【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度(2022年1月1日から2022年12月31日まで)における経済環境は、米国では、個人消費は底堅さを保っているものの、生産・労働市場等が鈍化傾向にあり、全体としては景気減速感が強まっています。欧州では、景気低迷が示唆されていましたが、鉱工業生産や小売売上高をはじめ生産・消費に持ち直しの動きがあります。わが国では、各種政策の効果もあり景気は緩やかに持ち直しているものの、海外景気の下振れがわが国の景気を下押しするリスクや物価上昇、金融資本市場の変動等に注意する必要があります。
このような状況のもと、当社グループは2021年を起点とした5ヵ年の中期計画「中計’21」を策定し、その中で掲げた各種経営指標を実現するため、これまで培ってきた得意分野や独自性、研鑽してきた機能別組織機能、変革・強化を図ってきたガバナンスやコンプライアンス体制をベースに置きながら、取り巻く変化に迅速、かつ柔軟に適応する力を当社グループ全体で強化することに取り組みました。
その結果、当期の当社グループの売上高は497,213百万円(前年度比103,565百万円増、26.3%増)となり、営業利益は44,046百万円(前年度比9,034百万円減、17.0%減)、経常利益は51,035百万円(前年度比4,874百万円減、8.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は47,956百万円(前年度比6,606百万円増、16.0%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
(イ)タイヤ事業
北米市場における市販用タイヤについては、OPEN COUNTRY A/T Ⅲ(オープンカントリー・エーティースリー)、NITTO RECON GRAPPLER A/T(ニットー リコングラップラー・エーティー)、今年から販売開始した新商品OPEN COUNTRY R/T TRAIL(オープンカントリー・アールティー・トレイル)やNITTO NOMAD GRAPPLER(ニットーノマドグラップラー)など当社が強みとしている大口径ライトトラック用タイヤやSUV用タイヤ、トラック・バス用タイヤなどの重点商品を中心とした販売に注力したことにより、販売量は前年度を上回りました。また、売上高は値上げや重点商品の拡販による商品ミックスの改善もあり、販売量以上に前年度を大きく上回りました。
欧州市場における市販用タイヤについては、欧州各国での需要の回復などにより販売増の効果が見られたものの、ロシア・ウクライナ情勢に伴うロシアや周辺地域への販売停止の影響を受けて、欧州全体では販売量は前年度を大きく下回りました。一方、売上高においては、欧州各国での値上げや商品ミックス改善がロシア及び周辺地域向けへの販売停止の影響を補い、前年度並みとなりました。
国内市場における市販用タイヤについては、特に第4四半期では全国的な天候要因により冬タイヤの販売が伸びたこと、さらにOPEN COUNTRY(オープンカントリー)など重点商品を中心とした販売に注力したことにより、販売量は前年度を上回りました。売上高も値上げや重点商品の拡販による商品ミックスの改善により、前年度を上回りました。
新車用タイヤについては、半導体不足による自動車メーカーの減産の影響を受けたものの、販売量は前年度を上回りました。また、売上高は原材料市況高騰の一部を価格に反映できたため、前年度を大きく上回りました。
その結果、タイヤ事業の売上高は455,796百万円(前年度比101,155万円増、28.5%増)、営業利益は46,636百万円(前年度比8,453百万円減、15.3%減)となりました。
(ロ)自動車部品事業
自動車部品事業については、新型コロナウイルス感染拡大に伴う部品供給不足や半導体不足による自動車メーカーの減産の影響を受けたものの、原材料市況高騰の一部を価格に反映できたため売上高は41,346百万円(前年度比2,367百万円増、6.1%増)と前年度を上回り、営業損失は2,591百万円(前年度は2,008百万円の営業損失)となりました。
(ハ)当社免震ゴム問題に係る製品補償対策費及び製品補償引当金繰入額の状況
2015年12月期において、出荷していた製品の一部が国土交通大臣認定の性能評価基準に適合していない等の事実が判明いたしました。
2022年度第4四半期決算において、製品補償対策費456百万円(主として、免震ゴム対策統括本部人件費等)を特別損失として計上しております。
現時点で合理的に金額を見積もることが困難なもので、今後発生する費用(主として、営業補償や遅延損害金等の賠償金、追加で判明する改修工事費用の金額が既引当額を超過する場合の費用等)がある場合には、翌年度以降の対処進行状況等によって、追加で製品補償引当金を計上する可能性があります。
② 財政状態の状況
当連結会計年度末の総資産は598,889百万円となり、前年度末に比べ67,660百万円増加しました。これは、主として、受取手形及び売掛金、棚卸資産及び有形固定資産が増加したことによります。
また、負債は277,974百万円となり、前年度末に比べ26,900百万円増加しました。これは、主として、長期借入金の返済や免震問題に係る対応の進捗により製品補償引当金が減少した一方、コマーシャル・ペーパーや支払手形及び買掛金の増加によります。なお、有利子負債は135,436百万円となり、前年度末に比べ6,652百万円増加しました。
当連結会計年度末の純資産は320,915百万円となり、前年度末に比べ40,759百万円増加しました。これは、主として、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金、円安の影響により為替換算調整勘定が増加したことによります。
この結果、自己資本比率は53.5%となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローは、営業活動による収入が15,172百万円となり、投資活動による支出が16,712百万円となったため、純現金収支(フリー・キャッシュ・フロー)は1,540百万円のマイナスとなりました。財務活動においては16,231百万円の支出となりました。以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、これら収支に為替換算差額の増加額を合わせ41,600百万円となり、前年度末と比べて11,992百万円減少しました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、棚卸資産の増加や投資有価証券売却益の計上等の減少要因があったものの、税金等調整前当期純利益や減価償却費の計上等の増加要因により、15,172百万円の収入(前年度比19,293百万円減、56.0%減)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却による収入等があったものの、設備投資に伴う有形固定資産の取得による支出等により、16,712百万円の支出(前年度比20,826百万円減、55.5%減)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、コマーシャル・ペーパーの発行等による収入があったものの、配当金の支払や長期借入金の返済等により、16,231百万円の支出(前年度は11,697百万円の収入)となりました。
