【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中における将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において当社が判断したものであります。
(1)経営成績の分析当社グループは、総合エネルギー事業をコアとし、金融及び市場取引分野において創業以来培ってきたノウハウを活用し事業を展開しております。当第3四半期連結累計期間(2022年4月1日~2022年12月31日)における我が国の経済状況は、新型コロナウイルス感染第6波、第7波を経て、11月以降の第8波により感染者数が過去最高水準まで増加したものの、重症者の比率が低下したこともあり、経済社会活動の正常化は徐々に進んでおります。一方で、ウクライナ情勢の長期化などによるエネルギー価格を中心とする諸物価の上昇に対し、欧米のインフレ対策としての金利引き上げと内外金利差を背景に円相場では急激な円安傾向が続いておりましたが、2022年12月に日本銀行がイールドカーブコントロールにおける長期金利の上限に関し0.5%への引き上げを決定すると、一転して円は急騰いたしました。引き続き、為替・債券及び株式市場の変動に加え、景気の下振れリスクを注視しなければならない状況にあると判断しております。
この様な環境の中、当社は、2021年11月に策定した「中期ビジョン2025」において総合エネルギー事業会社への変革を加速させることを掲げ、戦略的投資と事業資産の入れ替え(選択と集中)を検討しておりました。既に開示いたしましたとおり、当社は当社の持分法適用関連会社であったPayPayアセットマネジメント株式会社(以下、「PPAM社」という。)の当社保有全株式を2022年8月にアセットマネジメントOne株式会社(以下、「AM-One社」という。)に譲渡いたしました。譲渡先であるAM-One社は、PPAM社の更なる発展を目指す方針であり、本株式譲渡を行うことがPPAM社の今後の企業価値の更なる向上に資すると判断するとともに、本株式譲渡により得られる資本を総合エネルギー事業に直接かかわる事業に投下することが当社グループの株主価値の向上に寄与すると判断いたしました。アセット・マネジメント事業のセグメントについては、引き続きアストマックス・ファンド・マネジメント株式会社(以下、「AFM社」という。)を中心としたベンチャーキャピタルファンド等の運用業務を行うことに加え、再生可能エネルギーをはじめとするカーボンニュートラルに向けた取組みのファンド化や当社における他の総合エネルギー事業とのシナジー効果が期待される領域の事業展開等に重点を置く方針です。また、当社は、2022年12月27日付で、当社の子会社であった長万部アグリ株式会社(以下、「アグリ社」という。)の株式を譲渡いたしました。これは、前述の中期ビジョン2025において、事業領域の選択と集中を行っていく上で、アグリビジネス分野に関して注力度を引き下げる方針としており、そのような中で、当社がアグリ社の経営権を継続的に保有し、農場運営及びアグリ社の発展を目指すことは難しいとの判断によります。譲渡先は、北海道を拠点として、新千歳空港における店舗運営を含めた道産品の販売チャネルを有し、グループ内で農産物の生産も行う等、農業事業の拡大を目指す会社です。わが国において継続的に重要なテーマとされる「地方創生」の中でも、農林水産業は、成長産業の一つとされていることから、引き続きアグリ社は、譲渡先の会社及び同社グループ内における、地方創生の中核事業の一つとして、今後も発展を目指すこととなります。
当第3四半期連結累計期間のセグメントごとの経営環境は以下のとおりです。再生可能エネルギーを取り巻く環境については、2021年度の事業用太陽光発電のFIT価格が11円(税抜)、2022年度は10円(税抜)となり、250kW以上の設備は、引き続き入札制度適用区分として定められております。また、2022年4月に、電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法が改正され、未稼働案件に対して運転開始期限設定を義務化する失効制度、市場連動型のFIP(Feed-in Premium)制度、源泉徴収的な外部積立を前提とした廃棄費用積立て制度、再生可能エネルギーのポテンシャルを活かす系統増強等が示されました。再生可能エネルギーの増加に伴い、電力需給バランスの維持及び電力安定供給の必要性から出力抑制が発令されており、当第3四半期連結累計期間において当社グループが保有する青森県の発電所では合計2回、熊本県の発電所では合計8回(前年同期間比14回減)となりました。なお、出力制御及び系統の運用の最適化から、オンライン制御事業者が出力制御を実施する代わりに、オフライン制御事業者が対価を支払う、経済的出力制御(オンライン代理制御)が九州電力管轄内で2022年12月から始まりました。
