【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)経営成績の状況
当社グループは、「医療と健康、美」の事業フィールドにおいて、社会に貢献する新しい卸の形をめざし、 「2027メディパル中期ビジョン Change the 卸 Forever~たゆまぬ変革を~」に沿って、従来の枠組みにとらわれることなく、当社グループの強みを活かしたビジネスを展開し、誰もが心身ともに健康に過ごすことができる社会の実現に貢献してまいります。また、当社はメディパルグループサステナビリティ方針「未来へつなごう『元気と、かがやき』」を策定するとともに、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同しております。
2022年4月、当社はH.U.グループホールディングス株式会社(東京都新宿区)と、医療・ヘルスケア領域における物流合弁会社「株式会社メディスケット(埼玉県三郷市)」を設立し、同年12月1日から地域別に順次稼働しております。医薬品・検査資材等の供給と臨床・治験・研究等の検体の集荷を最適化することに加え、GDPガイドライン※1に準拠した高品質な物流サービスを活用して、ヘルスケアに関わるさまざまな企業の参画を促進してまいります。
2022年7月、当社は東七株式会社(長崎県佐世保市、以下、東七という)との間で、当社が東七の発行済株式の全てを取得する取引に関して基本合意書を締結し、検討・協議を進めてまいりましたが、2023年2月1日付で、当社を株式交換完全親会社、東七を株式交換完全子会社とする株式交換契約を締結いたしました。効力発生日は同年4月3日を予定しております。
また、MEDIPAL Innovation 投資事業有限責任組合を通じて、2022年5月、がん領域の研究開発に特化したバイオベンチャー企業であるChordia Therapeutics株式会社(神奈川県藤沢市)へ出資を行うとともに、業務提携に関する基本合意書を締結いたしました。同年8月には、CAR-T※2細胞療法を主とした新規がん免疫療法の開発を行うノイルイミューン・バイオテック株式会社(東京都港区)への、同年9月には医薬品向けヒト末梢血由来完全ヒト抗体の研究・開発を行う株式会社イーベック(札幌市中央区)への出資を行いました。今後もさまざまなベンチャー企業への出資可能性を検討してまいります。
2022年10月、当社はJCRファーマ株式会社(兵庫県芦屋市、以下、JCRという)と、JCRが開発中のライソゾーム病の中でも超希少疾病を対象疾患とする4つの新薬候補物質(以下、対象物質という)の、日本を除く全世界における事業化に関する独占的交渉権付与に関する覚書(以下、本覚書という)を締結いたしました。また、本覚書に基づき、両社は対象物質のうちフコシドーシス※3を対象疾患とする物質に関する実施許諾契約を併せて締結いたしました。
2022年11月、当社は日医工株式会社(富山県富山市、以下、日医工という)に対して総額200億円の出資を検討している合同会社ジェイ・エス・ディー(以下、JSDという)に対して、株式会社ジェイ・ウィル・パートナーズが管理・運営する投資ファンドと共同で匿名組合出資を行うことといたしました。当社は、2021年8月に日医工との間で資本業務提携契約を締結して以降、同社との間で業務提携を進めてまいりましたが、安定的かつ効率的な後発医薬品の供給体制を構築し、国民医療費の削減や持続可能な社会の実現を可能とする医薬品生産流通モデルを実現させるためには、同社との更なる連携が重要であるとの理由から出資を決定いたしました。なお、JSDに対する当社の出資割合は20%で、3月頃を予定しています。
2022年11月、当社は住友ファーマ株式会社(大阪市中央区、以下、住友ファーマという)との間で、住友ファーマの完全子会社である住友ファーマフード&ケミカル株式会社(大阪市北区)の全株式を取得する契約を締結いたしました。
当第3四半期連結累計期間における経営成績は、売上高2兆5,674億18百万円(前年同期比2.4%増)、営業利益375億31百万円(前年同期比1.4%増)、経常利益499億8百万円(前年同期比3.7%減)、特別利益に投資有価証券売却益を計上したことにより、親会社株主に帰属する四半期純利益298億48百万円(前年同期比3.5%増)となりました。
[用語解説]
※1 GDPガイドライン(Good Distribution Practice=医薬品の適正流通)とは、流通経路(仕入・保管・供給)の管理が保証され、医薬品の完全性が保持されるための手法、さらに、偽造医薬品の正規流通経路への流入を防止するための適切な手法を定めたものであります。
※2 CAR-Tとは、白血球の一種であるTリンパ球に、がん細胞に特異的に発現する抗原を認識する抗体を導入した細胞製剤であります。
※3 フコシドーシスとは、ライソゾーム病の一種で、遺伝子変異により糖たんぱく質の代謝酵素(α-フコシダーゼ)の活性が低下し糖鎖や糖たんぱく質が全身に蓄積する常染色体劣性遺伝性疾患であります。
セグメントの業績は次のとおりであります。
(注)セグメントの売上高には、セグメント間の内部売上高を含んでおります。
医療用医薬品等卸売事業
医療用医薬品等の市場は、新型コロナウイルス感染症の再拡大の中、受診抑制は残るものの、同感染症関連商品の販売が増加したことなどにより、前年同期と比べわずかに伸長いたしました。
