【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績の状況
当事業年度におけるわが国経済は、ウィズコロナの新たな段階への移行が進められる中、各種政策の効果により緩やかに景気が持ち直しております。一方で、欧州における紛争の長期化、物価上昇、供給面での制約、金融資本市場の変動等の影響により先行きが不透明な状況が継続しております。また、世界的な金融引き締めが続く中、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっております。
このような状況の中で、当社は「感動プロデュース企業へ」という経営ビジョンのもと、既存の出版社の枠にとらわれず「メッセージやストーリーの詰まったコンテンツとサービスで、新たな時間の使い方やライフスタイルを提案し、感動の輪を広げる」ことを目的として、紙・電子出版による雑誌や書籍、コミックの発行、女性向けウェブサイト「オズモール」や小説サイト「野いちご」等の運営、オンラインを含むイベント開催とそれらを掛け合わせたPR・販促ソリューションの提供を軸として事業を運営してまいりました。
このような営業活動の結果、当事業年度の売上高は70億23百万円(前期比25.6%増)、営業利益は15億86百万円(前期比94.6%増)、経常利益は16億99百万円(前期比83.6%増)、当期純利益は11億67百万円(前期比106.1%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
なお、当事業年度より報告セグメントの記載順序を変更しております。
<書籍コンテンツ事業>
書籍コンテンツ事業では、自社で運営する小説サイト「野いちご」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」を起点に、独自のマーケティングにより恋愛小説から異世界ファンタジー、ライト文芸まで幅広いジャンルの作品を書籍・コミックとして発刊しております。
当事業年度の出版市場は、電子出版市場は堅調に成長いたしましたが、紙の出版市場は巣ごもり需要の落ち着きもあり縮小傾向が続きました。このような環境の中で、当社は書籍・コミックの発刊点数の増加、マーケティングの徹底による読者ニーズに沿った商品展開、SNS等を活用した販促施策に注力してまいりました。書籍・コミックの売上高は総じて好調に推移しており、2020年8月創刊の児童文庫レーベル「野いちごジュニア文庫」及び2021年創刊の男性向け異世界ファンタジーレーベル「グラストコミックス」「グラストノベルス」という新たな試みが業績に寄与いたしました。また、個別のコンテンツでは、電子コミック『鬼の花嫁』が好調に売り上げを伸ばしており、8月に発売した同作の紙コミック1巻が16.5万部発行、「スターツ出版文庫」から発売している原作小説のシリーズ累計発行部数が56万部を超えるなど人気コンテンツに成長しております。なお、収益認識会計基準等の適用により、従来の方法に比べて売上高が3億34百万円減少しておりますが、営業利益に与える影響はありません。
このような営業活動の結果、書籍コンテンツ事業の売上高は41億96百万円(前期比27.7%増)、営業利益は18億59百万円(前期比49.6%増)となりました。
<メディアソリューション事業>
メディアソリューション事業では、オリジナルのマーケティング・モデルを創造するという戦略のもと、当社独自の基準で厳選したビューティサロン・ホテル・レストラン等の施設予約サービスを提供する「オズのプレミアム予約」と、「オズモール」「オズマガジン」「メトロミニッツ」等の東京地域密着の自社メディアとSNSコミュニティ「東京女子部」等を活用したPR・販促ソリューションを展開してまいりました。
「オズのプレミアム予約」では、ユーザー満足度の高い施設の開拓と予約プランの開発やSEO等のユーザー集客施策の強化、クーポン施策等のCRM強化によるユーザー満足度の向上に注力してまいりました。当事業年度は、引き続き新型コロナウイルス感染症の影響を受けましたが、前事業年度と比較しますと個人消費への影響が軽減しており、上記のユーザー集客施策等の効果もありレストランや宿泊施設における少人数での予約を中心に利用件数が改善し、売上高が増加いたしました。第4四半期におきましては、コロナ禍前の2019年同期の売上高を上回るところまで業績が回復いたしました。
PR・販促ソリューションでは、SNSコミュニティ「東京女子部」のブランド化や「オズマガジン」等の東京地域密着メディアを活用したお出かけ支援の強化、デジタルマーケティングによる新たなマーケットの開拓に注力してまいりました。当事業年度は、「オズモール」の美容・健康コンテンツ等を活用したヘルスケア、コスメティック商品の販促支援の売り上げが伸長したこと、第4四半期におきまして自治体等に向けたお出かけ支援の売り上げが回復したこと等により、前事業年度と比較して売上高が増加いたしました。なお、収益認識会計基準等の適用により、従来の方法に比べて売上高が19百万円減少しておりますが、営業利益に与える影響はありません。
このような営業活動の結果、メディアソリューション事業の売上高は28億26百万円(前期比22.5%増)、営業損失は1億39百万円(前期は、営業損失3億33百万円)となりました。
