【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績の状況当連結会計年度(自 2022年1月1日 至 2022年12月31日)における世界経済は、新型コロナウイルス感染症の影響による厳しい状況が徐々に緩和され持ち直しの期待がある中で、世界的な金融引き締めやそれに伴う為替変動、ならびにインフレ、ロシア・ウクライナ情勢の長期化による燃料輸入価格の上昇等の不透明感もあり、景気の先行きが懸念されます。 情報産業につきましても、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大影響を受け、国内外問わずリモートワークやオンライン教育、またデジタルトランスフォーメーション(DX)の需要が後押しとなり、2023年の世界におけるIT支出額は4兆9,000億ドル増加の昨年対比2.4%増の伸長が見込まれています。世界的インフレ懸念や企業の支出に対する慎重さは窺えるものの、ビジネス向けソフトウェアに至っては、今後もオフィスや自宅、また別の場所でと複雑さを増すハイブリッドな働き方への対応が続くことから、クラウドの利用増やSaaSへのシフトを背景に9.3%の成長が予測されております。 セキュリティ業界におきましては、引き続き国家機関等を狙ったサイバー攻撃、企業の機密情報の漏洩の被害、暗号資産の流出等をはじめとする特定の企業や組織を狙う標的型攻撃、新型コロナウイルス感染症の世界的蔓延を利用したフィッシング詐欺や、中でも暴露型の二重脅迫を行うランサムウェアといわれるサイバー攻撃が目立ちました。日本におきましても大企業の取引会社を攻撃し、結果として全工場等の稼働の停止が余儀なくされるなど、事業が多くの企業の連携で構成されるようなサプライチェーン環境を狙ったインシデントが特に注目を集めました。このような背景を受け、セキュリティ対策は従来のような各端末の防御や、ネットワーク環境下を各領域に分けた境界線によって守る境界防御対策だけではもはや十分な対策と言えない状況に変化してきており、侵入を前提とした脅威の可視化や深い分析による事後対策も含む対応等の需要が拡大しております。加えて、デジタル環境の進化で生活様式も法人・個人を問わず急速に変化していく中で一層セキュリティ意識が問われる風潮が高まっております。 このような環境下、当社グループの経営状況は、以下のようなものでありました。
日本地域につきましては、引き続き携帯電話ショップでの販売が好調など、個人向けビジネスが好調で同地域全体の増収に大きく貢献しました。法人向けビジネスはクラウドセキュリティが大きく貢献し、エンドポイントセキュリティなども伸び全体的に堅調でした。その結果、同地域の売上高は82,087百万円(前年同期比7.1%増)と増収となりました。 従前の北米地域並びに中南米地域を統合したアメリカズ地域につきましては、企業向けビジネスにおいてエンドポイントセキュリティの競争環境は激しくなりつつありますが、SaaS関連ビジネスが引き続き好調だったほか、当社のセキュリティオペレーション:Trend Micro Vision One(以下、Vision One)に対する需要を背景にクラウドセキュリティが好調でした。加えて円安の影響もあり、その結果、同地域の売上高は52,953百万円(前年同期比24.3%増) と二桁増収となりました。 欧州地域につきましても企業向けビジネスにおいてVision Oneの需要増を背景にクラウドセキュリティを中心にネットワーク製品なども含め全般的に大きく伸張しました。加えて円安の影響もあり、その結果、同地域の売上高は41,460百万円(前年同期比19.0%増)と二桁増収となりました。 アジア・パシフィック地域につきましては全体において好調でした。企業向けビジネスはVision Oneの需要増を背景にネットワークセキュリティが大きく伸長し、クラウドセキュリティも好調でした。地域的にはオーストラリア、中東、台湾が同地域の売上を牽引しました。加えて円安の影響も受け、その結果、同地域の売上高は47,293百万円(前年同期比30.2%増)と二桁増収となり全地域において最も高く伸長しました。 その結果、当社グループ全体の当連結会計年度における売上高は223,795百万円(前年同期比17.6%増)と全地域で増収となりました。
一方費用につきましては、円安影響も大きく受けた人件費の大幅増や携帯電話ショップでの個人向けビジネスの好調に伴った外注費が増加したこと等により、売上原価並びに販売費及び一般管理費の合計費用は192,454百万円(前年同期比31.2%増)と大きく増加し、当連結会計年度の営業利益は31,340百万円(前年同期比28.2%減)と減益となりました。
また、期初予想数値に対しては、想定為替レートに対し大幅に円安となり、上振れの売上高となりました。 一方、営業利益につきましては、費用面においても想定為替レートに対し円安だったことにより、人件費を中心としたコスト増加影響の方が売上高増加影響を上回った他、クラウドコストも当初想定以上になるなどの結果、営業利益は期初予想を大きく下回る結果となりました。
当連結会計年度の経常利益は受取利息の増加や為替差益等があったものの34,162百万円(前年同期比23.2%減)の減益となり、親会社株主に帰属する当期純利益は関係会社株式売却益や持分変動利益があった他、投資有価証券評価損があったこと等により29,843百万円(前年同期比22.2%減)の減益となりました。
