【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
第1四半期連結会計期間より、メーカーへの販売情報提供に係る収入等について表示方法の変更および販売価格が未決定先の販売価格の見積り方法の変更を行っております。当該変更に伴い、前第3四半期連結累計期間の業績について、表示方法の変更を反映した遡及処理を行っております。一方、見積り方法の変更に関する遡及処理は行っておりません。そのため、以下の「経営成績の状況」においては、前年同期比増減率を記載せず、上記表示方法の変更を反映した遡及処理後の数値を記載しております。これらの詳細につきましては、「第4 経理の状況 1 四半期連結財務諸表 注記事項」をご参照ください。
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において当社及び連結子会社が判断したものであります。
(1) 財政状態及び経営成績の状況
① 財政状態の状況当第3四半期連結会計期間末における資産、負債及び純資産の状況は次のとおりであります。
(資産)当第3四半期連結会計期間末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ1,624億89百万円増加し1兆3,042億7百万円となりました。主な要因は以下のとおりであります。 流動資産は前連結会計年度末に比べ1,496億39百万円増加いたしました。これは主に、現金及び預金が283億89百万円、受取手形及び売掛金が676億65百万円および商品及び製品が295億75百万円増加したことによるものであります。固定資産は前連結会計年度末に比べ128億50百万円増加いたしました。これは主に、有形固定資産が83億90百万円、投資その他の資産が47億46百万円増加したことによるものであります。
(負債)当第3四半期連結会計期間末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ1,678億28百万円増加し8,914億83百万円となりました。これは主に、支払手形及び買掛金が1,600億17百万円増加したことによるものであります。
(純資産)当第3四半期連結会計期間末における純資産合計は、前連結会計年度末に比べ53億38百万円減少し4,127億23百万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する四半期純利益181億61百万円の計上およびその他有価証券評価差額金の増加が15億49百万円あったものの、剰余金の配当の支払が63億32百万円、自己株式の取得による減少が194億75百万円あったことによるものであります。
② 経営成績の状況当第3四半期連結累計期間においては、依然として新型コロナウイルス感染症再拡大の懸念は残るものの、ワクチンの接種が進展するなか、感染防止対策と社会経済活動との両立を図る動きが進められております。一方、依然としてウクライナ情勢の終息時期が見通せないなか、外国為替相場の変動、電力・エネルギー価格や原材料価格の高騰による物価高が一層進展するなど、国内景気や企業収益については依然として先行き不透明な状況が続いております。当社グループにおける新型コロナウイルス感染症対応については、お得意さまや当社グループ社員の健康に配慮したうえで、感染予防対策に万全を期してまいりました。また、新型コロナウイルスワクチン流通に関しては、47都道府県すべてで地域担当卸の選定を受け、各自治体単位で流通を担っております。今後も引き続き医薬品等の安定供給に取り組み、企業の社会的責任を果たしてまいります。
そのようななか、当社グループは、当期を最終年度とする3ヵ年の中期成長戦略「May I “health” you? 5.0~第3の創業期~」を策定し、健康創造領域で社会に貢献する企業として、より一層、既存事業を進化させていくと同時に、日本が目指す新たなデジタル社会である「Society 5.0」において、社会の課題を解決できる新たな事業展開を目指し、更なる企業価値向上に取り組んでおります。加えて、今年度、創立90周年を迎えるにあたり、10年後の100周年に向け「健康創造事業体への転換」を果たすために、当期を次期中期成長戦略の「Chapter ZERO」と位置づけ、既存事業の深掘りと新規事業の探索を両利きで実践してまいります。
