【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 業績等の概要当第2四半期連結累計期間(2022年4月1日から同年9月30日)における世界経済は、各国のウィズコロナ政策への転換により緩やかな回復基調で推移しました。一方で、ウクライナ情勢をはじめとする地政学リスクの高まりに加え、原燃料価格の高騰や世界的なインフレ進行等を受け、景気減速への警戒感が強まりました。当社グループ事業の主要対象分野である自動車関連分野は、半導体をはじめとする供給制約の影響が依然として残り、自動車生産の本格的な回復には至りませんでした。ICT・家電分野は、巣ごもり需要の反動減や個人消費の減退により、パソコンやスマートフォンの販売が減少し、パネル市況が軟化しました。食品分野は、行動制限の緩和により土産物や外食の需要が回復基調にある一方で、家計全般の物価上昇に伴い消費者の節約志向・低価格志向が一層強まり、業界全体では厳しい状況となりました。ライフサイエンス分野は、国内では気温が全国的に高く推移し、一部地域では記録的に早い梅雨明けとなるなか、農薬市場はやや弱含みで推移しました。海外では、北米で春先の厳冬や中西部での干ばつの影響があったものの、世界最大の農薬市場であるブラジルで主要作物の作付面積が拡大していること等から、農薬需要は総じて堅調に推移しました。このような状況のなか、中期経営計画『ADX 2023』の2年目となる2022年度は、社会価値と経済価値の追求による企業価値向上に向けて、引き続き「収益構造の変革」「新規事業領域の拡大による持続的な成長」「グループ経営基盤の強化」の3つの基本戦略のもと施策を推し進めています。2022年8月に『ADX 2023』の経営指標を上方修正し、最終年度である2023年度に営業利益420億円(売上高4,300億円)、ROE9%の達成を目指します。情報・電子化学品では、先端半導体メモリ向け高誘電材料「アデカオルセラ」シリーズの新製品について、韓国での一貫生産を本格的に開始しました。また、2022年7月に同シリーズの韓国での増産投資を決定しました。食品では、2022年4月からプラントベースフード(PBF)の新ブランド「デリプランツ」シリーズの販売を開始しました。世界の食卓に「おいしいPBF」という選択肢を増やし、食のサステナビリティを実現する製品として、新たな領域での市場開拓とお客様への提案を鋭意進めています。ライフサイエンス事業では、インドで水稲用殺虫剤ベンズピリモキサンの本格販売を開始し、また製造設備の増強を進めています。CSRの取り組みでは、2022年4月にカーボンニュートラルの実現とSDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けた新たな組織体制を構築・強化、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)の実現を目指した女性活躍の推進、健康経営の推進に取り組みました。以上の結果、当第2四半期連結累計期間の売上高は、前年同期に比べ285億36百万円(前年同期比+17.0%)増収の1,964億79百万円となり、営業利益は前年同期に比べ6億91百万円(同△4.4%)減益の151億12百万円、経常利益は前年同期に比べ2億52百万円(同+1.6%)増益の164億31百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は前年同期に比べ7億15百万円(同△6.7%)減益の99億80百万円となりました。なお、第1四半期連結会計期間より、一部の在外子会社等の収益及び費用は、決算日の直物為替相場により円貨に換算する方法から、期中平均為替相場により円貨に換算する方法に変更し、遡及適用後の数値で前年同期比較を行っています。
<報告セグメントの概況>(化学品事業)当事業の売上高は前年同期に比べ135億32百万円(同+14.0%)増収の1,098億91百万円となり、営業利益は前年同期に比べ2億61百万円(同△1.8%)減益の139億50百万円となりました。
① 樹脂添加剤自動車向けでは、半導体不足等による減産の影響を受け、核剤、ゴム用可塑剤等の販売数量が伸び悩みましたが、販売価格の改定により増収となりました。建材向けでは、錫価格の高騰や東南アジアにおける鉛系安定剤の規制強化を背景に、インフラ用途で重金属フリー安定剤の販売が好調に推移しました。食品包装向けでは、テイクアウトやデリバリーといった中食需要の拡大を捉え、米国、欧州を中心に透明化剤の販売が好調に推移しました。ポリオレフィン樹脂に使用されるワンパック顆粒添加剤は、海外、特に中東における需要の増加により販売が好調に推移しました。酸化防止剤は販売数量が前年同期を下回りましたが、販売価格の改定により増収となりました。難燃剤は、家電やパソコン等の需要の落ち込みにより、筐体等に使用されるエンジニアリングプラスチック向けの販売が低調でした。樹脂添加剤全体では、原料価格高騰の影響を受けましたが、販売価格の改定に努めたことに加えて為替の影響もあり、前年同期に比べ増収増益となりました。
