【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当第2四半期連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものです。
(1) 財政状態及び経営成績の状況(単位:百万円)
前第2四半期連結累計期間
当第2四半期連結累計期間
増減額
増減率 (%)
受注高
399,415
367,672
△31,742
△7.9
売上収益
312,418
363,833
51,414
16.5
営業利益
27,183
33,766
6,582
24.2
売上収益営業利益率 (%)
8.7
9.3
-
-
親会社の所有者に帰属する四半期利益
18,065
20,583
2,518
13.9
基本的1株当たり四半期利益 (円)
196.35
223.37
27.03
13.8
当第2四半期連結累計期間における我が国経済は、ウィズコロナによる社会経済活動の正常化が進み、個人消費や企業の設備投資は緩やかに持ち直しの動きがみられました。一方、世界経済ではウクライナ情勢の長期化や世界的なインフレ、金融引き締めに伴う企業の投資抑制など経済活動には減速感がみられ、金融政策による欧米での景気後退懸念や、米中の半導体輸出管理規制強化など地政学リスクの高まりもあり、依然として先行き不透明な状況が継続しています。このような環境の下、当社グループは2023年を初年度とする3か年の中期経営計画「E-Plan2025」を策定し、「顧客起点での価値創造」をテーマに、それぞれの事業で更なる競争力の強化を図るため対面市場別組織へ移行し、経営指標の達成に向けた各種施策の取り組みを進めています。当第2四半期連結累計期間の受注高は、半導体市場における半導体メーカの設備投資の抑制や計画見直し、工場稼働率低下などの影響を受けた「精密・電子」で低調に推移しました。一方で、「エネルギー」においては、北米を中心にLNG向け大型案件の受注やサービス&サポートの受注により堅調に推移しました。この結果、全社の受注高は、「精密・電子」の減少を他の事業がカバーしたことで前年同期を下回るものの、高水準となりました。売上収益は、「環境」を除く他の事業において前年同期を上回り好調に推移しました。前年に中国でのロックダウン影響を受けた「建築・産業」や「エネルギー」での需要回復が寄与したほか、「精密・電子」において部材不足の解消など生産状況の改善により、前期末からの受注残の消化が進んだことで売上収益が増加しました。営業利益は、人件費や事業活動拡大に伴う固定費が増加傾向にあるものの、増収に加え価格改定効果や円安影響により増益となり、売上収益、営業利益はいずれも第2四半期連結累計期間として過去最高額を更新しました。これらの結果、当第2四半期連結累計期間における受注高は3,676億72百万円(前年同期比7.9%減)、売上収益は3,638億33百万円(前年同期比16.5%増)、営業利益は337億66百万円(前年同期比24.2%増)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は205億83百万円(前年同期比13.9%増)となりました。
事業セグメント別の概況は以下のとおりです。 なお、「第4 経理の状況 1 要約四半期連結財務諸表 要約四半期連結財務諸表注記 5.事業セグメント」に記載のとおり、第1四半期連結累計期間より報告セグメントを変更しています。以下、前第2四半期連結累計期間との比較については、前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えて比較しています。
《事業セグメント別の概況》(単位:百万円)
セグメント
受注高
売上収益
セグメント損益
前第2四半期連結累計期間
当第2四半期連結累計期間
増減率(%)
前第2四半期連結累計期間
当第2四半期連結累計期間
増減率(%)
前第2四半期連結累計期間
当第2四半期連結累計期間
増減率(%)
建築・産業
102,680
111,093
8.2
89,589
106,527
18.9
4,811
6,733
39.9
エネルギー
59,207
101,496
71.4
64,098
79,489
24.0
4,235
7,320
72.8
インフラ
25,940
25,272
△2.6
25,521
29,280
14.7
4,100
4,402
7.4
環境
46,237
49,276
6.6
36,492
30,981
△15.1
950
2,632
176.9
精密・電子
164,613
79,942
△51.4
96,017
116,932
21.8
13,923
12,620
△9.4
報告セグメント計
398,679
367,081
△7.9
311,719
363,212
16.5
28,021
33,709
20.3
その他
735
590
△19.7
699
621
△11.2
△457
△121
-
調整額
-
-
-
-
-
-
△381
178
-
合計
399,415
367,672
△7.9
312,418
363,833
16.5
27,183
33,766
24.2
《事業セグメント別の事業環境と事業概況》
セグメント
2023年12月期第2四半期の事業環境
2023年12月期第2四半期の事業概況と受注高の増減率(注)1
建築・産業
