【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当事業年度末において当社が判断したものであります。
また、当事業年度の期首より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等を適用しており、当事業年度に係る各金額については、収益認識会計基準等を適用した後の金額となっております。
(1)経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況
当事業年度末におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症による行動制限や海外渡航制限の緩和等、ウィズコロナの新たな段階への移行が進められる中、経済活動は持ち直しの方向に向かい始めました。しかしながら、ウクライナ情勢の長期化、原材料価格の高騰及び円安の進行、中国のゼロコロナ政策による経済活動の減速等、世界情勢は依然として不透明な状況が続いております。
一方で、国内経済をはじめ、当社を取り巻くエンターテインメント業界は、首都圏や、東名阪の三大都市を中心に、収容人数をフルに使ってのリアルライブの開催回数が徐々に増えてくるなど、少しずつ活気が戻りつつあります。
このような環境のもと、当社はビジョンに「“できっこない”に挑み続ける」を掲げ、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)全盛期の現在、1対Nの時代から大きく変化した、N対Nの潮流をとらえ、Fan(ファン)+Icon(アイコン)を起源とした完全会員制、完全有料制のファンコミュニティプラットフォームを提供するFanicon事業と、祖業である法人セールス事業の2つの事業を展開しております。
Fanicon事業の市場環境としては、株式会社矢野経済研究所の調査「ファンコミュニティビジネス2022」によると、月額課金型オンラインコミュニティプラットフォームサービス市場規模(会員費取扱高ベース)は、2020年度は24,800百万円(実績)、2021年度は41,500百万円(見込)(前期比167.3%)、2022年度は58,000百万円(前期比139.8%)と予測されております。新型コロナウイルスの影響を受け、オフラインでの活動を制限されたアーティストやクリエイター等が、新たな活動の場としてオンラインによる活動を求める機会が増加したことや、プラットフォーム上で全て一元管理できるサービスが増加し、コミュニティ開設者が芸能活動や創作活動に専念できるようになったことにより、年々市場が大きく成長しております。
また、法人セールス事業の市場環境としては、株式会社電通の「2022年日本の広告費」によると、2022年のインターネット広告市場は3兆912億円、前年比114.3%と引き続き高い成長率で推移し、総広告費に占める媒体構成比は前年比3.7ポイント増の43.5%に達しており、当社としては今後も同市場は堅調に推移すると予想しております。また、サイバー・バズ/デジタルインファクト調べによる「国内インフルエンサーマーケティングの市場規模推計・予測 2020年-2027年」によると、2023年の国内インフルエンサーマーケティング市場は前年比120.5%の741億円が推計されており、2020年は332億円だったことから、ここ数年で大幅に市場規模が拡大しております。
Fanicon事業においては、スマホアプリである「Fanicon」を、アイコンとそのファンの方々に提供しております。「Fanicon」は、ライブ配信機能、グループチャット機能、限定投稿機能、スクラッチ(オンラインくじ)機能等、アイコンとファンとの双方向のコミュニケーションを促進する機能を有し、従来のファンクラブが有していた機能として、グッズ、チケット販売などの機能も併設した完全会員制、完全有料制のワンストップファンコミュニティプラットフォームとなっています。当プラットフォームは、ファンがいる方であればファン数の大小に左右されることなく誰でも(Fanicon利用規約の遵守が前提条件)「Fanicon」を開設することができ、多数の機能の中から、自分のファン層にあった機能だけを選択してファンコミュニティを運営することができます。なお、「Fanicon」を利用中のアイコンであれば無料で利用可能な配信スタジオ「BLACKBOX³」は、大型の4面LEDパネルと最新の音楽配信機材をそろえ、アイコンとファンのコミュニケーションをデジタル・リアルの両面からサポートしております。
法人セールス事業においては、国内外の顧客に対して、インフルエンサーを用いた広告施策等の提案及びオンライン広告の運用とコンサルティングが共に高い評価を得ることで、着実に成長させてまいりました。
以上の結果、当事業年度の売上高は4,279,916千円(前年同期比22.9%増加)、営業損失は212,572千円(前事業年度は営業損失100,754千円)、経常損失は210,452千円(前事業年度は経常損失119,690千円)となりました。また、Fanicon事業に係る事業用資産につき減損損失を計上したことにより、当期純損失は488,468千円(前事業年度は当期純損失109,200千円)となりました。
a Fanicon事業
Fanicon事業は、ファンコミュニティプラットフォーム「Fanicon」の提供及び運営管理を行っております。
「Fanicon」はアイコンとそのファンが集い、アイコンとしての「価値」を提供したいアイコン側のニーズと、アイコンと「つながりたい」というファン側のニーズをマッチングさせるプラットフォームです。また、従来のファンクラブとは異なり、ファンコミュニティのオーナーであるアイコンと、そこに属するファンが共にコミュニティを盛り上げ、共感したファン同士も繋がることが可能なネットワーク効果のある、アイコンとファンのためのサービスです。
Faniconの会員(ファン)はすべて有料会員となっており、Fanicon事業の売上高は、会員より受領するサブスクリプションフィーを売上高として計上するストック型のビジネスモデルとなっています。また昨今はポイント課金型の売上高も伸びており、安定的、継続的な収入が見込まれております。
