【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
当第3四半期連結累計期間における世界経済は、ロシアのウクライナ侵攻長期化を背景としたエネルギー・食料価格の高止まり、米国を中心とした労働需給逼迫とインフレの深刻化、中国におけるゼロコロナ政策とその解除の影響等から不透明感が一層増す状況となりました。また各国中央銀行は金融引き締めによるインフレ抑制に注力し、米国においては中央銀行FRBによる政策金利の引き上げが続いております。先行きについては、エネルギー・食料価格の高止まりによるインフレと金利上昇を受けて欧米経済は景気後退局面入りが見込まれています。ゼロコロナ政策で停滞した中国経済は、ゼロコロナ解除によって今後持ち直していくものの、当面は感染の拡大、欧米経済低迷を受けた輸出減速の影響が続き、景気回復は緩慢になると見込まれています。我が国経済については物価高、海外経済減速が下押し要因となるものの、感染懸念後退によるサービス消費と水際対策緩和によるインバウンド需要の回復が押し上げ要因となり、プラス成長を維持すると見込まれています。
このような状況に対して、当社グループでは各国・地域の自動車会社向け販売量の変動に合わせた操業日数や人員体制等の機動的な調整、社内の遊休設備の活用等による設備投資の抑制等による生産体制の効率化等に継続的に取り組んでおります。当第3四半期連結会計累計期間における当社グループは、世界的な半導体等の供給不足や中国ゼロコロナ政策による供給網の混乱で自動車生産が下振れした結果受注量が減少し、加えてエネルギー価格等の高騰による生産コスト増加の影響を吸収しきれず、営業赤字の計上を余儀なくされております。ただし、当第3四半期連結会計期間においては半導体不足の緩和、中国ロックダウン(22年4~5月)解除後の自動車生産回復によって当社業績は反転しており、今後も黒字基調は継続すると予想しております。
当社グループでは、当連結会計年度より2030年を目標年度とする長期経営計画である10年ビジネスプランと、その最初の3年間のマイルストーンとなる2224中期経営計画を推進しております。2224中期経営計画においては自動車の電動化の加速やカーボンニュートラルなどの外部環境変化を踏まえ、「低コストで生産性の高いものづくりの確立」「生産時のCO2排出量の削減」「電動車向け部品中心の事業ポートフォリオへの転換」を戦略の柱に据えて、売上高の確保、生産性の向上、稼ぐ力の強化に取り組んでおります。
当第3四半期連結累計期間の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
①財政状態
(資産)
当第3四半期連結会計期間末の総資産は140,228百万円となり、前連結会計年度末に比べ8,926百万円の増加となりました。流動資産は58,336百万円で、前連結会計年度末に比べ4,917百万円の増加となり、その主な要因は、現金及び預金が1,718百万円減少した一方、売上債権が3,682百万円、棚卸資産が2,573百万円増加したことによるものです。固定資産は81,891百万円で、前連結会計年度末に比べ4,008百万円の増加となり、その主な要因は、有形固定資産が3,706百万円増加したことによるものです。
(負債)
当第3四半期連結会計期間末の負債は80,715百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,979百万円の増加となりました。流動負債は57,373百万円で、前連結会計年度末に比べ4,111百万円の増加となり、その主な要因は、短期借入金が1,738百万円減少した一方、仕入債務が2,628百万円、1年内返済予定の長期借入金が2,324百万円、設備債務が367百万円、未払費用が842百万円増加したことによるものです。固定負債は23,342百万円で、前連結会計年度末に比べ1,131百万円の減少となり、その主な要因は、長期借入金が1,155百万円減少したことによるものです。
(純資産)
当第3四半期連結会計期間末の純資産は59,512百万円となり、前連結会計年度末に比べ5,946百万円の増加となりました。その主な要因は、利益剰余金が770百万円減少した一方、為替換算調整勘定が6,621百万円増加したことによるものです。
以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末40.69%から42.35%となりました。
②経営成績
(売上高)
