【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
(1)経営成績の概況
①当連結会計年度の概況当社は、2022年6月29日に開催された第126期定時株主総会で、「定款一部変更の件」が承認されたことを受けて、2022年度より決算日を3月31日から12月31日に変更しております。決算期変更の経過期間となる当連結会計年度は、当社及び3月決算であった連結子会社は2022年4月1日から2022年12月31日の9か月間を、12月決算であった連結子会社は2022年1月1日から2022年12月31日の12か月間を連結対象期間とする変則的な決算としております。このため、②部門別事業の状況では、当連結会計年度と同一期間となるように組み替えた前期(以下「調整後前期」という。)による比較情報を記載しております。
当期における当社グループを取り巻く経営環境は、国内においては、新型コロナウイルス感染拡大の影響が一部残るものの製造業を中心に設備投資は堅調に推移し、海外においては、米国や欧州などで経済の回復を背景に設備投資は底堅い伸びを示すなど、世界的に機械需要は増加基調となりました。一方、中国では新型コロナウイルス感染拡大によるロックダウンの影響が出るなど一部の地域や業種では停滞もあり、二極化の動きが見られました。また、これに加え、原材料や調達品の価格上昇と需給逼迫、ロシア・ウクライナ問題に代表される地政学上のリスクの継続、急激な為替相場の変動及び原油価格の変動など、不透明感が残る状態でもありました。このような経営環境のもと、当社グループは「中期経営計画2023」で掲げる、製品・サービスによる社会課題解決を通じた持続的な企業価値拡大をめざし、強靭な事業体の構築、企業価値向上のための変革、SDGsへの貢献拡大、環境負荷低減への取組み強化などの施策を推進してまいりました。この結果、当社グループの受注高は9,847億円、売上高は8,541億円となりました。損益面につきましては、営業利益は448億円、経常利益は433億円となりましたが、多額の特別損失を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は58億円となりました。特別損失は主に、当社の完全子会社であるSumitomo SHI FW Energie B.V.において、世界的な脱炭素の動きが加速したことにより、主力事業である固体燃料焚ボイラ市場が大幅に縮小し、同社の買収時に想定していた収益の実現が困難であるとの判断に至ったことから、のれんを含む固定資産の減損損失を計上したことによるものであります。また、ROICは4.6%となりました。なお、当連結会計年度は決算期変更の経過期間となることから、ROICは変則的な連結対象期間に基づいて計算しており、12か月で換算したROICは6.2%であります。
②部門別の状況各部門の経営成績は次のとおりであります。
(a) メカトロニクス国内や欧米で中小型の減・変速機やロボット用精密減速機、インバータの需要が増加し、受注、売上、営業利益ともに増加しました。この結果、受注高は2,041億円(調整後前期比15%増)、売上高は1,814億円(調整後前期比26%増)、営業利益は95億円(調整後前期比42%増)となりました。
(b) インダストリアル マシナリープラスチック加工機械事業は、コロナ禍からの回復で好調であった中国や欧州の需要が落ち着いたことから受注は減少しましたが、受注残もあり売上は増加しました。一方、原材料や調達品の価格上昇などにより営業利益は減少しました。その他の事業は、半導体関連の需要が増加したことや医療機械器具の受注が増加したことなどから、受注、売上、営業利益ともに増加しました。この結果、受注高は2,667億円(調整後前期比17%増)、売上高は2,249億円(調整後前期比18%増)、営業利益は213億円(調整後前期比51%増)となりました。
(c) ロジスティックス&コンストラクション油圧ショベル事業は、景気減速やロックダウンの影響により中国市場の需要が大きく減少したものの、国内や北米は堅調であったことから受注、売上は増加しましたが、中国市場での売上減少や債権に対する引当金の計上などにより営業利益は減少しました。その他の事業では、建設用クレーン事業が、北米地区の需要が堅調に推移したことなどから、受注、売上、営業利益ともに増加しました。また、運搬機械事業は、港湾・電力向け需要が堅調に推移したことなどから受注、売上、営業利益ともに増加しました。この結果、受注高は3,541億円(調整後前期比5%増)、売上高は3,003億円(調整後前期比6%増)、営業利益は130億円(調整後前期比18%減)となりました。
(d) エネルギー&ライフラインエネルギープラント事業は、バイオマス発電設備の大型案件が前期に比べ減少したことなどから受注、売上は減少し、加えて欧州で大型プロジェクトの採算悪化があったことから営業損失となりました。その他の事業は、受注、売上、営業利益ともに増加しました。この結果、受注高は1,552億円(調整後前期比6%増)、売上高は1,433億円(調整後前期比8%減)、営業損失は5億円となりました。
(e)その他受注高は46億円(調整後前期比3%減)、売上高は41億円(調整後前期比9%減)、営業利益は15億円(調整後前期比7%減)となりました。
