【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)財政状態及び経営成績の状況当連結会計年度におけるわが国経済は、このところ一部に弱さがみられるものの緩やかに持ち直しており、先行きにつきましては、ウィズコロナ下での各種政策の効果もあって、景気が持ち直していくことが期待されます。ただし、世界的な金融引締め等が続く中、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっております。また、物価上昇、円安、供給面での制約、金融資本市場の変動等の影響や中国における新型コロナウイルスの感染拡大の影響に十分注意する必要があります。当社グループがサービスを提供する市場におきましては、人口減少等の社会構造の変化や、ウィズコロナへの対応等から、DXやデジタル化が急速に進んでおります。流通食品小売業においては、感染症による脅威の継続に加え、原材料や物流費の高騰を背景とする仕入価格の上昇に直面しており、コストの吸収に苦慮しています。中長期的な視点に立てば、人口減少に伴う市場縮小の脅威にさらされており、また、共働きや単身世帯の増加といったライフスタイルの多様化を背景とするコンビニエンスストア、ドラッグストア、インターネット販売事業者など他業態との競争激化や、人材不足及びそれに伴う人件費高止まりといった問題に直面しております。このように厳しさを増す経営環境を打開するには、DXの推進等により、店舗運営の効率化や、卸売業・製造業との連携によるサプライチェーンの最適化など、生産性向上に向けた取組を進めることが不可欠となっております。官公庁においては、ガバメントクラウド(注)を活用した自治体の基幹業務システムの統一化・標準化に向けた取組のほか、2022年9月には総務省から「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画(第2.0版)」が示されました。また、「マイナンバーカード」については健康保険証並びに運転免許証との一体化時期の前倒しがデジタル庁より発表されるなど今後の普及・利用促進が期待され、住民サービスの向上と行政の効率化がさらに加速するものと考えられます。 さらに、コロナ禍を契機とする商慣習の変革は業種を問わず進んでおり、とりわけ、紙・対面に基づく様々なやりとりをサイバー空間において実現するためのデータ流通基盤となる「トラストサービス」へのニーズは飛躍的に高まっており、今後、簡易かつ信頼性の高いサービスが急速に普及していくと考えられます。また、「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太方針2022)」に、ブロックチェーン技術(注)を活用したWeb3.0(注)が盛り込まれ、分散型のデジタル社会の実現に向けて、国を挙げて環境整備を図る方針が打ち出されました。携帯電話販売市場においては、株式会社NTTドコモの「ahamo」をはじめとする通信キャリア各社のオンライン専用プランの利用拡大や、株式会社NTTドコモよりエリア毎のドコモショップを適切な店舗数・店舗規模に見直す方針が打ち出され、足元では店舗の閉店や統廃合の動きが活発化するなど、販売代理店にとって厳しい状況が続いております。一方で、5Gサービスの拡大による新たな需要や、2026年3月に予定される3Gサービス終了に向けた端末買い換え需要などの事業機会も見込まれます。また、株式会社NTTドコモが総務省「令和4年度 利用者向けデジタル活用支援推進事業」の事業実施団体に採択され、ドコモショップが地域のICTサポート拠点としての役割を担うことも期待されております。このような状況のもと、「LINK Smart~もたず、つながる時代へ~」をブランドコンセプトに、「シェアクラウド(共同利用型クラウド)」による安心、安全、低価格で高品質かつ高機能なクラウドサービスの提案を積極的に進めてまいりました。以上の結果、売上高12,225百万円(前期比7.7%減)、営業利益1,127百万円(前期比19.3%増)、経常利益1,141百万円(前期比19.1%増)、モバイル・メディア・リンク株式会社の吸収合併に伴う段階取得に係る差益79百万円を特別利益に計上したことにより親会社株主に帰属する当期純利益909百万円(前期比41.0%増)となり、3期連続で過去最高益を達成しました。
「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)目標とする経営指標」に記載のとおり、当社グループは定常収入を経営上の重要指標と位置づけております。当連結会計年度における定常収入は、サービス提供の拡大により236百万円増加し、6,917百万円(前期比3.5%増)となり、順調に推移しました。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という)等を当連結会計年度の期首から適用しております。この結果、当連結会計年度における売上高は239百万円増加し、営業利益、経常利益及び税金等調整前当期純利益は76百万円増加しております。収益認識会計基準等の適用が財政状態及び経営成績に与える影響の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」をご参照ください。
