【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)MD&Aに共通する事項
当社グループは、2021年8月10日開催の取締役会においてNPEを解散及び清算することを決議し、2021年8月27日にNPIの株式、NPAEの株式及びBNPAの株式をINCに譲渡したため、連結財務諸表の作成上、これらの事業を非継続事業に分類しております。このため、前連結会計年度の売上収益、営業利益及び税引前利益については、非継続事業を除いた継続事業の金額を用いております。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 15.非継続事業」に記載のとおりであります。
① 連結業績の概況
(a)前期比
当社グループの当連結会計年度の業績につきましては、2022年1月20日にクロージングした欧州塗料メーカーCromologyの子会社化、2022年5月31日にクロージングした欧州塗料メーカーJUBの子会社化や円安の影響、加えて主力事業である中国の汎用塗料が継続的な製品値上げを進めて好調に推移した結果、連結売上収益は1兆3,090億21百万円(前期比31.1%増)となりました。連結営業利益は、各地で原材料価格が上昇し、中国において貸倒引当金を追加計上したものの、製品値上げの浸透により、1,118億82百万円(前期比27.7%増)となりました。
連結税引前利益は1,044億95百万円(前期比20.9%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は794億18百万円(前期比17.5%増)となりました。
※実質ベース:継続的な事業の収益力の前期からの変化を示すため、M&Aによる新規連結影響や一時的な要因により発生した損益を調整して算出した金額
実質ベースにおける主な調整項目
為替影響、補助金等、M&A関連費用、貸倒引当金、新規連結
以降の図表に記載された実質ベースの数値は同趣旨
(注) 当連結会計年度より、従来「調整額」の中で表示してきた上場機能及び純粋持株会社機能に関する事業以外の全ての事業を分社化し、「日本」セグメントに帰属させる方法にしました。
(b)資産、負債及び資本の状況
当連結会計年度末の総資産は前連結会計年度末と比較して4,872億57百万円増加し、2兆4,423億40百万円となりました。
流動資産につきましては、前連結会計年度末と比較して1,648億97百万円増加しております。主な要因は、現金及び現金同等物が増加したことなどによるものです。また、非流動資産につきましては、前連結会計年度末と比較して3,223億59百万円増加しております。主な要因は、Cromologyの買収に伴いのれんが増加したことなどによるものです。
負債につきましては、前連結会計年度末と比較して3,005億93百万円増加し、1兆2,869億82百万円となりました。主な要因は、社債及び借入金が増加したことなどによるものです。
資本につきましては、前連結会計年度末と比較して1,866億64百万円増加し、1兆1,553億58百万円となりました。主な要因は、為替換算調整勘定が増加したことなどによるものです。
以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末の49.1%から47.0%となりました。
(c)連結業績の推移
連結業績の推移は下図のとおりであります。
(注) 「当期利益」には「非支配持分」は含まれておりません。
② セグメント別業績の概況
(a)概要
セグメントの状況は次のとおりであります。
なお、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 6.セグメント情報」に記載のとおり、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前期比較においては、前連結会計年度の数値を変更後の区分に組み替えた数値で比較しております。
≪日本≫
自動車用塗料の売上収益については、半導体供給不足等の影響を受けたことで、自動車生産台数が通年で前期並みにとどまったことで、前期並みとなりました。工業用塗料の売上収益については、新設住宅着工戸数など市況が前期並みに推移したものの、製品値上げが浸透し、前期を上回りました。汎用塗料の売上収益については、市況が前期並みにとどまったものの、製品値上げが奏功し、前期を上回りました。
これらにより、当セグメントの連結売上収益は1,860億62百万円(前期比6.9%増)となりました。連結営業利益は、原材料価格の上昇などにより、52億96百万円(前期比44.5%減)となりました。なお、当連結会計年度より、各セグメントの経営成績をより適切に反映するため、従来「調整額」の中で表示してきた上場機能及び純粋持株会社機能に関する事業以外の全ての事業を分社化し、日本セグメントに帰属させる方法にしまし