電力市場においては、天候不順や燃料市場の高騰、再エネ電源の増加による既存発電施設の運用コスト増加等により市場価格の変動リスクが高まっております。前連結会計年度は、燃料価格が上昇したことから発電コストが上昇し、電力卸売価格が高騰、燃料費調整の上昇や電力小売価格の値上げ等で需要家の負担が増えると同時に、安価での販売による小売電気事業者の収支の悪化、事業撤退が相次ぎました。当第3四半期連結累計期間は、ウクライナ情勢の悪化などの影響で高騰していた燃料価格が下落、高値で推移していた電力卸売価格も現時点では下落傾向にあり、冬場の買いヘッジを目的とした電力取引が増えております。電力卸売価格が大きく変動する中、小売電気事業者や発電事業者の経営においては、電力価格の「リスク管理」の重要性が再認識されており、電力取引のヘッジニーズは高い状態が続くものと考えられます。
商品市場においては、前連結会計年度にウクライナ情勢を受けて大幅高となった原油価格および貴金属価格は、当連結会計年度に入り、落ち着きを取り戻しやや軟調に推移しておりますが、引き続きウクライナ情勢、世界的なインフレ傾向・金融政策を注視する必要があると考えます。
電力小売業界では、2021年度後半から2022年度にかけての電力スポット市場の高止まり傾向により、小売電気事業者を取り巻く環境は厳しさを増しております。電力スポット価格の高騰は、スポット市場からの電力調達を余儀なくされる小売電気事業者へ大きな打撃を与えており、2022年度においては、当該事業から撤退または倒産する企業や、新規契約の受付停止をする企業が相次ぎました。上昇する燃料費と電力料金の消費者の負担感は高まってきており、国は2023年1月から価格激変緩和事業として電気料金とガス料金の一部を補助金で負担する制度を開始します。また冬の電力需給のひっ迫に備え、2022年12月~2023年3月に「節電ポイント」制度等を設ける小売事業者を通じて、国や自治体が節電特典を支給する対策を取り始めている状況です。
このような市場環境等のもと、当第3四半期連結累計期間における経営成績は以下のとおりです。(単位:百万円)
2022年3月期第3四半期連結累計期間
2023年3月期第3四半期連結累計期間
増減
増減率(%)
増減の主要因ほか
営業収益
7,323
8,506
1,183
16.2
①電力取引関連事業(+875)②再生可能エネルギー関連事業(+2)③小売事業(+271)④ディーリング事業(+22)⑤アセット・マネジメント事業(+14)
営業費用
7,347
9,190
1,842
25.1
電力仕入の増加(+1,760)
営業損失(△)
△23
△683
△659
–
経常損失(△)
△174
△774
△599
–
投資有価証券売却益(+30)
特別利益
21
593
571
–
当社保有のPPAM社全株式を譲渡したことによる特別利益(+575)
特別損失
0
3
2
344.7
税金等調整前四半期純損失(△)
△153
△184
△30
–
法人税等合計(※1)
△6
△23
△16
–
非支配株主に帰属する四半期純利益
0
8
8
–
親会社株主に帰属する四半期純損失(△)
△147
△169
△22
–
※1 「法人税等合計」には、「法人税、住民税及び事業税」と「法人税等調整額」を含みます。※2 当第3四半期連結累計期間の営業収益における電力取引関連事業に係る増加および減少の要因については、セグメント毎の経営成績及び取り組み状況<2 電力取引関連事業>をご参照ください。
セグメント毎の経営成績及び取り組み状況は次のとおりです。セグメント利益:再生可能エネルギー関連事業はセグメント利益。セグメント損失:小売事業のセグメント損失は、前年同期間比増加。 アセット・マネジメント事業とディーリング事業のセグメント損失は、前年同期間比減少。 電力取引関連事業は、セグメント損失。
(セグメント別営業収益・セグメント損益) (単位:百万円)
2022年3月期第3四半期連結累計期間
2023年3月期第3四半期連結累計期間
増減
増減率(%)
再生可能エネルギー関連事業
営業収益
480
520
40
8.3
セグメント損益
△9
14
23
-
電力取引関連事業
営業収益
6,394
7,398
1,004
15.7
セグメント損益
229
△471
△701
-
小売事業
営業収益
223
492
269
120.8
セグメント損益
△183
△186
△2
-
アセット・マネジメント事業
営業収益
110
125
14
13.5
セグメント損益
△116
△44
