【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当社グループを取り巻く医療・ヘルスケア業界においては、高齢化社会の進行とともに医療の担い手不足や地域偏在、診療科偏在が課題に挙げられてきました。日本の医療費は40兆円を超え2040年度には約66兆円を見込み、医療費の削減、医師の自己犠牲的な長時間労働により支えられている危機的な状況の改善など、持続可能な医療サービスを実現するための対策が求められてきました。
2020年年明けから感染が拡大した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2022年7月以降、従来よりも感染力が強いオミクロン株派生型の発生により感染は急拡大し、8月には感染者数が過去最多となった第7波、続く12月の第8波ではさらにそれを上回る感染者数を記録し、またインフルエンザとの同時流行となりました。
政府及び行政機関では感染症対策と社会経済活動の維持との両立に取り組んでおり、医療業界においては、オミクロン株に対応したワクチン接種の開始や小児への対応など対応範囲を広げる一方、急増する新規感染者の確定診断、オンライン診療、自宅療養者への往診及び健康観察を実施するフォローアップセンターなど、医療サービスは様々な状況に応じた需要への対応を求められてきました。
このような状況の中、当社グループは、医療人材マッチングアプリ「MRT WORK」や採用管理システム、BPOといったツールやサービスにさらなる改良を加え、要請の拡大に対応できるよう、医療従事者確保や、案件の整理および調整、医療従事者の労務管理などの業務の効率化、最適化を図りました。
こうしたサービス基盤を元に、2021年に引き続き新型コロナワクチン大規模接種会場への医療従事者の紹介や自宅療養者向けフォローアップセンター、新規感染者向け陽性者登録センターなどの運営を受託し、運営してまいりました。さらに、センター運営業務とアプリ「Door.」の活用により、2021年に引き続き往診、オンライン診療による自宅療養者支援も継続し、さらに新規感染者の陽性確定診断や、診療および処方、医薬品配送の支援といった各自治体からの多様な要請にも対応してまいりました。
一方、企業に向けても、ワクチン接種の促進を図る企業からの増大する要請に応え、新型コロナワクチンの職域接種や、抗原検査、抗体検査の付帯サービス、インフルエンザ予防接種支援等、新型コロナウイルス関連事業によって蓄積したノウハウを活用した医療サービスの拡大も推めております。
そのほか、医療人材の地域偏在の解消に向け、広島県福山市から医療版ワーケーション(福山モデル)の試行実施業務を受注しMRT、JTB、福山市の3者で連携し実証実験に取り組んでまいりました。また、経済産業省からは地域新 MaaS 創出推進事業を受託し、三重県大台町において、マルチタスク車両を用いたオンライン診療からオンライン服薬指導、薬剤の配送の実証実験も行っております。
12月には新たに株式会社 メディアルトを子会社化し、医療サービスのさらなる多角化を図っております。メディアルト社は医薬品の広告やパンフレット、医学学会の記事集等の制作や医薬品情報提供用 WEB サイトの構築を通じて、医師や医療従事者に情報提供を行い、また病院内ポスターやパンフレット制作を通じて患者への疾患啓発活動を行っております。特に腫瘍学(oncology)分野を得意とし、幅広い知見と経験を有するメディカルライターをはじめとした人材を擁しております。当社グループの医療従事者会員に向けた医療・医薬情報の提供の充実を図り、医療従事者会員の満足度向上およびネットワークの拡大、また医製薬メーカーなどこれまでにない取引先が加わることにより、新たな医療サービスの構築、さらに当社グループの収益力の強化、企業価値の向上を図るものと考えております。
当社グループは、これまで作り上げてきた医療ネットワークおよびプラットフォーム、サービスを最大限に活用し医療現場の一助となれるよう引き続き尽力してまいります。
以上の結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
当連結会計年度末における資産合計につきましては、8,092,553千円となり、前連結会計年度末に対して3,108,920千円増加しました。
当連結会計年度末における負債合計につきましては、3,607,771千円となり、前連結会計年度末に対して917,414千円増加しました。
当連結会計年度末における資本合計につきましては、4,484,781千円となり、前連結会計年度末に対して2,191,505千円増加しました。
b.経営成績
当連結会計年度の売上収益は8,738,193千円(前年同期比95.5%増)、営業利益は2,977,464千円(同135.0%増)、税引前当期利益は2,936,466千円(同134.0%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は2,159,994千円(同178.9%増)となりました。また、売上収益の内訳は、医療人材サービス(医師、その他の医療従事者)4,010,984千円(同7.8%増)、その他4,727,208千円(同532.4%増)であります。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比べ3,876,582千円増加し、4,889,863千円となりました。
