【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概況ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)経営成績
[内外環境]
当連結会計年度におけるわが国経済は、長引くコロナ禍からWithコロナの新たな段階への移行が進む中、徐々に正常化に向かいました。年度後半にはインバウンド需要も戻りはじめ、個人消費は緩やかな回復基調を維持しました。一方で、長期化するウクライナ情勢、原材料・資源価格の上昇、為替相場の大幅な変動や、これらに端を発した世界的な物価高など、当社を取巻く内外環境には、依然として、様々なリスク要因が残っており、本格的な景気回復にはいまだ道半ばの状況となっています。
[主要施策]
当社グループは、人々のくらしに寄り添う商品をラインアップし、複数の生活用品カテゴリーによる事業ポートフォリオの最適化に取り組んでいますが、長期に亘るコロナ禍が当社にもたらしたものは、2期連続赤字という重大な経営課題でした。
このため、足元の赤字縮減・脱却を図るべく、Withコロナの状況においても着実に利益を上げられる事業構造への見直し・強化策として、OEM事業においては、サプライチェーン全般におけるローコスト・オペレーションを積極的に推し進め、ブランド事業においても、市場動向・規模に合わせた店舗網にダウンサイズを図るなど、コスト構造の抜本的な見直しによる採算性向上に注力し、一定の成果を出しつつあります。
また、持続的・安定的な成長を取り戻すために、不採算事業の見直しを推し進め、業績回復が見込めない事業については、事業の統廃合を含む抜本的な構造改革に注力してまいりました。
コロナ禍を経て見えてきた、以下の5つの成長ドライバーについては、引き続き中長期的な注力分野として取り組んでまいります。
①EC事業の更なる強化
②海外現地拠点を活用した海外ビジネスの一層の拡大発展
③サプライチェーンコントロールの重要性
④新規ブランド開拓による取扱い商品カテゴリーの拡充
⑤サステナビリティへの取り組み
[連結業績]
当連結会計年度のOEM事業における売上高は、服飾雑貨事業セグメントの大幅回復を筆頭に、すべての報告セグメントで前期比増加となりました。ブランド事業においても、巣ごもり需要の減退により売り上げが減少した家具家庭用品事業セグメントのネットショップ事業を除いて、前期を上回る売上高となりました。
この結果、当連結会計年度の売上高につきましては、前期比13.8%増加の386億5千4百万円となりました。利益面につきましては、売上高の増加を主因に、売上総利益は前期比11億8千4百万円増加の94億2千5百万円となりました。営業利益につきましては、売上総利益の増加に加えて、ブランド事業での店舗戦略見直しによる経費削減等により販管費が前期比3千3百万円の増加に抑えられたことから、前期比で11億5千万円増加し、2億3千8百万円の黒字に転じました。経常利益につきましても、急激な円安進行による為替差損の計上があったものの、営業損益の黒字化を主因に、前期比9億1千6百万円増加の2億5千8百万円の黒字となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、家電事業セグメントにおける固定資産の減損損失を計上したことなどから、1億5千8百万円の最終損失となりましたが、前期比では7億8千7百万円の改善となりました。
[セグメント別業績]
(家具家庭用品事業)
当報告セグメントの売上高は、前期比5.1%増加の220億7千4百万円となりました。OEM事業では、国内外での消費活動の回復を受けて、受注状況が大きく改善し、前期比増加しました。ブランド事業においては、ドイツのテーブルウェアブランド「Villeroy & Boch(ビレロイアンドボッホ)」等を取扱う(株)エッセンコーポレーションの売り上げが前期比増加しましたが、巣ごもり需要の減退により「MINT(ミント)」などの家具・インテリアのネットショップの売り上げが、前期比減少しました。
セグメント利益については、原材料・資源価格上昇等のコスト高の影響があったものの、受注状況改善による売上高の増加を主因として、前期比1億1千5百万円増加の8億6千5百万円となりました。
(服飾雑貨事業)
当報告セグメントの売上高は、前期比42.4%増加の110億1千6百万円となりました。Withコロナの定着で移動・行動制限の緩和が世界的に大きく進み、インバウンド需要も年度後半から堅調に戻り始めたことから、OEM事業・ブランド事業ともに、外出やトラベル関連の商材の売り上げが大幅に回復しており、前期比増加しました。ブランド事業の内訳としては、ドイツのコンフォートシューズブランド「BIRKENSTOCK(ビルケンシュトック)」等を販売する(株)ベネクシーおよびベルギーのプレミアム・カジュアルバッグブランド「Kipling(キプリング)」を販売する(株) L&Sコーポレーションの売り上げが、消費活動の回復や店舗集約による販売力向上等の効果もあり、前期比で大きく増加しました。