た。
≪NIPSEA≫
自動車用塗料の売上収益については、中国・タイにおいて、半導体供給不足等の影響を受けたものの、自動車生産台数が前期を上回るなど、前期を上回りました。汎用塗料の売上収益については、中国において、都市封鎖等の影響を受けるも、既存住宅向け内装需要が引き続き堅調に推移したこと、また、中国、マレーシア、インドネシア、トルコ等の主要市場において、積極的な製品値上げの結果、前期を上回りました。
これらにより、当セグメントの連結売上収益は7,085億15百万円(前期比24.0%増)、連結営業利益は726億95百万円(前期比5.6%増)となりました。
≪DuluxGroup≫
2022年1月からのCromologyの業績、2022年6月からのJUBの業績を当社グループの連結業績に反映しております。汎用塗料の売上収益については、オセアニア及び欧州において、製品値上げが奏功したことから、前期を上回りました。塗料周辺事業の売上収益については、オセアニアにおいて、各ブランドの製品値上げが奏功したことに加え、欧州において、ETICS(断熱材)の販売が好調だったことから、前期を上回りました。
これらにより、当セグメントの連結売上収益は3,149億2百万円(前期比78.7%増)、連結営業利益は296億73百万円(前期比55.8%増)となりました。
≪米州≫
自動車用塗料の売上収益については、中核地域であるアメリカにおいて、半導体供給不足等の影響を受けたものの、自動車生産台数が前期を上回るなど、前期を上回りました。汎用塗料の売上収益については、金利上昇の影響が下期に顕在化するも、上期までの底堅い住宅需要や好天などが影響し、前期を上回りました。
これらにより、当セグメントの連結売上収益は995億40百万円(前期比30.3%増)、連結営業利益は80億77百万円(前期比124.3%増)となりました。
(b)生産、受注及び販売の状況
当連結会計年度において、前期比で、「日本」セグメント、「NIPSEA」セグメント、「DuluxGroup」セグメント及び「米州」セグメントにおける生産及び販売の実績に著しい増加がありました。
その内容については、「(1)MD&Aに共通する事項 ② セグメント別業績の概況 (a)概要」に記載しております。
(ⅰ)生産実績
生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
金額(百万円)
前期比(%)
日本
115,729
10.8
NIPSEA
472,367
23.3
DuluxGroup
167,484
89.1
米州
59,490
33.5
合 計
815,071
31.3
(注) 金額は製造原価で表示しております。
(ⅱ)受注実績
当社グループは、主として見込生産によっておりますので、受注並びに受注残高等について特に記載すべき事項はありません。
(ⅲ)販売実績
販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
金額(百万円)
前期比(%)
日本
186,062
6.9
NIPSEA
708,515
24.0
DuluxGroup
314,902
78.7
米州
99,540
30.3
合 計
1,309,021
31.1
(注) セグメント間の取引については含めておりません。
(c)セグメント別投資対成果
連結業績に対するセグメント毎の貢献の割合は、下図のとおりであります。
(注)1 売上収益は、セグメント間売上収益を除いております。
2 当連結会計年度より、各セグメントの経営成績をより適切に反映するため、従来「調整額」の中で表示してきた上場機能及び純粋持株会社機能に関する事業以外の全ての事業を分社化し、日本セグメントに帰属させる方法にしました。
(2)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に関する情報
① キャッシュ・フローの状況の分析