④ 生産、受注及び販売の状況
(イ)生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
生産金額(百万円)
前年度比(%)
タイヤ事業
450,171
29.0
自動車部品事業
35,719
5.9
合計
485,891
26.9
(注)金額は、販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
(ロ)受注状況
当社グループは製品の性質上、原則として需要見込生産方式を採っております。
(ハ)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
販売金額(百万円)
前年度比(%)
タイヤ事業
455,796
28.5
自動車部品事業
41,346
6.1
その他
70
156.3
合計
497,213
26.3
(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する当該販売実績の割合は次のとおりであります。
相手先
前連結会計年度
当連結会計年度
金額(百万円)
割合(%)
金額(百万円)
割合(%)
American Tire Distributors, Inc.
42,138
10.7
50,842
10.2
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いております。なお製品補償引当金及び新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う会計上の見積りの仮定につきましては、それぞれ「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結貸借対照表関係) 4 偶発債務」、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載のとおりであります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの連結会計年度の経営成績等は、次のとおりであります。
なお、当社グループの経営に影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
(イ)売上高
タイヤ事業においては、北米市場において当社が強みとしている大口径ライトトラック用タイヤやSUV用タイヤを中心に全カテゴリーの販売が好調につき販売量は前年度を上回り、売上高は前年度を大きく上回りました。また自動車部品事業においては、車種ミックスの改善が進み売上高は前年度を上回り、売上高は497,213百万円(前年度比103,565百万円増、26.3%増)となりました。
(ロ)営業利益
タイヤ事業において北米市場向けのタイヤ需要が好調であったことやUSドルを中心とした円安影響があったものの、原材料価格の高騰、コンテナ不足による海上運賃の値上がり等の減益要因により、営業利益は44,046百万円(前年度比9,034百万円減、17.0%減)となりました。この結果、営業利益率は、8.9%(前年度比4.6ポイント減)となりました。
(ハ)経常利益
主にUSドルを中心とした円安影響の為替差益の発生により、経常利益は51,035百万円(前年度比4,874百万円減、8.7%減)となりました。
(ニ)親会社株主に帰属する当期純利益
特別利益として投資有価証券売却益、特別損失として訴訟損失引当金繰入額、固定資産の減損損失等を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は47,956百万円(前年度比6,606百万円増、16.0%増)となりました。
当連結会計年度の財政状態の分析、セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」及び「(1)経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」に記載しております。
③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループは、持続的な成長を実現するために、事業機能・経営基盤の強化に一層注力し、重点ターゲット領域での着実な成長を目指しております。具体的には、Toyo Tire Serbia d.o.o.の立ち上げ、Toyo Tire North America Manufacturing Inc.をはじめとする工場の生産設備増強や、驚きのある商品を提供する開発力・技術力の進化のため研究開発活動に取り組んでおり、当連結会計年度は、生産設備増強や合理化及び品質向上を中心に44,823百万円、基礎研究技術の強化を中心に2,480百万円の設備投資を実施しました。これらの投資を含む事業活動に必要な資金は第三者割当増資による増資資金を含めた自己資金、借入金及び社債の発行により賄いました。また、キャッシュ・プーリング・システムの導入等により子会社の資金調達並びに資金管理の一元化を図るなど金融収支を改善するとともに、資金調達手段の多様化や長期借入金比率を高めることにより金利変動リスクのヘッジを行っております。
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
なお、翌連結会計年度の設備投資金額は総額40,292百万円を計画しており、これらの所要資金については自己資金及び借入金により充当する予定であります。設備投資計画の主な内容・目的につきましては、「第3 設備の状況3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりであります。
④ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、中期経営計画「中計’21」のもと、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1) 経営方針 ② 目標とする経営指標及び中長期的な会社の経営戦略」に記載の経営指標の実現をめざしております。当連結会計年度は、連結営業利益率8.9%、重点商品販売構成比率51%、連結営業利益44,046百万円、実績ROE(期末配当控除後)16.2%、配当性向25.7%となりました。
また、設備投資については、「中計’21」において2021年度から2025年度までの5ヵ年累計で194,000百万円を計画しており、2年目である当連結会計年度末までの2ヵ年累計で85,070百万円を実施しました。