【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
(1) 経営成績当事業年度における我が国経済は、ワクチン接種率の向上とともに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の厳しい状況から徐々に回復の兆しが見られたものの、今後の景気動向については未だ先行き不透明な状況が続いております。当社については、主たる事業領域であるPHR(パーソナル・ヘルス・レコード)関連業界において、いわゆる「団塊の世代」がすべて75歳以上となり超高齢社会を迎える「2025年問題」を見据え、給付と負担のバランスを図りながら制度の持続可能性を確保するための医療制度改革が進む一方、高齢化に伴い慢性疾患罹患率が増加し、生活の中で生活の質(QOL)の維持・向上を図っていく必要性が高まるなど医療に対するニーズの変化が着実に進みました。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染状況は収まってきたものの、依然として医療資源の不足等により医療機関による患者への遠隔モニタリングの必要性は高まっており、当社が進めるPHRサービスが社会的課題の解決策の一つとして認識されております。このような事業環境下、当社は「Empower the Patients」を事業ミッションのもと、医療関係者をはじめ、製薬企業、医療機器メーカー等とともに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応なども含めたPHRプラットフォームサービスの普及に取り組みました。また、PHRサービス産業の健全な発展を通じて国民の健康増進や豊かで幸福な生活(Well-being)に貢献することを目的として「PHRサービス事業協会(仮称)」をPHRサービス事業を展開する企業と共に設立する予定です。これにより官民一体でPHRの社会実装を加速させることで、患者の治療課題解決に向けて更に貢献できるものと期待しています。
疾患ソリューションサービスにおいては、業界全体のDX(Digital Transformation)の加速化などもあり、製薬企業から受注を受けた既存PHRサービスの改修や機能追加、慢性疼痛を対象にした新規PHRサービス提供が売上の主な構成要素となっております。オンコロジー領域においては、PSP(Patient Support Program)として、プラットフォームサービス「WelbyマイカルテONC」を製薬企業に展開するなどの継続した活動により更なる拡大を図っています。また、大学病院等と連携した乳がんや肺がんに関する臨床研究を推進するとともに、製薬企業スポンサーによる複数施設を対象とした臨床研究を開始しております。具体的には、神戸大学や昭和大学によるがん領域の臨床研究にて、「WelbyマイカルテONC」がePRO(electronic Patient Reported Outcome:電子的な患者報告アウトカム)機能として採用されたことや、製薬企業が実臨床において利用していた「WelbyマイカルテONC」が臨床研究においても利用が決定するなど臨床現場での普及が拡大しております。サービス普及の観点からは、がん領域におけるPHRの普及浸透と活用支援を通じて患者中心のがん診療実現と適正なデータ活用によるがん診療の向上に寄与することを目的にオンコロジスト向けコンソーシアムを賛同した製薬企業のスポンサーの元に運営しております。こちらのコンソーシアムを契機にがん拠点病院や製薬企業などを中心に普及を強化しております。前年同期よりストック売上高は着実に増加した一方で、前年同期に前々期からの期ズレ案件が多く売上計上されたこと等により疾患ソリューションサービスの売上高は、647,495千円と、前年同期と比べて170,232千円(20.8%)の減収となりました。
Welbyマイカルテサービスにおいては、医療機関向けにサービス提供を計画している顧客に対し、当社の医療者向け管理機能への使用許諾を行ったことで、今期の収益が拡大しております。また、前年に開始した自社で新たにPHRサービスの展開を計画している顧客へのPHR基盤プラットフォームのOEM提供についても、継続して案件を受注したことなどにより今期の収益が拡大しております。具体的には、大阪府吹田市の多世代居住型健康スマートタウンなど各地域にて個人及び医療機関向けのPHRデータポータビリティ機能の提供を推進しております。今後も自社でPHRサービスを展開したい顧客の需要は旺盛であり、収益の拡大を見込んでおります。サービス普及の観点からは、広範な顧客網を有するパートナー企業との協業を推進しております。株式会社スズケン、フクダ電子株式会社などと普及活動を継続しました。引き続き、新たに導入をする医療機関が増加するほか、これまでに導入を完了した医療機関を対象に実臨床におけるPHRの利用価値の訴求・情報提供を推進しました。また、糖尿病領域向けには株式会社三和化学研究所や各血糖測定器メーカーとの連携により、糖尿病専門医に特化した普及や利用促進が加速しております。また、PHRと電子カルテの連携推進を通じて医療の質的向上に寄与すると見込んでおり、PHRのデータポータビリティ実現に向けて更なる普及に取り組んでおります。加えて今後は、株式会社スズケンとWelbyマイカルテを活用した保険薬局向け処方箋情報送信サービスの普及に向けた共同展開を開始し、保険薬局への普及を推進する予定です。Welbyマイカルテ利用者が登録したかかりつけ医療機関は2022年12月末時点で約26,200施設(無料利用施設を含み、重複を除く)となっています。なお、2022年12月末時点で各アプリの合計ダウンロード数は約98万回に達しております。国民への新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が一巡し、経済活動が一部再開している中で、普及のペースは落ち着いております。PHRサービスと他分野の協業の一環として、患者や利用者個人の健康状態や好みに合わせてパーソナライズ化された情報やユーザー体験を提供することや、そのサービス提供によるアウトカム向上(健康状態の改善)を目指すヘルスケア事業を展開しております。