【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)
経営成績等の概要当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態および経営成績の状況当連結会計年度(2022年1月1日から2022年12月31日まで)の世界経済は、コロナのオミクロン株による患者数の増加やロシアのウクライナへの軍事侵攻により、サプライチェーンに混乱が生じました。また、ロシアに対する経済制裁もあり、エネルギー、食料および鉱物資源の不足が歴史的なインフレを引き起こし、各国が厳しい金融引き締めを余儀なくされるなど、様々な方面に大きな影響が生じました。わが国経済は、デフレ脱却を目標とした金融緩和策の維持により円安が進み、原燃料や輸入製品の価格が急騰し、企業収益や家計を圧迫する事となりました。このような情勢下、当社グループでは販売価格の修正やコストダウンを推し進めました。しかし、自動車やスマートフォンおよびその周辺産業での減産が続いたため、総じて販売数量は減少し、当連結会計年度の業績は、売上高は1,608億2千5百万円(前年度比2.9%増収)、営業利益は143億8千2百万円(前年度比18.6%減益)、経常利益は164億4千6百万円(前年度比13.4%減益)、親会社株主に帰属する当期純利益は124億9千4百万円(前年度比9.3%減益)となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高は79億4千万円減少し、営業利益は9千4百万円減少しております。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。なお、当連結会計年度から、報告セグメントの区分を一部変更しており、前連結会計年度との比較・分析は変更後の区分に基づいて記載しております。
基幹化学品事業電解製品は、販売数量は減少いたしましたが、原燃料価格上昇に応じた販売価格改定により増収となりました。アクリルモノマー製品は、販売数量は減少いたしましたが、原燃料価格上昇に応じた価格改定により増収となりました。工業用ガスは、原燃料価格上昇に応じた価格改定をいたしましたが、販売数量の減少により減収となりました。これらの結果、当セグメントの売上高は742億2千5百万円(前年度比5.6%増収)となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高は22億4千6百万円減少しております。営業利益は、原燃料価格上昇に応じた販売価格改定をいたしましたが、販売数量の減少により、66億9千1百万円(前年度比16.3%減益)となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、営業利益は1百万円増加しております。
ポリマー・オリゴマー事業アクリルポリマーは、自動車関連向け製品の販売数量減により、減収となりました。アクリルオリゴマーは、ディスプレー関連向けの販売数量が減少いたしましたが、円安の影響で前年並みの売上高となりました。高分子凝集剤は、輸出も含め全般的に販売数量が増加し、原燃料価格上昇に応じた販売価格改定もあり、増収となりました。これらの結果、当セグメントの売上高は358億7百万円(前年度比2.6%増収)となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高は21億5千万円減少しております。営業利益は、販売数量減の影響が大きく、42億5千8百万円(前年度比19.3%減益)となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、営業利益は1億3千万円減少しております。
接着材料事業家庭用は、ホームセンターなどでの来店客数減少の影響を受け、販売数量は微減となりましたが、円安の影響もあり増収となりました。機能性接着剤は、スマートフォンの生産数量減の影響を受け大幅に販売数量が減少したため、減収となりました。これらの結果、当セグメントの売上高は111億3千4百万円(前年度比1.8%減収)となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高は4億6千1百万円減少しております。営業損益は、機能性接着剤の販売数量減や減価償却費、海外での広告宣伝費および研究開発費の増加により、前年同期に比べ11億円減少し2億5千5百万円の損失となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、営業損失は5百万円増加しております。
高機能材料事業高純度無機化学品は、半導体向け製品の販売数量増により増収となりました。無機機能材料は、スマートフォンの減産の影響を受け電子部品向けイオン捕捉剤は販売数量減となりましたが、抗菌剤や消臭剤の販売数量増により増収となりました。これらの結果、当セグメントの売上高は104億6千6百万円(前年度比7.0%増収)となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高は1億3百万円増加しております。営業利益は、減価償却費およびヘルスケア関係やセルロースナノファイバーの技術研究費の増加により、23億6千1百万円(前年度比3.6%減益)となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、営業利益は4千2百万円増加しております。
