【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当社は、2021年12月期の決算業務を進めるなかで、オフィスデザインの役務提供取引において、不適切な売上処理が行われていた疑いがあることが判明したため、2022年2月18日から利害関係を有しない外部の有識者から構成される特別調査委員会を設置し、2022年4月22日付で特別調査委員会より調査報告書を受領、調査が終了いたしました。
当社は、特別調査委員会の調査結果を真摯に受けとめ、再発防止策を定め、取組みを進めてまいりました。
当社といたしましては、財務報告に係る内部統制の重要性を十分認識しており、開示すべき重要な不備を是正するために、調査報告書の提言を踏まえ、以下のとおり、再発防止策を実行し、内部統制の整備・運用を図ってまいりました。
1. オフィスデザインの役務提供取引に対する管理体制の再構築
(1)リスクの洗出しと評価
(2)本件の不正の手口を踏まえた予防統制・発見統制の導入
2.内部監査部門も含めた管理部門によるモニタリング機能の強化
(1)内部監査部門やその補助者の増員、外部専門家導入などによる人員面の強化
(2)取締役会その他の重要な意思決定機関の議論の記録化を徹底
3.経営陣を含めた管理職及び部門担当者の業務及び会計知識の向上
(1)外部専門家による役員向け、従業員向けの研修を実施
4.業務分掌、職務権限における権限と責任の範囲の厳格化
(1)部門長による案件担当の禁止
(2)担当者の活動をブラックボックス化させないための人事ローテーションの実施
5.コンプライアンス意識の改革
(1)経営トップからのコンプライアンス最優先のメッセージ発信
(2)関与者に対する厳正な処分と、問題となった行為の内容を社内へ周知徹底
(3)教育・研修の継続的な実施によるコンプライアンス意識の醸成
(4)コンプライアンス窓口の充実化の検討
当事業年度末時点において、すべての再発防止策の実行が完了いたしております。
今後も引き続き再発防止策を着実に実行し、ガバナンス及び内部管理体制の強化を図ることにより、皆様の信頼回復と当社グループの企業価値の向上により一層尽力してまいります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国の経済は、ウィズコロナの下で、各種政策の効果もあって、景気は緩やかに持ち直しております。ただし、世界的な金融引締め等が続く中、海外景気の下振れがわが国の景気を下押しするリスク、物価上昇、供給面での制約、金融資本市場の変動等の影響や中国における感染拡大など先行きに不透明な要素が見られました。
当社グループが属するコンピュータ販売業界におきましては、国内の販売台数はパソコンの買い替え需要の低迷や企業の設備投資減少による影響を強く受け、市場全体が大幅な縮小傾向で推移いたしましたが、中堅、中小企業に対するサイバー攻撃の増加で、サプライチェーンにおける対策の必要性が認識され、セキュリティ対策ソリューション、セキュリティ教育の需要が増加傾向にありました。
このような環境のもと、当社グループにおきましては、ニーズが高まるセキュリティ関連事業への継続的な取り組みに注力してまいりました。また、新規顧客の開拓、ソリューション営業、ストックビジネスの強化、DX関連需要への対応や取引先とのアライアンス強化、顧客開拓と関係強化に向けたCRM活用等を図ることにより、事業の収益力の継続的な向上に取り組んでまいりました。クライアントPCにおける半導体不足による影響は弱まり、サプライチェーンの回復が見られたものの、急激な円安による調達価格の高騰などの影響により、法人市場でのパソコン需要の後退が進み売上は減少いたしました。
以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上高は10,599,063千円(前連結会計年度比48.4%減)、経常損失41,144千円(前連結会計年度の経常利益は36,056千円)、親会社株主に帰属する当期純損失は499,376千円(前連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損失は53,481千円)となりました。
なお、売上高につきましては、「収益認識に関する会計基準」適用の影響により当連結会計年度の売上高が11,024,770千円減少しております。
各セグメント別の営業の概況は次のとおりであります。
ITサービス事業
法人向けコンピュータ市場においては、ウィズコロナの下で企業活動の抑制傾向は続いているものの、一部の業種において設備投資に持ち直しの動きも見られましたが、地政学的リスクの高まりや資源、原材料価格、エネルギー価格の高騰等による先行き不透明な状況が続きました。また、PCの供給については、2022年後半から半導体不足による影響が弱まり増加傾向にあるものの、国内景気の先行き不透明感から新規顧客向け活動の回復に遅れが見られることに加え、国際的な物流の停滞などもあり、サーバーおよびネットワーク機器の部材不足は継続し、供給は引き続き不安定な状況が続きました。法人市場、特に当社の主要取引先である中堅中小企業が対象となるコンピュータ市場においては、大変厳しい状況が続いております。
当社グループにおきましては、新規顧客の開拓と関係強化、ストックビジネスの強化、取引先とのアライアンス強化、インサイドセールス機能の強化などに注力してまいりました。
取引先とのアライアンスを活かし、PCを中心とした売れ筋商材の確保を積極的に行ってまいりましたが、急激な円安による調達価格の上昇分を販売価格に転嫁せざるを得ない状況などもあり、顧客の購買行動に抑制傾向が強まったことで、パソコン販売台数は昨年を下回りました。新規サービスのセキュリティ診断やセキュリティ教育事業においては、売上高が大幅に伸長いたしました。また、顧客に対してサイバーセキュリティソリューションへの営業活動を強化したことで、エンドポイント及びアプライアンス関係等のセキュリティ販売における売上高が前連結会計年度比16.7%増となりましたが、パソコン需要の低迷による売上減少分を補うことはできませんでした。