当連結会計年度におけるセグメント別の業績は、次のとおりであります。
<流通クラウド事業>流通クラウド事業におきましては、小売業向けEDIサービス「BXNOAH」や、流通食品小売業向け基幹業務クラウドサービス「@rms基幹」等のクラウドサービス提供拡大により定常収入が増加しました。定常収入以外の収入については、個別カスタマイズに係る収入等が増加しました。流通業界における商談のDXを実現する企業間プラットフォーム「C2Platform」の商談支援サービスについては、大手食品小売業数社からの受注を獲得し、2023年度稼働に向け作業を進めるなど、今後のサービス提供拡大に向けた取組を進めました。また、加工食品卸売業向けEDIサービス「クラウドEDI-Platform」について、2022年7月に大手のユーザーが1社増加し、加工食品卸売業の売上高上位10社のうち、8社が同サービスを利用することとなりました。さらに、「@rms基幹」の新機能開発投資の実行や他社システムとの連携強化を図るなど、更なる商品価値の向上に取り組みました。中大規模顧客向け「@rms基幹」にかかる償却が概ね終了したことによりソフトウェア償却費が、また、前述の「C2Platform」にかかる研究開発フェーズが2021年6月までに完了したことなどにより研究開発費が、それぞれ減少しました。以上の結果、当連結会計年度における売上高は4,284百万円(前期比6.5%増)、セグメント利益(経常利益)は813百万円(前期比43.8%増)となりました。なお、収益認識会計基準等を適用しない従来の方法によった場合の当連結会計年度における売上高は4,233百万円(前期比5.3%増)、セグメント利益(経常利益)は794百万円(前期比40.5%増)となります。
<官公庁クラウド事業>官公庁クラウド事業におきましては、防災行政無線デジタル化工事やGIGAスクール関連などの特需案件や、医療情報分野における大型のシステム更新案件があった前期に比べ、減収となりました。他方、外注コストをかけずに対応が可能な小型の案件を着実に受注したことにより、収益性が向上し、増益となりました。 また、マイナンバーカードを活用した本人確認・電子署名により、自宅に居ながら、自治体への税務申請や相談を行うことができる自治体DXサービス「Open LINK for LIFE みんなの窓口」をリリースするなど、今後の成長につなげるための取組を進めました。さらに、2022年7月に株式会社シナジーを子会社化し、グループ全体での相乗効果を発揮するための取組を進めました。なお、同社の損益計算書の連結は、2023年12月期連結会計年度から開始する予定です。 以上の結果、当連結会計年度における売上高は5,296百万円(前期比14.0%減)、セグメント利益(経常利益)は712百万円(前期比19.4%増)となりました。なお、収益認識会計基準等を適用しない従来の方法によった場合の当連結会計年度における売上高は5,089百万円(前期比17.4%減)、セグメント利益(経常利益)は654百万円(前期比9.8%増)となります。
<トラスト事業>トラスト事業におきましては、「マイナトラスト電子委任状サービス」や、ブロックチェーン技術を利用したデジタル証明書発行サービス「CloudCerts」の提供等により定常収入は増加したものの、新サービスの開発等にリソースを集中させたため、既存サービスの導入があった前期に比べ、売上高は減少しました。利益面においては、「CloudCerts」の取得費用を計上した前期に比べ、赤字幅は縮小いたしました。DXへの機運が醸成されるに伴い、「CloudCerts」への関心が高まっております。直近では、一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会が運営する「TOEIC® Program」公開テストのデジタル公式認定証に採用され、2023年4月から稼働する予定となっております。大規模検定試験としては日本初の取組を成功させるべく、着実に準備を進めてまいります。一方、不動産登記の完全オンライン化を実現するサービスの開発等、引き続きマイナンバーカードをベースとした新たなサービスの開発を進めました。他方で、ブロックチェーン技術や分散型ID(注)技術等に関して、2022年5月の韓国RAONSECURE社との業務提携の合意に加え、同年9月には国立大学法人和歌山大学との共同研究についても合意するなど、将来のビジネス展開に向け、社外との協力体制の構築を進めました。以上の結果、当連結会計年度における売上高は47百万円(前期比50.0%減)、セグメント損失(経常損失)は236百万円(前期はセグメント損失349百万円)となりました。なお、収益認識会計基準等の適用による当連結会計年度における売上高及び、セグメント損失(経常損失)への影響はありません。
