【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態の状況 当連結会計年度末の総資産は1,007億円で、前期末比168億円増加しました。資産の部の主な増加項目は現金及び預金136億円、売掛金23億円、退職給付に係る資産30億円です。主な減少項目は投資有価証券20億円です。 負債の部は444億円で前期末比44億円増加しました。主な増加項目は契約負債10億円、流動負債のその他24億円、リース債務(流動負債及び固定負債合計)8億円です。純資産の部は562億円で前期末比124億円増加しました。主な増加項目は、利益剰余金62億円、為替換算調整勘定27億円、退職給付に係る調整累計額28億円です。その結果、自己資本比率は55.6%で前期末比3.5ポイント上昇しました。
② 経営成績の状況 当連結会計年度におけるわが国経済は,新型コロナウイルス感染症対策を取りつつ社会経済活動の正常化が徐々に進められてまいりました。行動制限等の緩和に伴い、個人消費は持ち直しの動きが見られ、10月以降は海外観光客による消費も活発化の兆しを見せました。一方で、欧州における紛争の長期化、物価上昇、金融資本市場の変動などの影響により、先行きが不透明な状況が継続しております。 このような状況のなか、当社グループは2024年3月期を最終年度とする3ヶ年の中期経営計画「未来への創造と挑戦」の2年目として、「組織風土改革」「国内外構造改革の着手・完遂」「再成長の戦略や成長市場への種まき」を3本柱とする各種施策を着実に推し進め、最終年度の目標としていた営業利益30億円を1年前倒しで大きく上回りました。 国内の店舗・テーマパークは、行動制限がなく全期間を通常営業できたことが奏功いたしました。特に秋以降は、政府の旅行支援策導入により国内人流が活性化するとともに入国規制の緩和により外国人観光客が大幅に増加し、店舗・テーマパークの売上高を押し上げました。また国内・海外のライセンス事業は、複数キャラクター展開が奏功し、新規ライセンシーの獲得に加え既存ライセンシーの商品展開が増え、売上高が伸長いたしました。 なお、サンリオファン会員向けアプリ「Sanrio+」の会員数は3月末現在で約136万人となりました。 連結営業損益に関しては、国内・海外ともに売上高が伸長したことに加え、構造改革の進展により売上原価率が低減し、販売収益性が向上した結果、大幅な増益となりました。
以上の結果、売上高は726億円(前期比37.6%増)、営業利益は132億円(同422.0%増)、経常利益は137億円(同313.6%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、東京国税局による更正処分に対する追徴税額13億円(加算税及び地方税等を含む)を受け、この内12億円を過年度法人税等として計上したことにより、81億円(同138.3%増)となりました。 なお、すべての海外連結子会社の決算期は1月~12月であり、当連結会計年度の対象期間は、2022年1月~12月であります。
セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。ⅰ 日本:売上高523億円(前期比30.2%増)、営業利益105億円(同377.1%増) a. 物販事業2022年4月に、コンビニエンスストア関連事業とグローバル物販事業の2つの事業を物販事業本部に移管いたしました。商品企画と製造機能の集約によりグローバルでブランド価値向上を図っております。当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大が継続するも行動制限が緩和されたことにより、店舗の客数が増加いたしました。特に秋以降は、入国規制の緩和により外国人観光客が大幅に増加いたしました。人気投票イベント「2022年サンリオキャラクター大賞」で上位となったキャラクター『シナモロール』、『ポムポムプリン』、『クロミ』などの商品化が好調に推移し、大手チェーンストアやコンビニエンスストアなど各販売チャネルの売上高が増加いたしました。また、劇場版「美少女戦士セーラームーンEternal」、「ちいかわ」などの他社有力キャラクターとのコラボレーション商品や、アイドルグループなどの推し活をしている人を応援する「エンジョイアイドルシリーズ」のオリジナル商品、本格始動したベビー向けのブランド「Sanrio Baby」が、新たな客層の開拓に寄与いたしました。上記のとおり、行動制限の緩和や様々な施策による集客の結果、売上高が大幅に伸長いたしました。営業損益については、売上高の大幅増に加え、販売費及び一般管理費のコスト・コントロールが奏功し、大幅増益となりました。
b. ライセンス事業複数キャラクター戦略が奏功し、新規ライセンシーの獲得に加え既存ライセンシーの商品展開が増えるとともに、前期の行動制限の反動により、売上高が大幅に伸長いたしました。商品化ライセンスビジネスは、複数キャラクター展開により選べる楽しさを演出できたことが奏功し、エンターテイメント性、コレクション性を取り入れた菓子類などが好調に推移いたしました。また、SNSの有効活用により商品情報が拡散され、エンドユーザーとのタッチポイントが大幅に増えたことで認知度が向上いたしました。広告化ライセンスビジネスは、外食チェーンの販促キャンペーンや展示会などのイベントが好調に推移いたしました。 営業損益については、増収に伴う売上総利益の伸長により大幅な増益となりました。