当第3四半期連結累計期間の売上高は、世界的な半導体不足や、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う部品調達難の長期化により、主要顧客である自動車メーカーのグローバルでの自動車生産台数は未だ本格回復には至らないものの、当第3四半期において徐々に回復の兆しが見え始め、当社グループの受注量も前年同四半期比では回復基調で推移し、アルミ地金市況の上昇と円安影響もあり104,379百万円(前年同四半期比24.7%増)となりました。
(売上原価、販売費及び一般管理費、営業損失)
売上原価は、原材料、副資材、エネルギー、物流などの諸コスト上昇の影響により、前第3四半期連結累計期間から18,285百万円増加し、97,056百万円(前年同四半期比23.2%増)となりました。
販売費及び一般管理費は、前第3四半期連結累計期間から126百万円増加し、7,789百万円(前年同四半期比1.7%増)となりました。
以上の結果、営業損失は466百万円(前年同四半期は2,721百万円の営業損失)となりました。
(経常損失)
営業外収益は前第3四半期連結累計期間から131百万円増加し、898百万円(前年同四半期比17.2%増)となりました。これは主に、受取配当金が59百万円、雇用調整助成金が69百万円減少した一方で、為替差益が253百万円増加したことによるものです。
営業外費用は前第3四半期連結累計期間から138百万円増加し、551百万円(前年同四半期比33.5%増)となりました。これは主に、支払利息が129百万円増加したことによるものです。
以上の結果、経常損失は118百万円(前年同四半期は2,367百万円の経常損失)となりました。
(特別利益)
特別利益は前第3四半期連結累計期間から18百万円増加し、189百万円(前年同四半期比11.0%増)となりました。これは主に、補助金収入が45百万円減少した一方、固定資産売却益が64百万円増加したことによるものです。
(特別損失)
特別損失は前第3四半期連結累計期間から4,161百万円減少し、158百万円(前年同四半期比96.3%減)となりました。これは主に、前年同四半期において減損損失4,210百万円が発生したことによるものです。
(親会社株主に帰属する四半期純損失)
当第3四半期連結累計期間の親会社株主に帰属する四半期純損失は475百万円(前年同四半期は6,817百万円の親会社株主に帰属する四半期純損失)となりました。
以上の結果、当第3四半期連結累計期間における1株当たり四半期純損失は18円36銭(前年同四半期は1株当たり四半期純損失264円49銭)となりました。
(EBITDA)
当第3四半期連結累計期間のEBITDA(営業損失+減価償却費)は9,155百万円(前年同四半期比43.3%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
(ダイカスト事業 日本)
日本自動車市場では、半導体等の部品供給不足に伴う自動車減産が未だ続いているものの、当社の受注量は前年同四半期比において回復基調で推移したことに加え、アルミ地金市況上昇影響もあり売上高は43,986百万円(前年同四半期比15.9%増)となりました。収益面においては、エネルギー、物流などの諸コスト上昇の影響があったものの、受注量の回復に加え、生産体制の効率化・原価低減活動とともに原材料価格転嫁も進んだことから、セグメント利益163百万円(前年同四半期はセグメント損失1,306百万円)となりました。四半期ごとの推移では、第1四半期は中国でのロックダウンによる供給網の混乱により自動車メーカーの生産調整の影響を受け大幅な減少がみられましたが、第2四半期に続き当第3四半期においても受注量が回復し収益面でも黒字幅が拡大しております。
(ダイカスト事業 北米)
北米自動車市場では、依然として半導体不足の影響によるサプライチェーンの混乱、一時的な受注量の乱高下の影響により、12月決算(当第3四半期は7月~9月)であるメキシコ工場の受注量は前年同四半期比で減少したものの、米国工場の受注量は徐々に回復してきたことに加え、アルミ地金市況上昇及び円安影響もあり売上高は26,809百万円(前年同四半期比28.8%増)となりました。収益面においては、構造改革・原価低減活動の定着効果が見られたものの、受注量が本格回復に至っていない中、エネルギー費、労務費等の上昇に伴う生産コストの増加により、セグメント損失926百万円(前年同四半期はセグメント損失1,048百万円)となりました。
(ダイカスト事業 アジア)