当社が重要な経営指標として意識しているPre-GAAP(繰延収益考慮前売上高)ベースの営業利益額は51,635百万円となり、前年同期に比べ6,155百万円減少(前年同期比10.7%減)となりました。これは、SaaSビジネス強化の為のクラウドコストや人員増加、さらに円安影響により、売上原価並びに販売費及び一般管理費の合計費用の増加がPre-GAAPの伸長以上に大きかったことによるものです。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等を当連結会計年度の期首から適用しております。この結果、従来の方法に比べて、当連結会計年度の売上高が2,014百万円減少、販売費及び一般管理費が1,646百万円増加し、営業利益、経常利益及び税金等調整前当期純利益がそれぞれ3,661百万円減少しております。
(2) 財政状態の状況 当連結会計年度末の現金及び預金の残高は191,542百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,187百万円減少いたしました。 有価証券や現金及び預金等が減少した一方、受取手形、売掛金及び契約資産並びに投資有価証券が大幅に増加したこと等により、当連結会計年度末の総資産は前連結会計年度末に比べ50,342百万円増加の470,799百万円となりました。 当連結会計年度末の負債は繰延収益の大幅な増加等により前連結会計年度末に比べ43,097百万円増加の242,120百万円となりました。 当連結会計年度末の純資産は、利益剰余金の減少や自己株式の増加があったものの為替換算調整勘定が大幅に増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ7,245百万円増加の228,679百万円となりました。
なお、「収益認識会計基準」等を当連結会計年度の期首から適用しております。この結果、利益剰余金の期首残高が10,427百万円減少しております。
(3) キャッシュ・フローの状況 当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比較して1,635百万円収入が増加して56,903百万円のプラスとなりました。これは主に、繰延収益が増加したことによるものであります。投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比較して70,292百万円支出が増加して67,716百万円のマイナスとなりました。これは主に、有価証券・投資有価証券の取得による支出が増加したことによるものであります。 また、財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比較して13,991百万円支出が増加し、30,437百万円のマイナスとなりました。これは主に、自己株式の取得による支出が増加したことによるものであります。 これらの増減に現金及び現金同等物に係る換算差額と連結除外に伴う現金及び現金同等物の減少額を加えた結果、当連結会計年度の現金及び現金同等物は207,643百万円となり、前連結会計年度に比べ18,038百万円減少しました。
(4) 流動性と資金の源泉当社グループの短期的な資金の主たる源泉は営業活動から得られる現金及び現金同等物です。現在の現金及び現金同等物の残高、営業活動から得る現金及び現金同等物は今後12ヶ月間に必要な運転資金、資本的支出をまかなうのに十分であると考えます。当連結会計年度末における現金及び預金、有価証券の合計額は242,849百万円でありました。現金及び預金は、米ドル、ユーロ等の外国通貨及び円貨からなり、有価証券は信用度の高い取引金融機関の債券等からなります。なお、当連結会計年度末において流動負債に計上される繰延収益は192,914百万円であり、これらの繰延収益は契約期間に応じて翌連結会計年度以降、収益として認識される見込みです。
(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたりましては、財政状態及び経営成績に影響を与える会計上の見積りを行う必要があります。当社はこの見積りを行うにあたり、過去の実績等を勘案して合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(6) 生産、受注及び販売の状況
① 生産実績金額が些少であること、生産活動のための製造過程を保持していないこと等により、記載を省略しております。
② 受注実績 受注実績につきましては、金額的重要性が極めて低いため、その記載を省略しております。
③ 販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
セグメントの名称
当連結会計年度(自
2022年1月1日至
2022年12月31日)(百万円)
前連結会計年度比(%)
日本
82,087
7.1
アメリカズ
52,953
24.3
欧州
41,460
19.0
アジア・パシフィック
47,293
30.2
合計
223,795
17.6
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。2.当連結会計年度において、外部顧客への売上高のうち、連結損益計算書の売上高の10%以上を占める 相手先がないため、記載はありません。
#C4704JP #トレンドマイクロ #情報通信業セクター