【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。
(1) 財政状態の状況総資産は、前年度比206億2千3百万円増加し3,907億2百万円となりました。流動資産は、199億2百万円増加し2,124億6千5百万円となりました。主な増減要因は、原材料価格の高騰や円安の進行による海外子会社在庫の円換算差額もあり、原材料及び貯蔵品が107億9千2百万円、製品が31億9千万円増加し、売上の伸長および期末日が休日で売掛金の回収が翌月になったことから受取手形及び売掛金が67億4千万円増加しました。固定資産は、7億2千1百万円増加し1,782億3千6百万円となりました。主な増減要因は、マルイチ・フィリピン・スチール・チューブ・インク(MPST社)を新規連結したことや円安による換算差額もあり有形固定資産が60億7千万円増加した一方で、投資有価証券が時価評価の影響や投資有価証券の償還・売却等により57億8千9百万円減少したことによります。負債は、48億3千7百万円増加し673億2千2百万円となりました。主な増減要因は、海外子会社において運転資金の短期借入金が69億4千3百万円増加した一方で、繰延税金負債が投資有価証券の時価評価の影響により11億3千万円減少したことによります。純資産につきましては、157億8千6百万円増加し3,233億7千9百万円となりました。主な増減要因は、親会社株主に帰属する四半期純利益を194億3百万円確保、円安の進行により為替換算調整勘定が107億9千9百万円増加した一方で、配当金の支払で72億7千4百万円、その他有価証券評価差額金が投資有価証券の時価評価の影響で48億9百万円減少したこと等によります。なお、資本の財源および資金の流動性については、前連結会計年度と大きな変動は無く、運転資金及び設備資金は自己資金を中心に充当し、国内及び海外子会社の借入金の返済の流動性は満たしておりますが、経営環境の先行き不透明感からも、当社グループ全体での円滑な事業活動の資金について留意してまいります。
(2) 経営成績の状況当第3四半期連結累計期間におけるわが国経済は、新型コロナの感染拡大抑制を図りながら経済活動の正常化が進み、個人消費の回復に伴い、総じて緩やかな持ち直しが続いているものの、世界的な金融引締めによる世界経済の下振れリスクや原燃料の価格高騰等が、景気の下押し圧力となっております。海外経済は総じて持ち直しているものの、米国での高水準なインフレや金利上昇による住宅投資抑制などの景気拡大テンポの減速懸念、欧州での供給網の混乱・物価上昇等、ウクライナ情勢の影響も含め、先行き不透明感が見られます。鉄鋼業界は、国内市場は産業用機械の生産増加はあるものの、自動車の供給制約の解消遅れ等もあり、国内粗鋼生産量の減少が続いております。また、海外でも世界粗鋼生産量の減少が継続しております。
事業全体の状況は、以下のとおりであります。販売数量面では、下期以降に日本(単体)が前年同期比割れとなったことに加え、北米の伸び悩みやアジアのマルイチ・サン・スチール・ジョイント・ストック・カンパニー(SUNSCO社)の落ち込みから、全体では新規連結した米国マルイチ・ネブラスカ・チューブLLC(MNT社)及びMPST社を加えても、前年同期比△3.2%の減少となりました。売上高は、各地域セグメントでの製品値上げ効果から2,079億3千5百万円(前年同期比29.4%増)と増収になりました。利益面は、日本は増益を確保したものの、北米・アジアの落ち込み幅が大きく、営業利益は241億6千9百万円(同14.5%減)と減益になりました。営業外損益は、受取配当金の増加や持分法による投資利益の改善から前年同期比20億5千8百万円改善しましたが、経常利益は282億7千4百万円(同6.7%減)と減益になりました。特別損益は、固定資産売却益と投資有価証券売却益が固定資産除却損と投資有価証券売却損を上回ったことから、前年同期1億3千5百万円改善しました。これらの結果、親会社株主に帰属する四半期純利益は194億3百万円(同10.9%減)と減益になりました。なお、対米ドル換算レートは、(決算期が1~9月とズレており)1米ドル128円05銭であります。セグメント別の状況は、以下のとおりであります。(日本)国内事業につきましては、中小建築案件の需要低迷と自動車生産の回復遅れから、鋼材全般にタイト感に欠け市況が盛り上がらない中、材料コイルの調達価格の上昇に連動して、引き続き製品価格の値上げに取り組まざるを得ない状況でありました。単体の販売数量は、上期までは何とか前年同期比横ばいの水準に止まったものの、下期以降は前年同期比マイナスの見通しを更に下回る実績となりました。