c. テーマパーク事業東京都多摩市のサンリオピューロランドと大分県のハーモニーランドはともに3期ぶりにゴールデンウイークや夏休み、冬休みなどの繁忙期を通常営業できたことで客数が大幅に増加いたしました。また、オリジナル商品が好調に推移するなど売上高が大幅に伸長し、両施設とも3期ぶりに営業黒字となりました。サンリオピューロランドでは、バーチャルイベント「Nakayoku Connect」の開催やアトラクション「キャラグリレジデンス」を7月に新設するなど、Z世代に響く施策が奏功し、オリジナル商品の売上が伸長いたしました。特に根強い人気のカチューシャやバースデー関連商品、クリスマスなどのシーズン限定商品・飲食メニューが人気を博すとともに、4月に導入した入園チケットの価格変動制による客単価増が寄与し、売上高が大幅に伸長いたしました。営業損益は、売上高の大幅増に加え原価率の低減などにより黒字化いたしました。ハーモニーランドは、オリジナルショー「シナモロールの青空楽団」の上演、シーズン毎に特色ある演出を加えたパレード、アミューズメントエリアの新設やキャラクタ-グリ-ティングの強化、3期ぶりに営業再開したプール(夏季)、「世界クロミ化計画」のプロモーションなどの魅力的な施策が集客に寄与するとともに、政府の旅行支援策により行楽意欲が高まったことで入園者数が大幅に増加いたしました。また、入園チケットの値上げ(7月)や好調に推移したオリジナル商品が客単価を押し上げ、売上増に寄与いたしました。営業損益は売上増に加え、原価率の低減も進み営業黒字に転換いたしました。
ⅱ 欧州:売上高18億円(前期比7.6%増)、営業損失1億円(同65百万円損失増)ライセンス事業では、ヘルス&ビューティーカテゴリーのボディソープや香水関連、食品カテゴリーの「ハローキティ キャンディ」の人気が継続いたしました。また、フットウェアカテゴリーではスペイン有名ブランドとのコラボレーションにてグローバル展開した『ハローキティ』のスニーカーが好調に推移し、ブランド価値向上にも寄与いたしました。前期に50周年の特需で売上が伸長した『ミスターメンリトルミス』は、前期には及ばないものの出版やアパレルカテゴリーが堅調に推移いたしました。出版カテゴリーでは、英国の主要ライセンシーの売上が伸長、家庭用品カテゴリーでは引き続き韓国のライセンシーが売上を牽引いたしました。営業損益は、売上高が伸長したものの、営業強化に伴う販売費及び一般管理費増により営業損失が拡大いたしました。
ⅲ 北米:売上高64億円(前期比81.1%増)、営業利益7億円(前期は4億円の損失)北米では、デジタル施策の有効活用により認知度を向上させるとともに、IP価値向上につながる戦略ライセンシーを通してブランディングを行う「価値創造サイクル」を構築しております。同サイクルの精度をさらに高め、持続的な成長を目指しております。物販事業は、ぬいぐるみなどの玩具商品や家庭用品の人気が継続した自社ECが、前年実績を大幅に上回りました。ライセンス事業は、アパレルや玩具、ヘルス&ビューティーカテゴリーが好調に推移いたしました。アパレルカテゴリーは、既存ライセンシーとの取り組みを引き続き強化するとともに、新規ファストファッションライセンシーの獲得により販路が拡大し、売上高が増加いたしました。玩具カテゴリーは、複数キャラクター展開によりぬいぐるみを中心に売上高が伸長いたしました。ヘルス&ビューティーカテゴリーは、新規ライセンシーによりキャラクター露出を高めるとともに、既存ライセンシーの取扱商品数が増加し、売上高が伸長いたしました。また、デジタルカテゴリーは、ゲームアプリケーションなどが好調に推移いたしました。 営業損益については、売上高の大幅伸長により黒字に転換いたしました。
ⅳ 南米:売上高5億円(前期比40.0%増)、営業利益25百万円(同24.9%減)南米全体では、アパレル、ヘルス&ビューティーカテゴリーのライセンス事業が好調に推移いたしました。メキシコにおけるライセンス事業では、アパレルカテゴリーの幼児から10代をターゲットとしたブランドや大手小売チェーン、ヘルス&ビューティーカテゴリーの衛生商品の売上高が引き続き好調に推移いたしました。また、メキシコシティに2号店をオープンしたハローキティカフェが引き続き好調に推移いたしました。ペルーではアクセサリーとバッグのライセンス事業が好調に推移いたしました。カフェやイベントなど顧客とのタッチポイントを常に設け、ブランド価値を順調に上げております。 営業損益については、売上高が大幅伸長したものの、宣伝費の増加により減益となりました。 Ⅴ アジア:売上高115億円(前期比65.7%増)、営業利益40億円(同93.2%増) アジアでは各拠点で売上高が伸長いたしました。香港・マカオ地区は、ライセンス事業において、銀行や大手コンビニエンスストアとの継続的なプロモーションにより、企業特販カテゴリーが売上高を伸長いたしました。また、複数キャラクター展開が奏功し複数のライセンシーとの取り組みが進んだバッグカテゴリーが売上を牽引いたしました。台湾は、上海のロックダウンの影響で商品開発が遅れたものの、ライセンス事業において、インテリアカテゴリーが好調に推移するとともに、グローバル展開しているゲームアプリとのコラボレーションにより、デジタルカテゴリーが売上を牽引いたしました。韓国は、ライセンス事業において、複数キャラクターでの展開を拡大したことが奏功いたしました。特に、流通を強化しているライセンシーの衛生商品や韓国大手芸能事務所所属のアイドルグループとのコラボレーションにより、売上高の大幅な伸長に加え、ブランドの価値向上にも繋がりました。中国は、ロックダウンの影響を受けたものの、ヘルス&ビューティーカテゴリーやアクセサリーカテゴリーを中心に各カテゴリーが好調に推移し、売上高が大幅に伸長いたしました。また、オンラインイベント期間の売上高の大幅増、旧物販事業会社の統合による経営のスリム化に加え、マスターライセンシーから未払いであった契約期間内における最低保証金不足分の入金が寄与いたしました。なお、当社とAvex Asia Pte. Ltd.との合弁会社でSANRIO SOUTHEAST ASIA PTE.LTD.(以下、SSEA)が当期より連結子会社となりました。SSEA(本社:シンガポール、地区:東南アジア)は、タイにおいてはアパレルや同国最大手コンビニエンスストアとのコラボレーション、インドネシアにおいてはアクセサリー 、シンガポールにおいてはIC交通カードとのコラボレーションの売上が伸長いたしました。 営業損益については、アジア各国における全体的な売上高の伸びが寄与し、増益となりました。
③ キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末より82億円増の321億円となりました。営業活動によるキャッシュ・フローは、115億円の収入(前期比64億円の収入増)となりました。これは、税金等調整前当期純利益が132億円(前期比83億円増)、減価償却費が18億円(前期比2億円増)、その他の負債の増加額が19億円(前期比17億円増)であった一方、売上債権の増加額が18億円(前期比12億円の収入減)、法人税等の支払額が38億円(前期比29億円の支出増)であったことなどによるものです。投資活動によるキャッシュ・フローは、20億円の支出(前期は23億円の収入)となりました。これは、投資有価証券の取得売却の差額17億円の収入(前期は15億円の支出)に対し、定期預金預入払戻の差である29億円の支出(前期比20億円増)、有形固定資産の取得売却の差額5億円の支出(前期は55億円の収入)などによるものです。財務活動によるキャッシュ・フローは27億円の支出(前期比63億円の支出減)となりました。これは、配当金の支払額18億円(前期比12億円増)、財務活動その他の収支による7億円の支出(前期比1億円増)などによるものです。
④ 販売実績当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
金額(百万円)
前期比(%)
日本
52,305
+30.2
欧州
1,823
+7.6
北米
6,473
+81.1
南米
504
+40.0
アジア
11,517
+65.7
合計
72,624
+37.6
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。 連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容経営成績の分析(売上高)当連結会計年度における売上高は、前連結会計年度に比べ198億円増加し、726億円(前期比37.6%増)となりました。売上高に占める報告セグメント別の割合は、日本が72.0%(前期末比4.1ポイント減)、欧州が2.5%(同0.7ポイント減)、北米が8.9%(同2.1ポイント増)、南米が0.7%(同微増)、アジアは15.9%(同2.7ポイント増)となりました。なお、報告セグメント別の経営成績の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② 経営成績の状況」に記載しております。(営業利益)当連結会計年度における営業利益は、132億円(前期比422.0%増)となりました。主な増加要因としましては、全てのセグメントにおける売上高の増加によるものと、原価率の低減等によるものであります。(経常利益) 当連結会計年度における営業外収益は、受取利息5億円、受取配当金2億円等を計上したことにより、12億円(同16.6%増)となりました。営業外費用は、投資事業組合運用損3億円等を計上したことにより、7億円(同156.2%増)となりました。 以上の結果、経常利益は、137億円(同313.6%増)となりました。(親会社株主に帰属する当期純利益)当連結会計年度における特別利益は、投資有価証券売却益4億円等を計上したことにより、4億円(同88.3%減)となりました。特別損失は、投資有価証券売却損5億円等を計上したことにより、9億円(同64.4%減)となりました。 以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、81億円(同138.3%増)となりました。 なお、当社グループが中期経営計画「未来への創造と挑戦」において掲げた目標に対する進捗状況につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題 ①中期経営計画の取り組み」をご参照ください。
財政状態の分析当連結会計年度における財政状態の分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①財務状態の状況」に記載のとおりであります。
キャッシュ・フローの分析・検証内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、商品の仕入れのほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、運転資金は自己資金、金融機関からの借入及び社債を基本としております。 なお、当連結会計年度末における借入金及び社債を含む有利子負債の残高は199億円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は321億円となっております。