【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
新型コロナウイルス感染症の流行は欧米を中心とした海外においては終息の兆しを見せ、我が国においても3年ぶりに行動制限のない年末・年始を迎えました。日常生活はコロナ前の状況へと戻りつつあるものの、年明け以降国内での感染者数及び死者数の増加が見られ、予断を許さない状況が続きました。製薬業界においては11月に国産初となる新型コロナウイルス治療薬が緊急承認され、本疾患に対する社会的な認識は、医療資源の制約はあるものの、治療・共存可能な疾病へと変化が見られます。
再生医療分野では、2022年を通じてアカデミアによるiPS細胞を用いた研究や治験の進捗が見られた一方、細胞医薬品における新たな上市品目は依然少なく、その新薬開発の難しさが浮き彫りになりました。
このような状況のもと、当社グループは体性幹細胞再生医薬品分野及びiPSC再生医薬品分野において研究開発を推進いたしました。
体性幹細胞再生医薬品分野においては、脳梗塞急性期及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の治療薬の承認取得に向け、それぞれの治験結果に基づき、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)と承認申請に向けた協議を継続しています。
iPSC再生医薬品分野においては、遺伝子編集技術により特定機能を強化した他家iPS細胞由来のナチュラルキラー細胞(以下、eNK®細胞と言います。)を用いた次世代がん免疫に関する研究を進めております。また、遺伝子編集技術を用いた免疫拒絶のリスクの少ない次世代iPS細胞、ユニバーサルドナーセル(Universal Donor Cell:以下、UDCと言います。)を用いた新たな治療薬の研究や細胞置換を必要とする疾患に対する治療法の研究を進めており、海外企業とのライセンス契約の締結をはじめ、国内外の企業・研究機関にUDCやiPS細胞を提供し様々な疾患への適応可能性について評価を進めています。
体性幹細胞再生医薬品分野においては当初見込んでいた申請スケジュールに遅延が発生し、今後の研究活動の継続に向けた事業体制の適正化に向け、経営資源の再配分、固定費削減を中心とした合理化施策の実施、財務基盤の強化を目指した資金調達等に取り組みました。
以上の結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ8,939百万円減少し、15,033百万円となりました。
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ4,676百万円減少し、10,650百万円となりました。
当連結会計年度末における資本合計は、前連結会計年度末に比べ4,263百万円減少し、4,382百万円となりました。
b.経営成績
当連結会計年度における売上収益は90百万円(前期比120.1%増)、営業損失は5,179百万円(前期は5,384百万円の営業損失)、税引前当期損失は5,330百万円(前期は4,462百万円の税引前当期損失)、親会社の所有者に帰属する当期損失は5,169百万円(前期は4,910百万円の親会社の所有者に帰属する当期損失)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、資金と言います。)は、前連結会計年度末と比べて7,879百万円減少し、7,247百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により使用した資金は4,601百万円(前期は5,089百万円の資金の使用)となりました。これは主に、税引前当期損失5,330百万円、減価償却費及び償却費386百万円、金融収益346百万円及び金融費用500百万円の計上等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は909百万円(前期は736百万円の資金の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出207百万円及び投資有価証券の取得による支出605百万円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により使用した資金は2,502百万円(前期は6,988百万円の資金の獲得)となりました。これは主に、新株予約権付社債の償還による支出5,000百万円及び新株の発行による収入2,220百万円等によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社は生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。
b.受注実績
当社は受注生産を行っておりませんので、該当事項はありません。
c.販売実績
当社は、医薬品事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の記載を行っておりません。
当連結会計年度の販売実績は、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
金額(百万円)
前年同期比(%)
医薬品事業
90
120.1
(注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前連結会計年度
(自 2021年1月1日
至 2021年12月31日)
当連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
金額(百万円)
割合(%)
金額(百万円)
割合(%)
住友ファーマ株式会社
27
66.9
54
59.7
Tune Therapeutics, Inc.