その結果、売上高は9,397,222千円(前連結会計年度比16.2%減)、営業損失は209,531千円(前連結会計年度の営業損失は65,713千円)となりました。
なお、売上高につきましては、「収益認識に関する会計基準」適用の影響により当連結会計年度の売上高が1,484,066千円減少しております。
アスクルエージェント事業
インターネットを用いた新たな手法により効率化を図り、既存取引先の稼働促進や新規取引先の拡大などの営業活動を強化し、日用品、衛生用品などの販売が好調に推移、生活消耗品の需要の高まりもあり、売上高、営業利益は堅調に推移いたしました。また、2022年8月31日にアスクル代理店事業を譲り受け、より一層の収益性の向上や競争力の強化に努めました。
その結果、売上高は1,116,908千円(前連結会計年度比87.9%減)、営業利益は157,217千円(前連結会計年度比36.3%増)となりました。
なお、売上高につきましては、「収益認識に関する会計基準」適用の影響により当連結会計年度の売上高が9,540,704千円減少しております。
その他
当社グループは、就労移行支援事業及び放課後等デイサービス事業を3施設運営しておりましたが、2022年9月1日に放課後等デイサービス事業2施設を事業譲渡いたしました。就労移行支援事業につきましては、同年9月1日以降も事業として継続し、経営資源を集中することで、事業の拡大を図っております。
その結果、売上高は84,932千円(前連結会計年度比7.4%減)、営業利益は7,058千円(前連結会計年度の営業損失は1,038千円)となりました。
②財政状態の状況
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産の残高は、6,504,530千円(前連結会計年度末は6,422,714千円)となり、81,815千円増加いたしました。「現金及び預金」が減少したものの「受取手形及び売掛金」及び「商品」が増加したことが大きな要因であります。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産の残高は、620,643千円(前連結会計年度末は410,352千円)となり、210,290千円増加いたしました。「有形固定資産」が減少したものの「無形固定資産」が増加したことが大きな要因であります。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債の残高は、3,757,847千円(前連結会計年度末は2,959,773千円)となり、798,074千円増加いたしました。「買掛金」及び「短期借入金」が増加したことが大きな要因であります。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債の残高は、591,557千円(前連結会計年度末は510,268千円)となり、81,289千円増加いたしました。「長期借入金」が増加したことが大きな要因であります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末に比べ587,257千円減少し、2,775,768千円となりました。自己資本比率は48.3%から38.1%に減少しました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて522,003千円減少し、2,505,267千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により使用した資金は737,495千円(前連結会計年度比814,102千円の資金減)となりました。これは主に、「減損損失」が増加したものの、「売上債権の増減額」及び「棚卸資産の増減額」が増加したこと並びに「税金等調整前当期純損失」及び「未払又は未収消費税等の増減額」が減少したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は399,406千円(前連結会計年度比316,083千円の資金減)となりました。これは主に、「事業譲受による支出」が増加したことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により得られた資金は614,898千円(前連結会計年度比646,275千円の資金増)となりました。これは主に、「短期借入金の増減額」が増加したこと並びに「株式の発行による収入」が減少したものの、「長期借入れによる収入」が増加したことによるものです。
④生産、受注及び販売の実績
当社グループは、法人向けの販売を中心に事業を営んでおり、生産実績及び受注実績は記載しておりません。
a.商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
前年同期比(%)
ITサービス事業(千円)
7,332,862
81.8
アスクルエージェント事業(千円)
-
-
その他(千円)
64,431
81.9
合計(千円)
7,397,294
42.8
b.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
前年同期比(%)
ITサービス事業(千円)
9,397,222
83.8
アスクルエージェント事業(千円)
1,116,908
12.1
その他(千円)
84,932
92.6
合計(千円)
10,599,063
51.6
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、必要と思われる見積りについては、合理的な基準に基づいて実施しております。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
イ 財政状態
当連結会計年度末の財政状態につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要②財政状態の状況」に記載のとおりであります。
ロ 経営成績
(売上高)
