【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りです。
経営方針、経営環境、経営戦略及び対処すべき課題ならびに経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご覧ください。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)当期の経営成績の概況
当連結会計年度は、2022年4月に保険償還価格の改定が行われたことにより、販売単価は多くの品目で前期に比べ下落しました。特にリズムディバイスやEP/アブレーションの一部品目における保険償還価格の引き下げ幅が大きく、売上高及び売上総利益に対してマイナスの影響がありました。
また、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、医療現場では感染者数の増加への対応に加え、医療従事者の院内感染も広がるなど、医療提供体制はひっ迫した状況が継続しました。特に感染拡大期(第7波:2022年7月~8月、第8波:2022年11月~2023年1月)には、当社の取扱製品に関する症例数が抑制され、当社の業績に影響を与えました。
医療現場では、医師の長時間労働の常態化等が問題となっており、国は「医師の働き方改革」を推進しています。法規制は2024年4月より適用されますが、一部の施設では法令の施行前に段階的に労働環境の改善を進めており、時間外や土曜日の手術の制限を行っています。これを受け、当連結会計年度において、当社の取扱製品に関する症例数に一定の影響がありました。
これらの事業環境の中、当社の業績に特に影響度が大きい心房細動(AF)のアブレーション治療の症例数は、当連結会計年度は前期比で6%程度の増加であったと推計しており、期初計画の想定と概ね同程度で推移しました。この結果、EP/アブレーションは、販売が堅調に推移したことから保険償還価格の下落の影響を吸収し、前期比で4.8%増収となりました。
外国為替相場の状況は、日本円は対米ドルで乱高下しましたが、損益に対しては大きな影響はありませんでした。これは当社の商品仕入の約70%が円建てであることや、売上原価の計算に移動平均法を用いていることから、一部の仕入商品や部材において一時的な調達コストの上昇が生じても、その影響は長期間にわたって平準化されること等が主な理由です。
当連結会計年度の業績は以下のとおりです。
(単位:百万円)
区分
前連結会計年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
増減
増減率
(%)
金額
構成比
(%)
金額
構成比
(%)
① 売上高
51,469
100.0
51,750
100.0
281
0.5
② 売上総利益
28,835
56.0
29,895
57.8
1,060
3.7
③ 営業利益
9,973
19.4
10,837
20.9
863
8.7
④ 経常利益
10,005
19.4
10,905
21.1
900
9.0
⑤ 親会社株主に帰属する
当期純利益
7,484
14.5
6,891
13.3
△ 592
△ 7.9
① 売上高
前期に比べ、281百万円増収の51,750百万円となりました。詳細は下段の「品目別売上高」に記載しております。
② 売上総利益
前期に比べ、1,060百万円増加の29,895百万円となりました。売上総利益率は、前期に比べ1.8pt上昇し57.8%となりました。製品・商品在庫や原材料等の棚卸資産の廃棄損及び評価損が前期に比べ1,413百万円減少したことや自社製品比率が前期に比べ2.5pt上昇し、54.9%となったことが主な理由であり、保険償還価格の改定に伴う売上総利益率の悪化や一部品目の販売数量の減少等によるマイナスの影響を吸収しました。
③ 営業利益
前期に比べ、863百万円増加の10,837百万円となりました。営業利益率は、前期に比べ1.5pt上昇し、20.9%となりました。販売費及び一般管理費は前期に比べ微増となりましたが、上記のとおり、売上総利益率が上昇したことにより、その影響を吸収しました。販売費及び一般管理費の増減の内訳としては、研究開発費の増加や、新製品の導入に伴う旅費交通費や広告宣伝費等の増加がありましたが、前期に一時的な費用として治験関連費用が290百万円発生したこと等もあり、総額では前期に比べ微増にとどまりました。
④ 経常利益
前期に比べ、900百万円増加の10,905百万円となりました。営業外収益は、受取利息や受取配当金等で293百万円を計上しております。営業外費用は、取引先への長期貸付金等に関する貸倒引当金繰入や自己株式の取得に伴う金融手数料等で224百万円を計上しております。
