【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)業績等の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
2022年の世界経済がCOVID-19の感染対策の終息と経済活動の再開を目指すなか、ウクライナ危機の長期化による資源価格の高騰や欧米を中心としたインフレの加速に伴う政策金利の引き上げ、中国のゼロコロナ政策等が原材料・部品などの供給不足をもたらし、当社グループの生産活動は大きな制約を受けてきました。一方で、脱炭素の流れが加速し、エネルギー関連の事業機会が拡がる等、将来に向けての明るい展望が開けてきた年でもありました。
インダストリアル事業は、世界的なエネルギー価格高騰やウクライナ危機からエネルギー確保や低・脱炭素化への投資が旺盛で、また半導体や自動車関連の投資も活発だったことから、受注を大きく伸ばしました。航空宇宙事業は、中・大型機の需要回復と航空機産業全体のサプライチェーンの再構築に時間を要するなか、小型機(単通路機)の航空機需要の回復により主力のカスケード製品の生産・出荷を伸ばし、事業の採算性も大きく改善しつつあります。また、エアバス製小型機A220向け部品の新規受注や商業用小型人工衛星といった新市場創出など、事業収益の安定化、強化に取り組んでいます。メディカル事業は、主力の血液透析事業で部品不足による納期調整が継続したことで国内向け血液透析装置販売は減少したものの、中国向け血液透析装置の出荷の増加や消耗品の売上増、為替の円安影響などで売上収益は前年を上回りました。一方、半導体など原材料・部品の予想を上回る供給不足と想定を上回る価格高騰により装置、消耗品とも収益力が低下していますが、2021年の下期から発生したベトナム血液回路工場の稼働制限に起因した血液回路の緊急調達・輸送の解消による費用低減や諸経費の削減活動に取り組んだ結果、血液透析事業の営業利益は前年並みの水準となりました。また、ヘルスケア事業は、当第3四半期までに据置型装置「Aeropure Series S(8畳用)」の販売低迷に伴う棚卸資産の評価損を約38億円計上しましたが、当第4四半期において、「Aeropure Series M(20畳用)」及び「Aeropure Series P(ポータブルモデル)」の足元の販売状況及び今後の販売計画を踏まえ、棚卸資産の評価損を約8億円追加計上しました。当期におけるヘルスケア事業の評価損は累計で約46億円となり、メディカル事業の収益悪化の主要因となっています。
なお、2022年8月1日に当社連結子会社である LEWA GmbH 及び Geveke B.V.の全株式譲渡を完了し、本株式譲渡により、連結決算において株式譲渡益約368億円を調整額(全社費用等)に計上しています。
この結果、当連結会計年度の当社グループ業績は、受注高 205,175百万円(前年同期比10.8%増)、売上収益 177,109百万円(同5.6%増)、営業利益 34,222百万円(前年同期は営業利益3,125百万円)、税引前利益 32,682百万円(前年同期は税引前利益3,952百万円)、親会社の所有者に帰属する当期利益は 13,639百万円(前年同期は221百万円)となりました。
セグメントの業績(内部取引控除前)は次のとおりです。
工業部門
<インダストリアル事業>
経済活動の正常化に加え、ロシア・ウクライナ情勢による資源価格の高騰が続くなか、エネルギー確保や脱炭素化によるLNGや水素関連への投資に加え、半導体や自動車関連の投資が進んでいます。
Clean Energy & Industrial Gasグループ(以下、CE&IGグループ)は、水素ステーション関連やLNG液化プラントの大口受注を獲得するほか、LNG燃料船向けの燃料供給装置や産業ガス関連の受注も好調に推移し、売上収益も前年から大きく増加しました。収益面では、人件費の上昇や旺盛な受注に対応するための体制整備等の先行経費が増加したことから営業利益率が低下していますが、売上増加が本格化する次期2023年以降の収益性の回復、営業利益の増加を見込んでいます。また、国内のポンプ・システム事業は、半導体製造工場や電池関連への投資などが活況で、受注を大きく伸ばしており、宮崎インダストリアル工場は高い稼働率を維持しました。
なお、LEWA GmbH(以下、LEWA社)及び Geveke B.V. (以下、Geveke社)は、2022年8月1日付でこれらの株式譲渡を完了し、以降は当社の連結範囲から除外されています。その他、電子部品製造機器事業は、スマートフォン向けの半導体需要は低調のなか、EV等の半導体需要は堅調で、ハイエンドMLCC用装置の受注は好調に推移しました。
<航空宇宙事業>
民間航空機需要は、中・大型機(双通路機)の回復に時間を要しているものの、小型機(単通路機)の需要回復に伴い、宮崎航空宇宙工場のカスケードの生産は、ほぼフル稼働の状況で、収益性の改善は継続しています。そのなかで、航空機産業におけるコロナ後のサプライチェーンの再構築・見直しが進んでいることから、従来、中・大型機向けの部品生産を主力としていたベトナム・ハノイ工場においてエアバス製小型機 A220向けの新規部品の受注を獲得する等、足元の事業環境の変化に応じた取組みを進めています。次世代交通手段eVTOLや水素を燃料とする航空機の実用化、商業用小型人工衛星といった新市場創出へ向けた取り組みも本格化しており、事業領域の拡大と技術力、生産体制の強化による航空関連部品メーカーとしての地位の向上を図ってまいります。
以上の結果、工業部門の受注高は126,967百万円(前年同期比12.4%増)、売上収益は102,383百万円(同6.0%増)、セグメント利益は2,923百万円(同32.3%減)となりました。
なお、次期は、LEWA社、Geveke社を除いた当期2022年12月期の営業利益と比較すると大幅な増益を見込んでおり、急速な事業拡大に備えた体制の整備と新技術の開発、新製品の投入を急いでまいります。
医療部門
<メディカル事業>