会員数を安定的に成長させるためには、新規アイコンの獲得が不可欠です。新規アイコンを獲得するための営業活動は専属チームが継続的に実施しておりますが、一部大型アイコンの獲得に関しては、パートナー企業等の協力を得ており、その結果、コミュニティ開設数は堅調に成長を続けております。
一方で、期初に想定していた商品ミックスと比較して、比較的利益率の高いサブスク外(特にポイント購入)売上高の伸び率が予想を下回ったことにより、売上総利益は低下傾向、販売管理費は増加傾向にあります。
また、アイコンの解約率は、アイコンに対する季節や個人イベントに応じた施策の提案やファン体験の価値を高めるカスタマーサクセスの実施により、前事業年度に引き続き低水準で推移しております。
以上の結果、当事業の売上高は2,440,614千円(前年同期比27.0%増加)、セグメント損失は345,012千円(前年同期はセグメント損失165,104千円)となりました。
b 法人セールス事業
法人セールス事業においては、マーケティングやインサイドセールスの取組み強化により、既存案件の継続的な受注だけでなく、国内外の顧客との新規案件も増加し、着実に成長してまいりました。
以上の結果、当事業の売上高は1,839,301千円(前年同期比17.9%増加)、セグメント利益は132,439千円(前年同期比105.8%増加)となりました。
② 財政状態の状況
(流動資産)
当事業年度末における流動資産は、前事業年度末に比べ291,384千円減少し、2,623,881千円となりました。主な要因は、現金及び預金の減少202,173千円、売掛金の減少119,457千円であります。
なお、売掛金には、Fanicon事業及び法人セールス事業の一部の取引において代理人として純額で収益を認識している売上にかかる売掛金が含まれております。そのため、売上高に対し売掛金の規模が大きく、また、同サービスの売上増に伴い増加する傾向があります。
(固定資産)
当事業年度末における固定資産は、前事業年度末に比べ75,660千円増加し、380,514千円となりました。主な要因は、本社移転による建物の増加147,245千円及び工具、器具及び備品の増加81,373千円、敷金の増加114,346千円、繰延税金資産の減少13,120千円であります。
(流動負債)
当事業年度末における流動負債は、前事業年度末に比べ234,355千円増加し、1,709,844千円となりました。主な要因は、買掛金の増加125,755千円、Fanicon事業におけるファン数の増加等に伴う前受金の増加261,966千円、未払金の減少115,089千円であります。
(固定負債)
当事業年度末における固定負債は、前事業年度末に比べ57,330千円増加し、105,555千円となりました。主な要因は、オフィス移転による資産除去債務の増加69,075千円、リース債務の増加9,061千円、1年内返済予定の長期借入金への振替及び長期借入金の返済22,880千円であります。
(純資産)
当事業年度末における純資産は、前事業年度末に比べ507,411千円減少し、1,188,995千円となりました。主な要因は、資本金及び資本準備金がそれぞれ6,563千円増加、当期純損失を488,468千円計上したことによるものであります。
③ キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は1,832,762千円(前事業年度比212,173千円減少)となりました。各キャッシュ・フローの状況とその主な要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は188,655千円(前事業年度は275,365千円の獲得)となりました。主な増加要因は減価償却費の計上74,572千円、Fanicon事業におけるファン数の増加等に伴う前受金の増加額230,037千円、売上債権の減少額121,828千円、仕入債務の増加額125,755千円、主な減少要因は未払金の減少額117,483千円、前払費用の増加額7,503千円、税引前当期純損失の計上470,574千円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は344,906千円(前事業年度は127,993千円の使用)となりました。主な減少要因は本社移転に伴う有形固定資産の取得による支出188,312千円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は55,922千円(前事業年度は1,298,382千円の獲得)となりました。増加要因は株式の発行による収入12,987千円、減少要因は長期借入金の返済による支出64,960千円であります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a 生産実績
当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
b 受注実績
当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
c 販売実績
当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
金額(千円)
前年同期比(%)
Fanicon事業
2,440,614
27.0
法人セールス事業
1,839,301
17.9
合計
4,279,916
22.9
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
この財務諸表の作成にあたり、資産、負債、収益及び費用の報告額に不確実性がある場合、作成時に入手可能な情報に基づいて、その合理的な金額を算出するために見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
当社の財務諸表作成のための会計方針については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計方針)」に記載しております。
また、財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a 財政状態