樹脂加工製品事業管工機材製品は、原燃料価格上昇に応じた販売価格改定により増収となりました。ライフサポート製品は、歩行車などの新製品が好調で増収となりました。建材・土木製品は、販売数量減となりましたが、原燃料価格上昇に応じた販売価格改定により、前年並みの売上高となりました。エラストマーコンパウンドは、自動車向けおよび医療用向けの販売数量増により増収となりました。これらの結果、当セグメントの売上高は277億5千4百万円(前年度比6.2%増収)となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高は7億6百万円減少しております。営業利益は、原燃料価格上昇に応じた販売価格の改定と管工機材製品での利益重視の販売により、17億5千9百万円(前年度比22.7%増益)となりました。なお、収益認識会計基準等の適用による営業利益への影響はありません。
その他の事業輸送事業、商社事業などにより構成される当セグメントは、売上高は14億3千6百万円(前年度比62.7%減収)となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高は24億7千8百万円減少しております。営業損益は、4億3千4百万円の損失となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、営業損失は2百万円増加しております。
財政状態につきましては、当社グループの当連結会計年度末の資産合計は、「現金及び預金」が減少したものの、「土地」および「棚卸資産」が増加しましたため、前連結会計年度末に比べ61億7千9百万円、2.4%増加し、2,651億3千5百万円となりました。負債合計は、「未払法人税等」が減少したものの、未払金の増加により流動負債の「その他」などが増加しましたため、前連結会計年度末に比べ19億8千5百万円、3.8%増加し、543億2千8百万円となりました。純資産合計は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により「利益剰余金」が増加しましたため、前連結会計年度末に比べ41億9千4百万円、2.0%増加し、2,108億7百万円となり、自己資本比率は77.7%となりました。
②キャッシュ・フローの状況当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ16億6千4百万円減少し、当連結会計年度末には448億3千9百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、棚卸資産および法人税等の支払額が増加し、さらに税金等調整前当期純利益が減少しましたため、前連結会計年度に比べ支出が102億3千万円増加し、109億8千8百万円の収入となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出が増加しましたものの、定期預金による運用額が減少しましたため、前連結会計年度に比べ支出が66億5千9百万円減少し、35億7千9百万円の支出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額および自己株式の取得による支出が増加しましたため、前連結会計年度に比べ支出が8億1千9百万円増加し、94億6千4百万円の支出となりました。
なお、キャッシュ・フローに関する指標は以下のとおりです。
(参考)当社グループのキャッシュ・フロー指標の推移
2020年12月期
2021年12月期
2022年12月期
自己資本比率(%)
79.8
77.9
77.7
時価ベースの自己資本比率(%)
64.1
55.8
50.8
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)
0.6
0.5
1.0
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)
225.5
218.8
112.4
(注) 1
各指標は、いずれも連結ベースの財務数値を用いて、以下の計算式により算出しております。
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
2
株式時価総額は、期末株価終値×自己株式控除後の期末発行済株式数により算出しております。
3
有利子負債は、連結貸借対照表上に計上されている負債のうち、利息を支払っている負債(リース債務を除く)を対象としております。
4
営業キャッシュ・フローおよび利払いは、連結キャッシュ・フロー計算書に計上されている「営業活動によるキャッシュ・フロー」および「利息の支払額」を用いております。
③生産、受注および販売の実績
(イ) 生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
金額(百万円)
前年度比(%)
基幹化学品事業
71,819
13.0
ポリマー・オリゴマー事業
31,591
△1.5
接着材料事業
10,738
4.9
高機能材料事業