当連結会計年度中における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動の結果獲得した資金は4,511,679千円(前年同期は298,893千円の使用)となりました。これは、主に法人所得税の支払額が781,559千円ありましたが、営業債権及びその他の債権が1,276,896千円減少、営業債務及びその他の債務が429,432千円増加、及び税引前当期利益2,936,466千円を計上したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動の結果使用した資金は431,114千円(前年同期比108.8%増)となりました。これは、主にアプリ「Door.」及び「MRT WORK」の開発等に係る無形資産の取得による支出63,853千円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出350,515千円があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動の結果使用した資金は203,982千円(前年同期比202.3%増)となりました。これは、主に金融機関からの長期借入れによる収入が150,000千円増加しましたが、金融機関からの長期借入金の返済による支出175,543千円、社債の償還による支出60,000千円及びリース負債の返済による支出118,474千円があったことによるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
当社グループは、医療情報プラットフォームの提供事業の単一セグメントであるため、セグメント情報の記載を省略しております。
a.生産実績
当社グループは、製品の生産を行っていないため、記載すべき事項はありません。
b.受注実績
当社グループは、受注生産を行っていないため、記載すべき事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績を売上収益区分別に示すと、次のとおりであります。
売上区分別の名称
当連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
販売高(千円)
前年同期比(%)
医療人材サービス
4,010,984
107.8
その他のサービス
4,727,208
632.4
合計
8,738,193
195.5
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.当社グループの当連結会計年度末における財政状態及び経営成績の状況は、次のとおりであります。
(資産)
当連結会計年度末における資産合計につきましては、8,092,553千円となり、前連結会計年度末に対して3,108,920千円増加しました。これは、主に営業債権及びその他の債権が1,232,805千円減少したものの、営業活動において資金4,511,679千円を獲得したことにより現金及び現金同等物が3,876,582千円増加、新規連結子会社の増加によりのれんが336,695千円増加したことによります。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計につきましては、3,607,771千円となり、前連結会計年度末に対して917,414千円増加しました。これは、主に金融機関からの借入金の返済及び社債の償還により社債及び借入金が84,823千円減少、リース負債が84,069千円減少しましたが、陽性者登録センター及びオンライン診療の事業運営に係る費用の増加により営業債務及びその他の債務が445,858千円増加、未払消費税等や将来支給の人件費の見積額の増加によりその他の流動負債が485,898千円増加したことによります。
(純資産)
当連結会計年度末における資本合計につきましては、4,484,781千円となり、前連結会計年度末に対して2,191,505千円増加しました。これは、主に利益剰余金が2,161,008千円増加したことによります。
b.当社グループの当連結会計年度における経営成績の状況は、次のとおりであります。
(売上収益)
当連結会計年度における売上収益は、自宅療養者向けフォローアップセンター、前年度から継続している自治体による新型コロナウイルスワクチンの大規模接種に係る医療従事者紹介、RPO・BPOを含む医療機関経営支援に加えて、自宅療養者向けフォローアップセンター、新規感染者向け陽性者登録センターなどの運営を受託したことにより売上収益が伸長しました。
この結果、当連結会計年度における売上収益は、医療人材サービス(医師、その他の医療従事者)4,010,984千円(前年同期比7.8%増)、その他4,727,208千円(同532.4%増)の8,738,193千円となりました。
(売上原価、売上総利益)
当連結会計年度における売上原価は、自宅療養者向けフォローアップセンター及び新規感染者向け陽性者登録センターの運営に係る費用が増加したことにより、売上原価率が連結会計年度に比して15.5ポイント増加し、36.0%となりました。
この結果、当連結会計年度における売上総利益は、5,596,152千円(同57.5%増)となりました。
(販売費及び一般管理費、その他の収益、その他の費用、営業利益)
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は、新型コロナウイルスワクチン接種に係る医療従事者紹介の売上収益の大幅な増加による業績賞与等人件費が増加しましたが、人件費の対売上収益比率は前連結会計年度に比して5.6ポイント低下し15.1%となりました。
この結果、当連結会計年度における営業利益は、2,977,464千円(同135.0%増)となりました。
(金融収益、金融費用、税引前当期利益)
当連結会計年度において、純損益を通じて公正価値で測定する金融資産の公正価値の減少30,942千円、社債及び借入金等に係る利息8,397千円等を金融費用として計上しました。
この結果、当連結会計年度における税引前当期利益は、2,936,466千円(同134.0%増)となりました。
(親会社の所有者に帰属する当期利益)
当連結会計年度における親会社の所有者に帰属する当期利益は、実際負担税率25.7%の法人所得税費用754,043千円を計上した結果、2,159,994千円(同178.9%増)となりました。
