【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における経営成績の状況については、次のとおりであります。当連結会計年度(2022年4月1日~2023年3月31日)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症への行動制限が緩和され、社会経済活動の正常化が進む中、緩やかな景気の持ち直しの動きがみられました。一方でウクライナ情勢の長期化や資源価格の高騰に伴う物価上昇、急激な円安等、先行き不透明な状況が続いております。このような状況下におきまして、当連結会計年度の連結業績は、新型コロナウイルス感染症への行動制限の緩和を受け、物流関連では国内・国際物流がともに堅調であった事に加え、食品関連の販売量増加、不動産関連の再開発物件の通年稼働等により増収増益となりました。この結果、売上高は510億90百万円(前期比9.2%増)となり、営業利益は35億88百万円(同19.5%増)となりました。経常利益は35億1百万円(同31.9%増)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は21億50百万円(同17.3%増)となりました。業績計画に対しましては、売上高は僅かながら下回りましたが、利益面においては全ての項目で上回りました。
当社グループのセグメントごとの業績は以下のとおりであります。(物流関連事業)売上高は243億48百万円(前期比11.1%増)となり、営業利益は24億94百万円(同5.7%増)となりました。(食品関連事業)売上高は209億66百万円(前期比7.2%増)となり、営業利益は74百万円(前期は1億43百万円の損失)となりました。(情報関連事業)売上高は16億93百万円(前期比4.1%増)となり、営業利益は1億2百万円(同9.4%増)となりました。(不動産関連事業)売上高は40億81百万円(前期比11.2%増)となり、営業利益は20億37百万円(同23.8%増)となりました。
当連結会計年度末における財政状態の状況については、次のとおりであります。総資産は前連結会計年度末比27億62百万円増の1,261億88百万円 (2.2%増)となりました。負債は前連結会計年度末比4億42百万円増の783億9百万円 (0.6%増)となりました。純資産は前連結会計年度末比23億20百万円増の478億78百万円 (5.1%増) となりました。
② キャッシュ・フローの状況当連結会計年度における現金及び現金同等物は、長期借入金の返済による支出54億38百万円や有形及び無形固定資産の取得による支出19億9百万円等がありましたが、減価償却費27億30百万円や長期借入による収入51億12百万円等があり、前連結会計年度より9億55百万円増加し、当連結会計年度末には84億15百万円となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績当社グループの業種・業態は多分野にわたっており、また、取引形態も一様ではないので、セグメントごとに生産・受注及び販売の規模については金額あるいは数量で示すことはしておりません。このため生産、受注及び販売の状況については、「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容」における各セグメントの経営成績の分析に関連付けて示しております。
(注)1.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
相手先
前連結会計年度
当連結会計年度
金額(百万円)
割合(%)
金額(百万円)
割合(%)
株式会社西友
4,052
8.7
5,323
10.4
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容経営成績の状況に関する認識及び分析・検討は以下のとおりであります。当連結会計年度の経営成績は、新型コロナウイルス感染症への行動制限の緩和を受け、物流関連では国内物流の荷動きは回復基調となり、国際物流においても取扱い件数は前期を上回りました。また、2022年4月に連結子会社となった(株)シンヨウ・ロジも業績に寄与し増収、増益となりました。食品関連では外食需要の回復や取引先シェア拡大により販売数量が増加し、棚卸資産評価損の計上も大幅に減少したことから増収、増益となりました。情報関連では汎用基盤の開発案件の新規獲得、拡大により増収、増益となりました。不動産関連では2021年8月に開業したKABUTO ONEが通年で業績に寄与し増収、増益となりました。結果グループ全体では、各セグメント全てにおいて増収、増益となり売上高は510億90百万円(前期比9.2%増)、営業利益は35億88百万円(同19.5%増)となりました。また、経常利益は受取配当金の増加や有利子負債削減に伴う支払利息の減少により35億1百万円(同31.9%増)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、有価証券売却益の減少がありましたが21億50百万円(同17.3%増)となりました。当連結会計年度で重点的に取組んだ対処すべき課題は以下のとおりです。 a.各事業を「チャレンジ領域」と「コア事業領域」に分類し、経営資源の配分を最適化
