【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」をいう。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
(1) 経営成績等の状況の概要
① 経営成績当連結会計年度(2022年1月1日から2022年12月31日まで)の世界経済は、年初想定に反し、経済回復ペースの大幅な減速とインフレ高進が同時進行する展開となりました。総じて言えば、世界各国で感染症対策と経済活動の両立が進んでいた中、ロシアによるウクライナ侵攻に端を発するサプライチェーンの分断、世界的なインフレの進行とそれに伴う金融引き締めが大きな下押し要因となり、世界経済の先行きに係る不確実性は再び高まっております。この様な情勢下、当社グループにおいては、2022年2月に公表したローリング中期経営計画「T-2024」の中で、「主力事業の成長軌道回帰」「事業ポートフォリオの最適化(選択と集中)」「連結ガバナンス体制強化」の3つの基本方針を掲げ、2024年の定量目標として、売上高3,560億円、営業利益570億円、ROS16%、EBITDA910億円の達成を目指してまいりました。主力事業である黒鉛電極やカーボンブラックを中心に、原価上昇を価格に転嫁して適正利潤確保を図ると同時に、将来の需要拡大を睨み、製造能力増強も進めてきました。この結果、当連結会計年度の売上高は前期比31.5%増の3,403億7千1百万円となりました。営業利益は前期比64.7%増の405億8千8百万円となりました。経常利益は前期比71.7%増の425億2千1百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は前期比39.2%増の224億1千8百万円となりました。
セグメント別の経営成績は下記のとおりです。
[黒鉛電極事業]足許では、世界的な景気減速や原材料・エネルギーコスト上昇の影響が懸念されるものの、対面業界との比較で遅れていた電極市況回復と在庫調整が進み、販売数量も増加したことで増収増益となりました。この結果、当事業の売上高は前期比46.8%増の596億3千万円となり、営業利益は前期比大幅増の80億3千2百万円(前期は4億円の営業損失)となりました。
[カーボンブラック事業]
長期化する半導体不足の影響で自動車生産の回復は遅れていますが、補修用タイヤについては、北米のトラックバス用を中心に需要が旺盛で、カーボンブラック需要も堅調に推移しました。中国拠点売却により販売数量は前年同期比で減少したものの、原料油価格上昇分の価格転嫁も進み増収増益となりました。この結果、当事業の売上高は前期比39.2%増の1,384億8千4百万円となり、営業利益は前期比39.8%増の122億8千2百万円となりました。
[ファインカーボン事業]半導体市場は、スマートフォンやパソコンの需要低下に、米国の対中政策による影響もあり、製造装置用部品の一部に減速が見られます。一方で、SiC(シリコンカーバイド)半導体などのパワー半導体業界向けの需要は着実に増加しており、当セグメントの黒鉛及びSiC需要は総じて堅調に推移、増産効果も現出し、増収増益となりました。この結果、当事業の売上高は前期比26.2%増の493億9千3百万円となり、営業利益は前期比54.3%増の148億2千5百万円となりました。
[スメルティング&ライニング事業]
エネルギー価格高騰による欧州製錬所の操業停止・減産を、他地域の製錬所が補完した結果、アルミ電解炉用カソードの販売は好調となり、炭素電極も、堅調な金属シリコン需要を背景に好調を維持しました。原材料調達難やコスト上昇等、ウクライナ危機のインパクトは、上記市況のプラス材料を遥かに上回りましたが、売価引き上げや増産増販等により、採算維持に努めました。この結果、当事業の売上高は前期比31.2%増の652億3百万円となり、営業利益は前期比30.1%減の13億4千5百万円となりました。
[工業炉及び関連製品事業]
エネルギー関連向けの需要は堅調に推移したものの、工業炉及び発熱体の主要顧客である電子部品関連業界の減速により、想定していた納期に遅れが生じました。この結果、当事業の売上高は前期比9.7%減の162億7千2百万円となり、営業利益は前期比17.1%減の44億7千5百万円となりました。
[その他事業]
摩擦材中国建機の減速やサプライチェーンの混乱等、マイナス要因はあったものの、主要用途の需要が堅調に推移しました。この結果、摩擦材の売上高は前期比5.4%増の93億6千2百万円となりました。
負極材当社材が採用されているEVの販売不振や、新興勢台頭による競争激化により、前期比で販売が減少しました。この結果、負極材の売上高は前期比35.1%減の18億8千8百万円となりました。
その他不動産賃貸等その他の売上高は、前期比0.7%増の1億3千6百万円となりました。
以上により、当事業の売上高は前年同期比4.5%減の113億8千7百万円となり、営業利益は前期比47.0%増の11億8百万円となりました。
② 財政状態(資産の部)当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末比639億6千2百万円増の5,764億6千5百万円となりました。流動資産は、売掛金や棚卸資産等の増加により、前連結会計年度末比315億4千1百万円増の2,466億9千1百万円となりました。固定資産は、のれん、顧客関連資産等が減少したものの、有形固定資産、投資有価証券等の増加により、前連結会計年度末比324億2千万円増の3,297億7千3百万円となりました。
(負債の部)当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末比196億6千4百万円増の2,755億9千6百万円となりました。流動負債は、短期借入金やコマーシャル・ペーパーの増加により、前連結会計年度末比162億7千7百万円増の1,466億9千6百万円となりました。固定負債は、長期借入金等が減少したものの、繰延税金負債等が増加したことにより、前連結会計年度末比33億8千6百万円増の1,289億円となりました。
(純資産の部)当連結会計年度末における純資産合計は、為替換算調整勘定や利益剰余金等の増加により、前連結会計年度末比442億9千7百万円増の3,008億6千8百万円となりました。この結果、自己資本比率は、前連結会計年度末比1.9ポイント増の46.6%となりました。
