【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)経営成績に関する説明
当第3四半期連結累計期間の主要な取組み
年初来、スポーツイベントの開催が本格的に再開し、数年ぶりに人々の自由な移動が可能となるなど、社会経済活動は正常化しております。
当第3四半期連結累計期間の売上高は、4,481億円と第3四半期連結累計期間では過去最高となり、全地域、全カテゴリーにおいて前年同期比で増収となりました。地域別では、インバウンド需要の取り込みに加え、ワーキングシューズやバスケットボールシューズを中心にコアパフォーマンススポーツが躍進した日本地域のアシックスジャパンで+35.6%、引き続きローカル性を重視した戦略により現地ニーズに柔軟に対応した中華圏地域では、パフォーマンスランニングやスポーツスタイルが好調に推移し+28.8%となりました。東南・南アジア地域は、好調が続くインドに加え、マレーシア、インドネシアが大きく増収しました。当第3四半期連結累計期間では、ほぼ全ての地域で引き続き堅調に成長しました。
粗利益率は、仕入為替の悪化があったものの、販売価格適正化やチャネルミックスの良化などにより前年同期から1.2ppt改善し、51.2%となりました。
当第3四半期連結累計期間の営業利益は、第3四半期連結累計期間では過去最高の558億円となり、前年同期比+54.8%となりました。継続的な販管費コントロールに加え、増収効果もあり、販管費率が低下し、営業利益率は前年同期の9.9%から12.5%の大幅改善となりました。
当第3四半期連結累計期間の親会社株主に帰属する四半期純利益も第3四半期連結累計期間では過去最高の402億円となりました。
当第3四半期連結累計期間の好調な業績の進捗を踏まえ、通期業績予想を上方修正することとなりました。また、期末予想配当につきましては、当期の業績やキャッシュ・フローの状況を総合的に勘案し、1株当たり35円に修正いたします。これにより、期初時点の過去最高の年間配当予想44円から更に増配し、年間配当予想を1株当たり60円に増額修正いたします。
◇デジタル
OneASICS会員の継続的な増加(前年同期比+32.6%の約882万人)もあり、ECの売上高は前年同期比+35.4%の765億円となり、OneASICS会員数の増加とともに、ECの売上高も着実に伸長してきております。引き続き、OneASICS会員獲得を推進し、ランニングエコシステム拡充に向け、ランナーとの直接的な接点獲得を推進してまいります。
◇ランニングエコシステム
①東京・丸の内にランステーションを併設した総合型ストア「ASICS RUN TOKYO MARUNOUCHI(アシックスラン東京丸の内)」を、8月にリニューアルオープンしました。当ストアは、ランニングスポットとして人気の皇居にも気軽に走りに行くことができる好立地です。今回のリニューアルオープンを機に、足の形や走り方の分析・診断、シューズやウエアの購入、日々のトレーニングのサポート、レース登録やレース後のケアといったランニングに関わる一連のサービスをすべて「ASICS RUN TOKYO MARUNOUCHI」で完結して頂けることを目指します。
②オーストラリアにて9月に開催されたシドニーマラソンでは、エントリーからレース完走後に至るまで、ランナーの活動に沿った新たな顧客体験を提供しました。OneASICS会員の特典として、エントリー完了からレース当日に向けて、トレーニングプランの提案、参加者向けコミュニティやチャレンジ企画への招待、目標に応じた商品推奨などを実施しました。レース後には、リカバリーサービスの提供、完走シーンの動画配信などのサービスを提供しました。多くのOneASICS会員の新規獲得に加え、イベント関連商品のオンライン売上も前年を大幅に上回りました。
今後も、このようなランニングエコシステムの拡充を図り、さらにグローバル展開を目指してまいります。
◇ブダペスト世界陸上選手権大会
8月にハンガリーのブダペストにて、アシックスがオフィシャルスポンサーを務める世界陸上が開催され、大会に出場したアシックス契約選手は前回大会の40名から92名へと大幅に増加しました。今大会ではアシックスのメタスピードシリーズを着用した選手が活躍し、スペイン代表のモハメド・カティル選手が5000mで銀メダルを、アメリカ代表のフレッド・カーリー選手が4×100mリレーで金メダルを獲得しました。
また、男女マラソンにおけるアシックスのシューズ着用率も前回大会を大きく上回り、18.6%(自社調べ)でした。
◇カテゴリー
・パフォーマンスランニング
売上高は、日本地域、中華圏地域、東南・南アジア地域で2桁増収となり、2,270億円と前年同期比+15.1%となりました。主要地域において「GEL-KAYANO 30」の販売が前モデルを上回り好調に推移しました。
・コアパフォーマンススポーツ
売上高は、テニスやワーキングシューズが牽引し、610億円と前年同期比で+48.9%となりました。特にテニスシューズの売上高は、200億円と前年同期比+52.7%となり大きく伸長しました。
