【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、当社の退職給付債務の計算方法を簡便法から原則法に変更しております。当該会計方針の変更により、遡及処理後の数値で前年同期との比較分析を行っております。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、為替市場における急激な円安進行や部材不足、材料価格の高騰などもほぼ落ち着き、企業の生産活動やインバウンドによる経済活動に加え、日経平均株価もバブル期後の最高値を更新するなど概ね回復基調になりました。しかしながら、日本国内の物価高や人手不足、世界的な景気の不透明感から、引き続き先行きの見えない状況が続きました。
一方、世界経済においても、各国におけるインフレ抑制政策の効果は徐々に現れてきたものの、引き続き不透明な状況でした。米国では、経済状況は引き続き好調であったものの、これまで実施してきた金融政策による経済活動への今後の影響がいまだ不透明な状況となっています。欧州では、消費は回復傾向にあるものの、継続的な高インフレ状態により景気回復は不透明な状況でした。中国では、新型コロナウイルス感染症への規制がほぼ撤廃され、経済活動再開への期待感が高まりつつありましたが、米国との経済対立や不動産市況の悪化による影響で緩やかな回復ペースとなりました。東南アジア/南アジアでは、生産活動は概ね回復傾向にありました。
こうした経済状況のもと、当社グループの主要顧客である日系メーカーでは、各国の経済活動への規制緩和により景気回復は進み、多くの顧客において引き続き生産活動は回復傾向となり、当社グループの取引においても、多くの国や地域で堅調に推移しました。
このような中、当社グループでは、次なる10年に向けた長期戦略方針“NEXT10”のもと、前期よりスタートしました中期経営計画「CR Vision 20+(Plus)」の目標達成に向け、“事業強化戦略”と“体制強化戦略”を両軸として様々な施策に取り組んでまいりました。事業強化では、新領域であるプロモーションなどの販促事業や特殊領域の翻訳事業を拡大し、体制強化では、フィリピンでの経営改革(体制変更や事業の見直しなど)による収益改善に加え、中国の東莞工場の完全商社化や社員の職場環境改善とBCP対策を盛り込んだ本社新社屋移転も完了し、新たな体制にて事業強化を推進しております。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度より826,080千円増加し、18,455,128千円(前連結会計年度比4.7%増)となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度より76,075千円減少し、10,716,208千円(前連結会計年度比0.7%減)となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度より902,156千円増加し、7,738,920千円(前連結会計年度比13.2%増)となりました。
b.経営成績
当連結会計年度の経営成績は、売上高は21,270,074千円(前連結会計年度比14.3%増)、営業利益は1,615,970千円(前連結会計年度比30.6%増)、経常利益は1,616,965千円(前連結会計年度比13.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は851,997千円(前連結会計年度比2.0%増)となりました。
セグメントの経営成績は、以下のとおりであります。
日本は、外部顧客への売上高は5,649,486千円(前連結会計年度比1.7%増)、セグメント利益は295,696千円(前連結会計年度比30.6%減)となりました。
中国地域は、外部顧客への売上高は4,774,390千円(前連結会計年度比11.4%増)、セグメント利益は304,979千円(前連結会計年度比22.3%減)となりました。
東南アジア/南アジア地域は、外部顧客への売上高は8,886,020千円(前連結会計年度比23.0%増)、セグメント利益は796,645千円(前連結会計年度比265.2%増)となりました。
欧米地域は、外部顧客への売上高は1,960,176千円(前連結会計年度比27.2%増)、セグメント利益は215,639千円(前連結会計年度比7.0%増)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ25,759千円増加し、当連結会計年度末には4,786,128千円となりました。当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況とそれらの増減要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、1,720,531千円の収入(前連結会計年度は1,786,625千円の収入)となりました。これは主として、法人税等の支払額753,686千円があったものの、税金等調整前当期純利益1,705,352千円、減価償却費781,121千円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、1,555,326千円の支出(前連結会計年度は1,268,086千円の支出)となりました。これは主として、有形固定資産の売却による収入156,552千円があったものの、有形固定資産の取得による支出1,674,612千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、236,394千円の支出(前連結会計年度は395,774千円の収入)となりました。これは主として、長期借入金の返済による支出968,364千円、短期借入金の純減額655,270千円、リース債務の返済による支出359,585千円、配当金の支払額243,500千円があったものの、長期借入れによる収入1,990,422千円によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
前連結会計年度
(自 2021年7月1日
至 2022年6月30日)
当連結会計年度
(自 2022年7月1日
至 2023年6月30日)
生産高(千円)
前連結会計年度比
(%)
生産高(千円)
前連結会計年度比
(%)
日本
5,470,101
99.5
5,400,891
98.7
中国地域
4,447,613
109.5
4,185,753
94.1
東南アジア/南アジア地域
6,464,966