アジア自動車市場では、中国における大幅な自動車関連の減税措置や手数料の引き下げ効果もあり、自動車販売台数に回復の兆しが見え始めていた中、12月決算である中国工場においては、新型コロナウイルス感染症による上海ロックダウンの影響により一時的に受注量が減少しましたが、当第3四半期(7月~9月)において受注量は徐々に回復し、アルミ地金市況の上昇影響もあり売上高は24,981百万円(前年同四半期比36.7%増)となりました。収益面においては、受注量の回復によりセグメント利益23百万円(前年同四半期はセグメント損失765百万円)を確保しました。
(アルミニウム事業)
アルミニウム事業においては、販売重量は前年同期比では3.0%増となりました。金額面は、アルミ地金市況の上昇により、売上高は6,027百万円(前年同四半期比37.5%増)となりました。収益面においては、アルミ地金市況の上昇に伴う売上高の増加と原価低減活動等が寄与し、セグメント利益235百万円(前年同四半期比16.9%増)となりました。
(完成品事業)
完成品事業においては、主要販売先である半導体関連企業のクリーンルーム物件等の受注が増加したことで、売上高は2,574百万円(前年同四半期比13.0%増)となりました。収益面においては、セグメント利益は157百万円(前年同四半期比15.1%減)となり、個別受注物件による採算性の相違はありますが安定的な利益を確保しております。
(2) 2040年ビジョン/10年ビジネスプラン/中期経営計画
自動車産業においては今、カーボンニュートラルへの対応やパワートレインの電動化、モビリティとしての自動車の役割など、さまざまな変化が速いスピードで進んでいます。自動車関連のダイカスト事業を主力とする当社グループは、こうした外部環境の変化を変革のチャンスと捉え、2040年における当社のありたい姿を定めた「2040年ビジョン」、2030年戦略目標を定めた「10年ビジネスプラン」及びその最初の3年間のマイルストーンとなる2024年度を最終年度とした「2224中期経営計画」(計画期間2022年度~2024年度)に沿って各施策を推進しております。
1.期待を超える2040
当社グループは収益力の向上に向けて、生産性改善、リーンな生産体制の構築を推進しており、各工程の様々なムダやロスの削減による収益体質強化を図っております。また、リーンな生産体制の構築のため、良品を効率的に生産するための仕組みをつくり、徹底した合理化、省人化生産体制を追求しています。改善や検査作業の自動化、からくり活用による工夫などでムダな工程や作業内容を見直し、生産性向上と原価低減を図るとともに、今後の価格競争に勝ち抜く金型原価の実現を目指します。こうした施策取り組みの結果としての2024年度営業利益目標を65億円、営業利益率目標を3.8%としています。また環境ロードマップに沿ってCO2削減活動に取り組み、CO2排出量原単位の削減目標(2013年度比)を2024年度−13%、2030年度−50%に設定しております。
2.軽量化で地球の未来に貢献する
自動車の電動化シフトの急速な進展を踏まえ、当社グループは従来のパワートレイン系部品に加え、電動車搭載部品の受注・量産の拡大、足回り部品やボディ・シャーシ等の車体系部品への進出とその基盤となる技術開発に取り組みます。電動車搭載部品の売上高に占める割合については、2025年度33%、2027年度45%、2030年度55%を目指すとともに、顧客基盤についてもこれまでの主要なお客様との関係を維持しつつ電動車に強い顧客との取引拡大を進めております。
3.企業の成長を支えるひとづくり
グローバルで活躍できる人材の育成に取り組み、やりがい・誇りを持ちながら会社と従業員がともに成長できる企業を目指します。従業員一人ひとりが仕事を通じて成長し、働きがいを感じられる風土づくりのために、人材育成については戦略的人材育成計画(人材ロードマップ)に沿って推進しています。
また多様な人材が活躍できる職場づくりに向けて、2022年3月ダイバーシティ推進室を新設しジェンダーや年齢等に関わらず誰もが生きいきと働ける職場づくりを進めています。2030年度までの目標として国内従業員における女性管理職比率10%以上と女性従業員を20%以上とすることを目指しています。
4.技術探求を続け、唯一を生み出す