当第3四半期連結累計期間においては、希少疾病薬や再生医療等製品を含むスペシャリティ医薬品の流通モデル構築、およびMS(※1)の活動による新たな収益モデル構築に向け、多様な企業との協業を進めております。また、医薬品卸売事業においては、売上・シェアに連動する収益構造が変化しており、コスト構造改革のみならず、新しい機能による新たな収益獲得を目指した取り組みを進めております。 このようななか、医療流通プラットフォームの構築に向けて、スペシャリティ医薬品トレーサビリティシステムである「キュービックス」を全国の地域中核病院などへ導入し、医薬品の流通品質向上に取り組んでまいりました。加えて、サンバイオ㈱と共同開発した再生医療等製品における流通管理・投与スケジュールサポートシステム「R-SAT(※2)」に関する特許を共同で取得するなど、スペシャリティ医薬品流通において、国内への新規参入や新製品の上市を目指す製薬企業のご要望にお応えするとともに、新薬を待ち望む患者さまに確実に医薬品をお届けできる流通基盤の強化に努めております。
また、今後、よりデジタル領域の基盤強化や新規事業の創出を加速していくためには、最先端の技術・ビジネスモデル・アイデアを持った様々なヘルステック企業との連携が必要と考え、ヘルステック企業への投資を本格化させるためにCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)ファンドを設立し、2022年11月には、CVCを通じた最初の投資案件として、食のパーソナライズによる健康・医療の最適化を目指す「㈱おいしい健康」、屋内における人の動きを検知するWi-Fi電波のセンシング技術とそのAI解析のためのデータ基盤の提供を通じて、全ての人のQoL(Quality of Life)が豊かになる世界を目指す「ai6 ㈱」、両社にそれぞれ出資を行い、資本業務提携を実施しております。既提携企業に関しましては、「Ubie㈱」、「㈱スマートショッピング」、「㈱Welby」それぞれに追加出資を実施するなど、協業強化を進めております。今後も、既に提携している企業とともに、新たな流通チャネル構築や、協業によるデジタルヘルス事業の構築を加速させ、革新的なサービスや情報ビジネスを推進し、製薬企業や医療機関、保険薬局、患者さまへの新たな価値の提供を目指してまいります。 サステナビリティ(持続可能性)に関する取り組みについては、多様な事業を通じた社会課題の解決と、新たな価値提供による当社グループの持続可能な成長を目指すため、2022年4月1日付にて、社長直轄機構としてサステナビリティ委員会を設置いたしました。今後、グループ一体となったサステナビリティ経営を推進し、ESGやサステナビリティ活動に関する情報のさらなる充実と積極的な開示を進めてまいります。
株主還元方針に関しては、2021年5月11日に開示したとおり、安定的な配当の継続を基本に配当を実施するとともに、自己株式の取得を実施することで、中期成長戦略の最終年度である2023年3月期までの2年間の平均総還元性向を100%以上といたします。株主還元の充実を図るとともに、既存事業の強化や成長への事業投資を行うことで企業価値と資本効率の向上を目指してまいります。上記方針を踏まえ、2022年11月11日開催の取締役会において、会社法第459条第1項の規定による定款の定めに基づき、自己株式の取得を決議いたしました。(株式の種類:普通株式、取得株式の総数5,500千株(上限)、取得価額の総額200億円(上限)、期間:2022年11月14日から2023年3月10日、取得方法:東京証券取引所の自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)を含む市場買付け)なお、自己株式の消却に関しては、2022年9月27日開催の取締役会において、会社法第178条の規定に基づき、自己株式(15,344,083株)の消却を行うことを決議し、2022年10月25日付で自己株式の消却を実施しておりますが、上記2022年11月11日決議に基づき取得した自己株式についても、譲渡制限付株式報酬(RS)等への充当を見込む10万株を除いた全数について消却を予定しております。(消却予定日:2023年3月31日)
当第3四半期連結累計期間の業績につきましては、売上高は、医療用医薬品市場がわずかながら伸長したことに加え、スペシャリティ医薬品等の新薬や新型コロナウイルス感染症関連の治療薬・診断薬が寄与しました。利益面では、グループ全体での販売費及び一般管理費の抑制に努めたことに加え、適正利益の獲得に取り組みました。その結果、売上高は1兆7,579億25百万円(前年同期は1兆6,889億41百万円)、営業利益は244億16百万円(前年同期は128億27百万円)、経常利益は272億89百万円(前年同期は153億85百万円)、親会社株主に帰属する四半期純利益は181億61百万円(前年同期は132億44百万円)となりました。なお、第1四半期連結会計期間より販売価格未決定先の販売価格の見積り方法を変更しております。