セグメント利益については、売上高の増加およびブランド事業における採算性の向上や在庫水準の適正化を主因に、前期比11億8千4百万円増加と大きく改善し、4億6千万円の黒字回復となりました。
(家電事業)
当報告セグメントの売上高は、前期比5.3%増加の38億7千万円となりました。OEM事業では、受注が伸び悩み、前期比同水準となりました。ブランド事業においては、理美容家電・調理家電などを取扱う(株)ゼリックコーポレーションの売り上げが、巣ごもり需要の減退や開発遅延により調理家電が苦戦を強いられましたが、ヘアドライヤーを中心に理美容家電の国内向けが伸長したことを主因として、前期比増加しました。
セグメント利益については、原材料価格の高騰や受注減にともなう原価率の上昇もあり、前期比1億1千8百万円減少の3億7千6百万円の損失となりました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
①生産実績
当連結会計年度におけるセグメントごとの生産実績は、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
自 2022年4月1日
至 2023年3月31日
生産実績(千円)
前期比(%)
家具家庭用品事業
420,799
15.6
家電事業
921,379
△10.2
合計
1,342,178
△3.5
②受注実績
当連結会計年度におけるセグメントごとの受注状況は、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
自 2022年4月1日
至 2023年3月31日
受注高(千円)
前期比(%)
受注残高(千円)
前期比(%)
家具家庭用品事業
21,869,930
7.0
4,693,662
△4.1
服飾雑貨事業
12,271,866
64.1
2,092,577
150.0
家電事業
4,045,615
12.1
793,780
28.3
報告セグメント計
38,187,412
21.1
7,580,021
19.3
その他
1,870,275
13.1
275,722
180.9
合計
40,057,688
20.7
7,855,744
21.8
(注) 金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
③販売実績
当連結会計年度におけるセグメントごとの販売実績は、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
自 2022年4月1日
至 2023年3月31日
販売高(千円)
前期比(%)
家具家庭用品事業
22,074,557
5.1
服飾雑貨事業
11,016,409
42.4
家電事業
3,870,537
5.3
報告セグメント計
36,961,503
14.0
その他
1,692,710
8.4
合計
38,654,214
13.8
(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先
前連結会計年度
自 2021年4月1日
至 2022年3月31日
当連結会計年度
自 2022年4月1日
至 2023年3月31日
販売高(千円)
割合(%)
販売高(千円)
割合(%)
㈱良品計画
14,008,974
41.2
15,689,220
40.6
(注) 上記販売額には、㈱良品計画ならびに同社の子会社への売上高を記載しております。
次期連結会計年度の見通し
わが国経済は、長引くコロナ禍から正常化への回復途上にありますが、わが国を取巻く環境には、[内外環境]に記載したとおり、依然として、様々なリスク要因が残っています。
こうした状況下、当社グループは、2023年度を、黒字体質回復に向けた基礎固めの年度と位置付け、引き続き事業の棚卸やコスト構造の見直しなどの体質改善策に注力します。たとえば、2023年4月1日付で関係会社の㈱ゼリックコーポレーションを当社に統合しましたが、これは、人的資産を含むオペレーションの合理化・効率化、ならびに開発力・営業ノウハウ・チャネル等の営業資産の集約化による家電事業の総合力向上を目的としたものです。また、各事業領域でこれまで実施してきた抜本的なコスト構造の見直しも最終局面にあります。個人消費の回復基調が顕著となりつつある好機を逃すことなく、各種施策をタイムリーに打ち出して収益基盤強化に努める所存です。
その結果、次期の連結業績としては、売上高360億円(前期比6.9%減少)、営業利益1億2千万円(前期比約1億2千万円減少)、経常利益2億円(前期比約6千万円減少)、親会社株主に帰属する当期純利益3千万円(前期比約1億8千万円改善)となる見込みです。売上高は前期比減少するものの、収益面では黒字を確保できる筋肉質な経営体質への強化を図ってまいります。
なお、通期の業績見通しの前提となる為替レートは1米ドル135.00円としております。
(業績予想に関する留意事項)
本資料における業績予想および将来の予測等に関する記述は、当連結会計年度末現在で入手した情報に基づき判断した予想であり、潜在的なリスクや不確実性が含まれております。