製品ポートフォリオシフトを実現するために、製品開発のデジタルトランスフォーメーションによって開発リードタイムを短縮するなど技術開発力を強化し、市場の変化やお客様のニーズにいち早く応えていきます。工法・技術・素材の各分野で将来の事業に貢献する先駆的な技術探求を続け、新規需要の創出を図ります。また、製品製造の際のCO2排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルダイカストの開発に挑戦していくことで地球環境に貢献するとともに、当社の競争力向上を目指します。
(3) 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略について重要な変更はありません。
当社グループでは、引き続き自動車産業の環境変化を変革のチャンスとしてとらえながら、軽量化への貢献、電動化に向けた事業ポートフォリオのシフトを進めながら、リーンな工場経営を確立し、今後の収益性改善に一層努めてまいります。
(4) 会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(6) 研究開発活動
当第3四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は、410百万円であります。なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(7) 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの主要事業であるダイカスト事業を取り巻く全世界の自動車需要については、今後も中国・新興国を中心に成長が続くと予測されております。一方で環境規制が各国・地域で強化されていくため、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車が増加し、更には電気自動車や燃料電池車という全く内燃機関を使わない車へのシフトも予測されますが、電池の蓄電能力や大きさと価格の改善、充電時間や充電インフラの整備、燃料電池車では価格に加えて水素ステーションのインフラ整備などに時間を要するとみられることから、少なくとも2030年ごろまでは従来型とハイブリッド車やプラグインハイブリッド車などの内燃系エンジン搭載車も引き続き需要の拡大が見込まれます。
しかしながら、長期的にはエネルギーの電気シフトは必至と考えられ、小型化や車体構造の変更の他、軽量化材料への転換が進むものと考えられておりますが、当社グループでは軽量でリサイクル性に優れ、設計自由度や生産性に優れるアルミダイカストが車の軽量化分野で大きく貢献できると考えております。また、アルミダイカストの原材料となる再生アルミは生産段階でのCO2排出量が少なく、カーボンニュートラルにも貢献できる素材です。
こうした優れた特性を活かして、エンジンやトランスミッション以外の車体や足回りなどの軽量化ニーズにも応えるために、専門チームを立ち上げ営業活動と市場調査を行っており、顧客の求める軽量化対象部品やその要求機能を理解し、それらに対応するものづくり力の強化に繋げ、当社グループの専門分野の拡大と将来の需要構造変化への準備を進めております。
(8) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
①資金需要及び財務政策
当社グループの資金需要のうち主なものは、運転資金及び事業拡大のための設備投資資金、配当金の支払等であります。これらの資金需要に対して当社グループでは、主として金融機関からの借入金と自己資金(手元資金と営業活動によって獲得した資金)により事業活動に必要な運転資金や将来の設備投資等に向けた充分な資金を確保しております。
資金調達手段としては、金融機関からの短期借入金、長期借入金で行っており、短期借入金については、月次の売上高の2分の1程度を運転資金として借入を行っております。長期借入金については、設備投資に3年~5年の借入期間で調達を行っております。また、短期借入金については、月次の資金繰り状況に応じ当座借越限度額の範囲内で反復利用を行い、長期借入金については、新規調達を行う一方で約定計画に基づき返済を行っております。
②資金の流動性
当社及び国内連結子会社はCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入しており、国内のグループ内資金を当社が一元管理しております。各グループ会社において創出したキャッシュ・フローを当社に集中することで資金の流動性を確保し、また、機動的かつ効率的にグループ内で配分することにより、金融負債の極小化を図っており、余剰資金が生じた場合には有利子負債の返済に充てる方針であります。