【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(経営成績等の状況の概要)
(1) 財政状態及び経営成績の状況
<事業全体の概況>2022年はコロナ禍からの回復途上にあったものの、ロシアのウクライナ侵攻により、その様相が大きく変化しました。サプライチェーンの混乱や原材料不足、エネルギー価格高騰によるインフレ圧力の高まりとそれを受けた欧米諸国の金融引き締めなどにより、景気減速に対する警戒感が強まりました。また、堅調であった中国経済も、新型コロナウイルス感染症の感染者が急増した一部の都市でロックダウンを余儀なくされるなど、先行きの不透明感が高まりました。当期(2022年1月1日~12月31日)における当社グループの業績は、㈱セプテーニ・ホールディングスの連結子会社化などにより、売上総利益は前期比14.4%増、売上総利益のオーガニック成長率(為替やM&Aの影響を除いた内部成長率)は3.2%となりました。調整後営業利益は同13.5%増、オペレーティング・マージン(調整後営業利益÷売上総利益)は18.2%(前期は18.3%)、親会社の所有者に帰属する調整後当期利益は同19.1%増となりました。制度会計上の営業利益と親会社の所有者に帰属する当期利益は、前期に計上した固定資産売却益の反動や当期に計上した減損損失等により、それぞれ前期比△51.4%、△44.8%となりました。なお、調整後営業利益は、営業利益から、買収行為に関連する損益及び一時的要因を排除した、恒常的な事業の業績を測る利益指標であります。買収行為に関連する損益:買収に伴う無形資産の償却費、M&Aに伴う費用、完全子会社化に伴い発行した株式報酬費用一時的要因の例示:構造改革費用、減損、固定資産の売却損益など 親会社の所有者に帰属する調整後当期利益は、当期利益から、営業利益に係る調整項目、条件付対価に係る公正価値変動額(アーンアウト債務再評価損益)・株式買取債務に係る再測定額(買収関連プットオプション再評価損益)、これらに係る税金相当・非支配持分損益相当などを排除した、親会社の所有者に帰属する恒常的な損益を測る指標であります。
当期の連結業績(単位:百万円)
科目
当期
前期
前期比・差
収益
1,243,883
1,085,592
14.6%
売上総利益
1,117,002
976,577
14.4%
調整後営業利益
203,189
179,028
13.5%
オペレーティング・マージン
18.2%
18.3%
△10bps
親会社の所有者に帰属する調整後当期利益
130,037
109,203
19.1%
営業利益
117,617
241,841
△51.4%
親会社の所有者に帰属する当期利益
59,847
108,389
△44.8%
<当期の連結業績のポイント>売上総利益は、堅調に推移した海外メディア事業と、カスタマートランスフォーメーション&テクノロジー(以下、CT&T)領域が構造的に成長したことにより、オーガニック成長率が3.2%となったこと、さらには連結子会社化した㈱セプテーニ・ホールディングス等が成長に貢献し、為替の影響もあったことで、14.4%の増収となりました。また、構造改革の効果、適切なコストコントロールも奏功し、オペレーティング・マージンは18.2%、調整後利益項目は増益となりました。なお、売上総利益と調整後営業利益は2期連続で、親会社の所有者に帰属する調整後当期利益は当期に、上場来最高となりました。
日本は0.4%、米州(以下「Americas」)6.1%、ヨーロッパ、中東及びアフリカ(以下「EMEA」)5.1%、アジア太平洋(日本を除く。以下「APAC」)2.5%と、売上総利益は全地域でプラスのオーガニック成長となり、最も大きい成長となったのはAmericasでした。売上総利益の構成比は、日本の比率が前年43%から39%へ減少し、Americasが前年25%から29%へ増加しました。 なお、当社グループは、2022年3月より当社グループの方針と法的観点からロシア事業の見直しを開始し、同年8月には現地合弁会社の当社グループ保有持分の全てを現地パートナーへ譲渡することについて、同社と大枠で合意し、交渉を進めてきましたが、同年11月14日開催の取締役会において、当社グループのロシア事業を担う現地合弁会社の当社グループ保有持分の全てを現地パートナーへ譲渡することを決定し、当社グループは当該譲渡契約を締結いたしました。当該譲渡契約締結により、当連結会計年度において、制度会計上の営業利益へ約246億円、親会社の所有者に帰属する当期利益へ約251億円のマイナスの影響がありました。今後の成長を牽引するCT&T領域の売上総利益は、前期比(為替影響排除ベース)で17.5%増加したことで、構成比は310 bps向上し、32.3%となりました。前年に続き、国内外でCT&T領域に注力するM&Aを推進し、日本のDX領域のコンサルティング企業「イグニション・ポイント㈱」、アイルランドのSalesforceコンサルティング企業「Pexlify Limited」、インドのSalesforceのプロダクト開発を行う「Extentia Information Technology」、豪州の「Aware Services Pty Ltd」等を買収しました。
