【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)経営成績の状況
当第2四半期連結累計期間におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止と経済活動の両立により、緩やかに持ち直しの動きがみられる一方で、原材料価格やエネルギー価格の高騰による物価高や金利差の拡大を背景とした円安の加速など、依然として先行き不透明な状況が続いております。
このような環境の中、当社グループは医薬品や日用品などを扱う事業者として、必要な商品を安定的に供給するという変わらぬ使命のもと、人々の生命と暮らしを支えるべく、事業活動に取り組んでおります。
2022年4月、当社はH.U.グループホールディングス株式会社(東京都新宿区)と、医療・ヘルスケア領域における物流合弁会社「株式会社メディスケット(埼玉県三郷市、以下、メディスケットという)」を設立いたしました。両社は、メディスケットを通じ、医薬品・検査資材等の供給と臨床・治験・研究等の検体の集荷を最適化することに加え、GDPガイドライン※1に準拠した高品質な物流サービスを活用して、ヘルスケアに関わるさまざまな企業の参画を促進してまいります。
また、2022年7月、当社は東七株式会社(長崎県佐世保市、以下、東七という)との間で、当社が東七の発行済株式の全てを取得する取引に関して基本合意書を締結いたしました。現在、2023年4月1日付で当社が東七の発行済株式の全てを取得することを目指して、協議及び検討を進めております。
さらに、MEDIPAL Innovation 投資事業有限責任組合を通じて、2022年5月、がん領域の研究開発に特化したバイオベンチャー企業であるChordia Therapeutics株式会社(神奈川県藤沢市)へ出資を行うとともに、同社と業務提携に関する基本合意書を締結いたしました。同年8月には、CAR-T※2細胞療法を主とした新規がん免疫療法の開発を行うノイルイミューン・バイオテック株式会社(東京都港区)への出資を、同年9月には医薬品向けヒト末梢血由来完全ヒト抗体の研究・開発を行う株式会社イーベック(札幌市中央区)への出資を行いました。今後も様々なベンチャー企業への出資可能性を検討してまいります。
当第2四半期連結累計期間における経営成績は、売上高1兆6,853億96百万円(前年同期比2.6%増)、営業利益255億43百万円(前年同期比5.2%増)、経常利益332億61百万円(前年同期比0.9%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益173億24百万円(前年同期比6.5%減)となりました。
[用語解説]
※1 GDPガイドライン(Good Distribution Practice=医薬品の適正流通)とは、流通経路(仕入・保管・供給)の管理が保証され、医薬品の完全性が保持されるための手法、さらに、偽造医薬品の正規流通経路への流入を防止するための適切な手法を定めたものであります。
※2 CAR-Tとは、白血球の一種であるTリンパ球に、がん細胞に特異的に発現する抗原を認識する抗体を導入した細胞製剤であります。
セグメントの業績は次のとおりであります。
(注)セグメントの売上高には、セグメント間の内部売上高を含んでおります。
医療用医薬品等卸売事業
医療用医薬品等の市場は、薬価の引き下げや、新型コロナウイルス感染症のかつてない規模の拡大があったものの、受診抑制は前年同期に比べて緩和されたことに加え、同感染症の治療薬や抗がん剤、免疫疾患治療剤などの販売が増加したことなどにより伸長いたしました。
このような状況の中、本事業では、近年増加する厳格な温度管理が必要な医薬品等を安全・安心にお届けするため、高品質・高機能かつ災害対策を施したALC※1において、超低温を含む全温度帯に対応できる物流プラットフォームを構築しております。これらの技術やノウハウを、当社グループが担っている新型コロナウイルスワクチンの保管・配送にも活かしております。また、超低温保管・輸送用カート「medks-SDDU※2」を医療機関、企業向けにレンタルするサービスを開始するなど、温度管理が必要な商品の保管・管理に貢献してまいります。加えて「個口スキャン検品※3」の導入や配送回数の削減を進めるなど、製薬企業から患者さんに至るまでのサプライチェーン全体の最適化・効率化を図るとともに、環境負荷の軽減に取り組み、人々の安全・安心な医療を支える社会インフラとしての機能を果たしております。
営業面においては、専門知識とスキルを持つAR※4による情報活動の強化や、医療情報ポータルサイト「Clinical Cloud by MEDIPAL」でのLIVEセミナーの実施など、最新の医療情報をリアルとデジタルを融合し提供しています。また、女性診療科領域の専門知識を有する「ウィメンズコーディネーター※5」、希少疾病領域に特化した「RD-MR※6」による情報提供・収集活動を展開しております。
売上高については、医薬品は前年同期並みとなりましたが、新型コロナウイルス感染症関連の検査機器や抗原検査キットの販売が増加いたしました。
販売費及び一般管理費については、持続的な成長に向けた構造改革の一環として、配送の集約・発注の締め時間の前倒しにより人員の適正化を図り、生産性の向上に努めました。
これらの結果、医療用医薬品等卸売事業における売上高は1兆956億99百万円(前年同期比1.7%増)、営業利益は120億17百万円(前年同期比29.4%増)となりました。
[用語解説]