⑤ 親会社株主に帰属する当期純利益
前期に比べ、592百万円減少の6,891百万円となりました。第3四半期連結会計期間に、政策保有目的で株式を保有している商品仕入先における事業計画の見直しを伴う増資により、当社の持分が希薄化したため、投資有価証券評価損1,190百万円を特別損失として計上しました。また、第4四半期連結会計期間に、子会社の譲渡及び清算に係る子会社整理益96百万円を特別利益として計上しました。
(品目別売上高)
(単位:百万円)
区分
前連結会計年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
増減
増減率
① リズムディバイス
12,977
12,403
△574
△4.4%
② EP/アブレーション
25,099
26,292
1,193
4.8%
③ 外科関連
9,657
10,643
985
10.2%
④ 消化器/PI
3,733
2,411
△1,322
△35.4%
合計
51,469
51,750
281
0.5%
※ 各品目区分に分類される主たる商品は以下のとおりです。
リズムディバイス 心臓ペースメーカ、T-ICD(経静脈植込み型除細動器)、S-ICD(完全皮下植込み型除細動器)、CRT-P(両心室ペースメーカ)、CRT-D(除細動機能付き両心室ペースメーカ)、AED(自動体外式除細動器)、舌下神経電気刺激装置
EP/アブレーション EP(電気生理用)カテーテル、アブレーションカテーテル、内視鏡レーザーアブレーションカテーテル、心腔内除細動カテーテル、食道温モニタリングカテーテル、高周波心房中隔穿刺針
外科関連 人工血管、オープンステントグラフト、ステントグラフト、塞栓用コイル
消化器/PI 大腸用ステント、胃・十二指腸用ステント、肝癌治療用ラジオ波焼灼電極針、胆管チューブステント、胆道鏡システム、胆管拡張バルーン、バルーンカテーテル、ガイドワイヤー、心房中隔欠損閉鎖器具、薬剤溶出型冠動脈ステント、血管内圧測定用センサ付ガイドワイヤー
<相手先別売上高>
(単位:百万円)
相手先
前連結会計年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
販売高
割合(%)
販売高
割合(%)
ディーブイエックス株式会社
5,857
11.4%
5,984
11.6%
① リズムディバイス
ペースメーカ関連は、他社との競争激化により、販売は厳しい状況で推移しました。ペースメーカリードの留置を補助するSSPC(サイト・セレクティブ・ペーシング・カテーテル)を新規に導入した効果により、販売数量は前期並みとなりましたが、売上高は保険償還価格の大幅な下落により、前期に比べ大幅な減収となりました。
ICD関連は、T-ICDにおいて、電池の交換時期の到来に伴う交換症例を獲得したことや、CRT-Dの販売が堅調であったことを背景に、前期に比べ増収となりました。オンリーワン商品であるS-ICDは、保険償還価格の引き下げがなく、販売も堅調に推移したため、前期に比べ増収となりました。
以上により、リズムディバイスの売上高は、12,403百万円(前期比4.4%減)となりました。
② EP/アブレーション
EPカテーテルは、AF症例数が増加したことに加え他社製品の供給問題が生じたこともあり、販売は好調に推移しました。心腔内除細動カテーテル「BeeAT(ビート)」、EPカテーテル「EP Star(イーピースター)」、食道温モニタリングカテーテル「Esophastar(エソファスター)」等のアブレーション手術関連の自社製品の販売数量は、前期に比べ10%程度の伸長となりました。一方、売上高は、保険償還価格の下落により、前期に比べ7%程度の増収となりました。
アブレーションカテーテルは、内視鏡レーザーアブレーションカテーテル「HeartLightX3(ハートライト・エックススリー)」の販売が低調に推移したことにより、前期に比べ減収となりました。同商品は、2022年7月以降、世界的な原材料不足を背景に仕入先からの商品供給が断続的に滞ったため、販売に影響を与えました。
その他については、高周波心房中隔穿刺針「RF Needle(アールエフニードル)」が、競合製品の影響を受け、減収となりました。なお、同商品は仕入先であるBaylis Medical社がBoston Scientific社に買収されたことを受け、当社による独占販売は2023年3月末で終了しました。2023年4月以降は、ボストン・サイエンティフィック ジャパン社に販売が移管され、当社は同社との販売パートナーシップ契約のもと、販売支援を行ってまいります。スティーラブルシースの自社製品「Leftee(レフティー)」は、高い操作性が医療現場で評価され、販売拡大が続いており、前期に比べ大幅な増収となりました。