従いまして、実際の業績は様々な要因により、これらの業績予想とは異なることがありますことをご承知おきください。
(2)財政状態
①流動資産
「売掛金」などが増加しましたが、主に「商品及び製品」が7億5千万円減少したことにより、当連結会計年度末の流動資産は前連結会計年度末と比べて7億5百万円減少の150億1百万円となりました。
②固定資産
「有形固定資産」「無形固定資産」が減少したことにより、当連結会計年度末の固定資産は前連結会計年度末と比べて4億2千4百万円減少の46億5千1百万円となりました。「投資有価証券」は1億2千4百万円増加しましたが、これは主に、政策保有株式の時価評価が上昇したことによるものです。
③流動負債
主に「短期借入金」の減少により、当連結会計年度末の流動負債は前連結会計年度末と比べて11億4千5百万円減少の55億4千万円となりました。「短期借入金」は11億3千1百万円の減少となりましたが、これは主に運転資金の減少によるものです。
④固定負債
「リース債務」「資産除去債務」「繰延税金負債」が減少したことにより、当連結会計年度末の固定負債は前連結会計年度末と比べて7千8百万円減少の39億1千4百万円となりました。
⑤純資産
当連結会計年度末の純資産は前連結会計年度末と比べて9千3百万円増加の101億9千7百万円となりました。これは、「利益剰余金」「繰延ヘッジ損益」がそれぞれ2億5百万円、1億9百万円減少したものの、「為替換算調整勘定」が3億6百万円増加したことによるものです。
この結果、自己資本比率は51.3%、1株当たり純資産は4,217円42銭となりました。
(3)キャッシュ・フローの概況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べて1億5千4百万円減少の44億4千4百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得られた資金は、9億7千3百万円(前期は7億5千5百万円のキャッシュアウト)となりました。
税金等調整前当期純利益は、営業損益の黒字化を主因に、前期比8億4千3百万円増加の1億2千万円となりました。
非資金費用である減価償却費は、前期比3千8百万円減少しました。また、減損損失は、採算性が悪化している子会社工場の固定資産等の減損処理により、前期比1億6百万円増加の1億7千1百万円となりました。
棚卸資産は、ブランド子会社での仕入低減施策等や売上高の増加により、7億9千1百万円減少しました。
法人税等の支払額は、前期比2億8千5百万円減少の2億1千6百万円の支出となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は、1億1千5百万円(前期は8千3百万円のキャッシュアウト)となりました。これは主に、投資有価証券の売却で4千2百万円の収入があった一方、店舗の設備投資や新商品の金型投資など有形固定資産の取得として1億5千3百万円を支出したためです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により使用した資金は、12億4千万円(前期は10億8千4百万円のキャッシュアウト)となりました。
短期借入金が11億4千万円減少しましたが、これは、主に運転資金の返済によるものです。
また、配当金の支払額は4千7百万円となりました。
(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移
2019年3月期
2020年3月期
2021年3月期
2022年3月期
2023年3月期
自己資本比率(%)
48.9
51.0
46.7
48.1
51.3
時価ベースの自己資本比率(%)
29.5
30.1
21.1
18.7
19.7
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)
11.6
1.8
△9.3
△8.0
5.0
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)
15.0
71.2
△22.4
△19.0
26.2
(注)1 各項目における算出式は、以下のとおりであります。
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
2 いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
3 株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
4 キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。
5 有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としてお
ります。
