【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)財政状態及び経営成績の状況
①財政状態
当第3四半期連結会計期間末における資産合計は407,476百万円となり、前連結会計年度末に比べ56,236百万円の増加となりました。これは主に現金及び現金同等物、営業債権及びその他の債権、使用権資産、のれんが増加したこと等によるものであります。
負債につきましては、負債合計が328,420百万円となり、前連結会計年度末に比べ44,209百万円の増加となりました。これは主に社債及び借入金が増加したこと等によるものであります。
資本につきましては、資本合計が79,056百万円となり、前連結会計年度末に比べ12,027百万円の増加となりましたが、これは主に配当の支払により減少した一方、四半期利益の計上及び為替の影響等により増加したものであります。
②経営成績
当第3四半期連結累計期間(2022年1月~9月)における事業環境は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる深刻な影響は後退しつつあるものの、変異株による感染拡大やウクライナ情勢、金融環境のタイト化、急速なインフレなど、国際情勢に重大な影響を及ぼす事象の発生が続き、不透明感がなお色濃い状況でありました。
国内においては、円安や原燃料高の逆風のなか持ち直し基調が続くも、中国でのロックダウンや、長引く半導体不足等の供給制限により、主要顧客である大手メーカーにおいても工場稼働率の低下を余儀なくされております。しかしながら、人手不足感も強まっており、ITをはじめ建設業やサービス業において、エンジニアの活用ニーズはいまだ活況であります。システム化需要は増加の一途を辿り、会社売却や事業売却等の業界再編が製造系・IT系ともに進んでおります。
このような国内の事業環境に対して、当社グループは、かねてより業績平準化による成長基盤の強化を推進してまいりました。製造系分野においては、期間工が手掛けていた工程に長期間の派遣契約にて労働者を派遣することにより生産変動の影響低減を図っております。派遣スタッフ管理システム「CSM(クラウド・スタッフィング・マネジメント:派遣管理のDX化を通じて生産性向上を図るHRテックサービス)」は、業界主要企業との共同開発を皮切りに、業界標準プラットフォーム構築に向けた新たな局面を迎えました。供給制限が重石となり自動車業界の生産活動に一時的な影響が生じておりますが、自動車需要は衰えておらず挽回生産が見込まれるため、中期的には当社グループの事業への影響は緩和されるものと考えます。量産の本格化がずれ込んだ影響を受けるも、全業種で前年同期比増収を確保しております。また、外国人技能実習生等の管理受託分野においては、適切な管理実績が顧客に高く評価され、コロナ禍に伴い新規来日が限定的かつ帰国便は臨時運行している状況下にあっても、9月末の管理人数は19,300名と国内首位を維持しております。技術系分野においては、人とテクノロジーを融合して効率化・省力化を実現するビジネスモデル「派遣2.0」の対象領域拡大を図りました。当社グループの教育機関であるKENスクールを活用し、機械設計のみならず、ITや建設、医薬分野に至るまで、多岐にわたって未経験者を教育して配属するスキームにより、採用単価の上昇を抑えながら増員して業績を伸長させました。加えて、新卒採用人数も国内首位を争う規模となり、4月には連結で3,200名超の新卒者が入社しております。これは採用力のみならず、未経験者の配属先を開拓する営業力と新人教育力、さらには派遣先との信頼関係の賜と考えます。このほか、マクロ環境の影響を受けやすい製造分野とは異なり、景気変動の影響を受けにくい事業分野も拡大を図っております。米軍施設向け事業では、建物や設備の改修・保全への需要は引き続き堅調でありましたが、調達リードタイム長期化により、工事進行に期ずれが生じております。
一方、海外においても、ワクチンの普及と並行してコロナ禍への対策が進んでおりますが、ウクライナ情勢等による地政学的リスクの高まりや、インフレ圧力の拡大、金融引き締め強化など景気後退の到来への懸念が高まり、不確実性がいまだ高い状況にあります。
このような海外の事業環境に対して、当社グループは、海外においても従前より業績平準化による成長基盤の強靭化を力強く推し進めてまいりました。景気変動の影響を受けにくい政府事業等の公共系アウトソーシング事業等を拡充することに加えて、リモート対応可能な技術系分野を展開するほか、人材不足の国に対して人材の余剰感のある国から人材を流動化するスキームをグローバル規模で展開しております。技術系ではデジタル政府機能への貢献をはじめ、ITや製薬分野の需要が依然として高く好調であったほか、サービス系ではライフラインを支えるeコマースの流通系事業も伸長しました。また、外国為替において、業績予想時の想定レートに比べて各通貨が円安に推移したことにも後押しされました。利益面では、比較的利益率の高い人材紹介事業が好調を継続したものの、インフレや賃金上昇に伴う費用増に加えて、チリSLグループにて保守的に一部の資産を費用処理したことや、英国及びアジアでの減損損失等の一過性要因が生じたことにより伸び悩みました。