b.グループ一体運営による新たな事業領域の創出
c.長期的戦略の計画的取組み
d.業務変革の推進と組織基盤の整備
e.サステナビリティ経営を通じ、持続可能な社会を実現当連結会計年度においては「各事業を「チャレンジ領域」と「コア事業領域」に分類し、経営資源の配分を最適化」の方針のもと、「チャレンジ領域」では食品物流会社の(株)シンヨウ・ロジを子会社化し、需要が高まっているコールドチェーン物流に参入をいたしました。食品物流の領域を強化したことにより、物流関連と食品関連での部門の枠を超えた「グループ一体運営による新たな事業領域の創出」を検討しております。「コア事業領域」では物流関連において、京浜港でのコンテナ貨物を中心とした物流事業の維持・強化を目的とし、神奈川県横浜市の本牧埠頭に新倉庫を建設(2024年6月竣工予定)することを決定いたしました。「長期的な戦略の計画的取組み」では当社の所有する越中島地区の再開発について、まちづくりに関心のある社員を公募で募り、専門家を加えたプロジェクトチームを編成し、自由な視点で幅広い検討を行っております。企業価値向上の観点からCRE戦略の視点で事業用資産の見直しを行いグループ全体の不動産の効率性を最大限に向上させていきます。「業務変革の推進と組織基盤の整備」においては、業務変革を継続的に推進するためグループを横断したDXプロジェクト体制を構築し、連結子会社である(株)ヤマタネシステムソリューションズにDX専門の組織体制を整備し、グループ一体となり改善に取り組みました。「サステナビリティ経営を通じ、持続可能な社会を実現」においては、農業を中心とした第一産業に特化した人材支援や情報支援サービスを行うYUIME(株)と資本業務提携を締結し、一次産業従業者の高齢化や人材不足など産地の問題解決に取り組んでおります。また、千葉県印西市にある印西事業所(印西精米センター及び印西アーカイブズセンター)において、当社では初となる太陽光発電設備を導入し全量自家使用しており、建築物省エネルギー性能表示制度」(BELS)の最高ランク5つ星を取得している設備に加え、さらに環境に優しい事業所となりました。中期経営計画「ヤマタネ2025プラン」の1年目である当連結会計年度は、中期経営計画の方針のもと、新たな事業領域や収益力向上のための成長投資を実施し、経営資源の適切な配分に取り組んでまいりました。また、環境に配慮した事業活動を推進してまいりました。今後、消費形態や経済情勢など様々な外部環境の変化が予想されるなか、中長期的な展望に基づいた事業展開を行い、物流と食の流通を通じ、より豊かな社会づくりにチャレンジし、持続可能な社会の実現に貢献することが求められると考えております。
当社グループのセグメントごとの経営成績の分析は以下のとおりであります。(物流関連事業)物流業界におきましては、新型コロナウイルス感染症への行動制限の緩和による復調が期待されましたが、物価上昇に伴い消費関連貨物の輸送量が下期に落ち込み、通年では国内貨物の総輸送量は減少いたしました。また、国際貨物の総輸送量も輸出入ともに減少いたしました。このような状況下で、物流関連におきましては、国内物流では、新型コロナウイルス感染症への行動制限の緩和により業務用飲料の荷動きが回復基調となり、さらに前期獲得した新規荷主も通年で寄与いたしました。また、既存荷主では、安定的な供給体制確保のため保管在庫が増加する傾向がみられ、倉庫事業における入庫高、保管残高は前期を上回りました。国際物流においても行動制限の緩和が進む中、海外引越を中心に取扱い案件は前期を上回って推移いたしました。また、昨年4月に100%連結子会社となりました(株)シンヨウ・ロジも業績に寄与いたしました。この結果、物流関連では売上高は243億48百万円(前期比11.1%増)となり、営業利益は24億94百万円(同5.7%増)となりました。(食品関連事業)コメ流通業界におきましては、少子高齢化を背景に米の需要量が減少する中、令和4年産米は飼料用米や他の作物等への作付け転換が進められ、各都道府県の定めた「生産の目安」が達成され、供給量が減少いたしました。一方で、新型コロナウイルス感染症への行動制限の緩和により外食業界が回復基調に転じた結果、需給が引き締まり取引価格は上昇いたしました。