72
-
ディーリング事業
営業収益
263
285
22
8.4
セグメント損益
△27
△12
14
-
その他(※1)
営業収益
19
14
△4
△22.7
セグメント損益
△12
△7
5
-
調整額
営業収益
△167
△330
△163
-
セグメント損益
△54
△66
△12
-
四半期連結財務諸表計上額
営業収益
7,323
8,506
1,183
16.2
セグメント損益
△174
△774
△599
-
※1「その他」は、地方創生事業など、現時点で事業セグメント化されていない事業を示しています。※2 セグメント損益は、四半期連結損益計算書の経常損失と調整を行っており、連結会社間の内部取引消去等の調整額が含まれております。各事業に帰属する特別利益および特別損失は含んでおりません。
<1 再生可能エネルギー関連事業>当事業は主に当社及びアストマックスえびの地熱株式会社(以下、「えびの地熱社」という。)が推進しております。再生可能エネルギーを取り巻く環境は前述のとおりですが、当社は当事業を通じて、更なる再生可能エネルギーの導入及び拡大に寄与する方針であり、2030年までに最大年間66,000トン(太陽光発電100MW相当)のCO2削減を目指しております。現時点においては、以下のとおり、継続的に再生可能エネルギー発電所の開発、取得、発電及び電気の供給(発電事業)、維持・運営管理(O&M事業)を行っております。また、前述の経営環境にあるとおり、足元のエネルギー価格の高騰等を受け、PPA(需要家と発電事業者が長期間の電力購入契約(Power Purchase Agreement)を締結することで、初期投資不要で太陽光設備等を導入利用できるもの。)を中心とした自家消費モデルは今後も拡大していくと考えられ、当社も企業や自治体への展開に積極的に取り組んでおります。
(太陽光発電事業)当事業が従事した完工済みの案件は合計31.4MWであり、今後着工する案件は以下の①のとおり、1か所、2.1MWになります。 再エネ特措法の改正、競合他社の参入、優良案件の減少等、案件確保が容易ではない事業環境が引き続き想定されます。当事業では、長年に亘り培ってきた再生可能エネルギーに係わるノウハウとネットワークの力を活用して、固定価格買取制度に頼らない、非FIT太陽光発電設備を用いたPPAの展開を中心に取り組んでまいります。また、併行して固定価格買取制度上のセカンダリー市場(完成した発電所の売買市場)での案件確保、保有している既存発電設備について譲渡を行うこと等を含め、事業ポートフォリオの一部入替を検討する等、期間利益を確保しつつ、FITモデルから非FITまたはFIPモデルへの転換により、事業採算性の向上に取り組んでまいります。
自社開発(建設中):
① 栃木県大田原市 出力規模:約2.1MW 2024年5月完工予定稼働後は当社が維持・運営管理(O&M事業)を行います。
自社開発(運転開始):
当第3四半期連結累計期間に運転開始した案件はありません。
セカンダリー市場:
新たな案件についても精査を行っております。
ポートフォリオの入替:
当第3四半期連結累計期間に入替を実施した案件はありません。
維持・運営管理(O&M事業):
当社が開発に携わった案件等16か所、合計29.5MWの太陽光発電所の維持・運営管理(O&M事業)を行っております。
コーポレートPPA事業:
民間企業との取り組みのほか、既に開示いたしましたとおり、当社は北海道山越郡長万部町と包括連携協定を締結し、「持続可能な街づくりと脱炭素化・再生可能エネルギー推進を同時実現することを目的とした事業」を協同で推進しております。
(地熱発電事業等)当事業では、ベースロード電源である地熱を利用した発電事業の取り組みも進めております。宮崎県えびの市尾八重野地域では、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構による「地熱資源開発調査事業費助成金交付事業」(以下、「助成事業」という。)の採択を受け、2MW規模の地熱発電の事業化を目指して、2016~2018年度に3本の調査井掘削を完了し、1号調査井及び3号調査井については自噴を確認、2号調査井については熱水資源の還元ゾーンとしての十分な能力を確認してまいりました。この結果を受け、当社は、事業規模の計画拡大及び、最大49%までの範囲による第三者からの事業参画をより容易にすることを目的として、2019年5月に、新設分割により設立したえびの地熱社に、宮崎県えびの市における地熱開発事業の全てを承継させました。2020年3月には大和エナジー・インフラ株式会社とえびの地熱社との間で、事業収益の10%を分配する匿名組合契約を締結いたしました。