② 情報・電子化学品半導体向けでは、デジタル化の進展を背景に最先端のDRAMに使用される高誘電材料の販売が好調に推移しました。また、NAND向け製品の販売も堅調に推移しました。EUVやArF等の最先端のフォトレジストに使用される光酸発生剤の販売が堅調に推移しました。ディスプレイ向けでは、パネルの供給余剰感からパネルメーカーの生産調整の影響を受け、光学フィルム向け光硬化樹脂、カラーフィルター向け光重合開始剤、ブラックマトリクスレジスト及びエッチング薬液の販売が低調に推移しました。情報・電子化学品全体では、販売拡大が続く半導体材料は好調に推移しましたが、ディスプレイ関連材料の大幅な落ち込みをカバーするには至らず、増収減益となりました。
③ 機能化学品自動車向けでは、半導体不足等による減産の影響を受けましたが、エンジンオイル用潤滑油添加剤の販売は海外での新規採用や新エンジンオイル規格の市場浸透により好調に推移しました。また、構造接着用特殊エポキシ樹脂の販売も堅調でした。建築塗料向けでは、アジア地域での生活様式や住環境の変化を捉え、VOC(揮発性有機化合物)の排出量を低減し、人と環境にやさしい反応性乳化剤の販売が好調に推移しました。また、化粧品向け特殊界面活性剤は、国内外で市況が緩やかに持ち直し、販売が堅調でした。一方、プロピレングリコール類や過酸化製品は、販売は堅調でしたが、原燃料価格高騰の影響を受けました。機能化学品全体では、海外での潤滑油添加剤等の販売拡大により、前年同期に比べ増収となりました。一方、利益面は、原燃料価格高騰に伴う販売価格の改定を推し進めたものの、価格転嫁の効果が表れるまでにタイムラグがあることから、前年同期に比べ増収減益となりました。
(食品事業)当事業の売上高は前年同期に比べ38億94百万円(同+10.8%)増収の398億71百万円となり、営業損失は前年同期に比べ20億48百万円減益の18億85百万円(前年同期は1億62百万円の営業利益)となりました。製パン、製菓用のマーガリン、ショートニング類は、中国でのロックダウンや猛暑の影響を受けましたが、国内で菓子パンや大袋菓子の需要が増加し販売が堅調に推移しました。機能性マーガリン「マーベラス」シリーズは、パン等のおいしさの持続と消費期限延長に寄与する機能性が評価され、採用が拡大しました。また、行動制限の緩和により人流が増加し、土産菓子用にフィリング類の販売が堅調でした。食品ロス削減に向けた品種統合は、2023年3月に全製品(約1,000品種)の4割程度を削減する目標に対し、2022年12月までに約200品種削減するべく取り組みを進めています。食品事業全体では、国内での販売拡大や前期から取り組む販売価格の改定により、前年同期に比べ増収となりました。一方、利益面は、原料価格、用役・物流費の高騰に対し、販売価格の改定を推し進めたものの、価格転嫁の効果が表れるまでにタイムラグがあることに加え、為替の影響もあり、営業損失となりました。
(ライフサイエンス事業)当事業の売上高は前年同期に比べ116億87百万円(同+37.1%)増収の431億62百万円となり、営業利益は前年同期に比べ15億90百万円(同+163.4%)増益の25億63百万円となりました。農薬は、国内では2021年10月からコルテバ社製品の販売を開始したこと等から、国内全体の売上高は前年同期を上回りました。海外では、ブラジルの農薬需要が拡大基調にあるなか、同国での農薬販売が好調に推移しました。また、北米において主にピーナッツ向けで殺菌剤の販売が好調でした。医薬品は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響から来院患者数が低迷したこと等により、足白癬向けで外用抗真菌剤「ルリコナゾール」の販売が伸び悩みました。ライフサイエンス事業全体では、海外での農薬販売の拡大により前年同期に比べ増収増益となりました。
(2) 財政状態の分析(資産) 当第2四半期連結会計期間末における総資産は4,927億60百万円(前連結会計年度比+3.7%)となり、前連結会計年度末に比べ174億55百万円の増加となりました。主な要因は、棚卸資産の増加です。(負債) 当第2四半期連結会計期間末における総負債は1,841億58百万円(同+3.2%)となり、前連結会計年度末に比べ57億25百万円の増加となりました。主な要因は、支払手形及び買掛金の増加です。(純資産)当第2四半期連結会計期間末における純資産は3,086億1百万円(同+4.0%)となり、前連結会計年度末に比べ117億30百万円の増加となりました。主な要因は、利益剰余金の増加です。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等当社グループは、第1四半期連結累計期間において、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の見直しを行いました。