財政状態の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に含めて記載しております。
b 経営成績
(売上高)
当事業年度における売上高は、4,279,916千円(前年同期比22.9%増)となりました。
セグメントごとの状況及び分析・検討内容は次のとおりであります。
(Fanicon事業)
Fanicon事業においては、サービス開始以来の地道なマーケティング及び営業活動の結果、順調にアイコンの獲得が進み、2022年12月末時点において、アイコン数は2,474(前事業年度末は2,213)、ファン数(有料課金ユーザー数)は211,821(前事業年度末は161,099)となりました。新規開設コミュニティにおいて、月額500円前後の通常サービス機能を利用できるプランに加え、プレミアムサービスがついた高価格料金プランの2種類の価格プランを設定し、サブスク料金の月額単価向上を図りつつ、サブスク外売上においてもポイント購入だけでなくECやチケットの売上が増加したことにより、当事業の売上増加に繋がっております。この結果、売上高は2,440,614千円(前年同期比27.0%増)と伸長いたしました。
(法人セールス事業)
法人セールス事業においては、引き続き安定した営業体制のもと、サービス品質の向上に努めた結果、主に既存クライアント企業からの受注案件が増加したこと、またサービス提供できる案件数を増やすことができたことにより、コンサルティング及び運用業務において受注案件数及び案件単価ともに増加いたしました。
この結果、売上高は1,839,301千円(前年同期比17.9%増)となり、伸長しております。
(売上原価、売上総利益)
売上高増加に伴う原価の増加、またFanicon事業においてインフラを強化したことによる費用の増加により、売上原価は2,608,762千円(前事業年度比19.0%増)となりました。この結果、売上総利益は1,671,153千円(前事業年度比29.6%増)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業損失)
販売費及び一般管理費は1,883,726千円(前事業年度比35.5%増)となりました。主な要因としては、人員拡大に伴い人件費が増加したこと、Fanicon事業のサービス拡大のためのPR費用等により販売費及び一般管理費が増加したことであります。この結果、営業損失は212,572千円(前事業年度は営業損失100,754千円)となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常損失)
営業外収益は広告収入等により3,270千円(前事業年度比846.6%増)、営業外費用は支払利息の計上により1,150千円(前事業年度比94.0%減)となり、この結果、経常損失は210,452千円(前事業年度は経常損失119,690千円)となりました。
(特別損失、当期純損失)
Fanicon事業に係る事業用資産につき減損損失を計上したこと等により、特別損失は260,121千円となりました。
法人税、住民税及び事業税並びに法人税等調整額を加減した、当期純損失は488,468千円(前事業年度は当期純損失109,200千円)となりました。
c キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に含めて記載しております。
d 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等について
経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標(以下KPIと呼ぶ。KPIは、Key Performance Indicatorの略称であり、重要業績指標を意味する)については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」をご参照ください。注力事業であるFanicon事業のKPIの推移は以下のとおりとなっており、当事業の成長が当社全体の成長ドライバーとなっていることから、当該KPIの進捗を週次ベースで注視し、経営上の目標達成状況を判断しております。
KPIのひとつであるアイコン数はローンチ以来の地道な営業活動を通じ、下記のとおり順調に増加しており、その結果ファン数も順調に増加しております。
アイコン数及びファン数(有料課金ユーザー数)の推移(各四半期末時点)
アイコン数
ファン数
(有料課金ユーザー数)
2022年12月期第1四半期
2,316
181,125
2022年12月期第2四半期
2,397
191,665
2022年12月期第3四半期
2,461
201,852
2022年12月期第4四半期
2,474
211,821
法人セールス事業においては、安定成長を目指していることから、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、法人セールス事業の売上高及び売上総利益額を重要な経営指標としております。当該指標の推移は以下のとおりであります。
法人セールス事業の売上高
(千円)
法人セールス事業の売上総利益額
(千円)
2022年12月期
1,839,301
603,565
③ 資本の財源及び資金の流動性
当事業年度のキャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社は、当社の資本の財源及び資金の流動性については、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。運転資金は自己資金及び必要に応じて銀行からの借入金を基本としており、借入実績もあることから、過去借入実行した金額の範囲は可能と考えております。運転資金需要のうち主なものは、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。これらの必要な資金については、必要に応じて多様な資金調達を実施してまいります。
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