<海外>・欧米の建築設備市場は、資材やエネルギーコストの高止まり及びインフレや利上げによる投資の落ち込みにより、鈍化傾向が継続している。・中国の建築設備市場は、新規着工件数が減少しており市場成長は依然低迷しているが、一部の産業市場と公共インフラでは投資が継続している。
<国内>・建築設備市場は、建築着工棟数が前年同期並みで推移しているが、サービス市場での需要は増加傾向である。・産業市場は、脱炭素化を見据えた設備投資の検討や事業構造の転換など中長期で大きな変化が想定されるが、足元では堅調に推移している。
<海外>・ コロナ禍からの中国の経済回復や2022年の北米ポンプメーカ買収効果により、中国及び北南米での受注が堅調に推移しており、受注高は前年同期を上回る。
<国内>・低環境負荷製品投入などの施策効果により堅調に推移しており、受注高は前年同期を上回る。
エネルギー
・新規製品市場は、北米・アジア・中東地域での石油化学市場向けの案件に動きがみられ、特に北米や東アジアでは大型石油化学プラント案件が進行している。LNG市場向けは、前期に引き続き、北米地域を中心に活発な動きがみられる。・サービス市場は、全般的にメンテナンス・修理・部品等の需要が堅調に推移している。
・製品の受注高は、前年同期を上回る。・サービス分野の受注高は、前年同期並み。
インフラ
<海外>・水インフラ市場は、中国では政府による景気刺激策の影響もあり需要が拡大しているほか、東南アジアや北米においても経済成長や施設の老朽化による整備などが進み需要は堅調に推移している。
<国内>・社会インフラの更新・補修に対する投資は、堅調に推移している。・公共向け建設市場は、前期を上回る水準で推移している。既存設備のアフター関連は堅調な需要が継続している。
<海外>・水インフラの受注高は前年同期を上回る。
<国内>・公共向けの受注高は総合評価案件やアフターサービスの受注拡大などの施策の継続的な取組みにより堅調に推移しているが、大型案件の受注があった前年同期を下回る。
セグメント
2023年12月期第2四半期の事業環境
2023年12月期第2四半期の事業概況と受注高の増減率(注)1
環境(注)2
<国内>・公共向け廃棄物処理施設の新規建設需要は例年通りに推移している。・既存施設のO&Mの発注量は例年どおり推移している。・民間向けの木質バイオマス発電施設や廃プラスチックなどの産業廃棄物処理施設は、一定の建設需要が継続している。
<国内>・受注高は前年同期並み。内訳としては、EPCにおいては今期の大型案件受注のため前年同期と比較して大幅に上回る一方で、O&Mにおいては前年同期を下回る。
【大型案件の受注状況】
・公共向け廃棄物処理施設のDBO案件(1件)・民間向けバイオマス発電施設の長期包括案件(1件)
精密・電子
・半導体需要低迷の影響を受け、引き続き半導体メーカでは設備投資計画を延期及び一部中止する動きが続いており、半導体製造装置市場は調整局面にある。
・中国向け等の一部を除き、ロジック・ファウンドリ、メモリメーカはいずれも投資を減速させており、受注高は前年同期を下回る。
(注)1.矢印は受注高の前年同期比の増減率を示しています。
+5%以上の場合は
、△5%以下の場合は
、±5%の範囲内の場合は
で表しています。
2.O&M(Operation & Maintenance) …………………… プラントの運転管理・メンテナンス EPC(Engineering, Procurement, Construction)… プラントの設計・調達・建設 DBO(Design, Build, Operate)……………………… プラントの設計・調達・建設に加え、建設後の
運転管理・メンテナンスを一定期間請け負う。
(資産)当第2四半期連結会計期間末における資産総額は、前年度末に比べて契約資産が181億17百万円、営業債権及びその他債権が65億87百万円減少した一方、現金及び現金同等物が275億17百万円、棚卸資産が145億85百万円、有形固定資産が52億84百万円増加したことなどにより、246億57百万円増加し、8,527億7百万円となりました。
(負債)当第2四半期連結会計期間末における負債総額は、前年度末に比べて営業債務及びその他の債務が290億93百万円減少した一方、契約負債が268億70百万円、社債、借入金及びリース負債が64億36百万円増加したことなどにより、16億61百万円増加し、4,599億85百万円となりました。
(資本)当第2四半期連結会計期間末における資本は、配当金を99億42百万円支払った一方、利益剰余金が親会社の所有者に帰属する四半期利益205億83百万円により増加したこと、在外営業活動体の換算差額が111億5百万円増加したことなどにより、前年度末に比べて229億96百万円増加し、3,927億22百万円となりました。親会社の所有者に帰属する持分は3,823億33百万円で、親会社所有者帰属持分比率は44.8%となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況
