【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
本書において使用される専門用語につきましては、(*)印を付けて「第2 事業の状況
2 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の末尾に用語解説を設け説明しております。
また、文中の将来に関する事項は、当第3四半期会計期間の末日現在において判断したものであります。
なお、第1四半期会計期間より「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しております。詳細は、「第4 経理の状況 1 四半期財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりであります。
(1)経営成績の状況
当第3四半期累計期間における国内外の経済環境は、急速な円安の進行、世界的な資源価格の高騰やインフレの進行など、先行き不透明な状況が続きました。
こうした外部環境の中、当第3四半期累計期間における当社業績につきましては、売上高433,694千円(前年同四半期比107,995千円減少)、研究開発費916,417千円(前年同四半期比56,122千円増加)、営業損失1,039,329千円(前年同四半期は850,744千円の営業損失)、経常損失1,029,779千円(前年同四半期は843,016千円の経常損失)、四半期純損失1,027,559千円(前年同四半期は842,789千円の四半期純損失)となりました。
売上高につきましては、国内外の経済環境による当社業績への影響は限定的であったものの、前年同期間での創薬事業におけるライセンス契約締結一時金の売上高計上があったこと等により、前年同期間に比べ当期は減収となりました。また損益につきましては、研究開発費において主にCBA-1535に係る治験用の製剤製造費用等が計上されたこと等により、営業損失、経常損失、四半期純損失ともに前年同四半期累計期間比で減益となりました。
当第3四半期累計期間における当社の事業活動の概況は次のとおりです。
創薬事業においては、自社開発中のファースト・イン・クラス抗体(*)CBA-1205の臨床第1相試験を進めておりますが、前半パートでは本抗体の安全性・忍容性の高さが示されており、複数の患者さんにおいて病態が安定し投与が継続しております。また現在、肝細胞がん患者さんを対象として本剤の安全性と初期の有効性を確認する後半パートが進行中であり、順調に症例の登録が進んでおります。さらに、肝細胞がん以外の適応症への展開に向けた海外研究機関との共同研究の推進や、DLK-1を標的とした更なる創薬探求の検討を進めるなど、導出(*)価値向上を企図する活動を積極的に推進しております。2つ目の臨床開発品目である多重特異性抗体CBA-1535は、2022年6月末に臨床第1相試験前半パートにおける最初の固形がん患者さんへの投与を開始して以降、現在まで予定通りに進捗しております。今後、段階的に治験薬の投与量を増やしながら安全性の確認を進めてまいります。また、当社の創薬パイプライン(*)であるPCDC(*)については、2022年7月にADC(*)に関する技術の導入(*)およびオプション契約をHeidelberg Pharma社と締結し、これにより導出活動のためのデータパッケージをさらに補強しました。これらのデータは9月のWorld ADC San Diegoで発表するとともに国内外の製薬企業への紹介を行うなど、導出契約獲得に向けた取り組みを強化しております。また、PCDCの導出活動と合わせて臨床開発の進捗状況についても導出候補企業へと提供しながら、これらの創薬パイプラインに対する興味やニーズを着実に捉え、機を逃さずに導出契約の獲得につなげてまいります。その他、非臨床および探索段階にある創薬プロジェクトにおいては、CBA-1535の次世代型となるTribody™(*)によるリード抗体(*)であるPTRY(*)の新規の特許出願が完了し、イタリアのCEINGEとの共同研究の成果に関する論文が9月に発表されました。今後、当社の創薬プロジェクトの一つとして研究投資に注力いたします。また、新規ターゲットに対するリード抗体の創出及び知財化に向けた研究開発についても継続し、今後の開発パイプラインの質・量の拡充に向けた取り組みを進めております。