(2)財政状態の状況総資産は、前連結会計年度末に比べて539億円増の1兆1,489億円となりました。これは、のれん等の減損に伴い無形固定資産が209億円減少した一方で、受注増及び部品供給遅れや生産能力不足によるリードタイム長期化の影響に伴い棚卸資産が434億円、積極的な設備投資により有形固定資産が191億円、それぞれ増加したことなどによるものであります。負債合計は、有利子負債が495億円、売上の増加に伴い支払手形及び買掛金が137億円、それぞれ増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べて439億円増の5,719億円となりました。純資産は、利益剰余金が95億円減少しましたが、円安に伴い為替換算調整勘定が269億円増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べて101億円増の5,769億円となりました。以上の結果、自己資本比率は、前連結会計年度比0.8ポイント減少し、49.5%となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
①キャッシュ・フローの状況当連結会計年度における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度に比べ87億円増加し、937億円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。なお、当連結会計年度は、決算期変更に伴い、当社及び3月決算であった連結子会社は2022年4月1日から2022年12月31日の9か月間を、12月決算であった連結子会社は2022年1月1日から2022年12月31日の12か月間を連結対象期間とする変則的な決算としております。このため、対前期増減については記載しておりません。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、214億円の資金の増加となりました。収入の主な内訳は、減価償却費296億円、税金等調整前当期純利益178億円、売上債権及び契約資産の減少額139億円であります。支出の主な内訳は、受注増及び部品供給遅れや生産能力不足によるリードタイム長期化の影響に伴う棚卸資産の増加額330億円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、373億円の資金の減少となりました。支出の主な内訳は、有形及び無形固定資産の取得による支出365億円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、217億円の資金の増加となりました。収入の主な内訳は、有利子負債の増加額476億円であります。支出の主な内訳は、配当金の支払額153億円であります。
②資本の財源及び資金の流動性 当社は事業活動に必要な手元流動性について、現金及び現金同等物及びコミットメントラインの未使用額を合わせた金額を流動性として位置づけています。当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は937億円となりました。当社は複数の金融機関との契約によるコミットメントラインも保持しており、当連結会計年度末の未使用のコミットメントラインの総額は900億円であります。当社は今後の事業拡大に備え手元流動性の確保をより一層充実させるため、2022年10月よりコミットメントラインの総額を700億円から900億円に拡大する契約を締結致しました。現預金、未使用のコミットメントライン額の合計で1,837億円を確保しており、当社の手元流動性は十分に確保されていると考えております。 当社グループの資金需要の主なものは、設備投資、M&Aなどの長期資金需要と当社グループの製品製造のための材料及び部品の購入などの運転資金需要であります。 資金の調達については、調達コストの低減と資金の安定調達の観点から、社債、コマーシャル・ペーパー等の直接金融と銀行借入等の間接金融の比率や、調達期間の分散を図りながら、その時々のマーケットの状況から有利な調達手段を機動的に選択・活用しております。その結果、有利子負債残高は前連結会計年度末より495億円増加し1,608億円となりました。
(4)経営者視点による経営成績等の状況に関する分析・検討当社グループは、2021年度を初年度とする3か年の中期経営計画「中期経営計画2023」に基づき、あらゆるステークホルダーの期待に応え、企業価値を持続的に高めるため、ROIC経営を継続してまいります。「中期経営計画2023」の詳細については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中長期的な経営戦略、目標とする経営指標及び会社の対処すべき課題」を参照ください。「中期経営計画2023」財務目標及び、現時点での2023年12月期の業績予想は以下のとおりであります。
「中期経営計画2023」
2023年度目標
2023年度予想
受注高
1兆700億円
1兆800億円
売上高
1兆500億円
1兆500億円
営業利益率(営業利益)
7.2%(760億円)
6.1%(640億円)
ROIC
7.5%
6.1%
2023年度は、受注高、売上高が中期経営計画を達成する見通しである一方、営業利益につきましては想定以上のコストアップなどにより計画を下回る見通しであります。ROICに関しましても、営業利益の下方修正を反映し、目標値を下回る見通しであります。規模の拡大に応じた質の向上、稼ぐ力の強化に取り組んでまいります。
(5)生産、受注及び販売の状況
①生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。なお、当連結会計年度は、決算期変更に伴い、当社及び3月決算であった連結子会社は2022年4月1日から2022年12月31日の9か月間を、12月決算であった連結子会社は2022年1月1日から2022年12月31日の12か月間を連結対象期間とする変則的な決算としております。このため参考値として、当連結会計年度と同一期間となるように組み替えた前期(以下「調整後前期比(%)」という。)による比較情報を下記に表示しております。
