【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績の状況
当社グループは、当連結会計年度の期首から「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しており、2022年12月期連結会計年度に係る各数値については、当該会計基準等を適用した後の数値となっており、対前期増減率は記載しておりません。
当連結会計年度における世界経済を概観しますと、足元では半導体不足に緩和の動きが見られるものの、昨年来の資源高や半導体不足の影響に加え、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化、エネルギー供給不安、サプライチェーンの混乱、高インフレおよびそれに伴う急激な利上げなどにより不透明感が続く状況となりました。一方で、ゼロコロナ政策下にあった中国を除き、新型コロナウイルスの影響には低下がみられました。
米国は個人消費の堅調さにより底堅く推移したものの、高インフレが続く中、政策金利の利上げが進み、設備投資の減速や住宅投資も減少し、景気の後退懸念が強まりました。欧州はロシアのウクライナ侵攻の長期化に伴い、高インフレやエネルギー供給への懸念が企業活動や個人消費に影響し、停滞感の強い状況が継続しました。中国は厳格なゼロコロナ政策による消費の抑制や生産および物流等への悪影響が景気を下押しし、不動産不況の影響もあり成長率が大きく減速しました。日本は半導体不足による自動車減産、資源高と円安による海外への所得流出などにより経済活動の停滞感がみられたものの、緩やかな持ち直し基調で推移しました。
当社グループ関連市場では、レンズ交換式カメラ市場は前期に比べて数量ベースでは11%増、金額ベースでは円安効果もあり47%増の大幅増加となりました。内訳としては、一眼レフカメラが数量ベース、金額ベースともに減少となりましたが、ミラーレスカメラは数量ベースで31%増、金額ベースでは61%増と大幅増加となり好調に推移しました。交換レンズは、前期に比べて数量ベースでは2%増、高付加価値品への需要の継続により金額ベースでは29%増となりました。
平均為替レートにつきましては、前期比で米ドルは約22円の円安、ユーロは約8円の円安と大幅な円安基調が継続しました。
このような状況の下、当社グループの当連結会計年度における経営成績は、主力の写真関連事業と第2の柱と位置付ける監視&FA関連事業、更には注力分野の車載カメラ用レンズの販売が好調に推移し、円安進行によるプラス影響もあったことから、売上高は634億45百万円となりました。
利益面につきましては、売上総利益率の高い写真関連事業の販売が好調に推移したことや、原価低減に注力した効果等による売上総利益率の向上により、営業利益は110億38百万円、経常利益は114億96百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は83億50百万円となりました。
営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益の各利益において過去最高を大幅に更新することができました。
セグメントの業績は次のとおりであります。
(写真関連事業)
自社ブランド製品は、2021年下期に発売した高倍率ズームレンズ 18-300mm F/3.5-6.3 VC VXD (B061)、大口径望遠ズームレンズ 35-150mm F/2-2.8 VXD (A058)、大口径標準ズームレンズ28-75mm F/2.8 VXD G2 (A063)等が業績を牽引いたしました。また2022年に発売した富士フイルムXマウント用大口径標準ズームレンズ 17-70mm F/2.8 VC RXD (B070)、超望遠ズームレンズ 50-400mm F/4.5-6.3 VC VXD (A067)等の新製品も業績に貢献し、ミラーレスカメラ用交換レンズの販売が好調に推移いたしました。なお、ソニーEマウント用、富士フイルムXマウント用に続き、当社初のニコンZマウント用レンズも投入し、対応マウントの拡充も図りました。OEMは、一部生産調整の影響がありましたが、堅調に推移いたしました。
このような結果、写真関連事業の売上高は455億19百万円、営業利益は111億58百万円となりました。
(監視&FA関連事業)
監視やFA/マシンビジョン用レンズは、中国市場ではゼロコロナ政策の長期化により開発の停滞や販売の低迷が生じましたが、先進国における販売が好調に推移し、高解像度かつコンパクトなマシンビジョン用単焦点レンズシリーズの発売等、多様化する用途に応じたラインナップ強化を図りました。またコロナ禍で需要低迷が継続していたTV会議用レンズも回復をみせ、増収に転じました。
このような結果、監視&FA関連事業の売上高は112億36百万円、営業利益は13億99百万円となりました。
(モビリティ&ヘルスケア、その他事業)
車載カメラ用レンズは、半導体不足等の影響もありましたが、急速に進む安全運転支援システム(ADAS)の普及による旺盛な需要を背景にセンシング用途を中心に好調を維持しました。一方でコンパクトデジタルカメラ用やビデオカメラ用レンズ、ドローン用レンズは市場の縮小や既存製品の伸び悩み等の影響を受けました。また、医療分野では、極小径レンズや薄膜技術等の開発、協業パートナーの開拓及び関係強化等、今後の事業拡大に向けた取り組みに引き続き注力いたしました。
このような結果、モビリティ&ヘルスケア、その他事業の売上高は66億89百万円、営業利益は10億61百万円となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ41億16百万円増加し、299億48百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローは次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
税金等調整前当期純利益が114億96百万円、減価償却費が29億57百万円、売上債権の減少額が5億26百万円となったこと等により、営業活動によるキャッシュ・フローは92億32百万円の収入(前連結会計年度は86億60百万円の収入)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資有価証券の取得による支出が5億56百万円、有形固定資産の取得による支出が30億80百万円となったこと等により、投資活動によるキャッシュ・フローは38億65百万円の支出(前連結会計年度は37億80百万円の支出)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
配当金の支払額が18億37百万円、長期借入金の返済による支出が2億29百万円であったこと等により、財務活動によるキャッシュ・フローは20億44百万円の支出(前連結会計年度は12億50百万円の支出)となりました。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
生産高(百万円)
前年同期比(%)
写真関連事業
46,260
106.8
監視&FA関連事業
11,412
117.2
モビリティ&ヘルスケア、その他事業
7,536
106.2
計
65,209
108.4
(注)金額は販売価格によっております。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
受注高(百万円)