以上により、EP/アブレーションの売上高は、26,292百万円(前期比4.8%増)となりました。
③ 外科関連
人工血管関連は、症例数の横ばい傾向が続く中、緩やかなシェアの拡大により、販売は好調に推移しました。自社製品では、人工血管が堅調に推移したほか、オンリーワン製品のオープンステントグラフト「FROZENIX(フローゼニクス)」も、緊急症例の増加を背景に、前期に比べ増収となりました。仕入商品では、腹部用ステントグラフトの「AFX2(エーエフエックスツー)」が、国内の大学病院で実施された臨床研究の結果が好感されたことや、前期に発売した新商品の「Alto(アルト)」との相乗効果が発揮されたことを背景に、前期に比べ大幅な増収となりました。
その他については、新規参入した脳血管領域向けの塞栓用コイル「Avenir(アベニア)」の販売が好調に推移し、計画を大幅に上回りました。「Avenir」の供給元であるWallaby Medical社とは、脳血管内治療デバイス11品目を対象とする10年間の独占販売契約を締結しており、2024年3月期以降、新商品を順次発売する予定です。脳血管領域の市場は、今後も年4~5%程度の成長が見込めることから、重要な領域として注力してまいります。
以上により、外科関連の売上高は、10,643百万円(前期比10.2%増)となりました。
④ 消化器/PI
消化器関連は、大腸用ステント、胃・十二指腸用ステント、肝癌治療用ラジオ波焼灼電極針等の既存製品の販売が好調に推移したことで大幅な増収となりました。
また、当社は消化器領域の中でも胆膵領域(胆道・膵臓)を成長が見込める分野として位置づけ、当連結会計年度より自社製品で本格的に新規参入しました。しかしながら、胆道鏡等の一部の製品では、初期臨床で改善を要する点が明らかになっており、課題解決に取り組んでいます。一方、胆管用チューブステントは、臨床評価が高く、販売は好調に推移しており、今後さらなる拡販に取り組んでまいります。
PI(経皮的インターベンション)関連は、競争環境の激化等を背景に事業の縮小と消化器領域への販売リソースの転換を進めた結果、大幅な減収となりました。主要な仕入商品であった薬剤溶出型冠動脈ステント「Orsiro(オシロ)」は、独占販売契約を早期に終了しました。
以上により、消化器/PIの売上高は、2,411百万円(前期比35.4%減)となりました。
(2)当期の財政状態の概況
① 資産
当連結会計年度末の資産につきましては、流動資産が前連結会計年度末に比べ1,977百万円増加し、47,130百万円となりました。これは主として、棚卸資産が1,707百万円減少した一方で、現金及び預金が2,298百万円、受取手形及び売掛金が786百万円増加したことによるものであります。
固定資産は前連結会計年度末に比べ533百万円減少し、27,510百万円となりました。これは主として、無形固定資産が943百万円、長期貸付金が592百万円増加した一方で、有形固定資産が458百万円、投資有価証券が1,352百万円減少したことによるものであります。
以上の結果、資産合計は前連結会計年度末から1,443百万円増加し、74,641百万円となりました。
② 負債
当連結会計年度末の負債につきましては、流動負債が前連結会計年度末に比べ170百万円増加し、14,381百万円となりました。これは主として、1年内返済予定の長期借入金が522百万円、短期借入金が300百万円減少した一方で、その他のうち未払費用が254百万円、未払消費税等が215百万円増加するとともに、賞与引当金が143百万円、支払手形及び買掛金が142百万円増加したことによるものであります。
また、固定負債は前連結会計年度末に比べ355百万円減少し、4,063百万円となりました。これは主として、退職給付に係る負債が278百万円増加した一方で、長期借入金が568百万円減少したことによるものであります。
以上の結果、負債合計は前連結会計年度末から184百万円減少し、18,445百万円となりました。
③ 純資産
当連結会計年度末の純資産につきましては、前連結会計年度末に比べ1,628百万円増加し、56,195百万円となりました。これは主として、剰余金の配当を3,041百万円実施した一方で、親会社株主に帰属する当期純利益を6,891百万円計上したことにより利益剰余金が3,850百万円増加、ならびに自己株式の取得と消却により資本剰余金が