このような状況下で、食品関連におきましては、行動制限の緩和が進み、外食業界の需要が回復基調となり、さらに量販店向けの販売シェアの拡大等もあり精米販売は62千玄米トン(前期比10.9%増)となりました。玄米販売については、一般小売店や他卸売業者が米価の先高感を受けて調達を積極的に行ったこと等により24千玄米トン(同11.0%増)となり、総販売数量は86千玄米トン(同10.9%増)となりました。この結果、売上高は209億66百万円(前期比7.2%増)となりました。営業利益は昨年2月に稼働した印西精米センターの減価償却費の費用増の影響はありましたが、生産効率は向上し、更に棚卸資産評価損が大幅に減少したこともあり、74百万円(前期は1億43百万円の損失)となりました。(情報関連事業)情報サービス業界におきましては、新型コロナウイルスへの行動制限は緩和されましたが、テレワークやオンラインでの会議の定着化が進み、社会のデジタル化への重要性が高まり、クラウドサービスの活用やDXへの取り組みが加速する状況となりました。一方でランサムウェアの増加等、サイバーセキュリティ対策の重要性も高まっています。このような状況下で、情報関連におきましては、棚卸機器レンタル事業においては、モバイルアプリによるサービスへの転換を進めましたが、顧客の店舗削減等の影響を受けて売上高は減少することとなりましたが、常駐型ビジネスでは汎用機基盤の開発や運用業務の新規獲得、拡大等があり、部門全体の売上高は16億93百万円(前期比4.1%増)となりました。また、営業利益は開発の内製化を進めたことや前期に実施したグループシステム基盤構築のシステム投資費用の費用減もあり1億2百万円(同9.4%増)となりました。(不動産関連事業)不動産業界におきましては、新型コロナウイルス感染症への行動制限が緩和される中、緩やかな景気の持ち直しの動きがみられ、都心部を中心とした地価の上昇が地方まで波及したことから、公示地価は用途を問わず2年連続で上昇しました。一方で、都心部の賃貸オフィスビル市場は、在宅勤務の浸透等によるオフィス縮小の動きが継続し、また、新築ビルの供給も続いていることもあり、前年度に引き続き空室率が上昇し賃料も下落傾向となりました。このような状況下で、不動産関連におきましては、期中に一部テナントの退去はありましたが、テナント誘致を積極的に進めることにより高稼働率を維持いたしました。また、一昨年8月に開業した兜町再開発案件「KABUTO ONE」が通年で業績に寄与いたしました。この結果、売上高は40億81百万円(前期比11.2%増)となり、営業利益は20億37百万円(同23.8%増)となりました。
財政状態の状況に関する認識及び分析・検討は以下のとおりであります。(資 産)当連結会計年度末における流動資産は196億81百万円となり、前連結会計年度末比3億43百万円減少いたしました。これは主に食品関連での棚卸資産が9億55百万円減少したことによるものであります。固定資産は1,064億5百万円となり、前連結会計年度末比31億65百万円増加いたしました。これは主に物流関連での横浜市本牧埠頭に建設中の新倉庫における建設仮勘定の増加等により有形固定資産が4億71百万円増加したこと、㈱シンヨウ・ロジの子会社化等により無形固定資産が13億63百万円増加したこと、また時価評価による投資有価証券の増加等により投資その他の資産が13億30百万円増加したことによるものであります。この結果、総資産は1,261億88百万円となり、前連結会計年度末比27億62百万円増加いたしました。(負 債)当連結会計年度末における流動負債は256億78百万円となり、前連結会計年度末比83億39百万円増加いたしました。これは主に固定負債からの振替等により社債が90億81百万円増加したこと、設備投資支払いによる未払金の増加等によりその他流動負債が24億2百万円増加したことによるものであります。当連結会計年度末における固定負債は526億30百万円となり、前連結会計年度末比78億97百万円減少いたしました。これは主に流動負債への振替等により社債が99億83百万円減少したことによるものであります。なお、有利子負債は28億14百万円減少しており、無利子での借入が7億2百万円増加しております。この結果、負債合計は783億9百万円となり、前連結会計年度末比4億42百万円増加いたしました。(純資産)当連結会計年度末における純資産合計は478億78百万円となり、前連結会計年度末比23億20百万円増加いたしました。これは主に剰余金の配当5億67百万円はあったものの、親会社株主に帰属する当期純利益21億50百万円や有価証券評価差額金が4億6百万円増加したことによるものであります。この結果、自己資本比率は35.4%(前連結会計年度末は34.5%)となりました。
