【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況
当連結会計年度の世界経済は、ロシア・ウクライナ戦争の長期化や、供給網の一部混乱など不安要素が長引く一方で、各国でのインフレと金融引締めが転換点を迎え景気の軟着陸に向けた兆しも見えつつありましたが、米国発の金融システムへの不安から下押し圧力が強まり、再び不透明感が強まる状況になっています。
米国では、インフレ抑制を最優先に急ピッチの金融引締めを進めてきた中、3月に発生した中堅銀行の破綻の影響により景気後退入りも懸念される一方で、依然として雇用情勢は堅調で個人消費も底堅く、ロシア・ウクライナ情勢の影響を受けてエネルギー投資も進むなど、強弱材料が交錯する状況です。
欧州では、ロシア・ウクライナ情勢の影響によるエネルギー需給の逼迫は回避された一方で、インフレ圧力が根強いことに加え、金融システムへの不安により先行き不透明な状況が続いています。
中国では、「ゼロコロナ」政策の解除後、感染拡大により消費も冷え込みましたが、感染状況の落ち着きに応じて消費が戻りつつあり、経済は回復基調にあります。
日本経済は、行動制限の緩和により個人消費やインバウンド需要が回復基調にあり、設備投資需要・IT投資需要なども堅調に推移していますが、資源高・商品高や円安に加えて海外経済の減速が下押し圧力となりました。
このような環境のもと、当連結会計年度の当社グループの業績は、次のとおりとなりました。
市況上昇を受けた食糧事業や鋼管事業、原油価格上昇により原油・石油製品取引高が増加したエネルギー事業を中心にほぼすべての事業において増収となりました。販売台数の伸び悩みなどによる手数料収入の減少が影響したモバイル事業や、畜産物全般の夏場以降の市況反落が影響した畜産事業などでは減益となった一方、需要の回復や市況上昇によりエネルギー事業や鋼管事業、顧客の旺盛なデジタル投資需要を受けたICTソリューション事業などを中心に増益となりました。
その結果、収益は、前連結会計年度比1,434億45百万円(18.7%)増加の9,114億8百万円となり、売上総利益は、前連結会計年度比190億93百万円(17.1%)増加の1,308億94百万円となりました。営業活動に係る利益は、販売費及び一般管理費は増加しましたが売上総利益の増加により、前連結会計年度比95億49百万円(32.5%)増加の388億96百万円となりました。また、営業活動に係る利益の増加などにより、税引前利益は、前連結会計年度比69億31百万円(24.1%)増加の356億96百万円となり、親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度比25億89百万円(16.2%)増加の185億75百万円となりました。また、親会社の所有者に帰属する持分(自己資本)に対する親会社の所有者に帰属する当期利益率(ROE)は、12.9%、投下資本利益率(ROIC)※は5.6%となりました。
※ROIC = 当期利益 ÷ 投下資本(有利子負債 + 自己資本)
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況については、営業活動によるキャッシュ・フローが2億96百万円の支出、投資活動によるキャッシュ・フローが166億84百万円の支出、財務活動によるキャッシュ・フローが47億51百万円の収入となりました。これらに、現金及び現金同等物に係る換算差額を調整した結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は794億62百万円となり、前連結会計年度末比119億58百万円の減少となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、営業収入の積上げなどによる収入があった一方で、棚卸資産を中心とした営業資金の増加などにより、2億96百万円の支出(前連結会計年度は153億82百万円の収入)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、子会社の取得などの事業投資の実行により、166億84百万円の支出(前連結会計年度は105億47百万円の支出)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、公開買付けに伴う兼松エレクトロニクス㈱および兼松サステック㈱の株式追加取得による支出などがあった一方、当該買付代金見合いの借入れを含む短期借入金の増加などにより、47億51百万円の収入(前連結会計年度は42億45百万円の収入)となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
(ⅰ) 生産実績
生産は販売と概ね連動しているため、記載は省略しております。
(ⅱ) 受注実績
受注は販売と概ね連動しているため、記載は省略しております。
(ⅲ) 販売実績