※1 ALC(Area Logistics Center)とは、医療用医薬品や医療材料などを扱う高機能物流センターで、
主に調剤薬局、病院、診療所に商品を供給しております。
※2 medks-SDDU (MEDIPAL key to being seamless(メドクス:コールドチェーンに使用する輸送容器の総称)-
Specialty Drug Distribution Unit(エスディーディーユー))とは、超低温管理が必要な再生医療等製品
などに対応した保管・輸送用カートです。揺れや衝撃時の液漏れを防止する多重ブレード構造により、液体
窒素のスピード充填と製品(試料)が格納された状態での液体窒素充填が可能であります。
※3 個口スキャン検品とは、従来の伝票読み上げ方式から、納品箱単位でのバーコードスキャン方式に変更する
ことで、検品時間を短縮する方法であります。
※4 AR(Assist Representatives)とは、MR認定試験に合格したMS(医薬品卸売業の営業担当者)や
薬剤師などに付与した社内呼称であります。
※5 ウィメンズコーディネーターとは、女性診療科領域の専門知識を有するARなどに付与した社内呼称であり
ます。
※6 RD-MR(Rare Disease MR)とは、希少疾病領域に特化したARなどに付与した社内呼称であります。
化粧品・日用品、一般用医薬品卸売事業
化粧品・日用品、一般用医薬品の市場は、感染再拡大により、マスクや消毒液などの衛生関連品、喉の痛みや咳の症状を緩和する風邪薬や解熱鎮痛剤の需要が前年同期を大きく上回りました。また、感染拡大下においても人流は増加傾向であったため、外出に関連したメイクアップや日焼け止めなどの化粧品、ドリンク剤などの医薬品が回復の動きを見せました。
このような状況の中、当社の連結子会社である株式会社PALTAC(大阪市中央区)は、お取引先様との連携・協働による「売れる仕組みの強化」や、差し迫る物流の2024年問題やホワイト物流※1への対応を視野に入れた「配送改善」及び、中長期の成長を担う「人財の積極採用」など、関連するステークホルダーとの連携・協働によるサプライチェーン全体の最適化・効率化に向け取り組んでおります。中でも、全ての取組みを支えるデジタルの活用においては、DXを着実かつスピーディーに推進する体制を整備し、経済産業省が定める「DX認定事業者」の認定を取得するなど、流通全体の革新的な生産性向上に向けた取組みを着実に進めております。
売上高については、小売業様の幅広いニーズに対応できるリテールソリューション※2機能の充実と、連携・協働による同機能の積極的な活用に注力いたしました。また、店頭の活きた情報や業界最大の流通情報を活用した需要変動への迅速な対応や、環境配慮型の新商品など店頭活性化につながる商品提案の充実に努め、店頭の売上拡大及びインストアシェア拡大を図りました。
販売費及び一般管理費については、市場の環境変化による単位あたり受注量の減少などがみられるなか、庫内作業の生産性向上に継続して取り組むとともに、配送費上昇とホワイト物流への対応を同時に実現する配送の改善などに努めました。
なお、営業利益については、最大市場である関東エリアの出荷規模拡大及び生産性向上を目的とする栃木物流センターの新設に伴う一過性の費用等が発生し、7億円の引き下げ要因となっております。
これらの結果、化粧品・日用品、一般用医薬品卸売事業における売上高は5,548億98百万円(前年同期比4.4%増)、営業利益は119億59百万円(前年同期比10.4%減)となりました。
[用語解説]
※1 ホワイト物流とは、トラック運転者不足が深刻になっていることに対応し、国民生活や産業活動に必要な物
流を安定的に確保するとともに、経済の成長に役立つことを目的とした「トラック輸送の生産性向上・物流
の効率化」や「女性や60代の運転者等も働きやすい、よりホワイトな労働環境の実現」のことであります。
※2 リテールソリューションとは、「商品が生活者にわたる現場(店頭)」を起点にマーチャンダイジングや生
産性向上など流通全体の幅広い課題を解決することであります。
動物用医薬品・食品加工原材料等卸売事業
動物用医薬品の市場は、少子高齢化に伴い、心の癒しを求めてコンパニオンアニマル※を新たに飼い始める世帯が増えたことや、治療薬の進歩による長寿化が進んだことなどにより、堅調に伸長いたしました。
このような状況の中、当社連結対象の完全子会社であるMPアグロ株式会社(北海道北広島市)は、コンパニオンアニマルの健康維持・増進に貢献できる取組みを行っております。また、産業動物の疾病を予防することで「食の安全・安心」に貢献すべく注力しております。
自社企画品の普及・定着や、独自の動物病院向けWEB発注情報システム「MP+(エムピープラス)」の利用拡大、流通機能とマーケティング機能を融合させた新しい営業モデルの取組みを推進したことにより、販売は概ね堅調に推移いたしました。
食品加工原材料の市場は、新型コロナウイルス感染症に伴う行動制限の解除などにより、外食産業等においても回復の動きが見られました。
このような状況の中、当社連結対象の完全子会社であるメディパルフーズ株式会社(札幌市中央区)は、「食の安全・安心」と「おいしさ」をテーマに、人々の健康で豊かな食生活を支える取組みを行っております。
全国展開の強みを活かした営業の推進や、商品付加価値を高める新製品の企画開発の推進、お得意様の商品企画から流通に至るまでをトータルにサポートする取組みなどにより、販売は順調に推移いたしました。
これらの結果、動物用医薬品・食品加工原材料等卸売事業における売上高は367億77百万円(前年同期比2.6%増)、営業利益は13億75百万円(前年同期比2.2%増)となりました。