6 利払いは、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
資金需要
当社グループの主要な資金需要は、棚卸資産の購入のほか、人件費、販売費及び一般管理費等の費用ならびに当社グループの設備の新設および改修等に係る投資となります。また、今後、当社グループの新たな収益源となり、企業価値向上に資するとの判断から、M&Aを含む新規事業への投資も資金需要の対象となります。
財務政策
資金需要の財源といたしましては、営業活動によるキャッシュ・フローおよび自己資金のほか、主要取引銀行から供与された円資金借入枠に基づく借入金となります。なお、当社および国内関係会社との間でCMS(キャッシュ・マネジメント・サービス)を導入しており、これにより、各社における余剰資金を当社へ集中し一元管理することで、資金効率の向上に努めています。また、「流動性の確保」「金利上昇リスクのヘッジ」等を目的に社債の発行および長期借入金の実行もしております。
一方、当社では、為替相場変動リスクのヘッジ方法の一貫として、国内OEM取引先との間で商品代金等の決済を米ドル建てで行う契約を締結しています。このため、短期のつなぎ資金として米ドル資金が必要となりますが、その調達源として、当社では、主要取引銀行との間で中長期多通貨コミットメントラインを締結しております。これにより、今後、本邦において米ドル資金調達リスクが想定外に顕在化した場合でも、米ドル資金の流動性を確保することができます。
(4)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、以下の重要な会計方針が、当社の連結財務諸表の作成において使用される当社の重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすものと考えております。
①貸倒引当金
当社グループは、顧客の支払不能時に発生する損失として過去の貸倒実績率により、貸倒引当金を見積り計上しております。顧客の財政状態が悪化し、その支払能力が低下した場合、追加引当が必要になる可能性があります。
また、当社においては子会社への貸付金等債権があり、子会社の支払能力について毎期検討をしております。支払能力が低いと判断した場合には追加引当が必要な可能性があります。
当該見積りのうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 2 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
②投資の減損
当社グループは、特定の顧客および金融機関に対する株式を所有しております。これらの株式には価格変動性が高い公開会社の株式と株価の決定が困難である非公開会社の株式が含まれます。当社グループは投資価値の下落が一時的ではないと判断した場合、一定の基準に基づいて投資の減損処理をしております。将来の市況悪化または投資先の業績不振により現在の帳簿価額に反映されていない損失または帳簿価額の回収不能が発生した場合は、評価損の計上が必要になる可能性があります。
また、当社においても子会社への投資について、1株当たり純資産額と取得価額とを比較して1株当たり純資産が取得価額の50%以下となる場合は減損処理の要否を検討し回収不能と判定した場合は評価損の計上が必要になる可能性があります。
当該見積りのうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 2 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
③繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産を計上する場合に将来の課税所得を合理的な予想に基づき回収可能性を検討しておりますが、繰延税金資産の一部を将来回収できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産の一部を費用として計上する可能性があります。
④固定資産の減損損失について
当社グループは、経営環境の変化や収益性の低下等により、事業等に供する土地、建物や小売店内装等の投資額の回収が見込めなくなった場合には、固定資産の減損損失の追加計上が必要になる可能性があります。
当該見積りのうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
⑤棚卸資産の評価について
当社グループが取り扱う商品は特性上、陳腐化など発生しにくいものとなりますが、顧客需要の減少などによる過剰在庫の発生に備え、一定のルールで過剰割合を算出し、一定の割合で簿価切り下げを行っておりますが、見込みを超える経済環境の変化等が発生した場合は、評価損の追加計上が必要になる可能性があります。
当該見積りのうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
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