108.5
7,849,911
121.4
欧米地域
1,745,072
106.2
2,152,744
123.4
合計
18,127,754
105.6
19,589,301
108.1
(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
b.受注実績
当社グループの取引は、企画・編集・制作の各段階で、仕様変更・内容変更が発生する場合が多く、その結果、受注金額の最終決定から売上計上(販売)までの期間が短いため、受注実績の記載を省略しております。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
前連結会計年度
(自 2021年7月1日
至 2022年6月30日)
当連結会計年度
(自 2022年7月1日
至 2023年6月30日)
販売高(千円)
前連結会計年度比
(%)
販売高(千円)
前連結会計年度比
(%)
日本
5,555,761
110.1
5,649,486
101.7
中国地域
4,287,496
111.4
4,774,390
111.4
東南アジア/南アジア地域
7,226,136
105.2
8,886,020
123.0
欧米地域
1,540,753
104.1
1,960,176
127.2
合計
18,610,148
107.9
21,270,074
114.3
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前連結会計年度
(自
2021年7月1日
至
2022年6月30日)
当連結会計年度
(自
2022年7月1日
至
2023年6月30日)
金額(千円)
割合(%)
金額(千円)
割合(%)
エプソングループ
3,120,862
16.8
4,204,186
19.8
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しており、この作成にあたり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
また、当社の連結財務諸表作成において、損益及び資産の状況に影響を与える見積り及び判断については、過去の実績や当該取引の状況に照らして合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性から業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
見積り及び判断に影響を及ぼす重要な会計方針としては次のものがあると考えております。
a.退職給付債務及び退職給付費用
退職給付債務及び退職給付費用は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算定されており、これらの前提条件には、割引率や年金資産の期待運用収益率等が含まれております。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、退職給付債務及び退職給付費用に影響を与える可能性があります。
b.貸倒引当金
債権の貸倒れによる損失に備えるため回収不能見込額を見積り、引当金を計上しておりますが、将来、債務者の財政状態が著しく悪化した場合、引当金の追加計上等による損失が発生する可能性があります。
c.繰延税金資産
連結財務諸表と税務上の一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性については、税務計画を考慮し見積っておりますが、予測不可能な前提条件の変更等により見直しが必要となった場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
d.棚卸資産
当社グループは、棚卸資産の評価を行うに当たっては、製品及び商品については正味売却価額、原材料については再調達原価に基づき、収益性の低下を検討しております。また、一定期間を超えて滞留する棚卸資産についても簿価を切り下げており、状況に変化が生じた場合には、棚卸資産の簿価を切り下げ、売上原価を増加させることになります。
e.固定資産の減損処理
当社グループは、資産又は資産グループに減損が生じている可能性を示す事象(減損の兆候)が識別された場合、将来の事業計画等を考慮して、減損損失の認識を行い、必要に応じて回収可能価額まで減損処理を行うこととしております。そのため、将来の市況悪化等が見込まれることとなった場合、減損損失の計上が発生するなど当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
f.のれん及び顧客関連資産の評価
当社グループは、のれん及び顧客関連資産に関して効果の発現する期間を見積り、その期間で定額法により償却しておりますが、その資産性の評価について検討した結果、当初想定したキャッシュ・フローが見込めなくなった場合に、評価の切り下げを行う可能性があります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
1) 財政状態
(資産合計)
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度より826,080千円増加し、18,455,128千円(前連結会計年度比4.7%増)となりました。これは主として、商品及び製品が246,039千円減少しましたが、有形固定資産が992,473千円増加したことによるものであります。
(負債合計)
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度より76,075千円減少し、10,716,208千円(前連結会計年度比0.7%減)となりました。これは主として、長期借入金が950,541千円増加しましたが、短期借入金が619,885千円、未払金が172,721千円、未払法人税等が140,716千円、支払手形及び買掛金が137,029千円減少したことによるものであります。
(純資産合計)
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度より902,156千円増加し、7,738,920千円(前連結会計年度比13.2%増)となりました。これは主として、利益剰余金が608,497千円、為替換算調整勘定が237,260千円、非支配株主持分が78,294千円増加したことによるものであります。
2) 経営成績
(売上高)
当連結会計年度の売上高は21,270,074千円(前連結会計年度比14.3%増)となりました。