<当期の連結業績:地域別>1.国内事業非常に高い前期の反動はありつつも、顧客企業のデジタルトランスフォーメーション需要によって好調を維持したデジタルソリューション領域の成長に加え、事業変革により強化されている統合ソリューションの提供拡大や㈱セプテーニ・ホールティングスの連結子会社化により、国内事業の売上総利益は4,387億40百万円(前期比5.5%増)、売上総利益のオーガニック成長率は0.4%となりました。増収に加え、コストコントロールの効果により、調整後営業利益は1,056億65百万円(同10.8%増)、オペレーティング・マージンは24.1%(前期は22.9%)となり、前期を上回りました。
国内事業 会社別売上総利益の状況(IFRSベース)(単位:百万円)
IFRSベース
当期
前期比
オーガニック成長率
㈱電通
212,682
△3.9%
△3.9%
㈱電通国際情報サービス(ISID)
46,787
16.9%
16.9%
㈱電通デジタル
40,173
13.5%
7.3%
㈱セプテーニ・ホールディングス (注)1
24,697
―
3.4%
㈱CARTA HOLDINGS
24,123
1.2%
1.2%
㈱電通プロモーションプラス (注)2
15,258
△14.0%
△14.0%
㈱電通ライブ
8,397
△26.3%
△26.3%
その他・内部取引等
66,623
0.7%
―
国内事業 合計
438,740
5.5%
0.4%
(注) 1. ㈱セプテーニ・ホールディングスは、2022年1月4日付で連結子会社化いたしました。 2. ㈱電通テックは、2022年4月1日付で社名を㈱電通プロモーションプラスに変更いたしました。
2.海外事業海外事業の売上総利益のオーガニック成長率は、地域別では、EMEAが5.1%、Americasが6.1%、APACが2.5%となり、全体では5.1%となりました。主要国別にみると、イギリス、フランス、米国、オーストラリアなどは大きく伸びましたが、中国、ブラジルなどは厳しい状況となっております。為替変動の影響もあり、海外事業の売上総利益は6,788億72百万円(前期比21.0%増)、調整後営業利益は1,063億35百万円(同19.5%増)となりました。オペレーティング・マージンは15.7%(前期は15.9%)となりました。
海外事業 地域別のオーガニック成長率(△はマイナス成長)
当期
2022年度第4四半期(10-12月)
2022年度第3四半期(7-9月)
2022年度第2四半期(4-6月)
2022年度第1四半期(1-3月)
EMEA
5.1%
4.4%
9.2%
4.9%
3.3%
Americas
6.1%
2.3%
0.7%
9.6%
13.4%
APAC
2.5%
2.1%
△1.1%
4.5%
5.2%
海外事業 合計
5.1%
3.1%
3.4%
7.0%
8.4%
当期における海外事業 サービスライン別の売上総利益・オーガニック成長率
売上総利益(構成比)(単位:百万円)
オーガニック成長率
メディア
329,122(48%)
4.5%
クリエイティブ
114,597(17%)
△0.7%
CXM※
235,138(35%)
9.1%
※顧客体験マネジメント(Customer Experience Management)
<当期における中期経営計画の進捗について>2022年度における中期経営計画の進捗は以下のとおりとなりました。
前事業年度の有価証券報告書記載の当社グループが設定した、経営目標等は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題」に記載のとおり、以下のとおりであります。① 事業変革による成長戦略の実践・オーガニック成長率:2021年度を基準に2024年度まで年平均成長率ベースで4~5%とする。・売上総利益に占める「カスタマートランスフォーメーション&テクノロジー」領域の構成比を今後50%に高めることを目指す。② 収益性と効率性の改善・2023年度までオペレーティング・マージンを17.0~18.0%のレンジで管理し、2024年度には18.0%を確保する。③ 財務基盤の改善と、株主価値の持続的向上
