【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、経済活動の制限緩和に伴い、緩やかな回復基調で推移しました。一方、世界的な物価上昇や金融引締め、ウクライナ情勢の長期化に伴う原材料・エネルギー価格の高騰など様々な課題に直面し、先行きは依然として不透明な状況が続いています。
当社グループの主な事業領域である自動車業界では、半導体不足や中国のロックダウン等によるサプライチェーンの混乱により、完成車メーカーの生産調整が長期化し、厳しい状況で推移しました。一方、化学業界では、ナフサ価格に連動した販売価格の上昇や経済活動の再開に伴う需要の回復等により、堅調に推移しました。
このような事業環境のもと、当社グループは、生産性の向上や、需要変動に対応したフレキシブルな生産・供給体制の構築を進め、収益確保に努めてまいりました。
2022年5月に公表した第13次中期経営計画(2023年3月期~2025年3月期)に基づき、樹脂加工製品事業では、次世代自動車の快適性やデザイン性、環境性能の向上に繋がる研究開発を推進するとともに、ケミカル事業では、既存事業の深掘りと新規商材の拡大に注力しました。また、新規事業の創出、カーボンニュートラルに向けた取組み、グローバルでの安全な供給網の構築など、持続的な企業価値向上に向けた施策にも取り組んでまいりました。
以上の結果、当連結会計年度における売上高は、主要顧客の減産はあったものの、円安による為替影響等により、142,019百万円(前期比10.2%増)となりました。利益面では、減産影響に加えて、インフレ影響や北米の人件費高騰に伴うコスト増が響き、営業利益は1,335百万円(前期比53.1%減)、為替差益を計上した影響で経常利益は1,596百万円(前期比46.2%減)となりました。また、投資有価証券売却益を計上したものの、海外子会社における減損損失の計上により、親会社株主に帰属する当期純利益は1,346百万円(前期比68.4%減)となりました。
(単位:百万円)
前連結会計年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
増 減
売上高
128,842
142,019
13,177
営業利益
2,846
1,335
△1,510
営業利益率(%)
2.2
0.9
△1.3pt
経常利益
2,965
1,596
△1,369
親会社株主に帰属する当期純利益
4,259
1,346
△2,912
1株当たり当期純利益(円)
258.92
86.34
△172.58
1株当たり配当金(円)
94.00
100.00
6.00
為替(円/ドル)
112.4
135.5
23.1
為替(円/中国元)
17.0
19.5
2.5
KL当たりナフサ価格(円/KL)
(期中平均)
56,100
76,500
20,400
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
(樹脂加工製品事業)
樹脂加工製品事業においては、半導体不足や中国のロックダウン等による主要顧客の減産の影響を受けたものの、円安による為替影響により、売上高は前期を上回りました。利益面では、市況影響の価格転嫁を進めるとともに、生産工程の見直しや自動化・省人化による生産性の向上に努めたものの、減産や生産計画の変動に伴う稼働ロス、原材料・エネルギー価格の高騰、北米の人件費高騰や要員確保のための労務費負担など生産コストの増加が重なり、前期比で減益となりました。
このような結果、当連結会計年度の売上高は112,259百万円(前期比10.3%増)、営業利益は100百万円(前期比92.0%減)となりました。
(ケミカル事業)
ケミカル事業においては、完成車メーカーの減産の影響を受け、モビリティ分野の取引が減少したほか、スマホ需要の低迷により電子機器向けの原材料販売が伸び悩みました。ライフサイエンス・ファインケミカル分野も、顧客の在庫調整の影響等により、下期にかけて需要が低迷しました。一方、ナフサ価格は高い水準で推移し、販売価格の上昇と円安による為替影響により、売上高は前期を上回りました。利益面では、原材料・エネルギー価格の高騰によるものづくり分野の収益性の低下や、運賃・出張費等の増加による販売費及び一般管理費の増加等により、前期比で減益となりました。
このような結果、当連結会計年度の売上高は29,759百万円(前期比10.0%増)、営業利益は1,575百万円(前期比14.2%減)となりました。
また、地域別の売上高の状況は次のとおりであります。
(日本)
日本では、半導体不足の状況は徐々に回復し、生産台数は前期比で増加しました。しかしながら、ケミカル事業では、モビリティ分野の取引減少や、スマホ需要の低迷により電子機器向けの原材料販売が伸び悩みました。その結果、売上高は33,592百万円(前期比6.0%減)となりました。
(北米)
北米では、半導体不足が次第に改善され、生産台数は前期比で増加し、さらに、新機種の金型売上も計上しました。その結果、売上高は62,946百万円(前期比27.3%増)となりました。
(アジア)
アジアでは、中国においてロックダウンにより生産台数は減少しましたが、一方でタイやインドネシアでは生産台数が増加しました。その結果、売上高は45,121百万円(前期比4.9%増)となりました。
(その他)
その他の地域の売上高は359百万円(前期比40.3%減)となりました。
②財政状態
(単位:百万円)
前連結会計年度
(2022年3月31日)
当連結会計年度
(2023年3月31日)
増 減
流動資産
77,058
73,679
△3,379
固定資産
60,066
58,117
△1,948
資産合計
137,125
131,797
△5,327
流動負債
55,961
53,502
△2,459
固定負債
9,095
7,611
△1,483
負債合計
65,057
61,114
△3,943
純資産合計
72,067
70,683
△1,384
自己資本比率(%)
51.6
52.6
1.0pt
自己資本額
70,690
69,326
△1,363
負債純資産合計
137,125
131,797
△5,327
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は73,679百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,379百万円減少しました。これは主に、仕掛品が2,400百万円、原材料及び貯蔵品が1,102百万円減少したこと等によるものであります。
また、固定資産は58,117百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,948百万円減少しました。これは主に、機械装置及び運搬具が742百万円増加した一方、投資有価証券が3,391百万円減少したこと等によるものであります。
これらの結果、資産合計は131,797百万円となり、前連結会計年度末に比べ5,327百万円減少しました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は53,502百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,459百万円減少しました。これは主に、支払手形及び買掛金が2,258百万円減少したこと等によるものであります。
また、固定負債は7,611百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,483百万円減少しました。これは主に繰延税金負債が752百万円、長期借入金が752百万円減少したこと等によるものであります。