血液透析事業は、国内市場では、血液透析装置の買い替え需要は旺盛ですが、国内市場全体で半導体等の部品不足による納期調整が継続していることから、装置販売は減少しました。消耗品販売は粉末型人工腎臓透析用剤の需要が引き続き堅調です。一方、海外市場は、中国が引き続き好調を継続、欧州や東南アジア市場に加えて米国市場への本格展開を展望する海外向け血液透析装置の生産・販売体制の整備に注力しています。収益面では、国内市場の血液透析装置の減収、想定を上回る原材料・部品価格の高騰の影響があるものの、2021年に発生した血液回路の調達費用の解消、諸経費の削減活動などが奏功し、血液透析事業としては前年並みの営業利益を維持しました。
CRRT事業は、中国のコロナ再拡大に伴う装置、消耗品需要の急拡大で好調に推移したものの、深紫外線LED技術を活用したヘルスケア事業は、据置型装置の需要減退により大幅な減益となりました。当第4四半期では「Aeropure Series M(20畳用)」及び「Aeropure Series P(ポータブルモデル)」の評価損を約8億円計上し、当期累計では約46億円の評価損を計上し、メディカル事業の収益悪化の主要因となりました。今後は、引合いの好調なマンションやオフィス等の不動産向けや水除菌装置などのBtoBビジネスに注力し収益の安定化に取り組んでいきます。
以上の結果、医療部門の受注高は78,737百万円(前年同期比6.1%増)、売上収益は75,243百万円(同2.9%増)、セグメント利益は△1,056百万円(前年同期は3,044百万円)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは+8,384百万円となりました。これは主に税引前利益の計上、減価償却費及び償却費の計上並びに契約負債の増加による増加要因があった一方、営業債権及びその他の債権の増加、棚卸資産の増加による減少要因があったことによるものです。
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは+76,762百万円となりました。連結範囲の変更を伴う関係会社株式等の売却による収入が主な要因です。
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは△68,683百万円となりました。借入金の返済による支出が借入による収入を上回ったことが主な要因です。
これらの結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べて19,435百万円増加し、48,462百万円となりました。
(2)生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称
生産高(百万円)
前年同期比(%)
工業部門
92,811
+8.2
医療部門
30,999
+2.1
合計
123,811
+6.6
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しています。
2.金額は、販売価格によっています。
② 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称
受注高(百万円)
前年同期比(%)
受注残高(百万円)
前年同期比(%)
工業部門
126,441
+13.9
72,675
+11.9
医療部門
78,733
+6.1
6,522
+7.1
合計
205,175
+10.8
79,197
+11.5
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しています。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称
販売高(百万円)
前年同期比(%)
工業部門
101,870
+7.7
医療部門
75,239
+2.9
合計
177,109
+5.6
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しています。
(3)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 重要な会計方針及び見積もり
本連結財務諸表の作成にあたって採用する重要な会計方針及び見積もりは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記」をご参照ください。
② 財政状態
ⅰ)資産
当連結会計年度末の資産合計は286,602百万円となり、前連結会計年度末に比べて12,360百万円減少しました。関係会社株式の売却に伴い現金及び現金同等物が増加した一方、のれん及び無形資産等が減少したことが主な要因です。
ⅱ)負債
当連結会計年度末の負債合計は170,837百万円となり、前連結会計年度末に比べ33,925百万円減少しました。借入金の返済による減少が主な要因です。
ⅲ)資本
当連結会計年度末の資本合計は115,764百万円となり、前連結会計年度末に比べて21,564百万円増加しました。利益剰余金の増加及び在外営業活動体の換算差額の増加が主な要因です。
③ 経営成績
当連結会計年度の経営成績の分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)業績等の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりです。
④ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)業績等の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
⑤ 資本の財源及び資金の流動性
ⅰ)資金需要
当社グループの資金需要は、主として、設備新設、改修等に係る投資や、製品製造のための材料及び部品等の製造費用、販売費及び一般管理費等の運転資金です。
ⅱ)資金の源泉
当社グループは、営業活動によるキャッシュ・フローによって得られた資金の活用及び、金融機関からの借入による資金調達を行なっています。
ⅲ)流動性
当社グループは、引き続き営業活動によるキャッシュ・フロー、金融機関からの借入による資金調達により、事業の拡大に必要な資金を確保できるものと考えています。
当社グループの資金管理は、当社が国内子会社を対象とした資金集中管理を実施し、海外子会社も含めたグループ全体の資金効率の向上を図っています。