・Net debt/調整後EBITDA(期末)の上限を1.5倍とし、中期的な目線を1.0~1.5倍とする (IFRS第16号の適用影響を控除したベース)。・配当性向(基本的1株当たり調整後当期利益ベース)を漸進的に高め、2024年度までに35%とする。④ ESG経営の推進・2030年度までにCO2排出量を46%削減、2030年度までに再生可能エネルギー使用率100%を達成(利用可能なマーケットに限定)する。・従業員エンゲージメントスコアを向上させる。・従業員のダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DEI)の強化。2030年度までに女性管理職比率を30%とする。
以上の経営目標等に対し、2022年度の進捗は以下のとおりでした。① 事業変革による成長戦略の実践・オーガニック成長率:2021年度は連結13.1%(国内事業17.9%、海外事業9.7%)、2022年度は連結3.2%(国内事業0.4%、海外事業5.1%)となり、目標値の平均成長率4~5%を、2年間の平均で達成しております。・売上総利益に占める「カスタマートランスフォーメーション&テクノロジー」領域の構成比:2020年度は27.5%、2021年度は29.1%、2022年度は32.3%となり、継続的に上昇しております。② 収益性と効率性の改善・調整後オペレーティング・マージン:オペレーティング・マージンは、2020年度は14.8%、2021年度は18.3%、2022年度は18.2%となり、18.0%を確保しております。③ 財務基盤の改善と、株主価値の持続的向上・Net debt/調整後EBITDA(期末):2021年度末及び2022年度末のNet Debt/調整後EBITDA倍率はマイナスとなっており、1.5倍を下回っております。・配当性向(基本的1株当たり調整後当期利益ベース):2020年度は28.5%、2021年度は30.0%、2022年度は32.0%となり漸進的に引き上げております。④ ESG経営の推進・2030年度までにCO2排出量削減と再生可能エネルギー100%(利用可能なマーケットに限定):2022年度のCO2排出量の、2021年度との増減比(Scope1&2のみの2023年2月時点速報値)は以下の通りであります。・当社グループ全体 △32%・電通ジャパンネットワーク(DJN)△44%・電通インターナショナル(DI) +75%DJNの減要因は電通本社ビルの売却・賃貸利用に伴う専有部分の変化、DIの増要因は、コロナ禍でのリモートワーク体制が変わり、オフィスでの電力使用が再び増加したことによるものであります。・従業員エンゲージメントスコアの向上(全社員対象の調査を毎年実施):2022年度のスコアは以下のとおりとなっております。・当社グループ全体 68(2021年度スコア68)・DJN 60(2021年度スコア63)・DI 71(2021年度スコア70)・従業員のダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン(DEI)の強化。2030年度までの女性管理職比率向上:2022年12月末時点における当社グループにおける女性管理職の比率は以下のとおりであります。・当社グループ全体:19.0%・DJN(直接出資会社):13.9%・DI:37.2%
<財政状態の状況について>当期末は、前期末と比べ、主に「現金及び現金同等物」が減少したものの、「営業債権及びその他の債権」及び為替影響等により「のれん」が増加したことなどにより、資産合計は208億90百万円増加し、3兆7,414億27百万円となりました。一方、負債については、主に「営業債務及びその他の債務」は増加したものの、「未払法人所得税等」及び「その他の流動負債」並びに「社債及び借入金」が減少したことなどにより、負債合計は249億62百万円減少し、2兆7,860億99百万円となりました。また、資本については、主に「在外営業活動体の換算差額」の増加などにより資本合計は458億53百万円増加し、9,553億27百万円となりました。
なお、当連結会計年度において、主に、海外事業セグメントに属するロシア事業に関する資産及び負債を、「売却目的で保有する非流動資産」及び「売却目的で保有する非流動資産に直接関連する負債」に分類しております。詳細は、「4 経営上の重要な契約等」及び「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 13.売却目的で保有する非流動資産」をご参照ください。また、2022年11月14日開催の取締役会決議に基づき自己株式の消却を行いました。詳細は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 23.資本及びその他の資本項目」をご参照ください。