匿名組合出資と損益分配の開始は発電所の運転開始時となります。その後、えびの地熱社では、2019年度助成事業として掘削した4号調査井についても自噴を確認しており、これまでの調査結果から計画規模を4.8MWに拡大し、発電所建設のための検討を進めております。また2021年3月には、JFEエンジニアリング株式会社とえびの地熱社との間で、事業損益の10%を分配する匿名組合契約を締結し、合計2回の匿名組合出資を受けました。損益分配の開始は発電所の運転開始時となります。なお、当初計画の2MW分については、発電設備等を電力系統に連系するための工事費負担金契約を九州電力株式会社との間で締結しており、2026年度の運転開始を予定しております。一方、計画規模拡大後の連系枠については、現行制度においては空き容量が無い状態が続いておりますが、2023年4月1日よりローカル系統におけるノンファーム型接続の受付開始が予定されるなど、系統利用の在り方については制度変更を含め様々な議論が進められているため、今後の動向を確認しながら引き続き系統確保に向けて、取り組んでまいります。
再生可能エネルギー関連事業では、地熱開発を含む発電所の開発に係るコスト(建設コストを賄うための銀行借入に対する諸手数料や金利負担等)を負担しているほか、今年度より源泉徴収的な外部積立を前提とした廃棄費用積立て制度が始まったことによる負担が増加しましたが、前述のとおり、出力抑制が前年同期間に比べて大幅に減少したことや、発電効率向上のためパネル洗浄を実施したこと等により営業収益は前年同期間比増加しました。以上の結果、当事業における当第3四半期連結累計期間の営業収益は520百万円(前年同期間比40百万円(8.3%)の増加)、14百万円のセグメント利益(前年同期間は9百万円のセグメント損失)となりました。
<2 電力取引関連事業>当事業は、当社が推進し、小売電気事業者への電力取引の提供、需給管理業務を中心とした業務代行サービスの提供を行っております。電力取引については、顧客の電力調達及びヘッジニーズに対応し、電力現物先渡取引、デリバティブ取引である電力スワップ取引、電力先物取引に取り組んでおります。電力取引の増加及び多様化に伴うリスク管理の重要性が高まっていることに鑑み、当社グループでは、リスク管理体制の強化も推進し、乱高下する相場の中、リスクを適切に抑制しながら取引を実行しております。当第3四半期連結累計期間においては、燃料価格下落を受けて電力卸売価格も下落、冬場の小売電気事業者からの取引ニーズが増加いたしました。しかしながら電力卸売価格の水準はまだ高く、取引量は前年同期間比減少いたしました。小売電気事業者の事業継続に向けた電力調達及び価格リスクヘッジから電力取引のニーズは引き続き高く、価格が落ち着つけば取引量は増加するものと考えております。業務代行サービスについては、既存顧客へ安定したサービスの提供をしながら、引き続き新規取引先を増やすべく、電力取引のリスク管理コンサルティング等新メニューを加え顧客ニーズにあったきめ細かいサービスの提案を行っております。当社がコンサルタントとして開発に携わっている、日鉄ソリューションズ株式会社の電力リスク管理システム「エネファロス」の販売は、今年度から開始いたしました。なお、当第3四半期連結会計期間末を越えて受渡しが行われる電力現物先渡取引は時価評価の対象ではありませんが、当該取引をヘッジする目的で行う電力先物取引はデリバティブ取引として時価評価の対象となります。電力先物取引のうち、一部取引所では取引所の規定によって3カ月以上の期間のポジションは限月が近付いた段階で決済され、より短い期間の新たなポジションに分割されます。これに伴う決済損失3百万円(純額)と、当第3四半期連結会計期間末を越えて限月を迎える電力先物取引の時価評価損134百万円(純額)は、当第3四半期連結会計期間末を越えて受渡しが行われる電力現物先渡取引と同一の会計期間に認識されないため、当第3四半期連結累計期間の営業収益を押し下げ、電力取引関連事業のセグメント損失を増加させる要因となっております。一方、同様の理由で、当第3四半期連結累計期間に受渡しが行われる電力現物先渡取引をヘッジする目的で行われた電力先物取引に係る前連結会計年度に認識された決済利益344百万円(純額)及び時価評価益82百万円(純額)は当第3四半期連結累計期間の営業収益を押し下げ、電力取引関連事業のセグメント損失を増加させる要因となっております。以上の結果、電力取引関連事業の当第3四半期連結累計期間の営業収益は7,398百万円(前年同期間比1,004百万円(15.7%)の増加)となり、セグメント損失は471百万円(前年同期間は229百万円のセグメント利益)となりました。
<3 小売事業>
