【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、脱コロナによる景気拡大が期待されましたが、ロシアのウクライナに対する軍事侵攻の長期化に伴うエネルギー危機の深刻化、中国におけるゼロコロナ政策に伴う経済活動の停滞などにより、年末にかけて減速感が強まりました。わが国においても、オミクロン株によるコロナ感染の拡大、日米金利差拡大を受けた円安による物価の上昇、海外景気の悪化に伴う輸出の減少など、極めて厳しい状況で推移しました。
このような経営環境において、当社は、中期経営計画「NITTOSEIKO Mission”G”(2019年~2022年)」の最終年度として、自動車業界や建築業界を中心に幅広く安定した顧客基盤を有する企業の子会社化、世界最大規模の産業技術専門展示会「ハノーバー メッセ 2022」への出展など、既存事業の拡充を図る一方、探索研究から非臨床試験、臨床試験までシームレスなサポートで、農・医薬品、医療機器の開発支援を行う企業との業務提携、理美容業界向けの新製品開発など、新たな事業分野への進出に尽力しました。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ24億8千4百万円増加し、534億8百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ6億8千4百万円増加し、189億6百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ17億9千9百万円増加し、345億1百万円となりました。
b.経営成績
当連結会計年度の売上高は440億2千1百万円(前年同期比8.6%増)、営業利益は29億3千1百万円(前年同期比9.8%減)、経常利益は32億3千5百万円(前年同期比7.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は18億2千8百万円(前年同期比16.9%減)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
<ファスナー事業>
当事業につきましては、強固な異種金属接合を実現する「アクローズ」や「アクローズ ハイブリッド」、高精度で大量生産を可能にした「ギヤ部品」などの自動車のEV関連製品が増加する一方、世界的な半導体不足の長期化に伴う市場の減速により、精密ねじ、一般ねじともに、需要が減少しました。また、エネルギーや原材料価格の高騰により、利益環境は厳しい状況となりました。
このような状況のもと、カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現に向け、自動車関連業界を中心に評価が高い「アクローズ」や「アクローズ ハイブリッド」、締結部材の反りや圧入箇所のバリの発生を軽減しつつ、回り止め強度を得ることができる「ジョイスタッド(旧製品名称:新型クリンチングスタッド)」の販売促進に取り組みました。また、輸送および生産効率の向上、CO2排出量の削減を図るため、生産工場を中心とする事業環境の集約に着手しました。
この結果、売上高は321億9千9百万円(前年同期比15.4%増)、営業利益は16億4千8百万円(前年同期比6.7%増)となりました。
<産機事業>
当事業につきましては、主な需要先である自動車関連業界のCASEおよびEVに関わる設備や住宅・建築業界の省人化対応の設備を中心に堅調に推移するものの、半導体不足の長期化に伴う需要先工場の一部稼働停止、中国のロックダウンを背景とする需要先のサプライチェーン見直しによる設備投資の抑制・延期、インフレの加速・金融引き締めの影響による海外景気の減速など、標準機、自動組立ラインともに厳しい事業環境となりました。
このような状況のもと、ロボットメーカの垂直多関節型ロボットと当社のねじ締めユニットを融合し、容易にねじ締め工程の自動化を可能にした、垂直多関節型ねじ締めロボット「SR825ARシリーズ」を開発し、ロボットメーカと共同で需要の拡大に取り組みました。併せて、需要先の環境負荷の低減に貢献する、軽量単軸自動ねじ締め機「FM514VZ」「FM514CZ」を市場へ投入しました。また、購買システムの効率化に取り組み、部品調達の安定化に努めました。
この結果、売上高は65億1千5百万円(前年同期比9.3%減)、営業利益は12億2千7百万円(前年同期比23.7%減)となりました。
<制御事業>
当事業につきましては、流量計は、需要先の気候変動対策としての燃費転換に伴う需要や非常用発電機向けの需要が増加しました。システム製品は、自動車関連業界を中心に検査装置やマイクロバブル洗浄装置の需要は高いものの、半導体不足による需要先の生産調整に伴い低調となりました。地盤調査機「ジオカルテ」は、安定した住宅需要と買い替え需要により堅調に推移しておりましたが、後半は低調となりました。
このような状況のもと、分析・計測に関する大規模な展示会を利用し、グループ会社とともに、水分測定装置や、サステナビリティ経営として注目されるマイクロバブル洗浄装置の需要拡大に努めました。また、マイクロバブル生成技術を利用したマイクロバブルシャワーシステムを開発し、理美容業界を中心とする新たな市場の開拓に努めました。
この結果、売上高は52億9千6百万円(前年同期比2.2%減)、営業利益は1億5千7百万円(前年同期比0.7%増)となりました。
<メディカル事業>
当事業につきましては、新型コロナウイルス感染拡大による医療崩壊の経験から、オンライン診療の拡大による遠隔モニタリング機器等の需要が増加する一方、従来の医療資源の需要が減少しました。また、エネルギー関連経費の上昇による医療機関の経営状況が悪化するなど、事業環境は厳しい状況となりました。
このような状況のもと、臨床試験機関への販売促進と医療機器販売会社を通じた販路拡大に努めました。また、「医療用生体内溶解性高純度マグネシウム材料」の製品化に向けた取り組みと併せて、生命倫理体制の強化、医療機関等との関係の透明性確保など、ガバナンスの強化を図りました。
この結果、売上高は1千万円(前年同期比56.1%減)、営業損失は1億2百万円(前年同期は営業損失6千1百万円)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ21億2千9百万円減少し、83億5百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金は、9億9千9百万円の収入(前期は36億5千万円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益31億9千4百万円に加え、減価償却費14億2千1百万などによる資金の増加があった一方、法人税等の支払額13億6千2百万円、棚卸資産の増加11億5千万円や売上債権の増加8億9千2百万円などによる資金の減少があったことなどによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金は、19億8千7百万円の支出(前期は9億9千3百万円の支出)となりました。これは主に、定期預金の払戻による収入9億5千1百万円に加え、投資有価証券の償還による収入3億9千万円などによる資金の増加があった一方、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出13億5千1百万円、有形固定資産の取得による支出10億3千9百万円や定期預金の預入による支出6億3千8百万円などによる資金の減少があったことなどによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金は、13億1百万円の支出(前期は7億4百万円の支出)となりました。これは主に、長期借入れによる収入3千3百万円や自己株式の売却による収入1千万円などによる資金の増加があった一方、配当金の支払6億1千3百万円や長期借入金の返済による支出4億1千5百万円などによる資金の減少があったことなどによるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
