【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において当社が判断したものであります。
(1) 経営成績の状況当第3四半期連結累計期間(自 2023年1月1日 至 2023年9月30日)における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による影響も緩和され、社会経済活動の正常化が進んでおります。当社グループについては、主たる事業領域であるPHR(パーソナル・ヘルス・レコード)関連業界において、いわゆる「団塊の世代」がすべて75歳以上となり超高齢社会を迎える「2025年問題」を見据え、給付と負担のバランスを図りながら制度の持続可能性を確保するための医療制度改革が進む一方、高齢化に伴い慢性疾患罹患率が増加し、生活の中で生活の質(QOL)の維持・向上を図っていく必要性が高まるなど医療に対するニーズの変化が着実に進みました。また、医療資源の不足等により医療機関による患者への遠隔モニタリングの必要性は高まっており、当社グループが進めるPHRサービスが社会的課題の解決策の一つとして認識されております。このような事業環境下、当社グループは「Empower the Patients」を事業ミッションとして掲げ、医療関係者をはじめ、製薬企業、医療機器メーカー等とともにPHRプラットフォームサービスの普及に取り組みました。PHRプラットフォームサービスにおいては、政府が運営するマイナポータルに接続し、予防接種歴、薬剤情報及び特定健診情報の取得・閲覧が可能となりました。これにより、患者(個人)はもとより、その健康維持改善を支援する団体や医療機関等が様々な保健医療情報(健診・予防接種情報、レセプト・処方箋情報、電子カルテ・検査情報など)とライフログデータ(日々の食事の内容やカロリー、血圧や血糖値など)にシームレスにアクセスでき、運動管理、健康維持、服薬管理、医療従事者による患者の健康状態や治療状況の把握・介入などの目的で活用することができるようになります。また、PHRサービス事業を展開する企業と共に多様なステークホルダー間の協調を促進し、PHRサービス産業の発展を通じて、国民の健康寿命の延伸や豊かで幸福な生活(Well-being)に貢献することを目的として「PHRサービス事業協会」の設立に参画し、執行役・副会長に当社代表取締役・比木武が就任しました。今後は本協会の執行役として、またPHRサービスのリーディングカンパニーとして、さらなる利便性を追求し、患者の同意を前提とした上での医療データポータビリティを促進するため、ステークホルダー(医療機関関係者・学術機関・行政など)との対話を重ね、患者の皆様にいっそう安心してご利用いただける医療環境の構築を目指していきます。株式会社スズケンとの間でかねて締結しておりました業務提携契約を更新するにあたり、基本合意書を締結しました。資本業務提携の更新に伴って、保有するデータの利活用をはじめ、より高度なシステム連携を両社間で実現し、双方のデジタルビジネスを加速してまいります。具体的には、これまで需要予測のために利用されてきた医薬品の流通情報に、患者起点の情報である処方・服薬・通院・治療情報をはじめとしたReal World Dataを追加することで、医療デマンドチェーン情報を構成いたします。適正在庫量確保と余剰在庫を減らすことも可能となり、ひいては医薬品安定供給に貢献するなど、PHRによる新たな価値創造に取り組んでまいります。また、当社のPHRサービスである「Welbyマイカルテ」と株式会社スズケンのヘルスケア総合プラットフォーム「コラボポータル」の連携を強化し、医療者への利便性を向上、医療現場での活用を促進するに伴って、PHRの社会実装を一層加速します。
当社グループの疾患ソリューションサービスの売上高は275,335千円となりました。製薬企業から受注を受けた既存PHRサービスの改修や機能追加、既存案件の保守運用が売上の主な構成要素となっております。製薬業界全体のDX(Digital Transformation)は継続しており、顧客の需要は高いため、売上パイプライン拡充への取組を継続して実施します。従来からの取組として、PHRを製薬企業の新薬プロモーションにおけるPSP(Patient Support Program)や臨床研究に必要なePRO(Patient Reported Outcome)データ収集ツールとして利用するなどの事業を、従前からの対象疾患領域に加えて自己免疫疾患、オンコロジー、慢性疼痛等の多岐にわたる疾患領域において継続展開することにより、売上パイプライン及びPHRを利用する医療機関が全国で拡大しています。また、大学病院等と連携した臨床研究を推進するとともに、さらなるPHRの臨床実装を拡大しております。