・創薬パイプライン(導出品)
スイスのADC Therapeutics社にADC用途に限定して導出したLIV-1205は、現在、ADCT-701として臨床試験(*)に向けた準備が進められており、2022年のIND申請が見込まれています。また、本剤の開発に関しては神経内分泌がんを対象に米国国立がん研究所(NCI)と米国において共同開発が進められております。
LIV-2008については、2021年1月に中国のShanghai Henlius Biotech,Inc.(以下、Henlius社)との間でライセンス契約を締結し、開発計画の検討が進められております。また当社では、Henlius社のオプション権行使の可能性に限らず、引き続き他社における導入評価の実施など本パイプラインの事業価値向上に資する契約締結の可能性を追求しております。
・創薬パイプライン(自社研究開発・導出候補品)
CBA-1205については、日本国内において臨床第1相試験を実施しております。本治験の主目的は、前半パートでは固形がん患者さん、後半パートでは肝細胞がんの患者さんにおける安全性と忍容性の評価です。前半パートの患者登録は終了しており、本抗体の高い安全性が示唆されています。また、前半パートの最終結果はすべての解析の終了を待つ必要がありますが、途中経過では、客観的な腫瘍評価法であるRECIST v1.1によるSD(安定)評価が続いてCBA-1205の投与が7ヶ月以上継続している患者さんが複数例認められております。一般的に固形がんの第1相試験に参加される患者さんは、標準的な治療法に不応、不耐、および切除不能な進行・再発の固形がん患者さんであり、本治験の前半パートに参加された患者さんも既に複数の標準的治療法を受けておられることから、SD評価の継続は意義のある状況と考えております。また、当期において治験実施施設の追加と肝細胞がん患者さんの登録を推進し、2022年6月には後半パートにおける第一例目の患者さんへの投与を開始しており、順調に症例の登録が進んでおります。
CBA-1535については、2022年2月にPMDAへの治験計画届の提出を完了し、2022年6月末には前半パートにおける第一例目のがん患者さんへの投与を開始し順調に進捗しております。本試験は、がん細胞と免疫細胞(T細胞(*))の双方に結合し、T細胞を活性化してがんを叩くというTribody™の作用機作を検証するための世界初の臨床試験であり、CBA-1535でこのコンセプトが確認されれば他のがん抗原に対するTribody™の適用の可能性が広がることになります。
BMAA(*)については、これまでに取得した抗セマフォリン3A抗体及びセマフォリンファミリー分子に関する探索研究のデータを用い、アカデミア等との共同研究の推進と事業開発活動を行ってまいります。
PCDCについては、2022年7月にはドイツのHeidelberg Pharma社との間でADC技術であるATAC® Platformの技術導入およびオプション契約を締結しました。ATAC® Platform はキノコ由来の毒素であるアマニチンを抗体に付加することにより、抗体が結合する細胞に対する殺傷能力を高める技術です。当社ではこれまでもアマニチン以外のADC技術によるデータを用いた研究開発および導出活動を進めておりましたが、今回の技術導入によりPCDCのデータパッケージをさらに補強し、外部企業への導出又は協業の機会を求めた活動を推進いたします。また並行して、データパッケージ強化のための研究開発活動を実施してまいります。
探索段階にある創薬プロジェクトの中で注力する2つの重点プロジェクトについては、導出計画や開発計画を検討しながら事業化に資する研究活動を推進しております。このうちがん領域のプロジェクトに関しては、新たに特許出願を完了いたしました。また、CBA-1535の活性を更に高めたTribody™抗体の新規創薬プロジェクトも進展し、新たに特許出願を完了しております。このうち、5T4×CD3×PD-L1をターゲットとするTribody™抗体はPTRYという社内コードを付け、今後当社の創薬パイプラインの一つとして研究開発を重点的に進めてまいります。当社では継続的な創薬シーズの創出と知財化を行うことにより、新たなパイプラインの拡充と導出機会の探索等を行ってまいります。
