の計上等も寄与し、営業損益、経常損益、当期損益とも黒字を計上することとなりました。また受注が回復する中でも引き続き効率的な生産体制づくり、社内の遊休設備の活用等による設備投資の抑制、電動車部品に強い顧客との新規取引や取引拡大等の事業体質強化策にも取り組んで参りました。
当社グループでは、当連結会計年度より2030年を目標年度とする長期経営計画である10年ビジネスプランと、その最初の3年間のマイルストーンとなる2224中期経営計画を推進しております。2224中期経営計画においては自動車の電動化の加速やカーボンニュートラルなどの外部環境変化を踏まえ、「低コストで生産性の高いものづくりの確立」「生産時のCO2排出量の削減」「電動車向け部品中心の事業ポートフォリオへの転換」を戦略の柱に据えて、売上高の確保、生産性の向上、稼ぐ力の強化に取り組んでおります。加えて今年6月には10年ビジネスプランの財務戦略を策定し、既に公表済の収益目標に加え、自己資本比率40%、配当性向35%、設備投資1,400億円、ROE9%達成を10年ビジネスプラン期間における4本柱の財務目標として掲げております。
当第2四半期連結累計期間の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
①財政状態
(資産)
当第2四半期連結会計期間末の総資産は、143,630百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,561百万円の増加となりました。流動資産は63,627百万円で、前連結会計年度末に比べ2,327百万円増加となり、その主な要因は、現金及び預金が2,618百万円、棚卸資産が774百万円減少した一方、売上債権が5,146百万円増加したことによるものです。固定資産は80,002百万円で、前連結会計年度末に比べ4,233百万円の増加となり、その主な要因は、有形固定資産が3,260百万円、その他に含まれる繰延税金資産が801百万円増加したことによるものです。
(負債)
当第2四半期連結会計期間末の負債は、83,043百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,623百万円の増加となりました。流動負債は60,996百万円で、前連結会計年度末に比べ1,719百万円増加となり、その主な要因は、短期借入金が3,235百万円減少した一方、仕入債務が2,566百万円、その他に含まれる設備債務が557百万円、同じく未払金が441百万円、未払費用が350百万円、未払消費税等が392百万円、預り金が124百万円増加したことによるものです。固定負債は22,046百万円で、前連結会計年度末に比べ904百万円の増加となり、その主な要因は、長期借入金が840百万円増加したことによるものです。
(純資産)
当第2四半期連結会計期間末の純資産は、60,587百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,937百万円の増加となりました。その主な要因は、利益剰余金が770百万円、為替換算調整勘定が3,265百万円増加したことによるものです。
以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末41.24%から42.10%となりました。
②経営成績
(売上高)
売上高は、半導体供給不足の緩和が進み、各自動車メーカーの生産増加を受け、ダイカスト事業日本及び北米での受注量が回復したことに加え、円安進行の影響もあり、77,750百万円(前年同四半期比16.9%増)となりました。
(売上原価、販売費及び一般管理費、営業利益)
売上原価は、受注量回復に伴う生産回復と原材料の地金仕入単価、エネルギー価格などの諸コスト上昇の影響により前第2四半期連結累計期間から8,811百万円増加し、71,397百万円(前年同四半期比14.1%増)となりました。
販売費及び一般管理費は、前第2四半期連結累計期間から603百万円増加し、5,752百万円(前年同四半期比11.7%増)となりました。
以上の結果、営業利益は601百万円(前年同四半期は1,198百万円の営業損失)となりました。
(経常利益)
営業外収益は、732百万円(前年同四半期比0.1%増)と前年同四半期と同水準で推移いたしました。営業外費用は、前第2四半期連結累計期間から40百万円増加し、394百万円(前年同四半期比11.4%増)となりました。これは主に、支払利息が39百万円増加したことによるものです。
以上の結果、経常利益は938百万円(前年同四半期は820百万円の経常損失)となりました。
(特別利益)
特別利益は、前第2四半期連結累計期間から5百万円減少し、119百万円(前年同四半期比4.1%減)となりました。これは主に、投資有価証券売却益が34百万円発生し、補助金収入が3百万円増加した一方、固定資産売却益が43百万円減少したことによるものです。
(特別損失)
特別損失は、前第2四半期連結累計期間から465百万円増加し、529百万円(前年同四半期比731.0%増)となりました。これは主に、中国事業関連損失が422百万円発生したことによるものです。
(親会社株主に帰属する四半期純利益)
当第2四半期連結累計期間の親会社株主に帰属する四半期純利益は900百万円(前年同四半期は830百万円の親会社株主に帰属する四半期純損失)となりました。以上の結果、当第2四半期連結累計期間における1株当たり四半期純利益は34円82銭(前年同四半期は1株当たり四半期損失32円08銭)となりました。
(EBITDA)
当第2四半期連結累計期間のEBITDA(営業利益+減価償却費)は6,885百万円(前年同四半期比37.2%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
