【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期会計期間の末日現在において当社が判断したものであります。
(1) 経営成績の状況当第1四半期累計期間(自 2023年1月1日 至 2023年3月31日)における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による影響も緩和され、社会経済活動の正常化が進んでおります。当社については、主たる事業領域であるPHR(パーソナル・ヘルス・レコード)関連業界において、いわゆる「団塊の世代」がすべて75歳以上となり超高齢社会を迎える「2025年問題」を見据え、給付と負担のバランスを図りながら制度の持続可能性を確保するための医療制度改革が進む一方、高齢化に伴い慢性疾患罹患率が増加し、生活の中で生活の質(QOL)の維持・向上を図っていく必要性が高まるなど医療に対するニーズの変化が着実に進みました。また、医療資源の不足等により医療機関による患者への遠隔モニタリングの必要性は高まっており、当社が進めるPHRサービスが社会的課題の解決策の一つとして認識されております。このような事業環境下、当社は「Empower the Patients」を事業ミッションとして掲げ、医療関係者をはじめ、製薬企業、医療機器メーカー等とともにPHRプラットフォームサービスの普及に取り組みました。また、PHRサービス産業の健全な発展を通じて国民の健康増進や豊かで幸福な生活(Well-being)に貢献することを目的として「PHRサービス事業協会(仮称)」をPHRサービス事業を展開する企業と共に設立する予定です。これにより官民一体でPHRの社会実装を加速させることで、患者の治療課題解決に向けて更に貢献できるものと期待しています。
疾患ソリューションサービスの売上高は、前年同四半期にあった大型案件の受注が当第一四半期にはなかったこと等により、86,036千円と、前年同期と比べて40,410千円(32.0%)の減収となりました。製薬企業から受注を受けた既存PHRサービスの改修や機能追加、既存案件の保守運用が売上の主な構成要素となっております。製薬業界全体のDX(Digital Transformation)は継続しており、顧客の需要は高いため、売上パイプライン拡充への取組を継続して実施します。従来からの取組として、PHRを製薬企業の新薬プロモーションにおけるPSP(Patient Support Program)や臨床研究に必要なePRO(Patient Reported Outcome)データ収集ツールとして利用するなどの事業を、従前からの対象疾患領域に加えて自己免疫疾患、オンコロジー、慢性疼痛等の多岐にわたる疾患領域において継続展開しており、PHRを利用する医療機関が全国で拡大しています。また、大学病院等と連携した臨床研究を推進するとともに、さらなるPHRの臨床実装を拡大しております。 特にオンコロジー領域においては、PHRを通じた患者中心のがん診療実現と治療アウトカムの向上を目的とした「オンコロジーPHRコンソーシアム」を設立し、その最初の取り組みとして、国立研究開発法人国立がん研究センターを始めとするがん診療連携拠点病院と共同でPHRレジストリ研究を開始します。患者や医療従事者を含む、がん治療に関わるステークホルダーがマイカルテONCを利用することにより、患者の記録した日々の症状日誌や医療従事者の記録した治療データがPHRとして蓄積され、がん治療領域におけるリアルワールドデータとして今後の治療・研究等の推進に利用されることを見込んでいます。
オンコロジーPHRコンソーシアムの活用に代表されるような、実臨床におけるPSPと臨床研究の両方の目的を同時に満たすPHRソリューションを展開することで、新たなマーケットを創出し、売上パイプライン拡充を行います。
Welbyマイカルテサービスの売上高は、主にPHR基盤プラットフォームのOEM提供の保守運用計上により19,899千円と、前年同四半期と比べて37,091千円(65.1%)の減収となりました。Welbyマイカルテサービスを利用したPHR基盤プラットフォームのOEM提供については、生命保険会社を始めとした自社でPHRサービスを展開したい顧客の需要は高く、今後も収益の拡大を見込んでおります。サービス普及の観点からは、広範な顧客網を有する株式会社スズケン、フクダ電子株式会社などのパートナー企業との協業だけではなく、大学病院や学会等との協業を推進しております。引き続き、新たな医療機関への普及を積極的に行いながら、これまでに導入を完了した医療機関を対象に実臨床におけるPHRの利用価値の訴求・情報提供を推進しました。また、糖尿病領域向けには株式会社三和化学研究所や各血糖測定器メーカーとの連携により、糖尿病専門医に特化した普及や利用促進が加速しております。また、PHRと電子カルテの連携推進を通じて医療の質的向上に寄与すると見込んでおり、PHRのデータポータビリティ実現に向けて更なる普及に取り組んでおります。加えて今後は、株式会社スズケンと保険薬局向けサービスを共同展開し、保険薬局へのWelbyマイカルテ普及を推進する予定です。Welbyマイカルテ利用者が登録したかかりつけ医療機関は2023年3月末時点で約26,500施設(無料利用施設を含み、重複を除く)となっています。なお、2023年3月末時点で各アプリの合計ダウンロード数は約100万回に達しております。国民への新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が一巡し、経済活動が一部再開している中で、普及のペースは落ち着いております。