その他、国内のアカデミアと協働で、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の助成事業に係る感染症領域やADLib®システム(*)の技術改良に関する研究も継続して実施しております。
以上の結果、創薬事業における当第3四半期累計期間の業績は、Henlius社とのライセンス契約締結による契約一時金の計上があった前年同期に比べて売上高は103,013千円減少、臨床開発が進んだことにより研究開発費が916,417千円(前年同四半期比56,122千円増加)、セグメント損失は916,417千円(前年同四半期は757,382千円のセグメント損失)となりました。
創薬支援事業は、当社の安定的な収益確保に資する事業であり、当社の独自の抗体作製手法であるADLib®システムを中心とした抗体作製技術プラットフォームを活かした抗体作製業務や抗体の親和性向上業務のほか、タンパク質調製業務を受託し、国内の主要製薬企業を中心にバイオ医薬の研究支援を展開しております。2022年7月にはロート製薬との委受託契約を締結するなど収益基盤の強化のための新規顧客の開拓を実施しており、今後も注力して推進してまいります。
以上の結果、創薬支援事業における当第3四半期累計期間の業績は、国内製薬企業を中心に既存顧客との安定的な取引が継続したことにより、売上高433,694千円(前年同四半期比4,982千円減少)となり、セグメント利益は234,990千円(前年同四半期比111千円増加)、セグメント利益率は54.2%(目標50%)となりました。
(2)財政状態の分析
(資産)
当第3四半期会計期間末における総資産は、主に現金及び預金の減少や前渡金の減少等により、前事業年度末に比べ257,986千円減少の2,081,453千円となりました。
(負債)
当第3四半期会計期間末における負債の残高は431,074千円となり、前事業年度末と比較して15,315千円減少いたしました。これは主に、未払金の減少等によるものであります。
(純資産)
当第3四半期会計期間末における純資産の残高は1,650,378千円となり、前事業年度末に比べ242,671千円減少いたしました。これは主に、新株予約権の行使により資本金及び資本準備金が増加したものの、四半期純損失の計上による利益剰余金の減少があったことによるものであります。
(3)経営方針・経営戦略等
当第3四半期累計期間において、当社の経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第3四半期累計期間において、当社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
<用語解説>(50音、アルファベット順)
用語
意味・内容
導出(ライセンスアウト)
特許権やノウハウ等を他者に売却したり、実施許諾することをいいます。
導入(ライセンスイン)
他者が持つ特許権やノウハウ等を買い取ったり実施許諾を受けたりすることをいいます。
パイプライン
新薬として開発している医薬品候補化合物等のことを「パイプライン」といいます。創薬研究から臨床開発を経て関係当局の承認を受けるまでの活動を「創薬」と呼び、「創薬パイプライン」とは創薬のいずれかの段階にあるパイプラインのことをいいます。また、創薬パイプラインのうち開発段階に入ったパイプラインのことを、特に「開発パイプライン」ということがあります。
ファースト・イン・クラス
一般的には、その作用機序の医薬品の中で市場に最初に登場した医薬品を指します。類似薬がないことから高い薬価と高い売上が期待できます。抗体の場合は、あるタンパク質(抗原)をターゲットとする初めての抗体医薬をファースト・イン・クラス抗体と呼びます。当社ではそうした抗原をターゲットとすることで、これまでにない医薬品候補抗体の開発を目指し、治療充足度が十分でない疾患の治療に貢献します。
リード抗体