(ダイカスト事業 日本)
日本自動車市場では、半導体供給の安定化により自動車の生産が回復した影響で受注量が回復し売上高は31,282百万円(前年同四半期比11.3%増)となりました。収益面においては、エネルギー価格等の高止まりはあったものの、受注量回復に伴う生産回復の影響により、セグメント利益は181百万円(前年同四半期はセグメント損失423百万円)となりました。
(ダイカスト事業 北米)
北米自動車市場では、半導体供給の安定化により自動車の生産が回復した影響で受注量が回復し売上高は22,971百万円(前年同四半期比35.0%増)となりました。収益面においては、労務費等の上昇による製造コスト増加はあったものの、受注量回復に伴う生産回復の影響により、セグメント利益693百万円(前年同四半期はセグメント損失713百万円)となりました。
(ダイカスト事業 アジア)
アジア自動車市場では、中国市場において当社主要顧客の販売不振による受注量の減少影響はありましたが、インド工場における新規製品の量産が開始したことによる受注量の増加により、売上高は16,302百万円(前年同四半期比3.9%増)となりました。収益面においては、中国工場における受注量減少に伴う生産減少とインド工場における一部製品の生産が安定しないことに伴うコスト高の影響により、セグメント損失988百万円(前年同四半期はセグメント損失250百万円)となりました。
(アルミニウム事業)
アルミニウム事業においては、販売重量は前年同期比3.6%減となりました。売上高はアルミニウム市況下落の影響で3,509百万円(前年同四半期比10.5%減少)となりました。収益面においては、販売重量の減少と原材料費の高騰等の影響を受け、セグメント利益88百万円(前年同四半期比42.1%減)となりました。
(完成品事業)
完成品事業においては、主要販売先である半導体関連企業のクリーンルーム物件等の受注が増加し、売上高は3,684百万円(前年同四半期比105.4%増)となりました。収益面においては、売上高の増加もあり、セグメント利益は487百万円(前年同四半期比337.7%増)と安定的な利益を確保しております。
(2) キャッシュ・フローの状況
当第2四半期連結累計期間における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ3,041百万円減少し、当第2四半期連結会計期間末には9,949百万円となりました。
当第2四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により増加した資金は、7,442百万円(前年同四半期は4,265百万円の増加)となりました。これは主に、売上債権の増加額4,108百万円等の資金減少要因に対し、税金等調整前四半期純利益529百万円、減価償却費6,284百万円、棚卸資産の減少額1,466百万円、仕入債務の増加額2,007百万円、未払金の増加額396百万円、未払消費税等の増加額456百万円等の資金増加要因があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により減少した資金は、6,105百万円(前年同四半期は4,457百万円の減少)となりました。これは主に、定期預金の預入による支出412百万円、有形固定資産の取得による支出5,678百万円等の資金減少要因があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により減少した資金は、4,612百万円(前年同四半期は1,091百万円の減少)となりました。これは主に、短期借入れによる収入54,328百万円、長期借入れによる収入6,100百万円の資金増加要因に対し、短期借入金の返済による支出57,739百万円、長期借入金の返済による支出6,489百万円の資金減少要因があったことによるものであります。
(3) 2040年ビジョン/10年ビジネスプラン/中期経営計画
自動車産業においては今、カーボンニュートラルへの対応やパワートレインの電動化、モビリティとしての自動車の役割など、さまざまな変化が速いスピードで進んでいます。自動車関連のダイカスト事業を主力とする当社グループは、こうした外部環境の変化を変革のチャンスと捉え、2040年における当社のありたい姿を定めた「2040年ビジョン」、2030年戦略目標を定めた「10年ビジネスプラン」及びその最初の3年間のマイルストーンとなる2024年度を最終年度とした「2224中期経営計画」(計画期間2022年度~2024年度)に沿って各施策を推進しております。
1.期待を超える2040
当社グループは収益力の向上に向けて、生産性改善、リーンな生産体制の構築を推進しており、各工程の様々なムダやロスの削減による収益体質強化を図っております。また、リーンな生産体制の構築のため、良品を効率的に生産するための仕組みをつくり、徹底した合理化、省人化生産体制を追求しています。改善や検査作業の自動化、からくり活用による工夫などでムダな工程や作業内容を見直し、生産性向上と原価低減を図るとともに、今後の価格競争に勝ち抜く金型原価の実現を目指します。こうした施策取り組みの結果としての2024年度営業利益目標を65億円、営業利益率目標を3.8%としています。また環境ロードマップに沿ってCO2削減活動に取り組み、CO2排出量総量の削減目標(2013年度比)を2024年度−29%、2030年度−50%に設定しております。
2.軽量化で地球の未来に貢献する
自動車の電動化シフトの急速な進展を踏まえ、当社グループは従来のパワートレイン系部品に加え、電動車搭載部品の受注・量産の拡大、足回り部品やボディ・シャーシ等の車体系部品への進出とその基盤となる技術開発に取り組みます。電動車搭載部品の売上高に占める割合については、2025年度33%、2027年度45%、2030年度55%を目指すとともに、顧客基盤についてもこれまでの主要なお客様との関係を維持しつつ電動車に強い顧客との取引拡大を進めております。