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、健全かつ柔軟なバランスシートを維持することは重要な課題であり、当社グループは、今後の経営方針として、Net debt/調整後EBITDA(期末)の上限を1.5倍とし、中期的な目線を1.0~1.5倍 (IFRS第16号の適用影響を控除したベース)としていく方針であります。
(2) キャッシュ・フローの状況当期末の現金及び現金同等物(以下「資金」)は、6,037億40百万円(前期末7,235億41百万円)となりました。主に財務活動による支出などにより、前期末に比べ1,198億1百万円の減少となりました。
営業活動によるキャッシュ・フロー 営業活動の結果により得た資金は、前期に比べ588億19百万円減少し、808億96百万円となりました。主に税引前利益が減少したことや、運転資本が増加したことなどによるものであります。 投資活動によるキャッシュ・フロー 投資活動の結果支出した資金は、前期に比べ2,865億73百万円増加し、243億46百万円となりました。主に前期のセール・アンド・リースバックによる収入の反動減によるものであります。前期のセール・アンド・リースバックによる収入は、前期に、電通本社ビルを含む汐留A街区不動産を譲渡し、電通本社ビルの賃借を開始したことによるものであります。当社グループは、2020年8月より「包括的な事業オペレーションと資本効率に関する見直し」に着手し、資本効率の向上、財務体質の強化、及び成長投資資金の確保を目的に、当該取引を実施いたしました。詳細については、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 16.リース取引 (5)セール・アンド・リースバック取引」をご参照ください。 財務活動によるキャッシュ・フロー 財務活動の結果支出した資金は、前期に比べ439億96百万円減少し、1,881億92百万円となりました。主に非支配株主持分からの子会社持分取得による支出が減少したことなどによるものであります。なお、2022年2月14日開催の取締役会において、400億円を上限とする自己株式取得の実施を決議したこと等に伴い、当期に400億6百万円の自己株式の取得による支出がありました。 (生産、受注及び販売の状況)
販売実績当連結会計年度におけるセグメントの販売実績(収益)は次のとおりであります。
セグメントの名称
収益(百万円)
前期比(%)
国内事業
526,605
106.0
海外事業
717,277
121.9
計
1,243,883
114.6
(注) 1.セグメント間取引については相殺消去しております。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては「(経営成績等の状況の概要) (1) 財政状態及び経営成績の状況」に記載したとおりであります。
(2) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報① 資本政策・財務戦略の基本的な考え方当社グループは、2021年2月に発表した中期経営計画期間において、経営の安定性、財務の健全性に留意しつつ、企業活動のデジタル化の進展などがもたらす社会の変化と事業機会を積極的にとらえ、広く社会課題の解決に資するとともに、さらなる企業価値、株主価値の向上を目指してまいります。財務の健全性については、純有利子負債の調整後EBITDAに対する倍率の上限(期末)を1.5倍とし、中期的な目線を1.0~1.5倍(いずれもIFRS第16号の適用影響を控除したベース)とすることで、高い信用格付の維持を目指してまいります。また、内部資金、金融機関からの借入、社債、コマーシャル・ペーパー、債権流動化、又はコミットメントライン等により、十分な手元流動性を確保することとしております。さらに、2022年度においては、急速な外部環境変化等に万全を期すため、引き続き金融機関との間で一時的に追加の銀行融資枠を設定しております。これらにより、急激な事業環境の変化等に対するリスク耐性が高い状態を維持できるよう努めてまいります。M&A・設備投資等の成長投資に関しては、経営の安定性・財務の健全性に留意しながら、グループ全社にわたる成長に向けた投資を推進してまいります。株主還元に関しては、これらの活動を通して得られる利益の適切な配分と本源的な企業価値の向上を通じて株主の皆様への利益還元に努めることとし、配当方針としては、基本的1株当たり調整後当期利益に対する配当性向が2024年度までに35%となるよう漸進的に高めてまいります。