このような状況の中、本事業では、近年増加する厳格な温度管理が必要な医薬品等を安全・安心にお届けするため、高品質・高機能かつ災害対策を施したALC※1において、超低温を含む全温度帯に対応できる物流プラットフォームを構築しております。また2022年12月より、ALCを含めた物流拠点で行われている庫内業務と配送業務について、当社連結対象の子会社である株式会社メディスケットへの業務委託を順次開始しており、引き続きGDPガイドラインに準拠した高品質な物流サービスを提供してまいります。加えて、「個口スキャン検品※2」の導入や配送回数の削減を進めるなど、製薬企業から患者さんに至るまでのサプライチェーン全体の最適化・効率化を図るとともに、環境負荷の軽減に取り組み、人々の安全・安心な医療を支える社会インフラとしての機能を果たしてまいります。
営業面においては、専門知識とスキルを持つAR※3の育成や医療情報ポータルサイト「Clinical Cloud by MEDIPAL」でのLIVEセミナーの実施など、医療機関等が必要とする最新の医療情報をリアルとデジタルを融合し提供しております。本ポータルサイトは、医師登録者数が4万人を超え、その他の医療従事者を加えると、約6万人弱の登録者数を有するサイトになっております。また、女性診療科領域の専門知識を有する「ウィメンズコーディネーター※4」、希少疾病領域に特化した「RD-MR※5」による情報提供・収集活動を展開しております。
売上高については、医療用医薬品は前年同期を下回ったものの、新型コロナウイルス感染症関連のPCR検査機器や抗原検査キットの順調な販売により、前年同期をわずかに上回りました。
販売費及び一般管理費については、電気代やガソリン等の燃料費の高騰など厳しい環境下にある中、持続的な成長に向けた構造改革の一環として、配送の集約・発注の締め時間の前倒しなどにより人員の適正化を図り、生産性の向上に努めました。
これらの結果、医療用医薬品等卸売事業における売上高は1兆6,699億33百万円(前年同期比1.0%増)、営業利益は162億19百万円(前年同期比14.1%増)となりました。
[用語解説]
※1 ALC(Area Logistics Center)とは、医療用医薬品や医療材料などを扱う高機能物流センターで、
主に調剤薬局、病院、診療所に商品を供給しております。
※2 個口スキャン検品とは、従来の伝票読み上げ方式から、納品箱単位でのバーコードスキャン方式に変更する
ことで、検品時間を短縮する方法であります。
※3 AR(Assist Representatives)とは、MR認定試験に合格したMS(医薬品卸売業の営業担当者)や
薬剤師などに付与した社内呼称であります。
※4 ウィメンズコーディネーターとは、女性診療科領域の専門知識を有するARなどに付与した社内呼称であり
ます。
※5 RD-MR(Rare Disease MR)とは、希少疾病領域に特化したARなどに付与した社内呼称であります。
化粧品・日用品、一般用医薬品卸売事業
化粧品・日用品、一般用医薬品の市場は、新型コロナウイルス感染者数の増加により、諸症状を緩和する風邪薬や解熱鎮痛剤、抗原検査キットなどの需要が拡大した一方で、感染拡大下にありながらも外出機会が増加したことにより、メイクアップなどの化粧品、ドリンク剤などの医薬品が好調に推移いたしました。また、例年よりも気温低下が進み、冬らしい気候となったことで、カイロなどの冬物商材も好調に推移いたしました。
このような状況の中、当社の連結子会社である株式会社PALTAC(大阪市中央区)は、お取引先様との連携・協働による「売れる仕組みの強化」や、差し迫る物流の2024年問題やホワイト物流※1への対応を視野に入れた「配送改善」、組織的に強化した全ての取り組みを支える「デジタルの活用」、中長期の成長を担う「人財の積極採用」など、関連するステークホルダーとの連携・協働によるサプライチェーン全体の最適化・効率化に向け取り組んでおります。
売上高については、小売業様の幅広いニーズに対応できるリテールソリューション※2機能の充実と、連携・協働による同機能の積極的な活用に注力いたしました。なかでも、店頭活性化による売上拡大及びインストアシェア拡大を図りました。具体的には、店頭の活きた情報や業界最大の流通情報を活用した需要変動への迅速な対応や、これまでのメーカー様には取り扱いがなかった商品を含め、市場環境の変化を先読みした新たな品揃え提案に努めました。
販売費及び一般管理費については、市場の環境変化による単位あたり受注量の減少や、電気代の上昇などがみられるなか、庫内作業の生産性向上に継続して取り組むとともに、配送費上昇とホワイト物流への対応を同時に実現する配送の改善などに努めました。
なお、営業利益については、最大市場である関東エリアの出荷規模拡大及び生産性向上を目的とする栃木物流センターの新設に伴う一過性の費用等が発生し、12億円の引き下げ要因となっております。
これらの結果、化粧品・日用品、一般用医薬品卸売事業における売上高は8,481億95百万円(前年同期比5.7%増)、営業利益は191億10百万円(前年同期比5.5%減)となりました。
[用語解説]
※1 ホワイト物流とは、トラック運転者不足が深刻になっていることに対応し、国民生活や産業活動に必要な物
流を安定的に確保するとともに、経済の成長に役立つことを目的とした「トラック輸送の生産性向上・物流
