【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
(1) 経営成績当連結会計年度(2022年4月1日~2023年3月31日)の国内景気は、行動制限の緩和等を受けて個人消費を中心に回復基調を示しましたが、原燃料価格の高騰や物価上昇に加え、海外経済の低迷を背景として輸出低調が続いたこと等が影響し、本格的な回復には至りませんでした。このような状況のもと、当社グループの事業につきましては、化学品セグメントは、基礎化学品、ファインケミカルともに増収となりました。機能性材料セグメントは、ディスプレイ材料が減収となりましたが、半導体材料と無機コロイドは増収となりました。農業化学品セグメントは、増収となりました。ヘルスケアセグメントは、「ファインテック」(課題解決型受託事業)の売上が増加しました。この結果、当期間における業績は以下の結果となり、2月に発表した業績予想値比では、売上高、営業利益、親会社株主に帰属する当期純利益で下ぶれたものの、前年同期比では、売上高、各利益で増収増益となりました。また、営業利益、経常利益は9年連続、親会社株主に帰属する当期純利益は10年連続で、それぞれ過去最高益を更新しました。
(単位:百万円、百万円未満切捨て)
2022年3月期(実績)
2023年3月期(実績)
前年比増減
2023年3月期(業績予想)
業績予想比増減
売上高
207,972
228,065
+20,093
229,500
△1,435
営業利益
50,959
52,283
+1,323
53,400
△1,117
経常利益
53,690
55,793
+2,103
55,500
+293
親会社株主に帰属する当期純利益
38,776
41,087
+2,311
42,100
△1,013
セグメント別概況は以下のとおりであります。なお、当社は、当第1四半期連結会計期間より、報告セグメントを変更いたしました。詳細は、「第5 経理の状況 1(1)連結財務諸表 注記事項 セグメント情報等」をご参照ください。
化学品セグメント基礎化学品では、原燃料価格の上昇に伴う価格改定などが寄与し、尿素・「アドブルー®*」(高品位尿素水)が増収となりました。メラミン(合板用接着剤等)は、2021年8月に発表した構造改革に伴い当第3四半期に販売を終了した結果、減収となりました。ファインケミカルでは、「テピック」(粉体塗料硬化剤、封止材材料等)の販売が減少しましたが、環境化学品(プール・浄化槽用殺菌・消毒剤等)、ファインオキソコール(化粧品原料等)の売上が増加しました。この結果、当セグメントの売上高は390億34百万円(前年同期比13億85百万円増)、営業利益は13億79百万円(同24億8百万円減)となりました。業績予想比では、売上高は7億円、営業利益は3億円の下ぶれとなりました。* アドブルー®は、ドイツ自動車工業会(VDA)の登録商標です。
機能性材料セグメントディスプレイ材料では、「サンエバー」(液晶配向材用ポリイミド)が減収となりました。半導体材料は、当第3四半期から顧客の稼働が落ち込みましたが、上期までの好調を受けて、半導体用反射防止コーティング材(ARC®*)が増収となりました。無機コロイドは、「スノーテックス」(電子材料用研磨剤、各種表面処理剤等)やオイル&ガス材料(シェールオイル・ガス採掘効率向上材)が堅調に推移しました。この結果、当セグメントの売上高は826億6百万円(前年同期比9億41百万円増)、営業利益は254億49百万円(同21億71百万円減)となりました。業績予想比では、売上高は9億円、営業利益は8億円の下ぶれとなりました。* ARC®は、Brewer Science, Inc. の登録商標です。
農業化学品セグメントフルララネル(動物用医薬品原薬)は昨年度に顧客在庫調整が終了し、増収となりました。国内向け農薬は、「ラウンドアップ」(非選択性茎葉処理除草剤)や「アルテア」(水稲用除草剤)、「グレーシア」(殺虫剤)が堅調な売上となりました。海外向け農薬は、「ライメイ」(殺菌剤)や「グレーシア」、「タルガ」(除草剤)が好調に推移し大幅な増収となりました。この結果、当セグメントの売上高は815億84百万円(前年同期比157億65百万円増)、営業利益は231億30百万円(同50億2百万円増)となりました。業績予想比では、売上高は2億円の上ぶれ、営業利益は4億円の下ぶれとなりました。
ヘルスケアセグメント「リバロ」(高コレステロール血症治療薬)原薬は、前年並みの売上となりました。「ファインテック」は、ジェネリック原薬販売が順調で増収となりました。この結果、当セグメントの売上高は66億73百万円(前年同期比83百万円増)、営業利益は29億90百万円(同1億76百万円増)となりました。業績予想比では、売上高は1億円、営業利益は1億円の上ぶれとなりました。