③ キャッシュ・フロー当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末比150億5千7百万円減の493億7千7百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動による資金は、棚卸資産の増加等により収入が減少したものの、税金等調整前当期純利益の増加等により収入が増加し、前連結会計年度比31億3千3百万円収入増の、412億5百万円の収入となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金は、有形固定資産の取得による支出の増加等により、前連結会計年度比146億1千8百万円支出増の、499億円の支出となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金は、長期借入金の返済による支出の増加等により、前連結会計年度比118億4千1百万円収入減の、106億2千9百万円の支出となりました。
④ 生産、受注及び販売の状況
a. 生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
金額(百万円)
前期比(%)
黒鉛電極事業
67,552
+48.8
カーボンブラック事業
137,110
+39.8
ファインカーボン事業
53,540
+27.1
スメルティング&ライニング事業
65,203
+31.2
工業炉及び関連製品事業
16,827
△10.3
その他事業
11,327
△5.5
合計
351,560
+32.1
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。2.金額は、販売価格によっております。
b. 受注実績当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。なお、工業炉及び関連製品については、受注生産を行っております。
セグメントの名称
受注高(百万円)
前期比(%)
受注残高(百万円)
前期比(%)
工業炉及び関連製品事業
13,071
△32.8
15,249
△15.2
合計
13,071
△32.8
15,249
△15.2
(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。
c. 販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
金額(百万円)
前期比(%)
黒鉛電極事業
59,630
+46.8
カーボンブラック事業
138,484
+39.2
ファインカーボン事業
49,393
+26.2
スメルティング&ライニング事業
65,203
+31.2
工業炉及び関連製品事業
16,272
△9.7
その他事業
11,387
△4.5
合計
340,371
+31.5
(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況による分析・検討内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
①
当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の売上高は、カーボンブラック事業における原料油価格高騰に伴う価格転嫁や黒鉛電極事業における販売数量増加により、前期比31.5%増の3,403億7千1百万円となりました。売上原価率は、前期比で概ね横ばいとなり、0.3%ポイントダウンの72.4%となりました。
販売費及び一般管理費は売上高増加に伴う販売費の増加及び従業員給与賞与額の増加等により、前期比16.0%増の534億6千3百万円となりました。この結果、営業利益は前期比64.7%増の405億8千8百万円となりました。営業外収益については、為替差益の増加等により、前期比74.3%増の43億6千8百万円となりました。営業外費用については、概ね前期並みとなる24億3千6百万円となりました。特別利益については、当社及び連結子会社において投資有価証券売却益5億4千4百万円を計上しております。特別損失については、当社及び連結子会社において製造設備増強を目的とした設備入替等により発生した固定資産除却損6億2千4百万円を計上しております。この結果、税金等調整前当期純利益は前期比80.3%増の421億1千1百万円となりました。法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額の合計は、前期比大幅増の147億8千2百万円となり、また、非支配株主に帰属する当期純利益に49億1千万円を計上しました。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比39.2%増の224億1千8百万円となりました。また、当連結会計年度末の総資産については、流動資産は売掛金や棚卸資産の増加等により、前期比315億4千1百万円増の2,466億9千1百万円となり、固定資産は有形固定資産及び投資有価証券等の増加により、前期比324億2千万円増の3,297億7千3百万円となりました。
② 資本の財源及び資金の流動性についての分析
a. キャッシュ・フローキャッシュ・フローの状況については、 (1) ③ キャッシュ・フローに記載のとおりであります。
b. 財務政策当社グループは、成長投資の実行と安定的な事業運営を維持するため、資本効率を高めつつ、資金調達手段の多様化による安定性維持及び流動性確保と金融費用の抑制を図ることを基本方針としております。グループの資金は、本社にて一括調達・グローバルキャッシュマネジメントシステムを活用した運用を行うことにより、手元資金の効率性を高めています。手元資金を上回る大型投資案件を実行する場合には、金融機関からの借入や社債などの負債調達を基本に、調達手段や市況環境に応じて、柔軟に調達手段を選択していきます。また、金利変動リスクや流動性リスクについては、多面的にモニタリングや分析を行い、リスク量をコントロールしつつ金融費用の抑制を図っております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。重要な会計方針については、「第5
経理の状況
1
連結財務諸表等
(1) 連結財務諸表
注記事項
(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性により、これらの見積りと異なる場合があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等
(1) 連結財務諸表 注記事項
(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
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