の効率化」や「女性や60代の運転者等も働きやすい、よりホワイトな労働環境の実現」のことであります。
※2 リテールソリューションとは、「商品が生活者にわたる現場(店頭)」を起点にマーチャンダイジングや生
産性向上など流通全体の幅広い課題を解決することであります。
動物用医薬品・食品加工原材料等卸売事業
動物用医薬品の市場は、コロナ禍における飼い主のコンパニオンアニマル※に対する健康意識の高まりや、獣医療の進歩による長寿化が進んだことなどにより、堅調に推移いたしました。
このような状況の中、当社連結対象の完全子会社であるMPアグロ株式会社(北海道北広島市)は、コンパニオンアニマルの健康維持・増進に貢献できる取組みを行っております。また、家畜などの産業動物の疾病の予防とまん延を防止することで「食の安全・安心」に貢献すべく注力しております。
自社企画品の普及・定着や、独自の動物病院向けWEB発注情報システム「MP+(エムピープラス)」の利用拡大、流通機能とマーケティング機能を融合させた新しい営業モデルの取組みを推進したものの、過去にないペースで感染が拡大している鳥インフルエンザや生産コスト高騰の影響等により販売はやや低調に推移いたしました。
食品加工原材料の市場は、新型コロナウイルス感染症に伴う行動制限の解除などにより、外食産業等においても回復の動きが見られました。
このような状況の中、当社連結対象の完全子会社であるメディパルフーズ株式会社(札幌市中央区)は、「食の安全・安心」と「おいしさ」をテーマに、人々の健康で豊かな食生活を支える取組みを行っております。
全国展開の強みを活かした営業の推進や、商品付加価値を高める新製品の企画開発の推進、お得意様の商品企画から流通に至るまでをトータルにサポートする取組みなどにより、販売は順調に推移いたしました。
これらの結果、動物用医薬品・食品加工原材料等卸売事業における売上高は562億40百万円(前年同期比2.6%増)、営業利益は21億57百万円(前年同期比1.4%減)となりました。
[用語解説]
※ コンパニオンアニマルとは、伴侶動物とも表現され、日常生活の中で人とより密接な関係を保つような動物を
指しております。
(2)財政状態の分析
(資産)
当第3四半期連結会計期間末における総資産は1兆8,073億75百万円となり、前連結会計年度末より979億1百万円増加いたしました。
流動資産は1兆3,077億3百万円となり、前連結会計年度末より979億36百万円増加いたしました。これは主に受取手形及び売掛金の増加704億12百万円、有価証券の減少187億70百万円、商品及び製品の増加341億68百万円によるものであります。
固定資産は4,996億71百万円となり、前連結会計年度末より35百万円減少いたしました。これは主に有形固定資産の増加3億70百万円、無形固定資産の減少3億5百万円、投資その他の資産の減少1億円によるものであります。
(負債)
当第3四半期連結会計期間末における負債は1兆1,294億17百万円となり、前連結会計年度末より690億33百万円増加いたしました。
流動負債は1兆784億46百万円となり、前連結会計年度末より696億30百万円増加いたしました。これは主に支払手形及び買掛金の増加791億円、短期借入金の増加300億円、1年内償還予定の新株予約権付社債の減少300億78百万円によるものであります。
固定負債は509億70百万円となり、前連結会計年度末より5億97百万円減少いたしました。これは主にリース債務(その他の固定負債)の減少8億12百万円によるものであります。
(純資産)
当第3四半期連結会計期間末における純資産は6,779億57百万円となり、前連結会計年度末より288億67百万円増加いたしました。これは主に利益剰余金の増加201億53百万円、その他有価証券評価差額金の増加25億1百万円、非支配株主持分の増加56億60百万円によるものであります。
(3)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(4)経営方針・経営戦略等
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について、重要な変更はありません。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について、重要な変更はありません。
なお、2021年11月9日、当社連結対象の完全子会社である株式会社アトル(福岡市東区)は、独立行政法人国立病院機構本部が行う九州エリア所在の病院が調達する医薬品の入札に関し、独占禁止法違反の疑いがあるとして、公正取引委員会による立入り検査を受けました。
当社グループでは、この事態を厳粛かつ真摯に受け止めており、引き続きコンプライアンスの徹底を図るとともに、社会から信頼される企業として、さらなる企業価値向上に努めてまいります。
(6)研究開発活動
当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の金額は、79百万円であります。
なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に、重要な変更はありません。
(7)主要な設備
前連結会計年度末に計画しておりました株式会社PALTACの栃木県下都賀郡野木町の物流センターは2022年7月に完成いたしました。