卸売セグメント当セグメントの売上高は990億66百万円(前年同期比186億29百万円増)、営業利益は37億1百万円(同7億97百万円増)となりました。業績予想比では、売上高は1億円、営業利益は4億円の上ぶれとなりました。
その他のセグメント当セグメントの売上高は263億84百万円(前年同期比27億89百万円増)、営業利益は8億79百万円(同1億87百万円増)となりました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
① 生産実績当社グループの生産品目は、広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、セグメントごとに生産規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。このため、生産実績については、「(1) 経営成績」におけるセグメントの業績に関連付けて示しております。
② 受注実績当社グループは原則として、受注生産方式を採用しておりません。
③ 販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度(自 2022年4月1日至 2023年3月31日)
前連結会計年度比(%)
金額(百万円)
化学品セグメント
39,034
3.7
機能性材料セグメント
82,606
1.2
農業化学品セグメント
81,584
24.0
医薬品セグメント
6,673
1.3
卸売セグメント
99,066
23.2
その他のセグメント
26,384
11.8
セグメント間の内部売上高(消去)
△107,285
22.2
合計
228,065
9.7
(注) 上記の金額は外部顧客に対する売上高とセグメント間の内部売上高の合計であります。
(2) 財政状態当連結会計年度末の総資産は、商品及び製品、原材料及び貯蔵品、建設仮勘定が増加したことなどにより、前連結会計年度末比190億27百万円増の2,987億15百万円となりました。負債は、短期借入金の増加により、前連結会計年度末比55億10百万円増の771億88百万円となりました。また、純資産は前連結会計年度末比135億16百万円増の2,215億26百万円となりました。この結果、自己資本比率は前連結会計年度末比0.5ポイント減少し、73.1%になりました。
(3) キャッシュ・フロー当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益、減価償却費、運転資金の増減などから法人税等の支払額を控除した結果、352億26百万円の収入(前連結会計年度は419億49百万円の収入)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、工場などの設備投資を中心に196億43百万円の支出(前連結会計年度は123億95百万円の支出)となりました。また、財務活動によるキャッシュ・フローでは、自己株式の取得による支出、配当金の支払、長期借入金の返済などにより250億30百万円の支出(前連結会計年度は278億68百万円の支出)となりました。現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、換算差額の増加額13億20百万円を調整したことにより、前連結会計年度末に比較して50億10百万円減少しており、これに連結の範囲の変更に伴う現金及び現金同等物の増減額31億16百万円を加味した結果、296億47百万円(前連結会計年度末は346億58百万円)となりました。当社グループの資本の財源は、安定した事業活動から生みだされる営業キャッシュ・フローを主な源泉としております。2023年度においては、研究設備の充実や製造設備の増強等の資本的支出を予定しており、さらに毎年継続的に行っている自己株式の取得等の株主還元により資金の有効活用を図ると同時に流動性を保っていきます。
以上の営業活動・施策により、中期経営計画「Vista2027」の前半3ヵ年(2022年度~2024年度)のStageⅠにて掲げた以下の経営目標に対し順調に推移致しました
経営目標
2022年度実績
売上高営業利益率
20%以上
22.9%
ROE
18%以上
19.4%
配当性向
21年度:45%、22年度以降:55%維持
56.3%
株主総還元性向
19年度:72.5%、20年度以降:75%維持
78.0%
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1(1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。