なお、8月から9月において開催されたテニスの全米オープンでは、アシックスとフットウェア契約を結ぶノバク・ジョコビッチ選手が男女を通じて四大大会シングルス歴代最多タイとなる通算24回目の優勝を果たしました。同選手が着用したシグネチャーモデルである「COURT FF 3 NOVAK」は、安定性とスピードを両立させコート上での最高のパフォーマンスを発揮できるシューズです。
・オニツカタイガー
①売上高は、インバウンド需要を取り込んだ日本地域での大幅伸長に加え、東南・南アジアなどでも大きく成長し、448億円と前年同期比+40.8%となりました。また、販売価格コントロールの効果もあり、カテゴリー利益は前年同期比で2倍超と好調に推移しました。
②8月に大胆なレタリングの新しいロゴを使用しているイエローコレクションを専門に取り扱う世界初のコンセプトストアを銀座にオープンしました。
コンセプトストアはこの新しいロゴを冠し、建物全体をイエローのボックスに見立てた先進的なデザインに仕上げています。銀座は伝統を守りながらも挑戦し続ける街であり、コンセプトストアを通してコレクションの世界観を世界に発信してまいります。
◇パリ2024パラリンピック競技大会
アシックスは、国際パラリンピック委員会(International Paralympic Committee 略称=IPC)と、パリ2024パラリンピック競技大会のオフィシャルサプライヤー契約を締結しました。本競技大会のスタッフ用ウエアやシューズなどを提供します。
今後も、パラリンピックの発展はもとより、誰もが一生涯運動・スポーツに関わり、心と身体が健康で居続けられる真の共生社会の実現に向けて取り組んでまいります。
◇鳥海連志選手と所属契約締結
アシックスは、プロ車いすバスケットボールプレーヤーの鳥海連志(ちょうかいれんし)選手と所属契約を締結しました。同契約は、アシックス初のプロパラアスリートとの所属契約となります。
今回の所属契約は、鳥海選手が車いすバスケットボールの普及活動や自身の経験をふまえた講演会などを積極的に行っており、アシックスの目指すビジョンと一致していることから実現したものです。
◇サステナビリティ
①アシックスは、製品ライフサイクルにおける温室効果ガス排出量(以下、排出量)を市販スニーカーのなかで最も低く抑えたスニーカー「GEL-LYTE III CM 1.95」を、スポーツスタイルカテゴリーより9月に発売しました。
このスニーカーはアシックススポーツスタイルを象徴するスニーカーの1つである「GEL-LYTE III OG」がベースで、先進的なソリューションを取り入れることで排出量をわずか1.95kgCO₂e※1と最小限に抑えながら、品質とデザイン性を両立させたのが特徴です。排出量は発売時点で市販スニーカーのなかで最少です。※2
※1 2022年8月にISO14067規格に準拠してアシックスが計算し、SGS (Société Générale de Surveillance)
Japan によって検証されました。
※2 2023年9月現在、排出量が開示されている市販シューズを対象としたデータに基づいています。
②「Sustainable Japan Award 2023」(主催:株式会社ジャパンタイムズ、 後援:経済産業省、環境省、金融庁) のESG部門において、最優秀賞を受賞しました。「Sustainable Japan Award」は、それぞれの分野でその年に先進的で継続可能な取組みを行った企業・団体・個人を表彰し、その活動を国内外に伝えていくことを目的に実施されており、今年で5回目となります。今回の受賞は前述の温室効果ガス排出量が最少であるスニーカー「GEL-LYTE III CM 1.95」をはじめとする製品のカーボンフットプリント※の表示、グリーン調達方針を通じたサプライチェーンとの連携など、バリューチェーン全体での当社の気候変動に対する取組みが評価されたものです。
今後も引き続き、サステナビリティに配慮した取組みを推進していきます。
※ 排出量をCO₂量に換算して表示するもの。
◇ROAツリーマネジメント
ROAは12.1%となりました。ROAの構成要素である総資産は、為替の変動による押上げ影響などにより前期末から増加しましたが、粗利益率は仕入為替の悪化があったものの、販売価格適正化などにより、前年同期から良化しました。販管費率も、継続的な販管費コントロールにより前年同期から低下しました。
また、CCC日数は168日となりました。棚卸資産回転期間の改善により、前年同期比で18日、前期末比では21日短縮しました。
ROA(年率換算)=
2023年12月期第3四半期純利益
×
4
(2022年12月期期末総資産+2023年12月期第3四半期末総資産)÷2
3
◇社長交代に関する取締役会決議
9月15日開催の取締役会において、2024年1月1日付で代表取締役社長CEO兼COOである廣田康人は代表取締役会長CEOに、常務執行役員CDO・CIOである富永満之が社長COOに就任する人事異動を決議いたしました。※