② 資金需要の主な内容当社グループの運転資金需要のうち主なものは、広告作業実施のための媒体料金及び制作費の支払等並びに人件費をはじめとする販売費及び一般管理費であります。また、2021年2月に発表した中期経営計画期間においては、新しいテクノロジーやソリューション開発、イノベーションへの投資や高成長領域であるカスタマートランスフォーメーション&テクノロジーへのM&A・投資に係る資金需要が見込まれます。
③ キャッシュフローの状況当連結会計年度のキャッシュフローの状況につきましては「(経営成績等の状況の概要) (2) キャッシュ・フローの状況」に記載したとおりであります。
④ 資金調達及び流動性の状況 当社グループは、内部資金、金融機関からの借入、社債、コマーシャル・ペーパー、又は債権流動化等の多様な手段の中から、その時々の市場環境や長期資金の年度別償還額も考慮した上で、機動的に有利な手段を選択し、資金調達を行っております。なお、長期資金については、原則として当社で一元的に資金調達しております。また、緊急時の流動性を確保するため、当社はシンジケーション方式による極度額500億円のコミットメントラインを、DI社は5億英ポンド(約800億円)のコミットメントラインを設定しております。また、急速な外部環境変化等に万全を期すため、引き続き金融機関との間で一時的に追加の銀行融資枠を設定しております。さらに、グループ内の資金調達の一元化・資金効率の向上・流動性の確保の観点から、資金余剰状態にある子会社から当社が資金を借り入れ、資金需要が発生している子会社に貸出を行うキャッシュ・マネジメント・システムを導入しております。
当社グループは、安定的な外部資金調達能力の維持向上を重要な経営課題と認識しており、格付機関である株式会社格付投資情報センター(R&I)から長期格付AA-、短期格付a-1+を取得しております。また、主要な内外金融機関との間で長期間に亘って築き上げてきた幅広く良好な関係に基づき、当社グループの事業の維持拡大、必要な運転資金の確保、成長投資資金の調達に関しては問題なく実施可能であると認識しております。
(3) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定 当社の連結財務諸表は、国際会計基準審議会により公表されたIFRSに基づき作成されております。また、当社経営陣は、連結財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の報告数値及び偶発債務等オフバランス取引の開示、報告期間における財政状態及び経営成績について影響を与える見積りを行わなければなりません。経営陣は、例えば、投資、企業結合、退職金、法人税等、偶発事象や訴訟等に関する見通しや判断に対して、継続して評価を行っております。経営陣は、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行い、その結果は、資産・負債の簿価、収益・費用の報告数字についての根拠となります。実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。当社の連結財務諸表で認識する金額に重要な影響を与える見積り及び仮定は、以下のとおりであります。
① 有形固定資産、のれん、無形資産の減損当社グループは決算日において、棚卸資産及び繰延税金資産を除く非金融資産が減損している可能性を示す兆候があるか否かを判定し、減損の兆候が存在する場合には当該資産の回収可能価額に基づき減損テストを実施しております。のれんは償却を行わず、減損の兆候の有無にかかわらず年に一度、又は減損の兆候がある場合はその都度、減損テストを実施しております。資産の回収可能価額は資産又は資金生成単位の処分コスト控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い方の金額としており、資産又は資金生成単位の帳簿価額が回収可能価額を超過する場合には、当該資産は回収可能価額まで減額し、減損損失を認識しております。使用価値の算定に際しては、資産の耐用年数や将来キャッシュ・フロー、成長率、割引率等について一定の仮定を用いております。これらの仮定は過去の実績や当社経営陣により承認された事業計画等に基づく最善の見積りと判断により決定しておりますが、事業戦略の変更や市場環境の変化等により影響を受ける可能性があり、仮定の変更が必要となった場合、認識される減損損失の金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。海外事業におけるのれんの減損テストにおける主要な仮定や感応度分析等の詳細については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表注記 15.のれん及び無形資産 (3)のれんの減損テスト」をご参照ください。