当事業は、当社及びアストマックス・エネルギー株式会社(以下「AEKK社」)が推進しております。AEKK社では個人を中心とする低圧市場の顧客への電力・ガス販売を行い、当社は特高・高圧市場の顧客への販売を行っております。
(電力小売事業)AEKK社では前連結会計年度に、固定料金の基本プランとして4つのプランのラインナップを揃え、また実質再生可能エネルギーによる電力を100%供給する「プラス・グリーン」を各基本プランにトッピングできるサービスを開始いたしました。一方、前述の事業環境のとおり、小売電気事業者から撤退する企業や倒産する企業が続出している中、電力会社の切替えを希望する顧客も多く、顧客を増加させる好機であるものの、現在の市場状況下での新規顧客獲得は電力調達コストが高騰していることから逆ザヤによる採算悪化となるため、プランを限定して新規顧客獲得を行わざるを得ない状況となっております。AEKK社でも、2022年4月より基本プランの新規受付を停止し、2022年6月には既存顧客に対する基本プランの料金改定を発表しました。このような状況の中AEKK社では、市場連動型プランでありながら市場価格と固定価格を自由に組み合わせることができる新プラン「フリープラン」の提供を2022年4月から開始いたしました。本プランは、特に太陽光発電や蓄電システムを導入し、家庭内のエネルギーマネジメントに興味のある顧客に適した、他社との差別化ができる当社独自の商品となっております。また当社でも、特高・高圧の顧客に対して同様のフリープランの販売を開始しております。特高・高圧の電力市場では電力価格の高騰により、2022年度に入ってからみなし小売事業者を含む多くの小売事業者が顧客への供給契約の停止や撤退を進めた結果、電力供給を絶たれた多くの顧客は送配電事業者による最終保障契約に移行いたしました。その結果、送配電事業者は2022年9月より最終保障契約の値上げを発表し、実質的な市場連動型料金に変更しております。こうした動きにより、特高・高圧電力では市場連動型料金体系が従来に比し一般的になってきており、当社のフリープランの優位性が認知され、同プランによる新規顧客が急増しております。今後もサービスの拡充と知名度の向上に努め、早期の黒字化を目指して取り組んでまいります。なお、「フリープラン」と連携して自宅の家電をスマートフォン上のアプリでどこからでも制御できるスマートリモコンの機能と、自宅の電力使用量や太陽光発電の発電量を計測・分析できる機能を兼ね備えた「アストHEMS」の開発を終え、一般モニターの募集を2022年10月から開始いたしました。
(ガス小売事業)2021年1月より、AEKK社は当社のガス小売り取次店として、既存の電力顧客に対し電気とガスのセット販売を行っておりましたが、2022年10月以降は、AEKK社は当社の業務提携関係である株式会社グローバルエンジニアリングのガス小売り取次店として電気とガスのセット販売を継続しております。
獲得した特高・高圧の顧客の供給開始は2023年1月以降が多く、小売事業の当第3四半期連結累計期間の営業収益は492百万円(前年同期間比269百万円(120.8%)の増加)、186百万円のセグメント損失(前年同期間は183百万円のセグメント損失)となりました。
2021年4月に設置した「新機能開発部門」は、当社が推進する総合エネルギー事業の様々な領域において、当部門が中心となって各事業部門との連携を図り、DXの推進や新しいビジネスモデルを組み立てていくことを業務目的としております。AI活用による需給管理や、発電/供給サイドの事業と販売/需要サイドの事業のアグリゲート(集約化)及び、双方のマッチングによる新たなサービスを展開すること等、独自性の高いビジネスフィールドを考えてまいります。当第3四半期連結累計期間においても、AI等を活用した電力の需要予測や太陽光発電出力予測等の需給管理、リスク管理の高度化に取り組んでおります。 業務代行サービスを提供している既存顧客の電力需要予測、および太陽光発電出力予測に関して、AIによる予測精度向上を確認し、順次、自動システム化に取り組んでおり、電力需要予測のAI化は適用社数を増加し実稼働しております。また、再生可能エネルギーのアグリゲート事業に必要な太陽光発電出力予測及び九州等のエリア全体の再生可能エネルギー発電出力予測や需要予測および家庭における太陽光発電の余剰売電予測等、顧客の新しいニーズに対応したAI化にも取り組んでおります。さらに、電力需給調整や再エネ価値向上等に資する系統用蓄電池(発電所併設型含む)による蓄電事業への展開にも積極的に取り組んでおります。
<4 アセット・マネジメント事業>