当社は、2022年1月にオランダOTTOグループの残余株式早期買取の契約を締結しました。計上済のプットオプション負債と残余株式買取額の差額を金融費用として第1四半期に約24億円計上しております。この金融費用は税金計算には加味されず、税引前利益以下の各利益を同額押し下げる大きな影響を及ぼしました。早期買取により完全子会社となったため、このOTTOグループに係る一過性の金融費用は第1四半期の計上が最終(第2四半期以降は為替レートによる変動のみ)であります。
当社グループは、その時々の環境変化に合わせた的確なビジョン策定と具体的戦略により、事業ポートフォリオを変化させながら持続的な事業拡大を図っており、事業ポートフォリオ及び地域ポートフォリオ分散の取組が功を奏し、第3四半期として会計期間(7月~9月)及び累計期間(1月~9月)において、売上収益のみならず、税引前四半期利益及び親会社の所有者に帰属する四半期利益においても過去最高を更新しました。
以上の結果、当第3四半期連結累計期間の連結売上収益は502,578百万円(前年同期比22.0%増)、営業利益は16,971百万円(前年同期比22.2%増)、税引前四半期利益は12,949百万円(前年同期比58.2%増)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は6,755百万円(前年同期比367.2%増)となりました。
なお、当社グループは、成長の持続可能性を重視しております。SDGs経営に向けたサステナビリティ方針として、当社グループでは、事業を通して世界の様々な人々の「就業機会」と「教育機会」の創造を実現し、社会課題の解決と事業の成長、ステークホルダーへの貢献に、持続的に取り組んでまいります。2021年を当社グループのSDGs元年と位置付け、アウトソーシンググループSDGs宣言、サステナビリティ委員会設置、国連グローバル・コンパクトへの署名とともにグローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンへの加盟、女性のエンパワーメント原則への署名等、SDGs経営を推し進めてまいりました。2022年4月にはマテリアリティ(重要課題)に定めたKPIの初年度(2021年)実績と第三者検証報告書を公開いたしました。引き続き、事業活動が広く社会に還元される仕組みを追求してまいります。
セグメントの業績は次のとおりであります。
国内技術系アウトソーシング事業、国内製造系アウトソーシング事業、国内サービス系アウトソーシング事業、海外技術系事業、海外製造系及びサービス系事業、5つの報告セグメントすべてにおいて、第3四半期として売上収益の過去最高を更新する結果となりました。
(国内技術系アウトソーシング事業)
国内技術系アウトソーシング事業におきましては、コロナ禍の影響は限定的であり、引き続き前年同期比で大幅な増収増益となりました。4月入社の新卒約2,600名に関する先行投資費用を吸収してなお利益は前年同期比2桁増の結果となりました。採用は、リテンションのために新卒入社を見据えてコントロールしながら、引き続きKENスクールを活用した未経験者を教育して配属するスキームにより採用単価を抑制しながら伸ばしており、期末外勤社員数は、前年同期末(2021年9月末)比3,499名増の24,662名と、後発ながら業界トップに躍進しております。これは採用力/教育面でのアドバンテージのみならず、未経験者の配属先を開拓する営業力が両輪となり実現できたと考えます。各産業で採用活動が復活して採用競争が激化しており、想定より採用が伸び悩みましたが、その一方で採用経費も抑制できたため、利益は順調に確保できました。製造業の景気変動の影響を受けにくくするための重点分野として位置付けているIT分野や建設、医薬分野も拡大しました。
以上の結果、売上収益は108,455百万円(前年同期比21.3%増)、営業利益は7,911百万円(前年同期比62.4%増)となりました。
(国内製造系アウトソーシング事業)
国内製造系アウトソーシング事業におきましては、半導体不足やコロナ禍によるサプライチェーンの滞りによる生産調整の影響が継続しました。挽回生産が見込まれるため、一過性の影響であると考えますが、量産本格化には至らず、稼働時間減少等による売上減が生じました。期末外勤社員数は前年同期末比5,490名増の26,831名となりました。管理業務受託におきましては、顧客メーカーの外国人技能実習生活用ニーズは引き続き堅調でありますが、技能実習予定者の来日が限定的な状況が継続しており、成長が足踏みする結果となりました。しかしながら、適切な管理実績を引き続き高く評価され、国内首位の事業者として9月末の管理人数は19,300名となりました。
以上の結果、売上収益は89,321百万円(前年同期比23.1%増)、営業利益は4,235百万円(前年同期比14.7%減)となりました。