オンコロジー領域においては、医療機関等へマイカルテONCの普及活動を行うことにより契約医療機関は増加し、臨床実装は拡大しております。具体的には「オンコロジーPHRコンソーシアム」の運営並びに規模拡大を行うこと及びオンコロジー領域の学会を通じた実臨床事例の発表などの普及活動を実施しております。患者や医療従事者を含む、がん治療に関わるステークホルダーがマイカルテONCを利用することにより、患者の記録した日々の症状日誌や医療従事者の記録した治療データがPHRとして蓄積され、がん治療領域におけるリアルワールドデータとして今後の治療・研究等の推進に利用されることを見込んでいます。実臨床におけるPSPと臨床研究の両方の目的を同時に満たすPHRソリューションを展開することで、新たなマーケットを創出し、更なる売上パイプライン拡充を行います。 2023年7月に株式会社リハサクへの出資を行い、リハビリテーション領域でのPHR活用での協業を目的とした資本業務提携契約を締結することで合意しております。リハビリテーションは、整形外科領域を中心に疼痛治療など幅広い疾患治療ニーズを対象にしていることに加えて、循環器領域での心臓リハビリテーションや、オンコロジー領域でのがんリハビリテーションなど、今後多方面での疾患領域でのニーズが期待されており、両社協業により対象疾患領域でのサービス開発及び拡大を図っていきます。また、本出資は、かねてからの当社の強みである薬物療法のみならずさまざまな療法を事業に包含する機会の一環として捉えるものです。今後も当社サービスを利用する患者を取り巻くステークホルダーによる患者体験の向上に対して投資を推進します。
当社グループのWelbyマイカルテサービスの売上高は、主に提供したPHRプラットフォームの保守運用売上により71,317千円となりました。この基盤提供については、生命保険会社を始めとした自社でPHRサービスを展開したい顧客の需要は高く、今後も収益の拡大を見込んでおります。サービス普及の観点からは、広範な顧客網を有する株式会社スズケン、フクダ電子株式会社などのパートナー企業との協業を重点地域においてより強化するだけではなく、大学病院や学会等との協業を推進しております。引き続き、新たな医療機関への普及を積極的に行いながら、これまでに導入を完了した医療機関を対象に実臨床におけるPHRの利用価値の訴求・情報提供を推進しました。また、糖尿病領域向けには株式会社三和化学研究所や各血糖測定器メーカーとの連携により、糖尿病専門医に特化した普及や利用促進が加速しております。また、PHRと電子カルテの連携推進を通じて医療の質的向上に寄与すると見込んでおり、PHRのデータポータビリティ実現に向けて更なる普及に取り組んでおります。加えて今後は、処方箋送信機能や決済機能などの機能強化を行いながら株式会社スズケンと保険薬局向けサービスを共同展開し、保険薬局へのWelbyマイカルテ普及を推進する予定です。Welbyマイカルテ利用者が登録したかかりつけ医療機関は2023年9月末時点で約27,100施設(無料利用施設を含み、重複を除く)となっています。なお、2023年9月末時点で各アプリの合計ダウンロード数は約102万回に達しております。PHRサービスと他分野の協業の一環として、患者や利用者個人の健康状態や好みに合わせてパーソナライズ化された情報やユーザー体験を提供することや、そのサービス提供によるアウトカム向上(健康状態の改善)を目指すヘルスケア事業を展開しております。具体的には、生命保険分野において業務提携関係になる大同生命保険株式会社と保険契約者の生活習慣の改善に向けた取り組みや新たな保険商品・サービスの開発などを目的としたWelbyマイカルテ利用者の生活習慣・重症化予防効果についての共同研究を行った結果を踏まえ、2型糖尿病、高血圧症、脂質異常症などを対象に生活習慣を改善するための保険商品と連動したサービス開発などを継続推進するとともに、対象疾患の拡大を進めております。