当期は営業活動により1,123億51百万円の収入、投資活動により1,651億7百万円の支出、財務活動により1,457億67百万円の収入があり、結果として現金及び現金同等物(以下「資金」という)は2,425億98百万円となり、前連結会計年度末と比較して1,037億85百万円増加いたしました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による収入は、1,123億51百万円(前期比449億23百万円増)となりました。主な要因は、継続事業からの税引前利益に減価償却費及び償却費等の非資金支出費用等を加味したキャッシュ・フロー収入(運転資本の増減を除く)が1,522億68百万円あった一方で、運転資本の増加による資金の減少70億59百万円、法人所得税の支払額が328億57百万円あったことなどによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による支出は、1,651億7百万円(前期比627億51百万円増)となりました。主な要因は、投資有価証券の売却による254億40百万円の収入があった一方で、有形固定資産の取得による374億42百万円の支出、子会社株式の取得による1,717億52百万円の支出があったことなどによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による収入は、1,457億67百万円(前期は623億9百万円の支出)となりました。主な要因は、借入金の増加による2,035億74百万円の収入、配当金の支払いによる235億33百万円の支出、社債の償還による147億76百万円の支出、リース負債の返済による125億86百万円の支出があったことなどによるものです。
② 資本の財源及び資金の流動性
当社グループは営業活動から得た収益が事業活動の財源ともなっており、設備投資や研究開発投資、運転資本充当や配当の支払い、借入金の返済に利用しております。また、持続的な成長の実現に向けた戦略投資に必要な資金需要に対しては、今後の収益見通し、全体的な資金需要、返済能力を考慮して財務規律を維持し外部より資金調達を実施いたします。今年度におきましては、欧州塗料メーカーCromology及びJUBの買収資金に加え、手元流動性確保のための資金も合わせ2,700億円の外部借入を行っており、当連結会計年度末の社債及び借入金残高は当社が7,100億11百万円、連結子会社が120億45百万円となっております。また、当連結会計年度末の運転資本は2,305億19百万円となっております。
当連結会計年度の現預金残高は2,425億98百万円となっており、当社の現預金保有残高は750億48百万円、国内子会社、海外子会社の現預金保有残高はそれぞれ29億95百万円、1,645億55百万円となっております。国内子会社の現預金はCMS(キャッシュマネジメントシステム)によって当社が集中管理しております。海外子会社の保有する現預金は、主として現地での拡大再生産のために利用する事を目的として保有しており、余剰資金が発生した場合に通常配当とは別に特別配当として資金を回収しております。
現時点で当社グループの事業活動を円滑に維持して行く上で十分な手許資金を有しており、将来の資金需要に対しても不足が生じる懸念は少ないと判断しております。
③ 資本政策
当社は顧客、取引先、従業員、社会などへの責務を果たした上で残存する株主価値の最大化を経営上の最重要目標としております。
その際、当社は財務規律を維持しつつ、成長投資を優先的に実施し、基本的1株当たり当期利益(EPS)の増大を通じて株主の皆様のトータル・シェアホルダー・リターン(TSR、株主総利回り)を向上させることに主眼を置いています。
そして、TSRのうち配当については、業績動向、投資機会を総合的に勘案しながらも、配当性向30%を目途に安定的かつ継続的に行う方針としております。
《基本的1株当たり当期利益(EPS)、1株当たり配当額及び配当性向の推移》
基本的1株当たり当期利益(EPS)、1株当たり配当額及び配当性向の推移は下図のとおりであります。2021年3月31日を基準日及び2021年4月1日を効力発生日として、普通株式1株につき5株の割合で株式分割を行っております。また、基本的1株当たり当期利益(EPS)及び1株当たり配当額は、2018年度の期首に当該株式分割が行われたと仮定して算定しております。
(3)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の連結財務諸表は国際財務報告基準(IFRS)に基づいて作成されております。また、当社は連結財務諸表を作成するために、種々の仮定と見積りを行っております。それらの仮定と見積りは資産・負債・収益・費用の計上金額並びに偶発資産及び債務の開示情報に影響を及ぼします。重要な仮定と見積りは、営業債権等の回収可能額、棚卸資産の正味実現可能価額、繰延税金資産の回収可能性、確定給付制度債務、非金融資産(のれんを含む)の減損、企業結合により取得した資産及び引き継いだ負債の公正価値の評価及び開示に反映しております。なお、実際の結果がこれらの見積りと異なることもあり得ます。
重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、連結財務諸表の「注記3.重要な会計方針」及び「注記4.重要な会計上の見積り、判断及び仮定」に記載しております。