(国内サービス系アウトソーシング事業)
国内サービス系アウトソーシング事業におきましては、製造系とは異なり景気変動の影響を受けにくい米軍施設向け事業が主力事業であります。米軍施設の建物や設備の改修・保全業務の需要は、コロナ禍の影響もほとんどなく堅調であるものの、輸入建設資材の船便遅延といった調達リードタイム長期化により、工事進行に期ずれが生じました。今後は、外的要因の解消により順調な回復を見込んでおります。利益面では、円安による建設資材や海上輸送費の高騰の影響により費用が増加しておりますが、資材の早期発注や、原価高騰を入札金額に反映させて受注精度を高めることにより継続的な成長を見込んでおり、中長期での事業収益力は損なわれていないと考えます。
以上の結果、売上収益は22,908百万円(前年同期比6.7%増)、営業利益は2,427百万円(前年同期比30.0%減)となりました。
(海外技術系事業)
海外技術系事業におきましては、コロナ禍に伴う制限措置はほぼ解消しており、前年同期比で大幅な増収増益となりました。英国以外は軒並み好調でありました。英国においても公的債権回収の受託業務において債権発行が回復傾向にあります。好調なアイルランドやオセアニアでは、とりわけ、利益率の良い人材紹介が活況でありました。一方、インフレが加速しており、費用増を吸収してなお利益率を確保した大幅増収となりました。
以上の結果、売上収益は120,554百万円(前年同期比19.9%増)、営業利益は6,023百万円(前年同期比98.2%増)となりました。
(海外製造系及びサービス系事業)
海外製造系及びサービス系事業におきましては、オランダの大手スーパーを中心としたインターネットショッピング関連事業が引き続き伸長したほか、ドイツでは医療や航空向けが好調となり、南米では物流向けや小売向け警備事業や清掃業務が堅調でありました。しかしながら、英国において、政府向け人材紹介事業や地方自治体向けBPO事業及び人材派遣事業においてプロジェクト遅延が生じました。
一方、利益面では、とりわけ欧州にてインフレや賃金上昇に伴う費用増が生じたほか、一過性要因としても、チリSLグループにて保守的に一部の資産を費用処理やのれんの減損損失などが発生し、利益を押し下げる結果となりました。
以上の結果、売上収益は161,293百万円(前年同期比26.0%増)、営業利益は3,735百万円(前年同期比0.5%減)となりました。
(その他の事業)
その他の事業におきましては、特例子会社での障がい者による事務のシェアードサービス事業及び手話教室事業等が、順調に推移しました。
以上の結果、売上収益は47百万円(前年同期比13.6%増)、営業利益は254百万円(前年同期比98.1%増)となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当第3四半期連結累計期間における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ5,198百万円増加し、53,532百万円となりました。
当第3四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況及びこれらの要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当第3四半期連結累計期間における営業活動による資金の増加は7,822百万円となりました。これは、税引前四半期利益12,949百万円、減価償却費及び償却費12,458百万円、営業債権及びその他の債権の増加9,348百万円、営業債務及びその他の債務の増加4,463百万円及び法人所得税等の支払10,599百万円等を反映したものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当第3四半期連結累計期間における投資活動による資金の減少は16,120百万円となりました。これは、事業の取得に伴う支出12,745百万円等を反映したものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当第3四半期連結累計期間における財務活動による資金の増加は11,233百万円となりました。これは、長期借入れによる収入53,853百万円、長期借入金の返済による支出14,877百万円、リース負債の返済による支出6,589百万円、配当金の支払額3,904百万円、非支配株主との取引17,128百万円等を反映したものであります。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第3四半期連結累計期間において、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題に重要な変更及び新たに生じた課題はありません。
(4)研究開発活動
該当事項はありません。
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