① キャッシュ・フロー営業活動によるキャッシュ・フローは、堅調な営業利益に支えられ、521億50百万円の収入超過(前年同期比236億67百万円の収入増加)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の取得による支出151億97百万円などにより、159億19百万円の支出超過(前年同期比19億円の支出増加)となりました。営業活動及び投資活動によるキャッシュ・フローを合わせたフリー・キャッシュ・フローは、362億31百万円の収入超過(前年同期比217億67百万円の収入増加)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金が純額で17億84百万円減少したことや、配当金の支払い99億42百万円などにより、116億92百万円の支出超過(前年同期比48億36百万円の支出減少)となりました。以上の結果、当第2四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物の残高は、前年度末から275億17百万円増加し、1,436億54百万円となりました。
② 財務戦略の基本方針当社グループは、資本効率と財務健全性のバランスに配慮しつつ、適宜適切なタイミングで資本の調達と配分を行うことを財務戦略の基本と考えています。現在の事業推進に必要十分と考える「シングルAフラット(※)」の信用格付け維持を基本とし、D/Eレシオを財務規律としつつ負債の活用を図ります。また、キャッシュ・コンバージョン・サイクルの改善と非効率資産の選別/処分を通じ投下資本の効率的活用を促進します。その上で、株主還元として連結配当性向35%以上を維持しつつ、企業価値向上に繋がる投資対象への資本投下の機を逃さずに行い、「長期的な企業価値の最大化」を目指します。(※)格付投資情報センター(R&I)による格付
③ 資金調達について当社グループは、事業を行う上で必要となる運転資金や成長のための投資資金として、営業キャッシュ・フローを主とした内部資金だけでなく金融機関からの借入や社債の発行などの外部資金を有効に活用していきます。D/Eレシオは0.3~0.5を基準に負債の活用を進め、資本コストの低減・資本効率の向上を図ります。また、現金・預金等の水準(手元流動性)については、連結売上収益の2か月分を目安に適正水準の範囲でコントロールする方針です。これに加えて、金融上のリスクに対応するためにコミットメントライン契約等を締結することで、代替流動性を確保しています。なお、グループ内の資金効率を高めるため、資金を当社に集中する制度を運用しています。
契約の種別並びに当第2四半期連結会計期間末の借入未実行残高は次のとおりです。
種別
金額
当座貸越契約
50億円
コミットメントライン契約
800億円
借入実行高
-
借入未実行残高
850億円
(3) 事業上及び財務上の対処すべき課題当第2四半期連結累計期間において、当社グループが対処すべき課題について重要な変更はありません。
(4) 研究開発活動当第2四半期連結累計期間における当社グループの研究開発費の総額は、88億31百万円です。なお、当第2四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(5) 今後の見通し《事業セグメント別の事業環境の見通し》
セグメント
事業環境
建築・産業
<海外>・中国はハイテク産業市場や公共インフラが成長する一方、建築設備市場における回復ペースの鈍化傾向が継続する懸念がある。・欧米は高インフレや建設費、労働コストの上昇、ウクライナ情勢の長期化などの影響により設備投資の鈍化傾向が継続すると見込まれる。
<国内>・建築設備市場は、マンション関連分野で資材価格の高止まりによる建設コストが高騰しており需要が減速するとみられるが、ビルや工場、物流施設分野は設備投資の持ち直しが続くとみられ、市場全体としては2022年並みを維持すると見込まれる。・産業市場は、一部で一時的な需要減速が見込まれ、設備投資計画の修正や延期などが懸念されるが、市場全体としては設備投資などの需要回復が継続すると見込まれる。
エネルギー
・新規製品市場は、北米・アジア・中東地域を中心に石油化学市場等に動きが見込まれる。LNG市場では北米や中東等を中心に堅調に推移することが見込まれる。・サービス市場は、メンテナンス・修理需要が活況から一服し、通常レベルに戻るとみられる。・脱炭素関連市場は、水素やアンモニア、二酸化炭素の回収・貯蔵・有効利用等で案件の増加が見込まれる。・電力市場は、国内では石炭火力発電所でのアンモニア混焼案件が始動している。中国では引き続き火力発電の新設/高効率化改造の案件が進行している。
インフラ
<海外>・世界的なインフレ・景気減速により公共投資も抑制される見通しだが、人口増による水需要はアジア・アフリカを中心に堅調である。また、地球温暖化・異常気象により世界各地で洪水被害が年々増えており、河川排水ポンプや排水ポンプ車などは一定の需要が続くことが見込まれる。
<国内>・国土交通省が公表した「第5次社会資本整備重点計画」で激甚化・頻発化する自然災害、加速するインフラの老朽化が社会情勢の変化として取り上げられており、関連する社会インフラの更新・補修に対する投資は堅調に推移する見込みである。
環境
<国内>・公共向け廃棄物処理施設の新規建設需要は、概ね例年通り推移すると見込まれる。・民間向けの木質バイオマス発電施設や廃プラスチックなどの産業廃棄物処理施設の建設需要は継続すると見込まれる。・既存施設のO&Mは、民間への発注が増加傾向にあるが、需要は短期的には例年並みと見込まれる。
精密・電子
・半導体市場は、生成系AI等の一部の分野で需要増の兆しがあるものの、メモリを始めとする市場全体としては依然として調整局面にある。これに伴い、半導体製造装置市場の本格回復開始時期も遅れがみられる。しかし、中長期的には、ICAC5(IoT、Cloud、AI、Car(電気自動車・車の自動運転)、5G)、DX、GX向けの需要拡大を背景とした、市場の成長見通しに変化はないと見込まれる。