<モバイルネットワーク事業>モバイルネットワーク事業におきましては、株式会社NTTドコモによる端末購入に係る割引施策の方針変更のため顧客の実質端末購入価格が高額化したこと等により端末販売台数は減少し、端末販売に係る売上は減少しました。また、2021年10月より株式会社NTTドコモからの支援費が減少した影響などにより、端末売上以外の収入も減少しました。また、株式会社NTTドコモからドコモショップをエリア毎に適切な店舗数・店舗規模に見直す方針が打ち出されたことを踏まえ、地域における強力な販売パートナーとなることを目的に、和歌山県下においてドコモショップを運営するモバイル・メディア・リンク株式会社と株式会社ケイオープランを2022年12月に吸収合併しました。その結果、当社が運営するドコモショップは4店舗増加し11店舗となり、和歌山県内のドコモショップ全23店舗のうち約半数の店舗を当社が運営することとなりました。なお、合併により増加した4店舗の業績は、2022年12月より当社業績に含まれております。以上の結果、当連結会計年度における売上高は2,596百万円(前期比12.4%減)、セグメント利益(経常利益)は167百万円(前期比56.1%減)となりました。なお、収益認識会計基準等を適用しない従来の方法によった場合の当連結会計年度における売上高は2,615百万円(前期比11.8%減)となります。収益認識会計基準等の適用によるセグメント利益(経常利益)への影響はありません。
(注)上記に用いられる用語は以下のとおりであります。ガバメントクラウド:政府共通のクラウドサービスの利用環境。クラウドサービスの利点を最大限に活用することで、迅速、柔軟、かつセキュアでコスト効率の高いシステムを構築可能とするもの。ブロックチェーン技術:情報通信ネットワーク上にある端末同士を直接接続して、取引記録を暗号技術を用いて分散的に処理・記録するデータベースの一種であり、データ改ざんが困難かつ、システムダウンに強い等の特徴を持つ。 Web3.0:次世代インターネットとして注目される概念。巨大なプラットフォーマーの支配を脱し、分散化されて個と個がつながった世界。電子メールとウェブサイトを中心としたWeb1.0、スマートフォンとSNSに特徴づけられるWeb2.0に続くもの。分散型ID:ブロックチェーンの分散型台帳を利用することで、特定のプラットフォーマーに依存せずに、自分の情報を必要な範囲で提供できる技術。
当連結会計年度における生産、仕入、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
(生産実績)当社グループは生産活動を行っていないため、記載すべき事項はありません。
(仕入実績)当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
仕入高(百万円)
前期比(%)
流通クラウド事業
341
129.6
官公庁クラウド事業
1,632
84.0
トラスト事業
0
249.3
モバイルネットワーク事業
1,669
96.1
合計
3,644
92.4
(注) 金額は、仕入価格によっております。
(受注実績)当社グループは受注生産を行っていないため、受注実績の記載を省略しております。
(販売実績)当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
販売高(百万円)
前期比(%)
流通クラウド事業
4,284
106.5
官公庁クラウド事業
5,296
86.0
トラスト事業
47
50.0
モバイルネットワーク事業
2,596
87.6
合計
12,225
92.3
(注)
1.セグメント間取引については、相殺消去しております。2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
相手先
前連結会計年度
当連結会計年度
販売高(百万円)
割合(%)
販売高(百万円)
割合(%)
コネクシオ㈱
2,522
19.0
2,574
21.1
(2) 財政状態当連結会計年度末の総資産は12,705百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,022百万円増加しました。流動資産は、280百万円の増加となりました。これは主に契約資産が960百万円、商品及び製品が117百万円増加したことと、売掛金が365百万円、現金及び預金が294百万円、仕掛品が84百万円、リース債権及びリース投資資産が76百万円減少したことによるものです。固定資産は、2,742百万円の増加となりました。これは主にのれんが1,321百万円、取得等により土地が574百万円、ソフトウエア仮勘定が358百万円、建物及び構築物が185百万円、投資その他の資産のその他に含まれる長期前払費用が87百万円、ソフトウエアが53百万円、繰延税金資産が50百万円増加したことによるものです。 負債は、1,339百万円の増加となりました。これは主に借入等により長期借入金(1年内返済予定の長期借入金を含む)が952百万円、契約負債が525百万円、買掛金が135百万円、流動負債のその他に含まれる未払金が78百万円増加したことと、固定負債のその他に含まれる長期前受収益が160百万円、流動負債のその他に含まれる前受金が146百万円、前受収益が145百万円、未払法人税等が109百万円減少したことによるものです。純資産は、1,682百万円の増加となりました。これは主に利益剰余金が、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により909百万円増加し、剰余金の配当により124百万円減少したことと、株式交換等により資本剰余金が854百万円増加したことによるものです。