[用語解説]
※ コンパニオンアニマルとは、伴侶動物とも表現され、日常生活の中で人とより密接な関係を保つような動物を
指しております。
なお、当社は、2027年3月期を最終年度とした「2027メディパル中期ビジョン Change the 卸 Forever
~たゆまぬ変革を~」を新たに策定し、2022年10月31日付けで発表いたしました。「医療と健康、美」の事業フィールドにおいて、従来の枠組みにとらわれることなく、当社グループの強みを活かしたビジネスを展開し、誰もが心身ともに健康に過ごすことができる社会の実現に貢献してまいります。
また、メディパルグループサステナビリティ方針「未来へつなごう『元気と、かがやき』」を策定し、本中期ビジョンとともに発表いたしました。
これらの詳細は、当社ホームページ(https://www.medipal.co.jp/news/)をご参照ください。
(2)財政状態の分析
(資産)
当第2四半期連結会計期間末における総資産は1兆7,352億80百万円となり、前連結会計年度末より258億6百万円増加いたしました。
流動資産は1兆2,184億21百万円となり、前連結会計年度末より86億55百万円増加いたしました。これは主に現金及び預金の減少219億25百万円、受取手形及び売掛金の増加273億23百万円、商品及び製品の増加11億61百万円によるものであります。
固定資産は5,168億58百万円となり、前連結会計年度末より171億51百万円増加いたしました。これは主に投資その他の資産の増加150億23百万円によるものであります。
(負債)
当第2四半期連結会計期間末における負債は1兆605億35百万円となり、前連結会計年度末より1億50百万円増加いたしました。
流動負債は1兆59億28百万円となり、前連結会計年度末より28億87百万円減少いたしました。これは主に支払手形及び買掛金の減少26億21百万円によるものであります。
固定負債は546億6百万円となり、前連結会計年度末より30億38百万円増加いたしました。これは主に繰延税金負債(その他の固定負債)の増加35億36百万円、リース債務(その他の固定負債)の減少5億93百万円によるものであります。
(純資産)
当第2四半期連結会計期間末における純資産は6,747億45百万円となり、前連結会計年度末より256億55百万円増加いたしました。これは主に利益剰余金の増加124億58百万円、その他有価証券評価差額金の増加84億74百万円によるものであります。
(3)キャッシュ・フローの状況
当第2四半期連結累計期間における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末より219億25百万円減少し、当第2四半期連結会計期間末には2,385億24百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金の減少は、95億27百万円(前年同期は247億35百万円の増加)となりました。これは主に、税金等調整前四半期純利益333億42百万円、減価償却費70億65百万円、売上債権の増加272億62百万円、棚卸資産の増加11億61百万円、仕入債務の減少26億21百万円、法人税等の支払134億67百万円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金の減少は、57億15百万円(前年同期比130億17百万円の減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出78億89百万円、投資有価証券の売却及び償還による収入49億19百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金の減少は、66億83百万円(前年同期比2億12百万円の増加)となりました。これは主に配当金の支払60億37百万円によるものであります。
(4)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(5)経営方針・経営戦略等
当第2四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について、重要な変更はありません。
(6)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第2四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について、重要な変更はありません。
なお、2021年11月9日、当社連結対象の完全子会社である株式会社アトル(福岡市東区)は、独立行政法人国立病院機構本部が行う九州エリア所在の病院が調達する医薬品の入札に関し、独占禁止法違反の疑いがあるとして、公正取引委員会による立入り検査を受けました。
当社グループでは、この事態を厳粛かつ真摯に受け止めており、引き続きコンプライアンスの徹底を図るとともに、社会から信頼される企業として、さらなる企業価値向上に努めてまいります。
(7)研究開発活動
当第2四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の金額は、53百万円であります。
なお、当第2四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に、重要な変更はありません。
(8)主要な設備
前連結会計年度末に計画しておりました株式会社PALTACの栃木県下都賀郡野木町の物流センターは2022年7月に完成いたしました。