当事業は、当社とAFM社が推進し、学校法人東京理科大学が主に出資する大学発ベンチャーキャピタルファンドの営業者としてファンド運営業務等を担う他、2020年3月から開始したファンドの運用業務も継続しております。2022年10月には、学校法人東京理科大学が支援する新たな再生可能エネルギーファンドの受託を開始しました。AFM社が営業者として運用しているファンドは順調に運用資産を増加させており、当セグメントの営業収益に計上する運用報酬額は前年同期間比増加しております。なお、冒頭に記載しましたとおり、当社は保有していたPPAM社の全株式を2022年8月にAM-One社に譲渡し575百万円の特別利益を計上しましたが、当社のセグメント損益は経常損益にて計算されていることから、当該特別利益はアセット・マネジメント事業のセグメント損益には反映しておりません。一方、2022年4~7月までのPPAM社の持分法による投資損失73百万円は営業外費用としてアセット・マネジメント事業のセグメント損益に含んで表示しております。以上の結果、当事業における当第3四半期連結累計期間の営業収益は125百万円(前年同期間比14百万円(13.5%)の増加)となり、44百万円のセグメント損失(前年同期間は116百万円のセグメント損失)となりました。
<5 ディーリング事業>
当事業は、当社が推進し、OSE、TOCOM、CME、ICE、INE等、国内外の主要取引所において商品先物を中心に、株価指数等の金融先物を取引対象とした自己勘定取引を行っております。当第3四半期連結累計期間における原油市場の動きは、原油需要の減少懸念などから軟調な推移が続きました。軟調に推移していた貴金属の価格は、金融引き締め減速期待などから年始水準近くまで上昇しました。裁定取引の機会は、特にプラチナの取引が国内外取引所の値差の動きが激しい中、安定してプラスに貢献しました。金や原油市場でも同じくコンスタントに裁定取引を行いましたが、営業費用は賄えず、当事業における当第3四半期連結累計期間の営業収益は285百万円(前年同期間比22百万円(8.4%)の増加)、セグメント損失は12百万円(前年同期間は27百万円のセグメント損失)となりました。当事業では、今後も引き続き経費節減に努めると同時に、ディーリング資金の効率的な運用を行い引き続き収益力の強化を目指してまいります。
<6 その他(地方創生ほか)>
当事業は報告セグメントとして独立しておりませんが、事業の状況について説明いたします。2017年11月に設立された長万部アグリ株式会社(以下、「アグリ社」という。)は、北海道長万部町における「長万部町と東京理科大学との地方創生に係る包括的連携協定」を背景に、内閣府の助成を受けた産官学連携の「地方創生事業」の担い手として設立され、これまで先端技術を活用した先進的アグリビジネスの推進や、「働きがいのある」雇用の創出等に取り組んでまいりました。そのような取り組みの中で、アグリ社の主力商品である「ENRICHミニトマト」は、客観的なデータ分析によって、日本の数あるミニトマトの中で「No.1格付」を取得するまでになりました。しかしながら冒頭に記載しましたとおり、当社は保有していたアグリ社の株式77.27%のうち、67.27%を2022年12月27日付で譲渡し、アグリ社は当第3四半期会計期間末において当社の連結対象から除外されました。
上記、セグメント利益又は損失は当第3四半期連結累計期間の経常損失と調整を行っており、セグメント間の内部取引消去等の調整額が含まれております。
(2)財政状態の分析(資産)流動資産は、前連結会計年度末に比べて7.1%増加し、7,308百万円となりました。これは、主に現金及び預金が718百万円増加、自己先物取引差金が482百万円減少したこと等によります。固定資産は、前連結会計年度末に比べて1.5%増加し、6,391百万円となりました。これは、主に建設仮勘定が101百万円増加したこと等によります。この結果、総資産は、前連結会計年度末に比べて4.5%増加し、13,706百万円となりました。(負債)流動負債は、前連結会計年度末に比べて28.3%増加し、2,667百万円となりました。これは、主にその他に含まれる1年以内返還予定の預り保証金が568百万円増加したこと等によります。固定負債は、前連結会計年度末に比べて4.6%増加し、5,093百万円となりました。これは、主に長期預り金が200百万円増加したこと等によります。この結果、負債合計は、前連結会計年度末に比べて11.7%増加し、7,761百万円となりました。(純資産)純資産合計は、前連結会計年度末に比べて3.7%減少し、5,945百万円となりました。これは、主に親会社株主に帰属する四半期純損失等により利益剰余金が208百万円減少したこと等によるものです。
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