具体的には、生命保険分野において業務提携関係になる大同生命保険株式会社と保険契約者の生活習慣の改善に向けた取り組みや新たな保険商品・サービスの開発などを目的としたWelbyマイカルテ利用者の生活習慣・重症化予防効果についての共同研究を行った結果を踏まえ、2型糖尿病、高血圧症、脂質異常症などを対象に生活習慣を改善するための保険商品と連動したサービス開発などを継続推進するとともに、対象疾患の拡大に進めております。また、食品など関連分野においては、Welbyマイカルテを利用する2型糖尿病、高血圧症、脂質異常症などの生活習慣病患者や予防・健康管理などで利用する方々を対象に、Welbyマイカルテとのデータ連携機能に対応する血圧計などの各種測定器や食品を提供するなど、健康管理に関する様々な利用者のニーズにこたえております。生活習慣改善プログラムや臨床研究などへのPHRサービス利用の事業モデルを確立し、食品業界の企業と案件を推進しました。具体的には、ダイドードリンコ株式会社とPHRを活用した生活習慣病改善プログラムを開発し、実施しました。今後更なる収益化へ向けての取り組みを継続して行っております。パーソナライズ化されたヘルスケア事業を展開するための提携先である株式会社電通と個別案件の事業化に向けた検討を継続し、日本国内におけるPHRの認知向上と活用促進に向けて、企業・自治体・学会・メディアなどと協議をしております。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種5回目が実施される中、当社の提供する新型コロナワクチン接種前後の症状記録(問診)・管理ツールに5回目接種まで対応可能な機能を実装しました。また、新型コロナチェックツールに各種検査結果(PCR検査/抗原検査/抗体検査)を記録・共有することができる機能を実装しました。これらにより、新型コロナウイルスの予防から罹患後の情報共有までを一気通貫でサポートするプラットフォームとして普及を推進しております。基盤提供モデルの拡販により、Welbyマイカルテサービスの売上高は403,498千円と、前年同期と比べて82,037千円(25.5%)の増収となりました。
これらの結果、当事業年度の売上高は1,050,994千円(前年同期比7.7%減)となりました。昨年より取り組んでいた原価低減が着実に進んだことや高収益案件を受注したこと等により売上総利益については、755,440千円(前年同期比10.5%増)、売上総利益率は71.9%(前年同期比11.8%増)と前年同期比大幅な改善となりました。販売費及び一般管理費については、業容拡大のための開発投資を行う一方、体制の再構築及び関連する人員配置の見直しにより694,532千円(前年同期比12.9%減)となりました。開発投資の内、プラットフォーム開発投資は、共通基盤での各種ガイドラインへの適用拡大、疾患治療向けPHRの患者UXナレッジの標準化、システム連携機能整備など、PHRプラットフォーム基盤の継続強化のための開発投資となり、こちらにより収益性の更なる向上を見込んでおります。営業利益は60,907千円(前事業年度は営業損失113,124千円)、経常利益は73,641千円(前事業年度は経常損失109,671千円)となりました。当期純利益は有形固定資産の減損損失を計上したこと等により、33,909千円(前事業年度は当期純損失130,675千円)となりました。 また、当事業年度にて計上したマイカルテやプラットフォーム開発などへの先行投資額は134,494千円となりまし た。なお、当社は、PHRプラットフォームサービス事業の単一セグメントであるため、セグメント毎の記載はしておりません。
生産、受注及び販売の状況の実績は、次のとおりであります。① 生産実績当社は、生産活動を行なっておりませんので、該当事項はありません。② 受注実績当社は、受注から売上高計上までの期間が短期であるため、当該記載を省略しております。③ 販売実績当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
当事業年度(自 2022年1月1日 至
2022年12月31日)
販売高(千円)
前年同期比(%)
PHRプラットフォームサービス事業
1,050,994
92.3
(注) 最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前事業年度(自 2021年1月1日 至 2021年12月31日)
当事業年度(自 2022年1月1日 至 2022年12月31日)
金額(千円)
割合(%)
金額(千円)
割合(%)
株式会社コラボプレイス
―
―
260,000
24.7
興和株式会社
225,000
19.8
106,396
10.1
株式会社インテージヘルスケア
157,416
13.8
72,787
6.9
日本イーライリリー株式会社
141,360
12.4
72,992
6.9
(2) 財政状態① 資産当事業年度末の資産については、総資産が1,395,516千円となり、前事業年度末と比較し1,408千円の増加となりました。流動資産の残高は、前事業年度末に比べ31,937千円増加し、1,352,171千円となりました。主な増減内訳は、現金及び預金が129,896千円減少した一方で、売掛金が160,292千円増加したことによるものであります。固定資産の残高は、前事業年度末に比べ30,528千円減少し、43,345千円となりました。主な増減内訳は、敷金差入保証金が32,528千円減少したことによるものです。② 負債負債については、121,398千円となり、前事業年度末と比較して13,431千円の減少となりました。流動負債の残高は、前事業年度末に比べ6,291千円減少し、120,188千円となりました。主な増減内訳は、未払消費税等が5,759千円減少したことによるものであります。固定負債の残高は、前事業年度末に比べ7,140千円減少し、1,210千円となりました。これは、長期借入金の返済による減少であります。③ 純資産純資産の残高は、前事業年度末に比べ14,840千円増加し、1,274,118千円となりました。主な増減内訳は、繰越利益剰余金が33,909千円増加した一方で、新株予約権が19,069千円減少したことによるものであります。