国内では、新型コロナウイルス感染症の収束により主要顧客との取引が回復傾向となり売上高が増加いたしました。海外では、国内同様に全般的な取引の復調と円安の進行による為替換算の影響もあり売上高が増加しております。
(売上総利益)
売上総利益は6,185,856千円(前連結会計年度比20.1%増)となりました。これは、売上高の増加とグループ全般における業務改善及び生産効率向上による原価低減効果によるものです。
(営業利益)
営業利益は1,615,970千円(前連結会計年度比30.6%増)となりました。これは、給与や貸倒引当金繰入額の増加がありましたが、売上総利益の増加によるものです。
(経常利益)
経常利益は1,616,965千円(前連結会計年度比13.7%増)となりました。これは、為替差益の減少がありましたが営業利益の増加によるものです。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
親会社株主に帰属する当期純利益は851,997千円(前連結会計年度比2.0%増)となりました。1株当たり当期純利益金額は、当連結会計年度は276.42円(前連結会計年度比2.0%増)となりました。
3) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
b.資本の財源及び資金の流動性
当社の事業では、国内ではそのほとんどが役務提供型の業務であるため、多額の設備投資が必要となる事業ではありません。一方、海外では工場型拠点と商社型拠点があり、商社型拠点では多額の設備投資は発生しませんが、工場型拠点では新規投資や現状設備維持の投資が必要になります。
運転資金につきましては、当社グループの製品は受注から納品・検収・回収までのサイトが比較的短く、多額に先行で費用が発生することはありません。現在は、事業資金の効率的かつ安定的な調達を図るため、取引金融機関数行との間で複数のコミットメントライン契約を締結しております。また、既存設備維持の投資に関しては営業活動によるキャッシュ・フローより行うこととしておりますが、新たな追加の投資が必要な場合には、リース契約もしくは長期借入金でまかなっております。
c.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、第40期(2024年6月期)を最終年度とする中期経営計画「CR Vision 20+(Plus)」において、「NEXT10に向けた企業基盤の安定化へ」を基本方針とし、最終年度の連結経営指標について以下の数値目標を設定しております。第40期の数値目標に対する第39期の実績につきましては、新型コロナウイルス感染症による影響も収束し、当社グループの主要顧客との取引は多くの国や地域で回復傾向となり、大幅な円安の影響も起因して過去最高の売上高、営業利益を達成いたしました。引き続き中期最終年度の目標達成に向け邁進してまいります。
中期経営計画「CR Vision 20+(Plus)」の最終年度である2024年6月期の数値目標及び2023年6月期の実績
指標
第40期目標
(2024年6月期)
第39期実績
(2023年6月期)
売上高
185億円
212億円
営業利益
12億円
16億円
営業利益率
6.5%
7.6%
d.セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(日本)
取引先における部材不足による製品の納品遅延にともなう新製品の開発や販売への影響もほぼ落ち着き、引き続きプロモーション業務の継続的な拡大や輸送機器や電器関連の主要顧客との取引は堅調に推移し、回復傾向となりましたが、海外子会社からのロイヤリティー(トレードマークフィー)の比率を引き下げたことで収益性は低下しました。
このような状況のもとで、日本では、外部顧客への売上高は5,649,486千円(前連結会計年度比1.7%増)、セグメント利益は295,696千円(前連結会計年度比30.6%減)となりました。
(中国地域)
華東地区では、輸送機器関連の堅調な取引に加え、欧米メーカーを含めた医薬品関連の取引も引き続き堅調に推移しました。華南地区では、2022年12月末で閉鎖した東莞工場にかかる閉鎖にともなう費用が当初の見込みより多く発生しましたが、今後は完全商社化への完了にともない、収益は改善する見込みです。
このような状況のもとで、中国では、外部顧客への売上高は4,774,390千円(前連結会計年度比11.4%増)、セグメント利益は304,979千円(前連結会計年度比22.3%減)となりました。
(東南アジア/南アジア地域)
フィリピンでは、顧客の生産状況は回復傾向にある中、税制改正への対応として、販売価格への転嫁や不採算商品からの撤退などによる事業の見直しを進めていたところ、突如、2023年2月17日付の内国歳入庁(Bureau ofInternal Revenue:BIR)の通達により、再びフィリピン子会社の国内仕入取引が付加価値税(VAT)の免除対象に該当することとなりました。これまで還付困難な未収VATの発生額に対して全額計上していた貸倒引当金は、VATゼロレート企業である証明書を取得した2023年3月6日以降は計上する必要はなくなりましたが、引き続き体制変更や不採算商品の撤退などによる事業の見直しは継続しています。インドネシアでは、引き続き生活用品やヘルスケア用品などの新事業分野の顧客との取引は順調に推移しており、収益も安定化しています。タイでは、全体的に顧客の生産活動は引き続き回復基調ですが、一部顧客では販売低調により取引が減少傾向でした。ベトナムでも生産活動は徐々に回復傾向にあります。インドでは、現地法人を設立して以来、通期で黒字に転じました。
このような状況のもとで、東南アジア/南アジアでは、外部顧客への売上高は8,886,020千円(前連結会計年度比23.0%増)、セグメント利益は796,645千円(前連結会計年度比265.2%増)となりました。
(欧米地域)
米国では、主要顧客である輸送機器メーカーとの取引や新規翻訳事業の取引に加え、新規顧客の開拓も進んでおり引き続き堅調に推移しました。欧州では、玩具系電器メーカーとの取引が継続的に拡大していることに加え、半導体不足による生産調整の影響があった輸送機器メーカーも回復傾向にあります。
このような状況のもとで、欧米では、外部顧客への売上高は1,960,176千円(前連結会計年度比27.2%増)、セグメント利益は215,639千円(前連結会計年度比7.0%増)となりました。
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