当連結会計年度は、長期的戦略への計画的な取組みに基づきM&Aや物流関連において新規開発投資を前期に引き続き実施した結果、資産及び負債は増加いたしましたが、有利子負債の返済により自己資本比率は向上いたしました。各投資計画の稼働により、減価償却費負担は増加したものの、EBITDA等キャッシュベースの収益力は向上しており、企業価値の向上に寄与しているものと考えております。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報キャッシュ・フローの状況に関する認識及び分析・検討は以下のとおりであります。(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動によるキャッシュ・フローは、法人税等の支払い10億40百万円や利息の支払い4億87百万円等がありましたが、税金等調整前当期純利益35億94百万円や減価償却費27億30百万円等があったことから、69億82百万円の収入(前期比27億39百万円の収入増)となりました。(投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動によるキャッシュ・フローは、有形及び無形固定資産の取得による支出19億9百万円や連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出10億41百万円等があったことから、30億51百万円の支出(前期比66億74百万円の支出減)となりました。(財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入による収入51億12百万円等がありましたが、長期借入金の返済による支出54億38百万円や社債の償還による支出9億1百万円等があったことから、29億74百万円の支出(前期比6億11百万円の支出減)となりました。中期経営計画「ヤマタネ2025プラン」1年目であった当連結会計年度は長期的戦略の計画的な取組みに基づく成長投資の実施や有利子負債の返済等により、現金及び現金同等物は前期比9億55百万円増加いたしました。
資本の財源及び資金の流動性についての情報については以下のとおりであります。(資金需要)当社グループの資金需要の主なものは、各セグメント事業活動に必要な営業費用(コメ仕入資金含む)、設備維持更新資金、販売費及び一般管理費等の各運転資金及び成長設備投資資金があります。また、銀行借入金及び社債の返済資金があります。(資金調達方法)当社グループの事業活動に必要な資金を安定的に確保するため、営業キャッシュ・フローに加え銀行借入金並びに社債の発行による資金を調達しております。また、運転資金の効率的な調達を行うため、金融機関と当座貸越契約を締結しており、一部成長投資資金の効率的な資金調達のためコミットメントライン契約を締結しております。一部借入金については、将来の金利上昇リスクを避けるため、金利スワップ契約を締結しております。(財務方針)当社グループでは、不動産関連の連結子会社では一部個別に資金調達を行っておりますが、それ以外の連結子会社は当社において資金調達を一元管理しております。当社グループは、基本的に営業キャッシュ・フローにより設備維持更新資金を含む各事業資金を賄っており、一部余剰資金については信用力向上のため、銀行借入金等の有利子負債の返済資金に充当しております。また、成長投資資金については、案件ごとに採算管理を行い、調達した銀行借入金等の有利子負債は個別に管理する体制を取っております。また、株主還元支出については、安定配当の基本方針のもと連結配当性向目標を25%~35%程度としております。なお、2024年の創業100周年に向けて、段階的に増配していく「累進配当」を行うこととしております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。(固定資産の減損)当社グループは、物流関連、不動産関連においては複数の事業用物件を所有し事業を運営しており、食品関連においても工場を所有し生産・販売を行っております。所有する固定資産の減損損失の認識においては、物流、不動産関連においては主に個々の事業用物件を資産グループとして捉え、また、食品関連では事業全体を資産グループとして捉えております。当社グループでは、長期戦略のもと新規物件投資を進めており、また、総資産に占める有形及び無形固定資産割合は70.9%となっており、固定資産の減損損失の認識の判定に係る会計上の見積りは経営上重要と考えております。なお、当該見積りに用いた仮定等については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」をご参照ください。