セグメントの名称
生産高(百万円)
調整後前期比(%)
メカトロニクス
207,888
31.8
インダストリアル マシナリー
247,043
14.2
ロジスティックス&コンストラクション
306,023
6.5
エネルギー&ライフライン
146,622
△9.3
その他
5,118
14.4
合計
912,694
10.3
(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の取引につきましては、相殺消去しております。
②受注実績当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
セグメントの名称
受注高(百万円)
調整後前期比(%)
受注残高(百万円)
前期比(%)
メカトロニクス
204,126
14.7
107,730
26.7
インダストリアル マシナリー
266,662
17.1
190,470
28.1
ロジスティックス&コンストラクション
354,149
4.7
247,599
27.8
エネルギー&ライフライン
155,204
5.9
258,190
4.8
その他
4,593
△2.8
1,751
40.4
合計
984,733
10.0
805,741
19.4
(注)セグメント間の取引につきましては、相殺消去しております。
③販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
セグメントの名称
販売高(百万円)
調整後前期比(%)
メカトロニクス
181,431
25.5
インダストリアル マシナリー
224,926
17.6
ロジスティックス&コンストラクション
300,315
5.6
エネルギー&ライフライン
143,332
△7.5
その他
4,089
△9.1
合計
854,093
9.5
(注)セグメント間の取引につきましては、相殺消去しております。
(6)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されており、連結財務諸表の作成にあたっての重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」及び、「第5 経理の状況 2 財務諸表等(重要な会計方針)」に記載しております。また、連結財務諸表を作成する際には、当連結会計年度末日時点の資産・負債及び当連結会計年度の収益・費用を認識・測定するため、合理的な見積り及び仮定を使用する必要があります。会計上の見積りが必要となる項目のうち、特に当社グループの財政状態又は経営成績に対して重要な影響を与える可能性があると認識している主な項目は以下のとおりであります。
①一定の期間にわたり充足される履行義務に係る工事原価総額当社グループは、一定の期間にわたり充足される履行義務につきましては、履行義務の充足に係る進捗度を見積もり、当該進捗度に基づき収益を一定の期間にわたり認識しております。進捗度の見積りは主に原価比例法を用いており、原価比例法においては、実施した工事に関して発生した工事原価が見積工事原価総額に占める割合をもって工事の進捗度としております。当初想定できなかった経済情勢の変動やプロジェクトごとの進捗状況等によって当初の見積りが変更された場合、認識された損益に影響を与える可能性があります。
②受注工事損失引当金当社グループは、未引渡工事のうち、期末時点で大幅な損失の発生する可能性が高いと見込まれ、かつ、当該損失額を合理的に見積ることが可能な工事について、翌期以降の損失見積額を受注工事損失引当として計上しております。受注工事損失引当金の見積りを行っていますが、当初想定できなかった経済情勢の変動やプロジェクトごとの進捗状況等により、受注工事損失引当金の金額に影響を与える可能性があります。
③有形固定資産、のれん及びその他無形固定資産の減損当社グループは、減損損失の認識の判定及び測定を行う単位として、有形固定資産、のれん及びその他無形固定資産のグルーピングを行い、減損損失を認識する必要のある資産又は資産グループについて、その帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上することとしております。将来の当該資産又は資産グループを取り巻く経営環境の変化による収益性の変動や市況の変動により、回収可能価額を著しく低下させる変化が見込まれた場合、減損損失の金額に影響を与える可能性があります。
④繰延税金資産当社グループの繰延税金資産の回収可能性は、将来の収益力やタックスプランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得の発生状況等に基づき判断しております。当該見積り及び当該仮定において、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌事業年度以降の財務諸表において認識する繰延税金資産の金額に影響を与える可能性があります。
⑤貸倒引当金当社グループは、債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権につきましては、貸倒実績率により貸倒引当金を計上しております。また、貸倒懸念債権及び破産更生債権につきましては、個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を貸倒引当金として計上しております。将来、債務者の財政状況の悪化等の事情によってその支払能力が低下した場合には、貸倒引当金又は貸倒損失の金額に影響を与える可能性があります。