【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績 農業を取り巻く環境は、世界の人口増加に伴う食糧需要の拡大から、農業生産は今後も拡大するものと考えられ、世界の農薬市場は、農業生産の拡大から成長基調が継続しております。国内農業では、農業生産者の減少及び高齢化が進んでいる一方で、大規模生産者や農業法人の増加など農業生産構造の変化が現れてきております。このような中、国内農薬業界におきましては、改正農薬取締法(2018年12月施行)により一層の農薬の安全性の向上が要求されており、国内の既登録農薬についても最近の科学的知見に基づいた安全性等の再評価が必要となっております。また、世界農薬市場におきましては、国内に先行し農薬登録制度の見直しが行われており、農薬使用時や残留農薬の安全性評価に留まらず生態系に対する環境影響評価が強化され、多くの既存薬剤の登録の失効・淘汰が進んでいます。加えて、新型コロナウイルス感染症の拡大やウクライナ情勢による原材料価格高騰をはじめとする農薬の生産・物流・消費等に対する影響を注視していく必要があります。このような情勢の中で当社グループは、経営理念である「我が信条」(お客様のため、社員のため、社会のため、株主のためという4か条)ならびに「どこまでも農家とともに」をモットーとして研究開発・技術普及・生産・販売を展開しております。当社グループは、創業以来の経営理念を堅持しつつ100年企業を目指すために、「Lead The Way 2025」をスローガンとした長期事業計画とともに、新中期事業計画(2022年-2025年)を策定し、企業価値の向上に努めております。また、新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するために、当社グループは安全性や衛生管理に配慮した業務運営に取り組んでおります。研究開発部門では、安全・安心な化学合成農薬の創出、生産現場のニーズに合致した製品の研究開発に加え、他社からの製品導入や無形資産の買収に取り組み、ポートフォリオの拡充に努めております。2022年度は水稲用除草剤「クリアホープフロアブル」、日本農薬株式会社から供給を受けて野菜用病害防除剤の「メジャーフロアブル」及び温州みかん用の植物成長調整剤「ファイナルショット乳剤」、三井化学アグロ株式会社から供給を受けて無人航空機散布専用の害虫防除剤「アルバリン液剤10」の販売を開始、また日本化薬株式会社から除草剤・植物成長調整剤の有効成分「MCPB」の関連事業を継承いたしました。加えて、欧州の「Farm to fork」や日本の「みどりの食料システム戦略」に掲げられる生物多様性や脱炭素化が農業生産における社会課題として大きくクローズアップされ、当社を取り巻く事業環境の変化が予見される状況下、従来の化学合成農薬の範疇にとらわれることなく、IPM(総合的病害虫・雑草管理)に資する農薬や資材を市場展開するため、研究体制を改めました。また、株式会社エス・ディー・エス バイオティックと微生物農薬や天敵資材等の普及販売協業を開始いたします。生産部門では、東京電力福島第一原子力発電所事故による福島工場の操業停止から12年となる中、山口工場はその代替工場として2018年11月に建設され、2021年2月にISO9001の認証を取得しました。茨城工場・直江津工場と併せて自社生産体制の向上により、製品の安定供給とコスト削減に取り組むとともに、品質保証と顧客満足の向上に努めております。また、山口工場は西日本の物流拠点としての機能を備えており、東日本の物流拠点である所沢物流倉庫と併せた効率的な運用による一層のサービス向上に努めてまいります。なお、2011年3月11日の東京電力福島第一原子力発電所の事故による営業損害につきましては、東京電力ホールディングス株式会社に対し損害賠償訴訟を係属中であります。営業技術普及部門では、農業生産者への適切な技術情報の提供に加えて、土壌分析室を活用し、農業の根幹となる土づくり、土壌のセンチュウ対策、病害虫診断の支援活動を拡大しています。さらに、グローバルGAP認証取得支援ならびに地域の農業・栽培問題解決のための研究実践農場(カネショウファーム)の運営も全国7か所にて展開し、これらのサービス提供により地域農業や農業生産者への貢献に努めております。また、新型コロナウイルス感染拡大時に強化した「お客様相談窓口」は継続し、能動的に製品の技術情報などお客様のお問合わせに対応しております。
海外事業部門では、主力製品「カネマイトフロアブル」の登録が世界50か国で認可され、更に8か国で開発を進めております。また、アセキノシル新製剤である「Veto 30SC」は、2021年10月に米国カリフォルニア州で登録が認可され本年より米国での本格販売を開始しました。今後も全世界的に開発を進めてまいります。「ネマキック粒剤・液剤」については現在9か国で登録が認可され今後も登録国の拡大に取り組んでまいります。また、海外子会社を通じて全世界で「バスアミド微粒剤」、「D-D」の登録維持・拡大・販売活動を継続し、韓国においては現地販売会社・小売店・農家に対する直接的な支援を強化してまいります。当連結会計年度においては、主に主要剤である土壌消毒剤のうち、「バスアミド微粒剤」が国内、海外共に好調、海外向け「D-D」も北米、中南米等で売上を伸ばし、前連結会計年度を上回り、ダニ剤「カネマイトフロアブル」の海外向けも欧州を中心に好調で害虫防除剤も前連結会計年度を上回り、売上高は前連結会計年度を上回りました。また、営業利益、経常利益も前連結会計年度に対し増加しておりますが、当社の連結子会社である株式会社KANESHO CHPに関する特別損失(減損損失)8千万円を計上いたしました。