売上高は、単体での製品値上げに加え、丸一ステンレス鋼管㈱でのステンレス管値上げおよびBA管販売本数の増加もあり、1,216億6百万円(前年同期比24.4%増)と増収になりました。セグメント利益は、単体での製品値上げ効果により引き続きスプレッドが改善維持出来たことに加え、丸一ステンレス鋼管㈱での値上げと管種の構成比変動や輸出採算改善も寄与し、210億8千2百万円(同30.0%増)と増益になりました。(北米)北米事業につきましては、(決算期が1~9月とズレており)米国の熱間圧延コイル(HRC)価格(英国CRU社による米国中西部コイル価格指数)が、年初1,646$/トンでスタートしたものが3月初旬に1,031$/トンまで下がり続けましたが、ウクライナ侵攻から再上昇し4月中旬には1,645$/トンまで戻ったものの、再び下がり始め9月最終週には872$/トンまで下落しました。米国マルイチ・アメリカン・コーポレーション(MAC社)、米国マルイチ・レビット・パイプ・アンド・チューブLLC(Leavitt社)、米国マルイチ・オレゴン・スチール・チューブLLC(MOST社)の米国3拠点合計の販売数量は、客先が当用買い姿勢となり前年同期比△3.7%となりました。また、メキシコのマルイチメックスS.A.de C.V.(Maruichimex社)の販売数量も、サプライチェーン混乱による自動車の減産影響から前年同期比△11.0%となりました。2022年11月に新規連結した米国MNT社を加えた北米5拠点合計の販売数量は前年同期比+5.7%となりました。売上高は、昨年来からの販売単価の上昇により518億5千2百万円(前年同期比46.6%増)と増収になりました。一方、セグメント利益は、前年同期がHRC価格の急騰に連動して製品販売価格の値上がりがコイル消費単価の上昇に先行し、結果スプレッドが大幅改善出来たものに対し、当第3四半期は逆にスプレッドが縮小したことに加え、在庫評価損計上の影響もあり22億7千7百万円(同74.7%減)と減益になりました。(アジア)アジア事業につきましては、ベトナムのSUNSCO社では、中国の市況の影響を受けた東南アジアの鉄鋼市況軟化に伴い、鋼管の日系ユーザー向けひも付きは健闘しているものの、鋼板の販売が落ち込み、販売数量は前年同期比△17.3%となりました。また、マルイチ・サン・スチール・(ハノイ)・カンパニー・リミテッド(SUNSCO(HNI)社)では、二輪車メーカーのサプライチェーン問題が解消し、販売数量は前年同期比+7.3%となりました。新規連結したフィリピンMPST社の販売数量は、半導体供給不足等による現地二輪車生産の減少もありましたが、7月以降は損益分岐を上回る予定数量を確保しました。一方、インドのマルイチ・クマ・スチール・チューブ・プライベート・リミテッド(KUMA社)では、乗用車販売が好調で、販売数量は前年同期比15.2%増加しコロナ前の水準を上回るまでに回復しました。結果、売上高は344億7千7百万円(前年同期比25.0%増)と増収になりましたが、セグメント利益はSUNSCO社での在庫評価損の計上も含めた赤字幅が大きく、他のアジア各社は増益を確保したものの、全体では5億4千万円(同80.8%減)と減益になりました。
(3) 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
①経営方針について前連結会計年度末より重要な変更はありません。
②事業上及び財務上の対処すべき課題今後の見通しにつきましては、ウクライナ情勢の長期化、部品供給制約の継続による生産活動の停滞、欧米の金融引締めによる急激な円安などの為替変動リスク等、引き続き厳しい状況が見込まれます。決算期が3ケ月ズレている海外の12月末までの状況は、米国のHRC価格は700$台の水準まで下がり続けており、アジアも同様に、中国のゼロコロナ政策および不動産不況による経済の落ち込みの影響で、コイル価格は下落し続けております。日本国内では、足元では需要が盛り上がりに欠ける中で販売数量の確保が難しい状況となっています。このような情勢のもと、当社といたしましては、第6次中期経営計画の2年目として主要施策の着実な実行の為、各地域での状況変化を的確に把握し、マイナス要因をミニマイズする迅速な対応を引き続き進めてまいります。セグメント別には以下の通りとなっております。(日本)国内単体事業につきましては、建築分野および自動車生産の需要回復は期待薄で、下期の販売予定数量を前年同期比マイナスの見通しとしており、足元は更に厳しい状況です。その中で、上期までのスプレッドの維持を図りながら数量の確保に取り組んでおります。一方、電力・ガス等のエネルギーコストについては、下期以降も引き続き大幅な高騰となっております。