-
-
17
19.3
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「連結財務諸表規則」という。)第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しております。
② 財政状態の分析
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ8,939百万円減少し、15,033百万円となりました。
流動資産は7,967百万円減少し、8,462百万円となりました。主な要因は、当期損失の計上、新株予約権付社債の償還等による現金及び現金同等物の減少7,879百万円であります。非流動資産は972百万円減少し、6,571百万円となりました。主な要因は、Athersys,Inc.の株式の公正価値が下落したこと等によるその他の金融資産の減少879百万円であります。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ4,676百万円減少し、10,650百万円となりました。
流動負債は2,234百万円減少し、3,808百万円となりました。主な要因は、新株予約権付社債の償還、借入金の返済期日が1年以内になったことによる非流動負債から流動負債への表示区分の変更等による社債及び借入金の減少1,735百万円であります。非流動負債は2,442百万円減少し、6,842百万円となりました。主な要因は、上記と同様に借入金の表示区分の変更等による社債及び借入金の減少2,930百万円であります。
当連結会計年度末の資本合計は、前連結会計年度末に比べ4,263百万円減少し、4,382百万円となりました。主な要因は、当期損失5,170百万円の計上であります。
③ 経営成績の分析
(売上収益)
当連結会計年度の売上収益は90百万円(前連結会計年度比120.1%増)となりました。当社が認識している売上収益は、主に実施許諾契約等に基づく契約一時金及びマイルストン収入に関するものであります。当社におけるiPS細胞株(ユニバーサルドナーセル)の提供等により前連結会計年度と比較して売上収益が増加しております。
(研究開発費、販売費及び一般管理費)
当連結会計年度においては、前連結会計年度に引き続き、体性幹細胞再生医薬品分野における脳梗塞急性期及びARDSに対する治療薬、iPSC再生医薬品分野におけるがん免疫療法を中心とした既存パイプラインの研究開発が進捗した結果、研究開発費は3,808百万円(前連結会計年度比2.9%増)となり、一方、販売費及び一般管理費は固定費削減の施策等により1,449百万円(前連結会計年度比15.8%減)となりました。
(営業損失)
当連結会計年度においては、売上収益を90百万円計上した一方、研究開発費3,808百万円、販売費及び一般管理費1,449百万円、その他の収益10百万円、その他の費用22百万円を計上した結果、営業損失は5,179百万円(前連結会計年度は5,384百万円の営業損失)となりました。
(当期損失)
当連結会計年度においては、有価証券評価益162百万円、デリバティブ評価益183百万円が発生したこと等により、346百万円を金融収益に計上いたしました。また、社債利息375百万円(うち335百万円は償却原価法による計上)、借入金及びリース負債に係る支払利息44百万円、及びデリバティブ評価損53百万円が発生したこと等により、500百万円を金融費用に計上いたしました。さらに、持分法による投資利益3百万円、法人所得税費用を△160百万円計上した結果、当期損失は5,170百万円(前連結会計年度は4,911百万円の当期損失)となりました。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因について
「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
⑤ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループは事業活動の維持・拡大に必要な資金を安定的に確保するとともに、資金需要に応じた資金調達を行うことを基本的な方針としております。当連結会計年度においては、主に既存パイプラインを進捗させるための研究開発活動に伴う営業活動によるキャッシュ・フローは4,601百万円の支出となりました。また、連結子会社であるSaisei Bioventures, L.P.における投資有価証券の取得等により、投資活動によるキャッシュ・フローは909百万円の支出となりました。さらに、行使価額修正条項付新株予約権の行使等による新株式の発行や新株予約権付社債の償還等の結果、財務活動によるキャッシュ・フローは、2,502百万円の支出となりました。これらが資金の主な動きとなり、その結果、当連結会計年度の現金及び現金同等物の期末残高は、7,247百万円となりました。キャッシュ・フローの状況については「(1)経営成績等の状況の概要②キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。