9,828
4.5
樹脂加工製品事業
25,442
3.0
合計
149,421
6.8
(注)
1
その他の事業につきましては、主としてサービス業ですので記載しておりません。2
金額は、販売価格により算出しております。
(ロ) 受注状況当社および各社は受注生産はほとんど行わず、主として見込み生産であります。
(ハ) 販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
金額(百万円)
構成比(%)
前年度比(%)
基幹化学品事業
74,225
46.2
5.6
ポリマー・オリゴマー事業
35,807
22.3
2.6
接着材料事業
11,134
6.9
△1.8
高機能材料事業
10,466
6.5
7.0
樹脂加工製品事業
27,754
17.3
6.2
その他の事業
1,436
0.8
△62.7
合計
160,825
100.0
2.9
(注) 総販売実績に対し10%以上に該当する販売先はありません。(2)
経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針および見積り当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。連結財務諸表の作成においては、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき見積りおよび判断を行っておりますが、見積りにつきましては不確実性があるため、実際の結果と異なる場合があります。連結財務諸表で採用する重要な会計方針および会計上の見積りは、「第5[経理の状況]1[連結財務諸表等](1)[連結財務諸表][注記事項](連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)および(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
②当連結会計年度の経営成績の状況に関する認識および分析・検討内容当社グループの当連結会計年度の売上高は、販売価格の修正もあり1,608億2千5百万円(前年度比2.9%増収)となりました。営業利益は、販売数量が減少した影響を受け143億8千2百万円(前年度比18.6%減益)、経常利益は164億4千6百万円(前年度比13.4%減益)となりました。なお、セグメントごとの売上高と営業利益につきましては、(1)経営成績等の概要 ①財政状態および経営成績の状況をご参照ください。また、特別損益で投資有価証券売却益が発生し、親会社株主に帰属する当期純利益は124億9千4百万円(前年度比9.3%減益)となりました。なお、収益認識会計基準等の適用により、売上高は79億4千万円減少し、営業利益は9千4百万円減少しております。
当社グループの資本の財源および資金の流動性については、必要資金は自己資金のほか、金融機関からの借入などで確保しています。2023年は、名古屋工場での物流センター取得などの設備投資および自己株式の取得を予定しており、主に自己資金を充当する予定です。また、必要に応じて、当社グループの財政状態および市場環境等を考慮しながら、金融機関からの借入や資本市場からの資金調達などを総合的に勘案し、最適な方法で資金調達を実施する予定です。当社グループの資金の流動性については、グループ内資金の効率的な活用と金融費用の削減を目的にキャッシュ・マネジメント・システムを導入しており、グループ全体の資金効率化を図っています。また、緊急時の資金調達手段の確保を目的として、一部の取引銀行と当座貸越契約を締結しており、代替調達手段を備えております。
③経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等2020年から2022年を対象期間とする中期経営計画「Stage up for the Future」の数値目標に対する結果は以下のとおりです。
(単位:億円)
2020年実績
2021年実績
2022年実績
2022年計画
売上高
1,333
1,563
1,687
1,630
営業利益
123
176
144
170
EBITDA
221
282
249
270
高付加価値製品比率(売上高)
43.3%
43.8%
43.6%
47.0%
設備投資額(累計額)※1
118
367
627
440
海外売上高
221
290
314
325
1株当たり純利益(円)
62.43
108.14
101.31
106.00
総資産経常利益率
5.3%
7.6%
6.3%
7.0%
※1 設備投資額は認可ベースの数値※2 収益認識に関する会計基準未適用の数値
当連結会計年度は、サプライチェーンの混乱や歴史的なインフレの発生とともに、厳しい金融引き締めがおこなわれるなど、様々な方面に大きな影響が生じました。また、円安が進むことで原燃料や輸入製品の価格が急騰し、企業収益や家計を圧迫する事となりました。このような情勢下、当社グループでは販売価格の修正やコストダウンを推し進めましたが、総じて販売数量は減少し、売上高は前年を上回ったものの営業利益・経常利益・純利益は前年を下回りました。このため、中期経営計画の最終年度である2022年は、売上高および成長のための設備投資額が、数値目標を達成する結果となりました。