(注)1 「(a)生産実績」及び「(b)受注実績」における金額は販売価格によっております。
2 下記金額には、消費税等は含まれておりません。
(a)生産実績
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
金額(千円)
前年同期比(%)
ファスナー
26,319,974
121.9
産機
5,994,478
92.7
制御
6,299,076
97.0
メディカル
9,269
67.3
合計
38,622,798
111.8
(b)受注実績
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
受注高(千円)
前年同期比(%)
受注残高(千円)
前年同期比(%)
ファスナー
33,148,791
117.8
4,012,878
131.0
産機
6,626,400
92.5
1,624,243
107.3
制御
5,827,726
98.5
1,721,836
144.7
メディカル
10,579
44.4
123
-
合計
45,613,498
110.6
7,359,080
127.6
(C)販売実績
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
金額(千円)
前年同期比(%)
ファスナー
32,199,349
115.4
産機
6,515,644
90.7
制御
5,296,018
97.8
メディカル
10,456
43.9
合計
44,021,468
108.6
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の財政状態は、次のとおりであります。
(資産)
当連結会計年度における資産の残高は、棚卸資産が21億5千5百万円、受取手形及び売掛金が13億1千2百万円、有形固定資産が9億9千3百万円増加した一方、現金及び預金が23億1千6百万円、有価証券が3億9千1百万円減少したことなどにより前連結会計年度末に比べ24億8千4百万円増加し、534億8百万円(前年同期比4.9%増)となりました。
(負債)
当連結会計年度における負債の残高は、電子記録債務が8億9千8百万円、未払金が2億3千万円増加した一方、長期借入金が1億9千8百万円、短期借入金が1億7千3百万円減少したことなどにより前連結会計年度末に比べ6億8千4百万円増加し、189億6百万円(前年同期比3.8%増)となりました。
(純資産)
当連結会計年度における純資産の残高は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等に伴う利益剰余金の増加12億1千5百万円などにより前連結会計年度末に比べ17億9千9百万円増加し、345億1百万円(前年同期比5.5%増)となりました。
当社グループの当連結会計年度の経営成績は、次のとおりであります。
(売上高)
当連結会計年度における売上高は、主要販売先である自動車関連業界における生産調整の影響を受けたものの、M&Aによる連結子会社の増加などもあり、440億2千1百万円(前年同期比8.6%増)と過去最高額を計上しました。
(営業利益)
エネルギーや原材料価格の高騰、利益面で業績を牽引していた産機事業の設備投資の延期、凍結に伴う売上高の減少やM&A関連費用の計上により、29億3千1百万円(前年同期比9.8%減)となりました。
(経常利益)
円安の進展による為替差益1億2千5百万円や受取賃貸料8千7百万円の計上などにより、32億3千5百万円(前年同期比7.2%減)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
M&Aによる負ののれん発生益が3億5千2百万円発生した一方で、投資有価証券評価損4億2千1百万円、法人税、住民税及び事業税11億7千3百万円を計上したことなどにより、18億2千8百万円(前年同期比16.9%減)となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。
a.資金需要
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製品製造のための原材料及び部品の購入費や製造経費のほか、販売費及び一般管理費等であります。また、設備投資需要としては建物や機械装置等の生産設備の投資等があります。
b.財務政策
当社グループは、運転資金及び設備資金については、内部資金または借入により資金調達することにしております。このうち、借入による資金調達に関しましては、運転資金については短期借入金で、生産設備など長期資金につきましては、長期借入金で調達しております。当連結会計年度より、グループ会社との間でCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入し、グループ各社における余剰資金の有効活用に努めております。
当連結会計年度末において、取引銀行4行との間で合計26億円の貸出コミットメントライン契約(借入実行残高16億円、借入未実行残高10億円)を、また、取引銀行12行との間で合計37億3千5百万円の当座貸越契約(借入実行残高6億1千万円、借入未実行残高31億2千5百万円)を締結しております。
③経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況
2022年2月14日に公表いたしました当連結会計年度の当初業績予想に対しては、売上高は3.6%増、営業利益は13.8%減、営業利益率は6.7%(業績予想は8.0%)となりました。
今後も、新型コロナウイルスの収束の時期や影響が見通せない中で、先行き不透明な状況が続くと予想されますが、2023年度経営方針「世界から期待される大樹を目指そう」のもと、当該中期経営計画の目標達成を目指してまいります。
④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、決算日における資産・負債の報告数値及び偶発債務の開示、並びに報告期間における収入・費用の報告数値に影響を与える見積り及び仮定設定を行い、提出日現在において判断したものであり、将来に関しては不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
また、財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。