新たに社長に就任する富永は、米国の大学を卒業後、IT関連企業においてマネジメントとして重責を担いました。2018年にアシックスに入社以来、一貫してデジタル事業を統括しております。
約6年ぶりとなる今回の社長交代を通じて、アシックスはさらなるグローバル化とデジタル化の推進を目指してまいります。
※ 富永は2024年3月22日開催予定の定時株主総会にて取締役に選任予定。また、同日開催の取締役会にて代表
取締役に選任予定。
① 売上高
為替影響に加え、全てのカテゴリーで好調に推移したこともあり、448,105百万円と前年同期比23.4%の増収となりました。
② 売上総利益
上記増収の影響により、229,628百万円と前年同期比26.5%の増益となりました。
③ 営業利益
上記増収の影響により、55,805百万円と前年同期比54.8%の増益となりました。
④ 経常利益
上記増収増益の影響に加え、為替差益の計上などにより、54,748百万円と前年同期比60.0%の増益となりました。
⑤ 親会社株主に帰属する四半期純利益
上記増収増益の影響などにより、40,280百万円と前年同期比73.3%の増益となりました。
カテゴリー別の経営成績は、次のとおりであります。
(単位:百万円)
(カテゴリー)
売上高
カテゴリー利益
前第3四半期
連結累計期間
当第3四半期
連結累計期間
増減額
(△は減)
前第3四半期
連結累計期間
当第3四半期
連結累計期間
増減額
(△は減)
パフォーマンスランニング
197,270
227,070
29,799
43,910
44,568
657
コアパフォーマンススポーツ
40,998
61,048
20,049
8,266
13,003
4,737
スポーツスタイル
31,443
45,958
14,515
5,345
10,377
5,032
アパレル・エクィップメント
26,623
28,018
1,395
△578
2,016
2,594
オニツカタイガー
31,868
44,874
13,005
6,411
12,918
6,507
① パフォーマンスランニング
売上高は、全ての地域で好調に推移し、227,070百万円と前年同期比15.1%の増収となりました。カテゴリー利益につきましては、上記増収の影響などにより、44,568百万円と前年同期比1.5%の増益となりました。
② コアパフォーマンススポーツ
売上高は、全ての地域で好調に推移し、61,048百万円と前年同期比48.9%の増収となりました。カテゴリー利益につきましては、上記増収の影響などにより、13,003百万円と前年同期比57.3%の増益となりました。
③ スポーツスタイル
売上高は、全ての地域で好調に推移し、45,958百万円と前年同期比46.2%の増収となりました。カテゴリー利益につきましては、上記増収の影響などにより、10,377百万円と前年同期比94.1%の増益となりました。
④ アパレル・エクィップメント
売上高は、中華圏地域やオセアニア地域での好調により、28,018百万円と前年同期比5.2%の増収となりました。カテゴリー利益につきましては、粗利益率の改善などにより、2,016百万円と黒字転換いたしました。
⑤ オニツカタイガー
売上高は、全ての地域で好調に推移し、44,874百万円と前年同期比40.8%の増収となりました。カテゴリー利益につきましては、上記増収の影響などにより、12,918百万円と前年同期比101.5%の大幅増益となりました。
報告セグメント別の経営成績は、次のとおりであります。
① 日本地域
売上高は、全てのカテゴリーが好調だったことにより、101,942百万円と前年同期比14.3%の増収となりました。
セグメント利益につきましては、上記増収の影響や粗利益率の改善などにより、11,229百万円と前年同期比160.1%の大幅増益となりました。
② 北米地域
売上高は、パフォーマンスランニングやコアパフォーマンススポーツが好調だったことにより、87,799百万円と前年同期比16.1%の増収となりました。
セグメント利益につきましては、上記増収の影響や粗利益率の改善などにより、1,900百万円と前年同期比33.0%の増益となりました。
③ 欧州地域
売上高は、全てのカテゴリーが好調だったことにより、122,212百万円と前年同期比19.3%の増収となりました。
セグメント利益につきましては、上記増収の影響などにより、15,274百万円と前年同期比21.6%の増益となりました。
④ 中華圏地域
売上高は、全てのカテゴリーが好調だったことにより、61,393百万円と前年同期比28.8%の増収となりました。
セグメント利益につきましては、上記増収の影響などにより、13,026百万円と前年同期比22.0%の増益となりました。
⑤ オセアニア地域
売上高は、全てのカテゴリーが好調だったことにより、28,805百万円と前年同期比16.0%の増収となりました。
セグメント利益につきましては、上記増収の影響などにより、4,956百万円と前年同期比18.0%の増益となりました。