ADLib®システム、ハイブリドーマ法、B cell cloning法などの様々な手法で作成した抗体の中から、親和性、特異性、生物活性、安定性などのスクリーニングによって見出された医薬品になる可能性を有する抗体群をリード候補抗体と呼び、これらのリード候補抗体群のうち、医薬品としてその後の最適化などのステップに進めるための抗体をリード抗体と呼びます。
臨床試験
臨床試験には、次の3段階があります。
第1相試験(フェーズ1):少数の治験参加者を対象に、治験薬の安全性と治験薬が体内に入ってどのような動きをするのかを確認する試験
第2相試験(フェーズ2):第1相試験で安全性が確認された用量の範囲で、比較的少数の患者さんを対象に、治験薬の有効性(効果)、安全性、用法(投与の仕方:投与回数、投与期間、投与間隔など)・用量(最も効果的な投与量)を確認する試験
第3相試験(フェーズ3):第2相試験で確認された用法・用量で、多数の患者さんに治験薬を対象に、有効性と安全性を検証する試験
初期臨床試験は主に第1相試験及び初期の第2相試験のことを指し、治験薬の安全性を主に、有効性の兆しを観察します。
ADC
抗体薬物複合体(Antibody drug conjugate)のことを指します。例えば、悪性腫瘍の細胞表面だけに存在するタンパク質(抗原)に特異的に結合する抗体に毒性の高い薬剤を結合させると、そのADCは悪性腫瘍だけを死滅させることができます。このため、比較的副作用が少なく効き目の強い薬剤となる可能性があります。
ADLib®(アドリブ)システム
ADLib®システムは、多種多様な抗体を産生する細胞集団であるライブラリから、特定の抗原を固定した磁気ビーズを用いて目的の抗原に結合する抗体産生細胞を取り出す仕組みです。ADLib®システムで用いるライブラリは、ニワトリのBリンパ細胞由来のDT40細胞(*)の持つ抗体遺伝子の自律的な相同組換えを活性化することによって(当社特許技術)、抗体タンパク質の多様性が増大しております。既存の方法に比べ、迅速性に優れていること及び従来困難であった抗体取得が可能になる場合があること等の点に特徴があると考えております。
BMAA(抗セマフォリン3A抗体)
セマフォリン3Aは神経の先端の伸長を制御する因子として発見されました。これまでの研究により、セマフォリン3Aを阻害することにより神経再生が起こること、また炎症・免疫反応やがん、骨の形成、アルツハイマー病、糖尿病合併症等とも関連していることが報告されております。抗セマフォリン3A抗体は、この因子の働きを抑えることによりアンメットニーズの高い各種疾患の治療薬開発に結びつくことが期待される抗体です。本抗体は、当社独自の抗体作製技術であるADLib®システムで取得されました。
PCDC(抗CDCP1抗体の社内コード)
標準治療耐性のがん種を含む幅広い固形がんで発現(肺、結腸直腸、膵臓、乳、卵巣がんなど)するファースト・イン・クラスとなる標的分子CDCP1に対するヒト化抗体です。細胞内に入り込むインターナリゼーション能が高いことから、薬物との複合体であるADCとしての効果が期待されます。
PTRY(社内コード)
53L10 型 Tribody™(PTRY) は、3つの抗原結合部位の標的をそれぞれ、固形がんに発現が認められる 5T4、免疫細胞である T 細胞上の CD3、残る 1 つを免疫チェックポイント阻害に関与する PD-L1 とした、がん治療用抗体です。Tb535H (開発コード:CBA-1535、標的分子:5T4×CD3×5T4)よりも強力な抗腫瘍活性を示し、特に 53L10 型の組み合わせにおいて最も強い腫瘍増殖抑制効果を発揮することが示されています。
T細胞
リンパ球の一種で、免疫反応の司令塔として重要な役割を果たす細胞。T細胞はその機能によって、免疫応答を促進するヘルパーT細胞、逆に免疫反応を抑制するサプレッサーT細胞、病原体に感染した細胞や癌細胞を直接殺すキラーT細胞などに分類されます。
Tribody™
多重特異性抗体を作製する自社の技術であるTrisoma®で作製された抗体の商標です。バイスペシフィック抗体は2種類の標的(抗原)に結合することができますが、Tribody™は抗原結合部位が3ヶ所あるので最大3種類の抗原に結合することができ、より特異性の高い抗体を作成することができます。
#C4583JP #カイオムバイオサイエンス #医薬品セクター