PHRサービスと他分野の協業の一環として、患者や利用者個人の健康状態や好みに合わせてパーソナライズ化された情報やユーザー体験を提供することや、そのサービス提供によるアウトカム向上(健康状態の改善)を目指すヘルスケア事業を展開しております。具体的には、生命保険分野において業務提携関係になる大同生命保険株式会社と保険契約者の生活習慣の改善に向けた取り組みや新たな保険商品・サービスの開発などを目的としたWelbyマイカルテ利用者の生活習慣・重症化予防効果についての共同研究を行った結果を踏まえ、2型糖尿病、高血圧症、脂質異常症などを対象に生活習慣を改善するための保険商品と連動したサービス開発などを継続推進するとともに、対象疾患の拡大を進めております。また、食品など関連分野においては、Welbyマイカルテを利用する2型糖尿病、高血圧症、脂質異常症などの生活習慣病患者や予防・健康管理などで利用する方々を対象に、Welbyマイカルテとのデータ連携機能に対応する血圧計などの各種測定器や食品を提供するなど、健康管理に関する様々な利用者のニーズにこたえております。生活習慣改善プログラムや臨床研究などへのPHRサービス利用の事業モデルを確立し、食品業界の企業と案件を継続して推進しております。パーソナライズ化されたヘルスケア事業を展開するための提携先である株式会社電通と個別案件の事業化に向けた検討を継続し、日本国内におけるPHRの認知向上と活用促進に向けて、企業・自治体・学会・メディアなどと協議をしております。
これらの結果、当第1四半期累計期間の売上高は105,935千円(前年同四半期比42.2%減)、売上総利益については売上高減少に伴い63,772千円(前年同四半期比48.2%減)となりました。販売費及び一般管理費については、業容拡大のための開発投資を行ったこと等により196,090千円(前年同四半期比2.7%増)となりました。開発投資の内、プラットフォーム開発投資は、共通基盤での各種ガイドラインへの適用拡大、疾患治療向けPHRの患者UXナレッジの標準化、システム連携機能整備など、PHRプラットフォーム基盤の継続強化のための開発投資となります。当該投資による開発コストの低減により収益性は向上しております。今後、当該投資の促進により収益性の更なる向上を見込んでおります。営業損失は132,318千円(前年同四半期は営業損失67,775千円)、経常損失は132,683千円(前年同四半期は経常損失67,685千円)四半期純損失は、132,677千円(前年同四半期は四半期純損失67,685千円)となりました。この内、マイカルテやプラットフォーム開発などへの先行投資額は43,055千円となりました。当社の通常の取引形態として、大口取引先である外資系製薬企業の決算が集中する第4四半期会計期間に売上が顕著に大きくなる傾向があります。そのため、第4四半期会計期間の売上高と他の四半期会計期間の売上高との間に著しい相違が存在するという売上の季節的変動性が見られます。一方で販売費、一般管理費などの固定費は年度を通じてほぼ一定で発生するため、結果として利益貢献は第4四半期会計期間に比重が大きくなります。当社はそれらの傾向を織り込んで事業を推進しております。なお、当社は、PHRプラットフォームサービス事業の単一セグメントであるため、セグメント毎の記載はしておりません。
2020年12月期、2021年12月期及び2022年12月期における四半期別の売上高は、次のとおりであります。
単位:百万円(売上構成率:%)
第1四半期
第2四半期
第3四半期
第4四半期
通期
2020年12月期
134(15.5)
173(20.1)
143(16.6)
413(47.8)
864(100)
2021年12月期
205(18.0)
184(16.2)
322(28.3)
427(37.5)
1,139(100)
2022年12月期
183(17.5)
226(21.6)
133(12.7)
507(48.3)
1,050(100)
(2) 財政状態の状況(資産)当第1四半期会計期間末の資産については、総資産が1,240,478千円となり、前事業年度末と比較し155,038千円の減少となりました。流動資産の残高は、前事業年度末に比べ156,178千円減少し、1,195,992千円となりました。主な増減内訳は、売掛金が225,432千円減少したことによるものであります。固定資産の残高は、前事業年度末に比べ1,140千円増加し、44,485千円となりました。主な増減内訳は、有形固定資産が1,140千円増加したことによるものであります。(負債)負債については、97,375千円となり、前事業年度末と比較して24,022千円の減少となりました。流動負債の残高は、前事業年度末に比べ22,812千円減少し、97,375千円となりました。主な増減内訳は、未払消費税等が16,745千円減少したことによるものであります。固定負債の残高は、前事業年度末に比べ1,210千円減少し、0円となりました。主な減少内訳は、長期借入金の返済による減少であります。(純資産)純資産の残高は、前事業年度末に比べ131,016千円減少し、1,143,102千円となりました。主な減少内訳は、繰越利益剰余金が132,677千円減少したことによるものであります。
(3) 事業上及び財務上の対処すべき課題当第1四半期累計期間において、当社が対処すべき課題について重要な変更はありません。
(4) 研究開発活動該当事項はありません。
(5) 主要な設備の新設・除却該当事項はありません。
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