また、食品など関連分野においては、Welbyマイカルテを利用する2型糖尿病、高血圧症、脂質異常症などの生活習慣病患者や予防・健康管理などで利用する方々を対象に、Welbyマイカルテとのデータ連携機能に対応する血圧計などの各種測定器や食品を提供するなど、健康管理に関する様々な利用者のニーズにこたえております。生活習慣改善プログラムや臨床研究などへのPHRサービス利用の事業モデルを確立し、食品業界の企業と案件を継続して推進しております。上記のようなパーソナライズ化されたヘルスケア事業をより一層推進するため、100%子会社となる株式会社Welbyヘルスケアソリューションズを設立し、未病・予防を含む生活習慣病領域におけるPHRサービス利用の拡大とPHRを活用したサービス開発を推進しております。また、普及拡大とサービス開発の進展及び他社とのアライアンス等により中長期的にはWelbyマイカルテが生活習慣病領域における業界標準となることを目指します。
これらの結果、当第3四半期連結累計期間の売上高は346,652千円、売上総利益については203,312千円となりました。販売費及び一般管理費については、業容拡大のための開発投資を行ったこと等により606,259千円となりました。開発投資の内、プラットフォーム開発投資は、共通基盤での各種ガイドラインへの適用拡大、疾患治療向けPHRの患者UXナレッジの標準化、マイナポータルや予約決済システム連携などの機能整備、セキュリティー強化など、PHRプラットフォーム基盤の継続強化のための開発投資となります。当該投資による開発コストの低減により収益性は向上しております。今後、当該投資の促進により収益性の更なる向上及び基盤提供商材の充実による収益貢献を見込んでおります。営業損失は402,947千円、経常損失は404,103円、親会社株主に帰属する四半期純損失は388,818千円となりました。この内、マイカルテやプラットフォーム開発などへの先行投資額は164,417千円となりました。当社グループの通常の取引形態として、大口取引先である外資系製薬企業の決算が集中する第4四半期連結会計期間に売上高が顕著に大きくなる傾向があります。そのため、第4四半期連結会計期間の売上高と他の四半期連結会計期間の売上高との間に著しい相違が存在するという売上の季節的変動性が見られます。一方で販売費、一般管理費などの固定費は年度を通じてほぼ一定で発生するため、結果として利益貢献は第4四半期連結会計期間に比重が大きくなります。当社グループはそれらの傾向を織り込んで事業を推進しております。なお、当社グループは、PHRプラットフォームサービス事業の単一セグメントであるため、セグメント毎の記載はしておりません。
2020年12月期、2021年12月期及び2022年12月期における四半期別の売上高は、次のとおりであります。
単位:百万円(売上構成率:%)
第1四半期
第2四半期
第3四半期
第4四半期
通期
2020年12月期
134(15.5)
173(20.1)
143(16.6)
413(47.8)
864(100)
2021年12月期
205(18.0)
184(16.2)
322(28.3)
427(37.5)
1,139(100)
2022年12月期
183(17.5)
226(21.6)
133(12.7)
507(48.3)
1,050(100)
(2) 財政状態の状況
① 資産の部当第3四半期連結会計期間末の流動資産の残高は851,866千円となりました。これは主に、現金及び預金714,655千円、売掛金74,237千円等であります。固定資産の残高は123,982千円となりました。これは主に、投資その他の資産73,345千円、無形固定資産47,877千円等であります。
② 負債の部当第3四半期連結会計期間末の流動負債の残高は94,272千円となりました。これは主に、流動負債その他49,225千円、買掛金28,638千円、契約負債10,098千円等であります。固定負債の残高は0円となりました。
③ 純資産の部当第3四半期連結会計期間末の純資産の残高は881,576千円となりました。これは主に、資本金916,650千円、資本剰余金913,250千円、利益剰余金△973,050千円等であります。
(3) 事業上及び財務上の対処すべき課題当第3四半期連結累計期間において、当社グループが対処すべき課題について重要な変更はありません。
(4) 研究開発活動該当事項はありません。
(5) 主要な設備の新設・除却該当事項はありません。
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