c.当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、次のとおりであります。
当社グループの事業に関連する医療・ヘルスケア市場においては、医局人事統制力の緩和、恒常的な医師不足等といった状況が発生しており、医療分野の人材流動化の傾向が強まっております。このような環境下で、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 2.優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載のとおり、MRTブランドの浸透、医師会員数及び登録医療機関数の増加が当社の経営成績に重要な影響を与える要因と考えております。そのため、当社グループは、MRTの知名度の向上と医師会員及び登録医療機関の獲得のためにサービスの拡充を図ってまいります。
また、当社グループは、当社、株式会社NOSWEAT(2017年1月連結子会社化)、株式会社医師のとも(2017年12月連結子会社化)及び株式会社日本メディカルキャリア(2018年3月連結子会社化)において、医療人材サービスを提供しており、各社のサービスの強み、ブランド価値を経営資源として有効に活用し、医療従事者に向けた訴求力を高めていく必要があります。
d.経営方針・経営戦略、経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標等については、次のとおりであります。
当社グループは、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 3.経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、売上収益、営業利益、親会社の所有者に帰属する当期利益の対前年度比としております。
第21期
(自 2019年4月1日
至 2019年12月31日)
第22期
(自 2020年1月1日
至 2020年12月31日)
第23期
(自 2021年1月1日
至 2021年12月31日)
第24期
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
売上収益(千円)
1,973,223
2,562,419
4,469,202
8,738,193
対前期増減率(%)
-
-
74.4
95.5
営業利益(千円)
198,234
264,363
1,267,171
2,977,464
対前期増減率(%)
-
-
379.3
135.0
親会社の所有者に帰属する当期利益(千円)
108,596
131,810
774,492
2,159,994
対前期増減率(%)
-
-
487.6
178.9
(注)第21期は決算の末日を3月31日から12月31日に変更しましたことで9ヶ月決算となっております。そのため、第21期及び第22期は対前期増減率については記載しておりません。
当社グループは、全国に向けて医療人材サービスの拡大を目指しており、新型コロナウイルスワクチン接種業務に必要な医師を中心とする医療人材の紹介が拡大し、当連結会計年度における売上収益は8,738,193千円となりました。登録・受付センター等の業務の受託に伴い運営に係る人件費及び外注費等の売上原価が増加した結果、売上総利益の対売上収益比率が大幅に減少しましたが、販売費及び一般管理費の人件費など固定費の増加を抑えることにより営業利益の対売上収益比率は、5.7ポイント上昇しました。また、法人税の特別控除等により法人所得税の実際負担税率が10.2ポイント下降したことも相まって、親会社の所有者に帰属する当期利益の対売上収益比率は、7.4ポイント上昇しました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度末におけるキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、次のとおりであります。
当社グループは、事業規模の拡大及び新規事業の育成を通じた収益基盤の多様化を通じて持続可能な長期的な成長を実現し、企業価値の最大化を目指しております。この企業価値の最大化を目指すために、親会社所有者帰属持分比率を資本管理において用いる指標としております。
当社グループの資金需要は、医療機関に対して一時的な資金の立替等を行う経営支援サービスに係る資金、人件費及び販売促進費等の営業費用の他、非常勤医師紹介及びDoor.に係るシステム構築並びにM&Aとなります。必要な資金は、自己資本及び借入金のバランスを考慮して調達する方針であります。なお、運転資金等の流動性が必要な資金につきましては、取引金融機関から証書貸付による資金調達以外に、取引金融機関との当座貸越枠の設定を行い、弾力的な資金調達ができるようにしております。
前連結会計年度及び当連結会計年度における親会社所有者帰属持分比率は次のとおりであります。
前連結会計年度
(2021年12月31日)
当連結会計年度
(2022年12月31日)
親会社の所有者に帰属する持分(千円)
2,222,336
4,391,413
負債及び資本合計(千円)
4,983,633
8,092,553
親会社所有者帰属持分比率(%)
44.59
54.27
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されています。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っていますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらと異なることがあります。この連結財務諸表の作成にあたる重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況」に記載しております。
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