②財政状態の状況
当事業年度末の総資産は、前事業年度末と比べて17億99百万円増加し、85億54百万円となりました。
当事業年度末の負債は、前事業年度末と比べて6億89百万円増加し、21億64百万円となりました。
当事業年度末の純資産は、前事業年度末に比べて11億10百万円増加し、63億89百万円となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当事業年度における現金および現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ10億65百万円増加し、33億53百万円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、法人税等の支払額4億87百万円、売上債権の増加5億88百万円、棚卸資産の増加28百万円、返品調整引当金の減少3億3百万円等による資金の使用の一方で、税引前当期純利益16億91百万円、返金負債の増加5億75百万円等により、12億45百万円の資金を獲得(前事業年度は12億11百万円の資金を獲得)いたしました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、オフィスの改装等による有形固定資産の取得43百万円、「オズモール」のシステム開発等の無形固定資産の取得50百万円等により、1億3百万円の資金を使用(前事業年度は54百万円の資金を使用)いたしました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払により、76百万円の資金を使用(前年同四半期は67百万円の資金を使用)いたしました。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当事業年度の生産実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
第40期
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
前期比(%)
書籍コンテンツ事業(千円)
5,238,952
35.2
メディアソリューション事業(千円)
3,078,914
20.4
合計(千円)
8,317,867
29.3
(注)金額は販売価格によっております。
b.受注実績
当社は売上の大半を見込生産で行っているため、受注実績の記載を省略しております。
c.販売実績
当事業年度の販売実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
第40期
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
前期比(%)
書籍コンテンツ事業(千円)
4,196,649
27.7
メディアソリューション事業(千円)
2,826,422
22.5
合計(千円)
7,023,072
25.6
(注)1.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績は次の通りであります。
相手先
第39期
(自 2021年1月1日
至 2021年12月31日)
第40期
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
金額(千円)
割合(%)
金額(千円)
割合(%)
日本出版販売株式会社
877,164
15.7
1,115,676
15.9
株式会社メディアドゥ
661,325
11.8
1,099,160
15.7
株式会社トーハン
650,091
11.6
895,629
12.8
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたり、決算日における資産・負債の報告数値及び報告期間における収入・費用の報告数値に影響を与える見積り及び判断を行っております。過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる様々な要因に基づき見積り及び判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性により、これら見積りと異なる場合があります。
なお、当社の財務諸表の作成における重要な会計方針は、「第5 経理の状況 重要な会計方針」に記載しております。
②当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
1)経営成績の分析
(売上高)
書籍コンテンツ事業においては、書籍、コミックの発行点数の増加、SNS等を活用した販促施策が奏功したこと等により、前事業年度と比較すると売上高は大きく増加いたしました。メディアソリューション事業においては、新型コロナウイルス感染症の影響を引き続き受けたものの、前事業年度と比較しますと軽減しており、第4四半期におきましては、施設予約サービス「オズのプレミアム予約」の利用者数がコロナ禍前の2019年同四半期を超えたこと等により、前事業年度と比較すると売上高は増加いたしました。その結果、売上高は70億23百万円(前事業年度比25.6%増)となりました。
(売上総利益)
