【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期報告書の提出日現在において判断したものであります。
(1)経営成績の状況
当第1四半期連結累計期間におけるわが国経済は、一部に弱さがみられるものの緩やかに持ち直しつつある状況にあります。企業の業況判断につきましては、製造業で悪化となる一方で、個人消費やインバウンド需要の回復を背景に小売等の消費は改善傾向にあり非製造業の景況感は改善しました。企業収益は業種ごとでばらついているものの、企業の設備投資意欲は旺盛とみられています。
医薬品業界におきましては、厚生労働省から2023年度薬価改定が告示されました。2度目の中間年改定となる今回の改定では全収載品目の48%(9,300品目)で薬価が引き下げられた一方で、物価高騰や安定供給に対する特例的な対応として実施された「不採算品再算定」によって1,100品目で薬価の引き上げが行われました。さらに、イノベーションに対する配慮から、新薬創出加算の加算額を臨時・特例的に増額し、従前の薬価と遜色ない水準とする対応が行われました。これと並行して、業界団体は薬価制度を含めた創薬イノベーション・エコシステムの強化が喫緊の課題であるとして、2024年度薬価制度改革への提言を行う動きを見せております。
このような業界の動向は、創薬事業を営む当社グループのような創薬ベンチャー企業の事業開発活動におきましても少なからず影響を与えております。
このような環境下におきまして、当第1四半期連結累計期間における当社グループの業績は以下の通りとなりました。
上市済みのヒト用医薬品につきましては、HK inno.N Corporation(本社:韓国・オソン、以下「HKイノエン社」)が韓国で販売中の胃食道逆流症治療薬K-CAB®(一般名:tegoprazan、以下「tegoprazan」)の売上が前年に引き続き好調に推移し、院外処方データでは357億ウォン(前年比15.2%増、約35億円/1韓国ウォン=0.10円となっております。また、HKイノエン社は、韓国において、びらん性胃食道逆流症治癒後の維持療法向けにtegoprazanの含有量を既存の製剤の半分に減らした新製剤「K-CAB®錠 25 mg」を発売いたしました。これにより、K-CAB®は韓国で販売されているカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(Potassium Competitive Acid Blocker: P-CAB)系胃酸分泌抑制剤の中で、唯一、びらん性胃食道逆流症の発症時から治癒後の全ての段階で使用できる薬剤となりました。
Tegoprazanのグローバル展開も順調に進展しております。当社は、HKイノエン社との間で、tegoprazanの開発・販売及び製造の再実施許諾権(サブライセンス権)付き独占的ライセンス契約を締結しており、HKイノエン社とライセンス契約を締結した企業(以下「サブライセンス先」)がそれぞれの国・地域で開発・製造・販売にかかる取り組みを進めております。当第1四半期連結会計期間末日現在、韓国を含む36カ国に進出済みであり、韓国、中国、フィリピン及びモンゴルの4カ国においてtegoprazan製品が販売されております。
中国におきましては、3月から中国における公的医療保険である国家基本医療保険の償還対象となることが決定されました。従来は公的医療保険の償還対象ではなく全額が患者の自己負担でありましたが、医療保険の償還対象となることで医薬品へのアクセスが向上し今後の売上高の拡大が期待されます。さらに、シンガポール及びメキシコにおきまして、サブライセンス先が現地の規制当局から販売承認を取得し、販売開始に向けた準備を進めております。これに伴い、当社はHKイノエン社との契約に基づき、HKイノエン社から一時金を受領いたしました。
ペット用医薬品につきましては、Elanco Animal Health Inc.(本社:米国・インディアナ州)に導出した犬の骨関節炎治療薬であるGALLIPRANT®(一般名:grapiprant)、犬の食欲不振症の適応を持つ ENTYCE®(一般名:capromorelin)、及び慢性腎不全の猫の体重減少管理の適応を持つELURA®(一般名: capromorelin)の売上が、前年に引き続き堅調に推移しております。
その他の導出済みプログラムにつきましても、導出先企業及びサブライセンス先におきまして前臨床開発段階以降の取り組みが進められております。当第1四半期連結累計期間におきましては、当社が株式会社AskAt(本社:愛知県名古屋市、以下「AskAt社」)に導出し、AskAt社からOxford Cannabinoid Technologies Holdings plc(本社:英国・ロンドン、以下「OCT社」)にライセンスされたカンナビノイドCB2受容体作動薬(RQ-00202730/AAT-730/OCT461201)につきまして、OCT社が、英国の規制当局および倫理審査委員会に対して、第Ⅰ相臨床試験実施に係る治験申請を行いました。
導出準備プログラムにつきましては、前年に引き続き、自社で開発を進めているグレリン受容体作動薬の前臨床試験が進行しております。また、tegoprazanにつきましては、日本における開発・製造・販売にかかる権利を当社が保有しておりますが、国内での速やかな上市を実現するため、自社による臨床試験の実施を見送り、導出活動に専念することとして提携先候補企業との協議を進めております。その他の導出準備プログラムにつきましても、対面での面談とオンライン会議を機動的に組み合わせて提携先獲得を目指した事業開発活動を実施いたしました。
探索研究段階におきましては、前年に引き続き、開発化合物の創出及び創薬研究基盤の強化を目指して、共同研究並びに自社による単独研究の取り組みを進めました。さらに、当社は、創薬バリューチェーンとポートフォリオのさらなる充実化を図るため、湘南ヘルスイノベーションパーク(神奈川県藤沢市)に新たな研究拠点を設置いたしました。本拠点では、新規モダリティ、標的分子探索、AIの創薬応用等に関する最先端の知見や技術を保有する企業との協業機会を得るべく活動を行っております。