前年同期比(%)
受注残高(百万円)
前年同期比(%)
写真関連事業
-
-
-
-
監視&FA関連事業
-
-
-
-
モビリティ&ヘルスケア、その他事業
804
99.9
92
113.6
計
804
99.9
92
113.6
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
販売高(百万円)
前年同期比(%)
写真関連事業
45,519
108.4
監視&FA関連事業
11,236
120.0
モビリティ&ヘルスケア、その他事業
6,689
108.3
計
63,445
110.3
(注)主な相手先への販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先
前連結会計年度
当連結会計年度
販売高(百万円)
割合(%)
販売高(百万円)
割合(%)
Sony Electronics Operations (China) Limited
7,909
13.7
7,905
12.5
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載されているとおりであります。 当社グループの連結財務諸表の作成にあたり、連結会計年度末における資産・負債及び収益・費用の計上等に関連しての種々の見積りを行っております。この見積りは、過去の実績やその時点で入手可能な情報に基づいて行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があり、連結財務諸表に重要な影響を及ぼすことがあります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
1)財政状態の分析
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産の残高は、553億5百万円となり、前連結会計年度末に比べ67億8百万円増加いたしました。これは主に、現金及び預金が41億50百万円増加し、製品が19億20百万円増加したことによるものであります。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産の残高は、202億50百万円となり、前連結会計年度末に比べ17億82百万円増加いたしました。これは主に、投資その他の資産が9億73百万円増加したことによるものであります。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債の残高は、126億85百万円となり、前連結会計年度末に比べ2億35百万円増加いたしました。これは主に、未払法人税等が5億37百万円増加し、買掛金が12億6百万円減少したことによるものであります。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債の残高は、22億95百万円となり、前連結会計年度末に比べ2億17百万円増加いたしました。これは主に、退職給付に係る負債が2億12百万円増加したことによるものであります。
(純資産) 当連結会計年度末における純資産の残高は605億74百万円となり、前連結会計年度末に比べ80億37百万円増加いたしました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益が83億50百万円、円安が進み為替換算調整勘定が17億1百万円増加したことによるものであります。
2)経営成績の分析
(売上高)
当連結会計年度の売上高は、主に写真関連事業が増収となったことにより、前連結会計年度に比べ59億6百万円増加し、634億45百万円となりました。
(売上総利益)
当連結会計年度の売上総利益は、過去最高の40%にまで売上総利益率が改善したことにより、前連結会計年度に比べ44億16百万円増加し、276億23百万円となりました。
(営業利益)
当連結会計年度の営業利益は、売上総利益の増加により、前連結会計年度に比べ36億29百万円増加し、110億38百万円となりました。
(営業外収益及び費用)
当連結会計年度の営業外収益は、為替差益を2億15百万円計上したこと等により、前連結会計年度に比べ3億91百万円増加し、7億93百万円となりました。
当連結会計年度の営業外費用は、固定資産除却損を1億30百万円計上したこと等により、前連結会計年度に比べ56百万円増加し、3億34百万円となりました。
(税金等調整前当期純利益)
当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は、経常利益が39億65百万円増加したこと等により、前連結会計年度に比べ40億77百万円増加し、114億96百万円となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、税金等調整前当期純利益が増加したことにより、前連結会計年度に比べ31億77百万円増加し、83億50百万円となりました。
セグメントごとの経営成績等の状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要①経営成績の状況」に記載のとおりであります。
3)経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、2023年12月期を最終年度とする中期経営計画「Vision23」として、売上高は2020年12月期比で約25%増の610億円を目指し、営業利益はここ10年間で最も高い2019年12月期を上回り、再びコロナ影響前の高収益体質へとV字回復を図る70億円を目指し、2021年から新たにスタートいたしました。
1年目の2021年12月期において、利益面は中期経営計画を達成し、コロナ影響前の高収益体質へと早期にV字回復を果たすことができました。そして、2年目の2022年12月期では、2021年12月期で実現した高収益体質も維持しつつ、成長/育成分野の監視&FA関連事業や、モビリティ&ヘルスケア、その他事業での売上高拡大を図り、売上高においても中期計画の1年前倒し達成を目指してスタートいたしました。
結果として、円安進行の影響もありますが、主力事業、成長/育成分野ともに売上高を拡大したことで、全ての面で中期経営計画を1年前倒しで達成すると共に、営業利益は中期経営計画の約1.6倍、営業利益率15%以上にまで達することができました。
なお、最終年度においては、その達成に満足することなく、新たに中期経営計画を大きく上回る、2015年12月期以来となる売上高700億円への到達、全ての利益段階で増益となる営業利益115億円を計画し、更なる高みを目指してまいります。
4)経営成績に重要な影響を与える要因について 「2〔事業等のリスク〕」に記載のとおりであります。
5)資本の財源及び資金の流動性についての分析 当社グループは、営業活動により安定したキャッシュ・フローを得ておりますが、必要な営業活動や設備投資に備えるために、自己資金の他に金融機関からの借入により資金調達を実施しております。借入金のうち、短期借入金は主に営業取引に係る資金調達、長期借入金は主に設備投資に係る資金調達であり短期借入金、長期借入金とも安定的な資金調達ができております。また、今後の設備投資については、量産金型、レンズ生産設備等への設備投資を実施する予定ですがこれら投資資金については、自己資金及び金融機関からの借入により調達する予定であります。
6)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。