最近の業績動向及び為替変動等を踏まえ、中期経営計画『ADX 2023』最終年度の経営指標を下表の通り修正しています。
〔中期経営計画(2021-2023年度)『ADX 2023』経営指標〕
2023年度(2024年3月期)
修正前
修正後
財務指標
営業利益
350億円
420億円
ROE
9%
9%
設備投資額
500億円(3カ年)
500億円(3カ年)※2
配当方針(配当性向)
30%以上維持 ※1
30%以上維持 ※1
※1 適切な還元を総合的に勘案し、安定配当の維持を基本とする。※2 カーボンニュートラルの実現に向けた環境投資を含む。
(4) キャッシュ・フローの状況当第2四半期連結累計期間末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末の資金残高に比べ47億97百万円(前連結会計年度末比△5.8%)減少し、780億1百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下の通りです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動による資金収入は、前第2四半期連結累計期間に比べ82億94百万円(同△38.5%)減少し、132億74百万円となりました。これは主に、仕入債務の増減額が増加から減少に転じたことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動による資金支出は、前第2四半期連結累計期間に比べ71億72百万円(同+132.8%)増加し、125億74百万円となりました。これは主に、有価証券の取得による支出の増加によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動による資金支出は、前第2四半期連結累計期間に比べ47億99百万円(同△36.8%)減少し、82億44百万円となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出の減少によるものです。
(5) 事業上及び財務上の対処すべき課題① グループ戦略課題当第2四半期連結累計期間において、グループの戦略課題に重要な変更及び新たに生じた課題はありません。
② 財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針当第2四半期連結累計期間において、財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針に変更はありません。
(6) 研究開発活動第161期(2022年度)の研究開発方針として、ⅰ) 持続可能な社会と人々の豊かなくらしに貢献する研究開発を推進する。ⅱ) 戦略製品を中心とした市場開発・新製品開発に注力し、更なる事業拡大へ繋げる。ⅲ) エネルギー、環境、次世代ICT、ライフサイエンスなどフロンティア領域での新規事業創出を加速する。ⅳ) カーボンニュートラルの実現をADEKAグループの目標として意識し、研究開発による取り組みを本格化する。の4項目を掲げて研究開発活動を推進しています。当第2四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は、67億61百万円です。
① 化学品事業既存事業のさらなる拡大に向け、戦略製品を中心とした市場開発や新製品開発に注力しています。市場環境の変化やユーザーニーズを鋭敏に捉えて社内で共有することで、タイムリーな製品開発を推進しています。
ⅰ) 樹脂添加剤分野食品容器のテイクアウト需要や医療容器のCOVID-19対応に関連して、透明性と剛性に優れるPP容器の軽量・薄肉化技術を市場に提案、各地域で評価されています。環境対応型製品アデカシクロエイドでは、バイオマス原料を活用した塩ビ用可塑剤や、リサイクルプラスチックに従来のプラスチックと同等もしくはそれ以上の機能を付与する添加剤パッケージを開発しました。ユーザーでの評価が順調に進展するのと並行して、更なる製品のラインナップの拡充を図っています。ⅱ) 情報・電子化学品分野 半導体向けでは、最先端DRAM向けの新規高誘電ALD成膜材料の採用が本格化しています。ロジック半導体向けの新規ALD材料もユーザーでの性能評価が進展しています。また、EUVを含む先端フォトレジスト向け光酸発生剤や関連材料の採用が拡大しています。ⅲ) 機能化学品分野高強度の炭素繊維強化プラスチック(CFRP)成形品を効率よく生産できる技術「ファイバーtoコンポジット(F to C)成形プロセス」の市場開発を開始しました。また、自動車・モビリティ用、風力発電の風車ブレード用、コンストラクション用に素材の特徴を活かしたソリューションをユーザーに紹介しています。化粧品原料では、グリコール系保湿剤「アデカノールCGE eco」やウレタン皮膜形成剤「アデカノールOU-2 eco」といった天然由来原料からなる製品群を開発し、ユーザーへの提案を進めました。