当連結会計年度の業績は、売上高は10,599,063千円(前連結会計年度比48.4%減)となりました。ITサービス事業は、国内景気の先行き不透明感から新規顧客向け活動の回復に遅れが見られることに加え、国際的な物流の停滞などで部材不足は継続し、PCの供給は不安定な状況が続きました。新型コロナウイルス感染症の影響などから中小企業の設備投資も消極的な状況は変わらず、また、急激な円安による調達価格の上昇分を販売価格に転嫁せざるを得ない状況などもあり、顧客の購買行動に抑制傾向が強まったことで、パソコン販売台数は昨年を下回ることとなりました。その結果、売上高は9,397,222千円(前連結会計年度比16.2%減)となりました。アスクルエージェント事業は、インターネットを用いた新たな手法により効率化を図り、既存取引先の稼働促進や新規取引先の拡大などの営業活動を強化しました。その結果、売上高は1,116,908千円(前連結会計年度比87.9%減)となりました。なお、売上高につきましては、「収益認識に関する会計基準」適用の影響により当連結会計年度の売上高が9,540,704千円減少しております。「収益認識に関する会計基準」適用前の当連結会計年度の売上高は、10,657,613千円(前連結会計年度比15.4%増)となります。
(売上総利益)
当連結会計年度の売上総利益は、2,908,996千円(前連結会計年度比5.3%増)となりました。売上原価は、7,690,067千円(前連結会計年度比56.5%減)となりました。また、売上高に対する売上原価の比率は前連結会計年度に比べ13.6ポイント減少し、売上総利益率は上昇いたしました。
(販売費及び一般管理費)
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、2,954,251千円(前連結会計年度比5.4%増)となりました。また、売上高に対する販売費及び一般管理費の比率は、前連結会計年度に比べ14.2ポイント増加し、27.9%となりました。
(営業利益)
当連結会計年度の営業損失は、45,255千円(前連結会計年度の営業利益は、48,607千円)となりました。
(営業外損益及び経常利益)
当連結会計年度の営業外収益は助成金収入や広告料収入等で8,683千円(前連結会計年度比19.2%減)、営業外費用は支払利息等で4,572千円(前連結会計年度比80.4%減)となりました。また、経常損失は41,144千円(前連結会計年度の経常利益は、36,056千円)となりました。
(税金等調整前当期純利益)
税金等調整前当期純損失は、438,135千円(前連結会計年度の税金等調整前当期純利益は、37,778千円)となりました。
(法人税等)
税金等調整前当期純利益に対する法人税等は、61,241千円(前連結会計年度比32.9%減)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純損失)
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損失は499,376千円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失は、53,481千円)となりました。
ハ キャッシュ・フロー
当連結会計年度末のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
③経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
④資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループの所要資金は、大きく分けて設備投資資金及び運転資金の2つとなっております。基本的には、営業活動によるキャッシュ・フローの増加を中心としながらも、事業拡大に伴う多額のシステム設備投資等の資金需要が生じた場合については長期借入などによって調達を行っております。今後事業の拡大をしていくにあたり、その所要資金については、これまで同様に、営業キャッシュ・フローの枠を基本としつつ、財務安全性や調達コストを勘案の上、資金調達を行ってまいります。
また、運転資金については、営業活動により得られるキャッシュ・フローのほか、金融機関からの借入による資金調達を基本としております。なお、当社グループは、運転資金の効率的かつ安定的な調達を行うため、複数の取引銀行と当座貸越契約を締結し、急な資金需要の不測の事態にも備えております。また、長期借入については、将来の金利上昇リスクをヘッジするため、主に固定金利での調達を行っております。
⑤経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況について
2022年度の達成・進捗状況は以下のとおりです。
売上高は計画比390百万円減(3.6%減)となりました。アスクルエージェント事業や子会社の業績は概ね順調に推移いたしました。アスクルエージェント事業においては、日用品、衛生用品などの販売が好調に推移、生活消耗品の需要の高まりもあり、売上、利益は堅調に推移いたしました。一方で、主力のITサービス事業においては国内景気の先行き不透明感から新規顧客向け活動の回復に遅れが見られることに加え、国際的な物流の停滞などもあり、サーバーおよびネットワーク機器の部材不足は継続し、供給は引き続き不安定な状況が続きました。また、急激な円安による調達価格の上昇分を販売価格に転嫁せざるを得ない状況などもあり、顧客の購買行動に抑制傾向が強まったことで、売上、利益が大きく減少いたしました。
営業利益は営業組織を機能別に分けることで統制レベルの向上を図り営業体制の強化に取組みました。また、新規顧客開拓の選任部隊により顧客数拡大を図ることで販売効率を改善、稼働顧客数の増加を目指してまいりましたが、50百万円減(-)となりました。また、経常利益は48百万円減(-)となりました。
指標
2022年度(当初計画)
2022年度(実績)
2022年度(計画比)
売上高
10,990百万円
10,599百万円
△390百万円(3.6%減)
営業利益
5百万円
△45百万円
△50百万円(-)
経常利益
7百万円
△41百万円
△48百万円(-)