加えて、亜鉛・塗料などの副資材等の製造コストやパイプの切断加工賃やハンドリング等の外注コスト等の増額要請もあり、厳しいコスト状況をお客様にご理解頂き製品価格への転嫁については考えざるを得ない環境です。引き続き自助努力として工場の生産性向上やコストダウンに努め、業績予想の達成に取り組んでまいります。丸一ステンレス鋼管㈱も、付加価値の高い半導体製造装置向け製品の国内外への販売および増産強化や、収益力改善の各種社内活動の推進を図ってまいります。また、丸一鋼販㈱では、浜松加工センターにドイツ製最新鋭の自動車用パイプ切断加工機の導入が完了し、加工能力増への細かなニーズに対応してまいります。設備投資関連では、女性も扱える次世代造菅機をコンセプトとして造菅機メーカーと共同で開発を進め、名古屋工場3号機(6インチミル)の老朽化更新への採用検討を始めました。これに先駆けて既存カラー塗装設備の移設が必要であり、新建屋建設による移設についても進めております。また、丸一ステンレス鋼管㈱でBA管の製造能力向上(月間25万本体制)への増強設備投資(2023年3月の完成予定)に加え、ステンレス管の冷間加工能力増強も順次進めております。(北米)北米事業につきましては、政府の追加経済対策のインフラ整備への期待はありますが、利上げによる景気減速が顕在化しております。米国のHRC価格は、ウクライナ侵攻の影響等から乱高下していたものの、4月中旬以後は下落し続け800$/トン台に低迷、12月に底値と思われる681$/トンをつけております。従って、12月の年末までは連結子会社は受注・出荷の減少が続き、スプレッドも低迷し収益面も厳しい状況です。HRC価格は、その後足元では上昇しており新年度に期待しております。このコイル価格の上昇によりパイプ価格見直しと受注の増加を図るべく、木目細かな営業活動を図ってまいります。また、2021年11月に買収した米国MNT社について、取引先との販売条件の見直しや高付加価値販売先へのシフトを図り、来期黒字化に取り組むと共に、コイルのスリット内製化についても設備投資の検討を進めてまいります。また、米国の半導体需要拡大に伴い8月にテキサス州に新規設立したBA管製造子会社マルイチ・ステンレス・チューブ・テキサス・コーポレーション(MST-X社)では、土地の取得も終え建屋着工など2024年第1四半期の稼働開始に向け鋭意準備を進めております。
(アジア)アジア事業につきましては、中国のゼロコロナ政策による都市閉鎖解除からの需要回復遅れおよび不動産不況等の影響から、アジア全体のコイル価格相場は下落混乱しております。ベトナムSUNSCO社では、ベトナム国内の販売比率拡大や家電向け鋼板の拡販に加え、増加した在庫と借入金の圧縮に取り組んでまいります。ベトナムSUNSCO(HNI)社では、二輪車のサプライチェーン問題も解消し、販売数量は回復に向かっています。インドKUMA社では、四輪市場の需要が急回復しており、加えて環境規制強化から商用車向け大径排気管需要が増加しており、増設したバンガロール工場ラインも含め、国内のコロナも収束し販売数量が安定しつつあります。新規連結したフィリピンのMPST社では、半導体供給不足等から現地二輪車生産が減少していましたが、足元二輪メーカーの現地生産の拡大を背景に受注を確実に取り込んで通期での黒字確保の見通しです。また、来期累損解消に取り組みます。
(4) 研究開発活動当第3四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発費の総額は2億1千2百万円であります。なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の重要な変更はありません。
(5) 主要な設備
当第3四半期累計期間において、新たに確定した重要な設備の新設計画は、次の通りであります。
事業所名(所在地)
セグメントの名称
設備の内容
投資予定額
資金調達方法
着手年月
完了予定年月
総額(百万円)
既支払額(百万円)
丸一鋼管株式会社 本社
(大阪市中央区)
日本
新基幹系システム
1,800
-
自己資金
2022年
10月
2029年頃
丸一鋼管株式会社 名古屋工場
(愛知県海部郡飛島村)
日本
建物、カラー塗装設備及び鋼管製造設備
4,200
220
自己資金
2022年
11月
2024年
11月
丸一ステンレス鋼管株式会社(山口県下関市)
日本
ステンレス管製造設備
520
5
自己資金
2022年8月
2023年11月
マルイチ・ステンレス・チューブ・テキサス・コーポレーション
(Seguin Texas U.S.A)
北米
土地建物及びBA管製造設備
9,798
-
自己資金
2022年7月
2024年
3月
(注)名古屋工場の設備計画については、計画の見直しにより設備の内容、投資予定額、完了予定年月を前年度末より変更しております。