これらの結果、負債合計は61,114百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,943百万円減少しました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は70,683百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,384百万円減少しました。これは主に、為替換算調整勘定が2,033百万円増加した一方、その他有価証券評価差額金が1,881百万円減少し、自己株式が1,275百万円増加したこと等によるものであります。
③キャッシュ・フローの状況
(単位:百万円)
前連結会計年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
増 減
営業活動によるキャッシュ・フロー
3,434
9,495
6,061
投資活動によるキャッシュ・フロー
△1,140
△5,311
△4,171
フリー・キャッシュ・フロー
2,294
4,184
1,890
財務活動によるキャッシュ・フロー
△2,824
△5,310
△2,485
現金及び現金同等物の増減額(△減少)
425
△699
△1,125
現金及び現金同等物の期末残高
18,358
17,658
△699
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末より699百万円減少し、17,658百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは9,495百万円となり、前連結会計年度より6,061百万円増加しました。これは主に、税金等調整前当期純利益の減少があった一方、棚卸資産が減少したこと等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは△5,311百万円となり、前連結会計年度より4,171百万円減少しました。これは主に、投資有価証券の売却による収入が減少したこと等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは△5,310百万円となり、前連結会計年度より2,485百万円減少しました。これは主に、自己株式の取得による支出が減少した一方、短期借入金の返済が進んだこと等によるものです。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
樹脂加工製品事業(百万円)
119,707
107.1
ケミカル事業(百万円)
11,749
100.1
合計(百万円)
131,456
106.4
(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
b.受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
受注高(百万円)
前年同期比(%)
受注残高(百万円)
前年同期比(%)
樹脂加工製品事業
105,653
108.4
3,837
99.8
ケミカル事業
76,247
102.7
2,055
89.2
合計
181,900
106.0
5,892
95.8
(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.当社グループの役割が代理人に該当する取引については純額で収益を認識しておりますが、受注高及び受注残高については総額の数値を記載しております。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
樹脂加工製品事業(百万円)
112,259
110.3
ケミカル事業(百万円)
29,759
110.0
合計(百万円)
142,019
110.2
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前連結会計年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
金額(百万円)
割合(%)
金額(百万円)
割合(%)
Honda Development & Manufacturing of America, LLC
37,386
29.0
44,618
31.4
本田技研工業株式会社
19,625
15.2
17,373
12.2
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識および分析、検討内容
経営成績等の状況に関する認識および分析、検討内容については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
経営成績に影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、様々なリスク要因が当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。
そのため、当社グループは常に市場動向に留意しつつ、コーポレート・ガバナンス体制を強化し、優秀な人材を確保し、市場のニーズに合った商品・製品を提供することにより、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散・低減した上で、適切な対応を図ってまいります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容ならびに資本の財源および資金の流動性に係る情報
(キャッシュ・フロー)
「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
(資金需要)
当社グループの資金需要は、大きく分けて運転資金と設備資金の二つです。運転資金の主なものは、製造子会社で製品を製造するための原材料仕入と製造費、商社として機能するための商品の仕入、共通するものとして販売費及び一般管理費等があります。設備資金の主なものは、増産や自動化・効率化、生産品目のモデルチェンジ対応のための建物や機械装置、金型等の有形固定資産取得に加え、情報処理のための無形固定資産取得等があります。
(財務政策)
当社グループは、事業活動のために健全なバランスシートと適正な流動資産の保持を財務方針としております。運転資金、設備資金については、まず営業キャッシュ・フローで獲得した資金を充当し、不足分について有利子負債での調達を実施しております。長期借入については、事業計画に基づく資金需要、金利動向、既存借入金の返済時期等を考慮の上、調達を行っており事業継続に必要な資金を十分に賄えていると考えております。なお、投資有価証券の売却により調達した資金は、設備資金のほか、新規事業投資、環境投資に充当いたします。
また、不測の事態に備え、取引金融機関と当座貸越契約を締結し、代替流動性を確保しております。
③経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、主な経営指標として、企業の事業活動の成果を示す営業利益に注視し、収益性判断の指標に営業利益率を掲げているほか、資本および資産の効率性判断の指標にROE(自己資本利益率)、財務の安定性判断の指標に自己資本比率を掲げております。また、当社グループは2023年3月期から2025年3月期までの中期経営計画を策定しており、最終年度である2025年3月期の目標値を営業利益率7.7%以上、ROE(自己資本利益率)9.0%以上に設定しております。
当連結会計年度を含む、直近2会計年度の各指標の推移は、次のとおりであります。引き続きこれらの指標について、改善されるよう取り組んでまいります。
前連結会計年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
営業利益率
2.2%
0.9%
ROE(自己資本利益率)
6.1%
1.9%
自己資本比率
51.6%
52.6%
株主総還元性向
62.1%
214.3%
④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。