当社連結子会社のテムリック株式会社がSyros Pharmaceuticals Inc.(本社:米国・マサチューセッツ州、以下「シロス社」)に導出したレチノイン酸受容体α作動薬(タミバロテン/TM-411/SY-1425)につきましては、骨髄異形成症候群(MDS)及び急性骨髄性白血病(AML)を対象とした臨床試験が米国において進められております。当第1四半期連結累計期間におきましては、シロス社が米国食品医薬品局(FDA: Food and Drug Administration)より高リスク骨髄異形成症候群 (HR-MDS)を対象としたファストトラック指定を取得いたしました。ファストトラック指定を受けた医薬品候補物質は、開発計画に関するFDAとの意見交換をより頻繁に行うことができ、さらに、臨床データによる裏付けがあれば、優先審査や迅速承認の対象となる可能性があります。
このほか、2022年12月20日付の取締役会において決議いたしました、CVI Investments, Inc.に対する第三者割当の方法による新株式及び第16回新株予約権の発行につきましては、2023年1月5日に払込手続が完了いたしました。
以上の結果、当第1四半期連結累計期間の経営成績は、事業収益370百万円(前年同四半期比9.2%増)、営業損失108百万円(前年同四半期は、営業損失119百万円)、経常損失110百万円(前年同四半期は、経常損失70百万円)、親会社株主に帰属する四半期純損失148百万円(前年同四半期は、親会社株主に帰属する四半期純損失120百万円)となりました。
なお、事業費用の総額は479百万円(前年同四半期比4.4%増)となり、その主な内訳は事業原価59百万円(前年同四半期比11.7%増)、研究開発費268百万円(前年同四半期比1.7%増)及びその他の販売費及び一般管理費151百万円(前年同四半期比6.6%増)となりました。
(2)財政状態の分析
(資 産)
当第1四半期連結会計期間末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ699百万円増加(11.2%増)し、6,957百万円となりました。これは主に、現金及び預金の増加596百万円、売掛金及び契約資産の減少209百万円及び投資有価証券の増加139百万円によるものであります。
(負 債)
当第1四半期連結会計期間末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ54百万円減少(7.1%減)し、706百万円となりました。これは主に、買掛金の減少66百万円、未払法人税等の減少23百万円及び長期借入金の増加39百万円によるものであります。
(純資産)
当第1四半期連結会計期間末における純資産合計は、前連結会計年度末に比べ754百万円増加(13.7%増)し、6,251百万円となりました。これは主に、第三者割当増資に伴う資本金及び資本準備金の増加786百万円、親会社株主に帰属する四半期純損失148百万円の計上及びその他有価証券評価差額金の増加96百万円によるものであります。
以上の結果、自己資本比率は89.5%(前連結会計年度末比1.8ポイント増)となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況
当第1四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ603百万円増加(16.4%増)し、4,282百万円(前年同四半期は、2,404百万円)となりました。
当第1四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により使用した資金は、210百万円(前年同四半期は、資金の獲得372百万円)となりました。これは主に、税金等調整前四半期純損失110百万円を計上したことのほか、売上債権の減少209百万円による資金の獲得、仕入債務の減少66百万円、未払金の減少101百万円による資金の使用及び法人税等の支払額49百万円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は、33百万円(前年同四半期比86.3%減)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出26百万円及び無形固定資産の取得による支出6百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により獲得した資金は、840百万円(前年同四半期は、資金の使用4百万円)となりました。これは主に、株式の発行による収入782百万円、新株予約権の発行による収入19百万円、長期借入れによる収入50百万円及びリース債務の返済による支出10百万円によるものであります。
(4)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当第1四半期連結累計期間において、前連結会計年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第1四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(6)研究開発活動
当第1四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は、268百万円であります。また、当第1四半期連結累計期間において、研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(7)資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループは、事業活動のための適切な流動性の確保及び株主価値向上のための資金調達戦略の実行を基本方針としております。
資本の財源につきましては、医薬品の上市品目が増えたことにより、長期的かつ安定的なロイヤルティ収入が主要な財源となっております。一定規模以上の臨床開発を除き、ロイヤルティ収入を財源として医薬品の研究開発を進めてまいります。また、今後の臨床開発等の資金需要に対して、機動的かつ安定的な資金調達手段を確保するため、三菱UFJ銀行とコミットメントライン契約(契約金額:10億円)を締結しているほか、ファイナンス・リースや銀行借入等のチャネルの活用により財務基盤の強化を図っております。
現時点での資金の流動性につきましては、当第1四半期連結会計期間末の流動比率は1,410.2%であり、十分な流動性を確保できているものと認識しております。
当第1四半期連結累計期間の四半期連結キャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 2 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (3) キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