「(1) 経営成績等の状況の概要」および「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記6 セグメント情報」に記載しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成にあたっては、決算日における資産・負債、偶発資産・偶発負債の開示および報告期間における収益・費用の金額を認識する際に、必要に応じて会計上の見積りおよび仮定を用いることが必要となります。この会計上の見積りや仮定は、決算日時点で入手可能な合理的な情報等に基づき設定しておりますが、不確実性を伴うため、その変動により将来の実績との間で差異が生じる可能性があります。
当社グループにおける重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記2 作成の基礎」および「同 注記3 重要な会計方針」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、次のとおりであります。
収益
収益は、食料セグメント、鉄鋼・素材・プラントセグメントを中心に好調に推移し、前連結会計年度比1,434億45百万円増加の9,114億8百万円となりました。
売上総利益
売上総利益は、電子・デバイスセグメント、鉄鋼・素材・プラントセグメントを中心に前連結会計年度比190億93百万円増加の1,308億94百万円となりました。
営業活動に係る利益
営業活動に係る利益は、販売費及び一般管理費は増加したものの、売上総利益の増加により、前連結会計年度比95億49百万円増加の388億96百万円となりました。
税引前利益
税引前利益は、金融収支の悪化や持分法による投資損益の悪化があったものの、営業活動に係る利益の増加により、前連結会計年度比69億31百万円増加の356億96百万円となりました。
親会社の所有者に帰属する当期利益
税引前利益から法人所得税費用109億87百万円を控除した結果、当期利益は247億9百万円となり、親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度比25億89百万円増加の185億75百万円となりました。
財政状態
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末比431億32百万円増加の6,775億88百万円となりました。
有利子負債については、公開買付けに伴う短期借入金の増加などにより、前連結会計年度末比844億42百万円増加の2,278億94百万円となりました。現預金を差し引いたネット有利子負債は、前連結会計年度末比967億6百万円増加の1,479億48百万円となりました。なお、有利子負債にはリース負債を含めておりません。
資本のうち、親会社の所有者に帰属する持分については、兼松エレクトロニクス㈱の株式追加取得に伴う資本剰余金の減少などにより、前連結会計年度末比309億59百万円減少の1,285億25百万円となりました。
その結果、親会社所有者帰属持分比率(自己資本比率)は19.0%、ネット有利子負債資本倍率(ネットDER)は1.15倍となりました。
親会社の所有者に帰属する持分(自己資本)に対する親会社の所有者に帰属する当期利益率(ROE)
当連結会計年度の親会社の所有者に帰属する持分(自己資本)1,285億25百万円に対して、親会社の所有者に帰属する当期利益185億75百万円となったためROEは前連結会計年度末比2.4ポイント上昇の12.9%となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
電子・デバイス
収益はICTソリューション事業や電子機器・電子材料事業、半導体部品・製造装置事業の増収により前連結会計年度比270億50百万円増加の2,825億13百万円、営業活動に係る利益はICTソリューション事業や半導体部品・製造装置事業の増益により12億67百万円増加の203億31百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は8億32百万円増加の87億76百万円となりました。
営業活動に係る利益についての概況は、次のとおりであります。ICTソリューション事業は、セキュリティ関連やネットワーク関連の案件の増加や納期遅延の改善などもあり好調に推移しました。半導体部品・製造装置事業は、旺盛な需要を受けて半導体・液晶パネル関連の製造装置・消耗品の出荷が伸長し順調に推移しました。モバイル事業は、販売台数の伸び悩みに加えて、手数料条件の改定などにより手数料収入が減少し、低調に推移しました。
食料
収益は食糧事業や畜産事業の増収により前連結会計年度比551億64百万円増加の3,404億48百万円、営業活動に係る利益は食糧事業の増益により5億22百万円増加の40億63百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は3億26百万円減少の21億92百万円となりました。
営業活動に係る利益についての概況は、次のとおりであります。食糧事業は、採算改善もあり好調に推移しました。食品事業は、リテール市場向け商材の取引が堅調に推移しました。畜産事業は、畜産物全般の夏場以降の市況反落により低調に推移しました。
鉄鋼・素材・プラント
収益は鋼管事業やエネルギー事業の増収により前連結会計年度比454億円増加の1,933億93百万円、営業活動に係る利益は鋼管事業やエネルギー事業の増益により82億87百万円増加の123億39百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は34億35百万円増加の66億94百万円となりました。