② 食品事業カーボンニュートラルをはじめとする環境配慮、食品ロス削減、労働力不足、健康志向、持続可能な原料調達などの社会課題や、食品産業の構造変化や働き方の多様化、消費行動の変化などに伴う課題に対して、市場ニーズを捉えた新製品開発を行っています。
2022年度新製品は、「おいしさとやさしさで貢献します~持続可能な社会の実現~」をテーマに、以下の製品を中心とした7製品をラインナップしました。2021年度新製品に引き続き、原料にパーム油を配合する製品にあっては持続可能なパーム油(RSPO認証油)を使用しています。ⅰ) プラントベースフード※「デリプランツ」シリーズ従来のプラントベースフードのイメージを一新する“おいしさ”と“使いやすさ”を実現した新ブランド「デリプランツ」シリーズの展開を開始しました。本年4月に、(ⅰ)高濃度のため少量で効果的に使用できる「デリプランツ オーツコンク」、(ⅱ)作業性の良さと焼き残り・冷凍耐性を持つ「デリプランツ チーズ(クリーミー)」、(ⅲ)良好な作業性と保形性を持つ「デリプランツ ホイップ」、(ⅳ)コクのあるプラントベースフードが作れる「デリプランツ マーガリン」の4製品を2022年度新製品として上市しました。続いて7月には、(ⅴ)自然な動物脂のようなコクを付与する調味用油脂「デリプランツ コクファット」を追加上市しました。今後もシリーズラインナップを拡充すると共にアプリケーションの開発を進め、市場への浸透を図ってまいります。※弊社では、原材料および食品添加物に動物性原料を直接配合していない製品を「プラントベース」と表記しています。ⅱ) 「マーベラス」シリーズパンの経時的な品質低下を抑制することで消費期限を延長し、食品ロス削減に貢献する製パン用練込油脂「マーベラス」シリーズが引き続き好評を得ています。焼きたてのおいしさが持続する「マーベラス」、レンジ加熱耐性のある「マーベラスSL」、リテール向けのポンドタイプ「マーベラスアソシエ」の既存3製品に続き、パンをボリュームアップさせながらも保型性の向上によりきれいな外観を保たせ、物流・陳列時のロスを減少させる「マーベラスV」を上市しました。今後、ユーザーの用途に合わせて4製品での展開を進めてまいります。
③ ライフサイエンス事業連結子会社である日本農薬㈱では、持続的な新規剤創出を目指してパイプラインの早期拡充に取り組むとともに、既存剤の維持・拡大を目指し全社的な連携による戦略的な研究開発を推進しています。当期における主な成果は以下の通りです。2021年9月に国内開発を機関決定した新規汎用性殺虫剤(開発コード:NNI-2101)は、登録に向けた開発を進めています。本剤は、チョウ目およびコウチュウ目害虫など幅広い殺虫スペクトルを示し、浸透移行性にも優れ、既存剤抵抗性害虫に対しても高い効果を示すことから、汎用性に優れた新規有効成分です。そのため様々な対象害虫や処理方法での委託試験を実施予定であり、利便性の高い害虫防除資材となるように国内開発を進めてまいります。
④ 新規事業分野エネルギー、環境、次世代ICT、ライフサイエンスなどフロンティア領域において、組織の壁を越えた技術を融合し、ADEKAグループの強みを活かした新規事業創出を推進しています。将来ニーズと時間軸を意識し、組織の壁を越えた技術の融合とオープンイノベーションにより、早期事業化に向けて取り組んでいます。i) ライフサイエンス分野臓器修復など、多用途への展開を検討している脱細胞化ウシ心のう膜は、国内外の医療関係者へのヒアリング調査を実施するとともに、医療機器としての認証取得に向けた試験やサプライチェーンの構築に取り組んでいます。ⅱ) 環境・エネルギー分野硫黄変性ポリアクリロニトリル「SPAN」は、硫黄含量を高めたグレードのユーザーでの性能評価が進展しています。相馬工場に設置したパイロット設備の生産能力を増強しながら、量産技術の確立を進めています。
(7) 経営成績に重要な影響を与える要因及び戦略的現状と見通し当第2四半期連結累計期間において、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因に変更はありません。
(8) 経営者の問題認識と今後の方針について当第2四半期連結累計期間において、経営者の問題認識と今後の方針についての変更はありません。