これは同社の保有する「クロルピリホス剤」に関する知的財産権として計上したのれんの回収可能性について検討し、減損処理を行ったものです。この結果、当連結会計年度の売上高は166億4千万円(前連結会計年度比15億3千5百万円の増加、前連結会計年度比10.2%増)、営業利益は16億5千万円(前連結会計年度比4億1千7百万円の増加、前連結会計年度比33.8%増)、経常利益は17億7百万円(前連結会計年度比4億2千4百万円の増加、前連結会計年度比33.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は9億1千7百万円(前連結会計年度比5億5千2百万円の増加、前連結会計年度比151.1%増)となりました。
当社グループは農薬の製造、販売事業の単一セグメントでありますが、製品の種類別の営業概況は次のとおりであります。
(イ)害虫防除剤国内では「カネマイトフロアブル」、「チューンアップ顆粒水和剤」、「バイスロイドEW」、「アルバリン剤」が前連結会計年度を下回りましたが、「ダニエモンフロアブル」、「エコマイト顆粒水和剤」、「ダーズバンDF」、「ヨーバルフロアブル」が前連結会計年度を上回りました。海外では「カネマイトフロアブル」が北米では前連結会計年度を若干下回りましたが、スペインを中心に欧州等で好調に売上を伸ばし、またアセキノシル新製剤である「Veto 30SC」が、2021年10月に米国カリフォルニア州で登録が認可され、第2四半期より米国での本格販売を開始し、売上に貢献し、害虫防除剤全体で前連結会計年度を上回る結果となりました。この結果、売上高は43億7千7百万円(前連結会計年度比1億4千2百万円の増加、前連結会計年度比3.4%増)となりました。
(ロ)病害防除剤「兼商クプロシールド」、「アフェットフロアブル」、が前連結会計年度を下回りましたが、「キノンドーフロアブル」「キノンドー顆粒水和剤」、「ストライド顆粒水和剤」、「モレスタン水和剤」が前連結会計年度を上回り病害防除剤全体で前連結会計年度を上回りました。この結果、売上高は9億3千1百万円(前連結会計年度比3千7百万円の増加、前連結会計年度比4.2%増)となりました。
(ハ)土壌消毒剤国内では「D-D」が前連結会計年度を下回りましたが、「ネマキック粒剤」、「バスアミド微粒剤」は前連結会計年度を上回りました。海外では「ネマキック粒剤」、「D-D」が北米、中南米等で増加、「バスアミド微粒剤」が前連結会計年度では出荷出来なかった韓国向けが売上に貢献し、土壌消毒剤全体で前連結会計年度を上回りました。この結果、売上高は83億6千1百万円(前連結会計年度比11億1千万円の増加、前連結会計年度比15.3%増)となりました。
(ニ)除草剤「モゲトン粒剤」、「カソロン剤」、「アークエース1キロ粒剤」が前連結会計年度を上回り、除草剤全体で前連結会計年度を上回りました。この結果、売上高は17億3千8百万円(前連結会計年度比1億5千1百万円の増加、前連結会計年度比9.5%増)となりました。
(ホ)その他展着剤が前連結会計年度を下回りましたが、園芸用品、植調剤が前連結会計年度を上回り、その他全体で前連結会計年度を上回りました。この結果、売上高は12億3千1百万円(前連結会計年度比9千2百万円の増加、前連結会計年度比8.1%増)となりました。
② 生産、受注及び販売の状況
(イ) 生産実績当連結会計年度における生産実績は、次のとおりです。なお、当社グループは単一セグメントのため、製品の種類別に記載しています。
区分
金額(千円)
前年同期比(%)
害虫防除剤
4,187,460
△4.6
病害防除剤
838,783
△33.0
土壌消毒剤
5,050,526
△2.0
除草剤
1,655,823
+10.3
その他
1,444,272
+27.2
合計
13,176,866
△1.9
(注) 金額は正味販売価格により算出しております。
(ロ) 受注状況前連結会計年度(自 2021年1月1日 至 2021年12月31日)及び当連結会計年度(自 2022年1月1日 至 2022年12月31日)当社グループ製品は見込生産を主体としており、総販売高に占める受注生産の割合は僅少のため受注状況の記載を省略しております。
(ハ) 販売実績当連結会計年度における販売実績は、次のとおりです。なお、当社グループは単一セグメントのため、製品の種類別に記載しています。
区分
金額(千円)
前年同期比(%)
害虫防除剤
4,377,817
+3.4
病害防除剤
931,051
+4.2
土壌消毒剤
8,361,701
+15.3
除草剤
1,738,695
+9.5
その他
1,231,449
+8.1
合計
16,640,716
+10.2
(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
相手先
前連結会計年度
当連結会計年度
販売高(千円)
割合(%)
販売高(千円)
割合(%)
カネコ種苗株式会社
2,208,655
14.5
2,381,381
14.3
③ 財政状態
(イ)資産当連結会計年度の総資産280億7千万円は、前連結会計年度の266億1千万円に比べ、14億6千万円の増加となりました。これは主に売掛金が12億9百万円、電子記録債権が2億7百万円、現金及び預金が8億8千3百万円増加する一方、減価償却及びのれんの減損損失等により固定資産が5億4千5百万円減少したことによるものであります。