3.Ahrestyで良かった!を実現する
主要顧客からの最上位評価獲得、従業員エンゲージメントの向上・ダイバーシティの実現を目指します。経営幹部の多様化、従業員及び管理職の女性比率向上においては、ダイバーシティ&インクルージョンに対する理解を深める意識改革、多様な人材が活躍できる職場の拡大、人事の戦略的運営とキャリア支援の実施を目指します。
4.技術探求を続け、唯一を生み出す
製品ポートフォリオシフトを実現するために、製品開発のデジタルトランスフォーメーションによって開発リードタイムを短縮するなど技術開発力を強化し、市場の変化やお客様のニーズにいち早く応えていきます。工法・技術・素材の各分野で将来の事業に貢献する先駆的な技術探求を続け、新規需要の創出を図ります。また、製品製造の際のCO2排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルダイカストの開発に挑戦していくことで地球環境に貢献するとともに、当社の競争力向上を目指します。
(4) 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当第2四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略について重要な変更はありません。
当社グループでは、引き続き自動車産業の環境変化を変革のチャンスとしてとらえながら、軽量化への貢献、電動化に向けた事業ポートフォリオのシフトを進めながら、リーンな工場経営を確立し、今後の収益性改善に一層努めてまいります。
(5) 会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(6) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第2四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(7) 研究開発活動
当第2四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は、325百万円であります。
なお、当第2四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(8)経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの主要事業であるダイカスト事業を取り巻く全世界の自動車需要については、今後も中国・新興国を中心に成長が続くと予測されております。一方で環境規制が各国・地域で強化されていくため、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車が増加し、更には電気自動車や燃料電池車という全く内燃機関を使わない車へのシフトも必至と考えております。電気自動車については、技術革新によって電池の蓄電能力や大きさと価格の改善、充電時間や充電インフラの整備といった普及に向けた課題への対応が急速に進展しており、特に自動車の電動化を国の重点政策として掲げる中国においては地場新興メーカーも加わった電動化シフトが急速に進んでおります。ただし、その他の地域においては少なくとも2030年ごろまでは従来型とハイブリッド車やプラグインハイブリッド車などの内燃系エンジン搭載車も引き続き需要の拡大が見込まれ、自動車の電動化は地域によって異なるスピードで進行していくものと予想しています。
自動車の電気シフトが急速に進む状況下、今後も小型化や車体構造の変更のほか、軽量化材料への転換が一層進むものと考えられておりますが、当社グループでは軽量でリサイクル性に優れ、設計自由度や生産性に優れるアルミダイカストが車の軽量化分野で大きく貢献できると考えております。
また、エンジンやトランスミッション以外の車体や足回りなどの軽量化ニーズにも応えるために、専門チームを立ち上げ営業活動と市場調査を行っており、顧客の求める軽量化対象部品やその要求機能を理解し、それらに対応するものづくり力の強化に繋げ、当社グループの専門分野の拡大と将来の需要構造変化への準備を進めております。
(9)資本の財源及び資金の流動性についての分析
①資金需要及び財務政策
当社グループの資金需要のうち主なものは、運転資金及び事業拡大のための設備投資資金、配当金の支払等であります。これらの資金需要に対して当社グループでは、主として金融機関からの借入金と自己資金(手元資金と営業活動によって獲得した資金)により事業活動に必要な運転資金や将来の設備投資等に向けた充分な資金を確保しております。
資金調達手段としては、金融機関からの短期借入金、長期借入金で行っており、短期借入金については運転資金として月次の売上高の2分の1程度を調達する方針としております。長期借入金については、設備投資のための長期資金として3年~5年の借入期間で調達を行っております。また、短期借入金については、月次の資金繰り状況に応じ当座借越限度額の範囲内で反復利用を行い、長期借入金については、新規調達を行う一方で約定計画に基づき返済を行っております。
②資金の流動性
当社及び国内連結子会社はCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入しており、国内のグループ内資金を当社が一元管理しております。各グループ会社において創出したキャッシュ・フローを当社に集中することで資金の流動性を確保し、また、機動的かつ効率的にグループ内で配分することにより、金融負債の極小化を図っており、余剰資金が生じた場合には有利子負債の返済に充てる方針であります。