(3) キャッシュ・フロー当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比べ294百万円減少し、2,258百万円となりました。なお、減少額には合併に伴う現金及び現金同等物の増加額390百万円を含んでおります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動によるキャッシュ・フローは1,046百万円の資金の増加(前連結会計年度は、1,964百万円の資金の増加)となりました。資金の増加の主な要因は、税金等調整前当期純利益1,221百万円、減価償却費530百万円となっております。資金の減少の主な要因は、法人税等の支払額434百万円、棚卸資産の増加額137百万円、段階取得に係る差益79百万円となっております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動によるキャッシュ・フローは2,267百万円の資金の減少(前連結会計年度は、685百万円の資金の減少)となりました。資金の減少の主な要因は、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出943百万円、有形固定資産の取得による支出667百万円、無形固定資産の取得による支出650百万円となっております。資金の増加の主な要因は、投資不動産の賃貸による収入14百万円となっております。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動によるキャッシュ・フローは534百万円の資金の増加(前連結会計年度は、591百万円の資金の減少)となりました。資金の増加の主な要因は、長期借入れによる収入1,000百万円となっております。資金の減少の主な要因は、長期借入金の返済による支出340百万円、配当金の支払額123百万円となっております。
当社グループの運転資金需要の主なものは、原材料及び商品の仕入のほか、外注費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。また、長期資金需要は設備投資及びM&A投資であり、設備資金需要の主なものは、データセンター設備の増強のためのサーバー機器等への投資、ソフトウェア開発に係る費用などであります。当社グループは、運転資金については自己資金より充当し、不足が生じた場合は金融機関からの短期借入や社債の発行により調達を行っております。また、長期資金については、自己資金で不足する場合は長期借入金等により調達を行っております。当社グループの当連結会計年度末における設備の新設、改修等に係る投資予定金額とその資金調達の方法については、「第3 設備の状況 3.設備の新設、除去等の計画」に記載のとおりであります。当社グループは複数の取引金融機関との間で当座貸越契約を締結し、資金需要を鑑み必要に応じて資金の借入を行える体制を整えております。これにより、資金の流動性は十分に確保されているものと判断しております。なお、当連結会計年度末における借入金、社債及びリース債務を含む有利子負債の残高は3,155百万円となっております。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成において、会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りについては過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。なお、当社グループが連結財務諸表の作成に際して採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
新型コロナウイルス感染症拡大に伴う会計上の見積りにつきましては「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。なお、当該見積りは連結財務諸表作成時点の最善の見積りであり、見積りに用いた仮定の不確実性は高く、新型コロナウイルス感染症の収束時期及び経営環境への影響が変化した場合には、将来における当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
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