(ロ)負債及び純資産当連結会計年度の負債72億8千1百万円は、前連結会計年度の67億1千2百万円に比べ、5億6千9百万円の増加となりました。これは主に買掛金が3億8千万円、未払法人税等が2億5百万円、流動負債のその他が2億2千3百万円増加する一方、借入金の返済で長期借入金が3億9千万円減少したことによるものであります。 純資産は207億8千8百万円となり、前連結会計年度に比べ8億9千万円の増加となりました。これは主に利益剰余金6億4千2百万円増加したことによるものです。その結果、自己資本比率は70.7%、1株当たり純資産額は1,600円46銭となりました。
④ キャッシュ・フローの分析当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、資金という。)は110億6千1百万円(前連結会計年度比8億8千3百万円の増加、前連結会計年度比8.7%増)となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度において営業活動の結果得られた資金は 16億3千2百万円(前連結会計年度は7億4千8百万円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益(16億2千7百万円)、減価償却費の計上(6億3千5百万円)による増加があったものの、売上債権の増加(12億3千9百万円)により減少したものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度において投資活動の結果支出した資金は 1億1千3百万円(前連結会計年度は2億2千9百万円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産(1億1百万円)及び無形固定資産(2千万円)の取得により減少したものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度において財務活動の結果支出した資金は 8億4千4百万円(前連結会計年度は25億3千5百万円の支出)となりました。これは主に、長期借入金の返済(3億9千万円)、配当金の支払(2億7千4百万円)、非支配株主への配当金の支払額(1億6千6百万円)により減少したものであります。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討等経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、次のとおりであります。(売上高)売上高は166億4千万円(前連結会計年度比15億3千5百万円の増加、前連結会計年度比10.2%増)となりました。 製品の種類別の売上高につきましては、(1) 経営成績等の状況の概要に記載のとおりです。(営業利益)営業利益は16億5千万円(前連結会計年度比4億1千7百万円の増加、前連結会計年度比33.8%増)となりました。これは主に、研究開発に関する費用の増加等により販売費及び一般管理費は増加しましたが、売上原価率が改善したためです。(経常利益)経常利益は17億7百万円(前連結会計年度比4億2千4百万円の増加、前連結会計年度比33.1%増)となりました。当連結会計年度は、営業外収益として、情報提供料収入、企業誘致奨励金、為替差益等の計上があり、経常利益では前連結会計年度に対し増加となりました。(親会社株主に帰属する当期純利益)親会社株主に帰属する当期純利益は9億1千7百万円(前連結会計年度比5億5千2百万円の増加、前連結会計年度比151.1%増)となりました。前連結会計年度は固定資産除却損、減損損失の特別損失等、多額の特別損失が計上されましたが、当連結会計年度は減損損失のみの計上となりました。その結果、親会社株主に帰属する当期純利益では前連結会計年度を上回る結果となりました。当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、原材料調達価格の動向、市場動向、為替動向、国内外の法令及び政治・経済動向等があります。資材調達につきましては、重要な供給元とは関係強化を図るとともに、複数のソースを起用することと、生産と販売のバランスの調整、物流体制の見直しや最適化に努め、為替の影響によるリスクヘッジを含めた安定的な調達を進めております。市場の変化に対しましては、国内販売部門において、マーケティング戦略に基づいた選択と集中を実践し、TCA活動を通して農家への推進を行い、自社剤の拡販に取り組んでまいります。また新規害虫防除剤「兼商ヨーバルフロアブル」が上市したことにより、更に売上拡大を進めていきます。海外販売部門においては、ダニ剤「カネマイトフロアブル」、「ネマキック粒剤」の販売国、適用作物の拡大を最重要課題として取り組んでおります。研究開発部門では引き続き、新剤の開発に取り組んでおります。国内外の法令や政治・経済動向等につきましては、海外事業本部、法務文書室等を中心とし、情報を入手するとともに、海外子会社及び関係会社と連携・情報共有を図ることで対応を行っております。なお、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える主要なリスクにつきましては、「第2 事業の状況 2.事業等のリスク」に記載のとおりであります。当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、主として営業活動によるキャッシュ・フロー及び金融機関からの借入を資金の源泉としております。また、設備投資等の長期資金需要につきましては、自己資金はもとより、金融機関からの借入等、金利コストの最小化を図れるように資金調達を行っております。