(3) キャッシュ・フロー当事業年度末における現金及び現金同等物は、830,820千円となり、前事業年度末と比較して129,896千円の減少となりました。各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。① 営業活動によるキャッシュ・フロー営業活動によるキャッシュ・フローは、114,112千円の支出(前事業年度は95,947千円の支出)となりました。主な要因は、売上債権が150,456千円増加し資金が減少した一方で、税引前当期純利益の計上38,151千円により資金が増加したことによるものであります。② 投資活動によるキャッシュ・フロー投資活動によるキャッシュ・フローは、7,043千円の支出(前事業年度は34,557千円の支出)となりました。主な要因は、差入保証金の回収による収入50,791千円により資金が増加した一方で、有形固定資産の取得による支出32,752千円、差入保証金の差入による支出23,082千円により資金が減少したことによるものであります。③ 財務活動によるキャッシュ・フロー財務活動によるキャッシュ・フローは、8,739千円の支出(前事業年度は7,140千円の収入)となりました。主な要因は、借入金の返済による支出7,140千円によるものであります。
(4) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度において当社が判断したものであります。① 当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容a. 売上高当事業年度の売上高は、前事業年度に比べて88,194千円減少し1,050,994千円(前年同期比92.3%)となりました。売上高の分析については、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績」をご参照ください。b. 売上原価、売上総利益売上原価は、前事業年度に比べて159,720千円減少し295,553千円(前年同期比64.9%)となりました。売上原価の主たる減少要因は、外注費が145,670千円減少したためであります。以上の結果、売上総利益は前事業年度に比べて71,526千円増加し755,440千円(前年同期比110.5%)となりました。c. 販売費及び一般管理費、営業利益販売費及び一般管理費は、前事業年度に比べて102,505千円減少し694,532千円(前年同期比87.1%)となりました。主たる要因としては、株式報酬費用が51,482千円、業務委託費が37,888千円減少したためであります。以上の結果、営業利益は前事業年度に比べて174,031千円増加し60,907千円(前事業年度は営業損失113,124千円)となりました。d. 営業外損益、経常利益営業外収益は、前事業年度に比べ16,071千円増加し19,610千円(前事業年度は3,539千円)となりました。主たる要因は、役員報酬返納額が19,500千円増加したためであります。営業外費用は、前事業年度に比べ6,790千円増加し6,877千円(前事業年度は86千円)となり、主たる要因は、本社移転費用が5,067千円増加したためであります。以上の結果、経常利益は73,641千円(前事業年度は経常損失109,671千円)となりました。e. 当期純利益当事業年度の法人税、住民税及び事業税(法人税等調整額を含む。)は4,241千円となりました。以上の結果、当期純利益は33,909千円(前事業年度は当期純損失130,675千円)となりました。② 財政状態の状況「第3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 財政状態」に記載のとおりです。③ 資本の財源及び資金の流動性当社の運転資金については、自己資金、金融機関からの借入金、新株発行による調達資金により充当することとしております。なお、当社の資金の流動性については、「第3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (3) キャッシュ・フロー」に記載のとおりです。現時点において重要な資本的支出の予定はございません。④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。当社の財務諸表の作成にあたり、決算日における資産・負債の報告数値、並びに報告期間における収益・費用の報告数値は、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づき、見積り及び判断が必要となる場合があります。経営者は、これらの見積りについての過去実績や状況に応じて合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。なお、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う会計上の見積りに与える影響は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因について「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおり、事業内容、事業運営・組織体制等、様々なリスク要因が経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。そのため、当社は常に市場動向や業界動向を注視しつつ、優秀な人材の確保と適切な教育を実施するとともに、事業運営体制の強化と整備を進めることで、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因に適切な対応を図ってまいります。⑥ 経営者の問題意識と今後の方針について当社の経営者は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通り、当社が今後更なる成長と発展のためには、厳しい環境の中で、様々な課題に対処していくことが必要であると認識しております。そのために、PHRプラットフォームサービスにおける対象疾患領域の拡大とサービスメニューの強化、及び患者PROデータ活用分野の拡大等を行ってまいります。⑦ 経営戦略の現状と見通し当社は設立以来「Empower the Patients」を事業ミッションに掲げ、当社のPHRプラットフォームサービスの利活用を通じて、患者及び医療者の治療継続への支援、及びアウトカムの改善に努めてまいりたいと考えております。「患者の治療アウトカムの改善」をコアコンセプトとして、様々の医療機関と連携して患者及び医療者により良いサービスを提供するとともに、企業と連携してデータの活用を図ってまいります。
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