1,079百万円減少、自己株式が868百万円増加したことによるものであります。
(3)当期のキャッシュ・フローの概況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ2,298百万円増加し、18,357百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
① 営業活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における営業活動による資金の増加は、11,201百万円(前年同期は10,246百万円の収入)となりました。主な増加要因は、税金等調整前当期純利益の9,789百万円、棚卸資産の減少額の1,720百万円、減価償却費の1,566百万円であり、主な減少要因は法人税等の支払額の2,861百万円であります。
② 投資活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における投資活動による資金の減少は、2,461百万円(前年同期は1,131百万円の支出)となりました。主な増加要因は、投資有価証券の売却による収入の153百万円であり、主な減少要因は無形固定資産の取得による支出の1,264百万円、長期貸付による支出の530百万円、有形固定資産の取得による支出の465百万円であります。
③ 財務活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における財務活動による資金の減少は、6,476百万円(前年同期は6,804百万円の支出)となりました。これは主として、配当金の支払額が3,050百万円、自己株式の取得による支出が1,948百万円、長期借入金の返済による支出が1,076百万円となったことによるものであります。
(4)生産、受注及び販売の実績
ⅰ 生産実績
当連結会計年度における生産実績を区分別に示すと、次のとおりであります。
(単位:百万円)
区分
前連結会計年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
当連結会計年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
増減率
リズムディバイス
16
17
8.4%
EP/アブレーション
4,695
5,453
16.1%
外科関連
1,441
1,421
△1.3%
消化器/PI
505
484
△4.2%
合計
6,657
7,376
10.8%
(注) 金額は製造原価によっております。
ⅱ 受注実績
当社グループの事業形態は、原則として受注残高が発生しないため、記載を省略しております。
ⅲ 販売実績
販売実績につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」をご覧ください。
(5)資本の財源及び資金の流動性に係る情報
ⅰ 資本の財源
当社グループの主要な運転資金需要は、商品の仕入、製品製造のための材料費、労務費、経費並びに販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備の新設及び改修、商品パイプラインの確保等を目的とする商品仕入先に対する貸付等に係る投資であります。また今後、当社グループの企業価値向上への寄与が見込まれる場合には、M&A等を含めた投資の検討を行ってまいります。
これらの資金需要につきましては、営業活動によるキャッシュ・フロー及び自己資金のほか、金融機関からの借入等による資金調達にて対応していくことを基本としております。なお、金融市場及び手許資金等の状況を勘案し、必要と判断した場合には金融機関からの長期借入による対応も検討してまいります。
ⅱ 資金の流動性
当社グループでは、資金調達の機動性及び安定性を高めることを目的として、コミットメントライン契約を締結し、流動性リスクに備えております。当連結会計年度末におけるコミットメントラインの総額は8,500百万円、借入実行残高は5,000百万円、借入未実行残高は3,500百万円となっております。
(6)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成には、会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
なお、当社グループで採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)、(重要な会計上の見積り)」に記載の通りであります。