② 使用権資産当社グループは、借手としてのリースについて、リースの開始日において、使用権資産及びリース債務を認識しております。使用権資産は開始日において取得原価で測定しております。開始日後においては、原価モデルを適用して、取得原価から減価償却累計額及び減損損失累計額を控除して測定しております。
当社グループは構造改革の一環として不動産の適正化を行っており、一部の不動産リース契約について、サブリースの活用を見込んでおります。当該リース契約に関する使用権資産の残高は、基本サブリース料、リース期間におけるリース支払料の想定増加率、リースインセンティブ及びサブリース開始時期を含む空室期間に仮定をおいて算定しております。市場環境の変化や予測不能な事象の発生等により上記仮定の見直しが必要となった場合には、翌連結会計年度において使用権資産に係る追加の減損又は減損の戻入れが発生する可能性があります。
③ 金融商品(条件付対価及び株式買取債務を含む)の評価当社グループは有価証券やデリバティブ等の金融資産を保有しており、当該金融資産の評価に当たり一定の仮定を用いております。公正価値は、市場価格の他、マーケット・アプローチやインカムアプローチ等の算出手順に基づき決定しております。具体的には、株式及びその他の金融資産のうち活発な市場が存在する銘柄の公正価値は市場価格に基づいて算定し、活発な市場が存在しない銘柄の公正価値は観察可能な市場データを用いて算定した金額、観察不能なインプットを用いて主としてインカムアプローチやマーケット・アプローチで算定した金額で評価しております。企業結合の結果生じる条件付対価及び株式買取債務の公正価値等は、観察不能なインプットを用いて割引キャッシュ・フロー法で算定した価額で評価しております。当社経営陣は金融商品の公正価値等の評価は合理的であると判断しておりますが、予測不能な前提条件の変化等により見積りの変更が必要となった場合、認識される公正価値等の金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
④ 確定給付制度債務の評価確定給付制度債務及び退職給付費用は、年金数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率、死亡率等が含まれます。当社経営陣はこれらの前提条件は合理的であると判断しておりますが、実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、認識される費用及び計上される債務に重要な影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 引当金当社グループは、過去の事象の結果として現在の法的又は推定的債務を有しており、債務の決済を要求される可能性が高く、かつ当該債務の金額について信頼性のある見積りが可能である場合に引当金を認識しております。貨幣の時間価値の影響が重要である場合、引当金は当該負債に特有のリスクを反映させた割引率を用いた現在価値により測定しております。これらの引当金は、決算日における不確実性を考慮した最善の見積りにより算定しておりますが、予測不能な事象の発生や状況の変化等により影響を受ける可能性があり、実際の結果が見積りと異なる場合、計上される債務の金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 繰延税金資産の回収可能性繰延税金資産は、税務上の繰越欠損金、繰越税額控除及び将来減算一時差異のうち、将来の課税所得に対して利用できる可能性が高いものに限り認識しております。繰延税金資産は毎決算日に見直し、税務便益の実現が見込めないと判断される部分について減額しております。当社グループは、将来の課税所得及び慎重かつ実現性の高い継続的なタックス・プランニングの検討に基づき繰延税金資産を計上しており、回収可能性の評価に当たり行っている見積りは合理的であると判断しておりますが、見積りは予測不能な事象の発生や状況の変化等により影響を受ける可能性があり、実際の結果が見積りと異なる場合、認識される費用及び計上される資産に重要な影響を及ぼす可能性があります。
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