当社連結子会社の㈱翔薬は2021年11月9日に、独立行政法人国立病院機構(NHO)の入札に関し、独占禁止法違反の疑いがあるとして、公正取引委員会(以下、公取委)の立ち入り検査を受けました。立ち入り検査を受けたことを厳粛に受け止め、公取委の検査に全面的に協力してまいりました。その結果、2023年1月16日に公取委より独占禁止法に基づく排除措置命令書(案)および課徴金納付命令書(案)に関する意見聴取通知書(以下「本件通知書」)を受領しました。なお、本件通知書により業績に与える影響につきましては、2022年3月30日に公取委より排除措置命令および課徴金納付命令を受けた独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)の入札に関する件も含めて、必要があれば速やかに開示いたします。
※1 MS(Marketing Specialist):医薬品卸売業の営業担当者のこと。医療機関・保険薬局等を訪問し、医薬品の紹介、商談、情報の提供や収集を行います。※2 R-SAT:「R-SAT」は、Regenerative medicine(再生医療薬)、Safety(安全性)、Accuracy(正確)、Traceability(トレーサビリティ)の頭文字を取ったものであり、再生医療等製品を投与される患者さまの登録から、再生医療等製品の輸配送、投与および投与後のフォローまでの情報を一元管理し、製薬企業、製造業者、輸配送業者、医療機関などの関係者がそれらの情報を共有できる流通管理・投与スケジュールサポートシステムです。また、自家細胞製剤・他家細胞製剤とも対応可能となっています。
セグメント別の業績は次のとおりであります。
(医薬品卸売事業)医療用医薬品市場は、薬価改定および後発医薬品使用促進の影響などがあったものの、抗悪性腫瘍剤の市場拡大やスペシャリティ医薬品等の新薬が寄与したことにより、わずかながら伸長したものと推測しております。そのようななか、売上高は、スペシャリティ医薬品をはじめとする新薬の販売増加、新型コロナウイルス感染症関連商材などの寄与により1兆6,927億13百万円(前年同期は1兆6,232億71百万円)、営業利益は、グループ全体での販売費及び一般管理費の抑制に努めたことに加え、適正利益の獲得に取り組んだことなどにより202億53百万円(前年同期は70億2百万円)となりました。なお、第1四半期連結会計期間より販売価格未決定先の販売価格の見積り方法を変更しております。
(医薬品製造事業)売上高は、薬価改定の影響があったものの、昨年発売した二次性副甲状腺機能亢進症治療薬ウパシタ静注透析用シリンジの寄与などにより微増収となりました。営業利益は、グループ全体での販売費及び一般管理費の抑制に努めたものの営業活動の正常化に伴う営業費増などにより、減益となりました。これらの結果、売上高は340億35百万円(前年同期比0.1%増)、営業利益は13億99百万円(前年同期比41.1%減)となりました。
(保険薬局事業)売上高は、調剤報酬改定・薬価改定の影響などにより減収となりました。営業利益は、グループ全体での販売費及び一般管理費の抑制に努めたものの、減収の影響および前期に診療報酬上の臨時的な取り扱いとして実施された調剤感染症対策実施加算の影響などにより、減益となりました。これらの結果、売上高は656億44百万円(前年同期比1.8%減)、営業利益は11億14百万円(前年同期比32.4%減)となりました。
(医療関連サービス等事業)売上高は、主に、メーカー支援サービス事業(医薬品メーカー物流受託・希少疾病薬流通受託)の受託が増加したことなどにより増収となりました。営業利益は、新会社の設立等、デジタルビジネスの事業化に向けた先行投資に係る費用計上などにより減益となりました。これらの結果、売上高は1,706億8百万円(前年同期比25.0%増)、営業利益は15億38百万円(前年同期比16.7%減)となりました。
(2) 経営方針・経営戦略等当第3四半期連結累計期間において、経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題当第3四半期連結累計期間において、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題に重要な変更及び新たに生じた課題はありません。
(4) 研究開発活動当第3四半期連結累計期間の研究開発費の総額は、2,166百万円であります。当第3四半期連結累計期間における研究開発活動の状況の変更内容は、次のとおりであります。当社の連結子会社である㈱三和化学研究所は、2022年2月に日本における独占的な開発/商業化権のライセンス契約を締結しておりました先端巨大症および神経内分泌腫瘍治療薬SK-5307(Paltusotine)について、2022年9月から第Ⅰ相試験を実施しております。