⑥ 東南・南アジア地域
売上高は、全てのカテゴリーが好調だったことにより、21,446百万円と前年同期比54.3%の増収となりました。
セグメント利益につきましては、上記増収の影響などにより、4,818百万円と前年同期比76.9%の増益となりました。
⑦ その他地域
売上高は、パフォーマンスランニングやオニツカタイガーが好調だったことにより、38,611百万円と前年同期比15.5%の増収となりました。
セグメント利益につきましては、上記増収の影響などにより、4,518百万円と前年同期比50.3%の増益となりました。
(2)財政状態に関する説明
当第3四半期連結会計期間末の財政状態といたしましては、総資産462,050百万円(前連結会計年度末比8.7%増)、負債の部合計236,274百万円(前連結会計年度末比6.4%減)、純資産の部合計225,776百万円(前連結会計年度末比30.7%増)でした。
① 流動資産
受取手形及び売掛金の増加などにより、323,800百万円(前連結会計年度末比9.3%増)となりました。
② 固定資産
ソフトウエアの増加などにより、138,249百万円(前連結会計年度末比7.2%増)となりました。
③ 流動負債
支払手形及び買掛金が減少したものの、未払法人税等の増加や償還期限が1年以内となった社債の固定負債から流動負債への振り替えによる増加などにより、156,265百万円(前連結会計年度末比3.7%増)となりました。
④ 固定負債
償還期限が1年以内となった社債の固定負債から流動負債への振り替えによる減少などにより、80,008百万円(前連結会計年度末比21.3%減)となりました。
⑤ 純資産
利益剰余金の増加などにより、225,776百万円(前連結会計年度末比30.7%増)となりました。
(3)経営方針・経営戦略等及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等について重要な変更はありません。
(4)経営成績に重要な影響を与える要因及び経営成績の現状と見通し
2023年12月期の連結業績予想については、以下の通りといたします。
(単位:百万円)
2022年12月期実績
2023年12月期予想
前年同期比
増減額
増減率(%)
売上高
484,601
570,000
85,398
17.6
営業利益
34,002
52,000
17,997
52.9
経常利益
30,913
50,000
19,086
61.7
親会社株主に帰属する
当期純利益
19,887
27,500
7,612
38.3
1株当たり配当金
40円
60円
-
-
(通期業績予想について)
売上高は、カテゴリーではスポーツスタイル及びオニツカタイガー、地域では日本地域、欧州地域及び中華圏地域で順調に推移すると見込んでおり、かつ為替レートの見直しもあり過去最高となる見通しです。
営業利益、経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益についても、上記の増収及び粗利益率改善により前回予想を上回り、いずれも過去最高となる見通しです。
(配当金予想について)
当社では、株主の皆様に対する利益還元を経営上の最重要課題のひとつとして認識しております。また「中期経営計画2023」において設定いたしました、中期経営計画期間内の連結総還元性向50%以上の方針を達成すべく、利益配分の計画を検討しております。
期末配当予想につきましては、当期の業績やキャッシュ・フローの状況を総合的に勘案した結果、1株につき5円の増配となる、1株当たり35円に修正いたします。これにより、期初時点の過去最高の年間配当予想44円から更に増配し、年間配当予想は1株当たり60円に増額修正いたします。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(6)研究開発活動
当第3四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は4,470百万円(前年同期比3.8%増)であります。
なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(7)従業員の状況
当第3四半期連結累計期間において、連結会社又は提出会社の従業員数の著しい増減はありません。
(8)生産、受注及び販売の状況
当社グループは、生産実績の割合が僅少であるため記載を省略しております。また、受注状況につきましても、受注生産を行っている割合が僅少であるため記載を省略しております。なお、販売実績につきましては、「第4 経理の状況 1 四半期連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」をご確認ください。
(9)設備の状況
当第3四半期連結累計期間において、主要な設備の著しい変動及び主要な設備の前連結会計年度末における計画の著しい変更はありません。
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