営業活動に係る利益についての概況は、次のとおりであります。鋼管事業は、米国内エネルギー投資伸長と鋼管価格上昇により好調に推移しました。エネルギー事業は、市況の上昇や外航船向け船舶用燃料販売を中心に好調に推移しました。工作機械・産業機械事業は、国内設備投資需要の増加により、堅調に推移しました。
車両・航空
収益は航空宇宙事業の増収により前連結会計年度比155億17百万円増加の813億44百万円、営業活動に係る利益は車両・車載部品事業の減益により1億78百万円減少の14億85百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は6億53百万円減少の8億3百万円となりました。
営業活動に係る利益についての概況は、次のとおりであります。航空宇宙事業は、既契約品の納入や需要回復も受け、堅調に推移しました。車両・車載部品事業は、需要の回復傾向にはあるものの輸送コストの高騰が利益を圧迫し、低調に推移しました。
その他
収益は前連結会計年度比3億12百万円増加の137億7百万円、営業活動に係る利益は3億47百万円減少の6億62百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は2億46百万円減少の2億19百万円となりました。
③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容および資本の財源および資金の流動性についての分析
キャッシュ・フロー
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
資金調達
当社グループは、6ヵ年の中期ビジョン「future 135」の中で掲げている「持続的成長」を実現するために必要な、低コストで安定的な資金調達を基本方針として資金調達活動に取り組んでおります。
当社グループの資金調達については、各取引銀行、生損保等の金融機関との良好な関係を背景とした間接金融をベースに、長期資金の調達手段の一つとして普通社債を発行し、資本市場からの調達も実施しております。なお、当連結会計年度においては、当社にて兼松エレクトロニクス株式会社の普通株式を公開買付けにより取得することに要する資金として584億円を借入れました。また、期日の到来した普通社債50億円の償還を行っております。この結果、連結有利子負債に占める直接金融からの負債調達割合は7%となりました。
これらの円滑な資金調達を行うため、㈱日本格付研究所(JCR)、ならびに㈱格付投資情報センター(R&I)の2社から格付けを取得しており、当連結会計年度末の当社グループに対する格付け(長期)は、JCRがA-(安定的)、R&Iが前年からワンノッチ格上げとなるA-(安定的)となっております。
加えて、手元流動性の確保を図るため、十分な規模の現金及び現金同等物を保有するほか、主要金融機関においてコミットメントラインを設定しております。
また、連結ベースでの効率的な資金調達を実施するために、国内主要関係会社の資金調達を親会社に集中したうえで、資金需要に応じて配分を行うキャッシュマネジメントシステムを導入しております。当連結会計年度末では、連結有利子負債に占める当社の有利子負債の割合は74%と、約7割強の資金調達を親会社に集中しております。
このような資金調達活動の結果、当連結会計年度末におけるグロス有利子負債残高は2,278億94百万円で、前連結会計年度末と比べ844億42百万円増加いたしました。また、当連結会計年度末におけるネット有利子負債残高は1,479億48百万円となり、前連結会計年度末に比べ967億6百万円増加いたしました。その結果、ネット有利子負債資本倍率(ネットDER)は1.15倍となりました。
また、当連結会計年度末の有利子負債残高に占める社債および長期借入金(1年以内に返済予定の社債および長期借入金を含む。)の比率は38%(当社では48%)となりました。
配当性向(総還元性向)
当社グループは、6ヵ年の中期ビジョン「future 135」の中で、安定した収益基盤の事業分野において持続的成長を実現するとともに、規模の拡大や付加価値の獲得のための事業投資により、連結当期利益の一段の伸長を目指しております。
これを達成するために、創出される営業キャッシュ・フローおよび金融機関や資本市場から調達する財務キャッシュ・フローを重点分野への成長投資に充てるとともに、安定的かつ継続的に株主還元を実施し、資本の効率性と財務バランスにも目を配って参ります。
当社グループの営業キャッシュ・フローを原資に、成長分野における投資を実行するとともに、株主還元については中期ビジョン「future 135」の目標である30~35%の配当性向(総還元性向)の実施を目指して参ります。
なお、当連結会計年度における配当性向(総還元性向)は33.7%となりました。
(注意事項)
上記の見通しなどの将来に関する記述は、当社グループが有価証券報告書提出日現在入手している情報および合理的であると判断する一定の前提に基づいており、その達成を当社として約束する趣旨のものではありません。また、実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。