売上原価は、書籍コンテンツ事業において書籍、コミックの発刊点数が増加したことなどにより、34億35百万円(前事業年度比14.5%増)となり、差引売上総利益は35億87百万円(前事業年度比38.4%増)となりました。
(営業利益)
販売費及び一般管理費は、人員の増加による労務費の増加等により、20億円(前事業年度比12.6%増)となりました。その結果、営業利益は15億86百万円(前事業年度比94.6%増)となりました。
(経常利益)
主な営業外収益は投資有価証券にかかる受取配当金96百万円等が発生いたしました。その結果、経常利益は16億99百万円(前事業年度比83.6%増)となりました。
(税引前当期純利益)
当事業年度は、固定資産除却損が8百万円発生したことにより、税引前当期純利益は16億91百万円(前事業年度比84.4%増)となりました。
(当期純利益)
法人税、住民税及び事業税並びに法人税等調整額5億23百万円を計上し、当期純利益は11億67百万円(前事業年度比106.1%増)となりました。
2)財政状態の分析
(資産)
当事業年度末の総資産は、前事業年度末と比べて17億99百万円増加し、85億54百万円となりました。
流動資産は、現金及び預金が10億65百万円、売掛金及び契約資産が5億88百万円、収益認識会計基準等の適用により返品資産が44百万円増加したこと等により、前事業年度末に比べて17億98百万円増加し、75億68百万円となりました。
固定資産は、前事業年度末と比べて0.9百万円増加し、9億85百万円となりました。
(負債)
当事業年度末の負債は、前事業年度末と比べて6億89百万円増加し、21億64百万円となりました。
流動負債は、収益認識会計基準等の適用により返品調整引当金が3億3百万円減少した一方で、預り金が1億39百万円、買掛金が1億12百万円、収益認識会計基準等の適用により返金負債が5億75百万円増加したこと等により、前事業年度末と比べて7億23百万円増加し、20億38百万円となりました。
固定負債は、前事業年度末と比べて34百万円減少し、1億25百万円となりました。
(純資産)
当事業年度末の純資産は、前事業年度末に比べて11億10百万円増加し、63億89百万円となりました。
3)キャッシュ・フローの状況
当事業年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
4)セグメントごとの財政状況及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当事業年度のセグメントごとの財政状態及び経営成績の状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
b.当社の経営成績に重要な影響を与える要因
雑誌、書籍の出版事業に関しては、デジタルデバイスの発展等によるメディアの多様化による読書時間の減少、読者の嗜好の変化、新規参入を含めた競合他社との競争激化、紙等の材料費、流通コストの高騰等の影響を受けます。WEBサービスに関する事業については、新規参入を含めた競合他社との競争激化、通信に係る新法制の施行、自然災害等によるネットワークの切断等の影響を受けます。
なお、上記の他、当社の経営成績に重要な影響を与える要因として、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載しております。
c.当事業年度の資本の財源及び資金の流動性について
1)キャッシュ・フローについて
当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は、前事業年度末残高22億88百万円に対して10億65百万円増加し、33億53百万円となりました。なお、当事業年度におけるキャッシュ・フローの概況は「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」をご参照下さい。
2)資金需要
当社の事業活動における資金需要は、運転資金需要と設備資金需要の二つがあります。運転資金需要のうち主なものは、雑誌、書籍等の製品の製造費や販売費及び一般管理費等の営業費用によるものであります。また、設備資金需要としては、オズモールや小説サイトを運営するためのシステム開発やインフラ強化等によるものであります。
3)財務政策
当社は現在、運転資金につきましては、全て自己資金により充当しております。また、設備資金につきましても全て自己資金の範囲内で計画をしております。
d.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断する客観的な指標等
当社は、目標とする経営指標といたしましては、売上高、営業利益、営業利益率を重視しております。
指標
第38期
(自 2020年1月1日
至 2020年12月31日)
第39期
(自 2021年1月1日
至 2021年12月31日)
第40期
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
売上高
4,434百万円
5,592百万円
7,023百万円
営業利益
169百万円
815百万円
1,586百万円
営業利益率
3.8%
14.6%
22.6%
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